2018年02月01日
【糖質制限】『甘いもの中毒 私たちを蝕む「マイルドドラッグ」の正体』宗田哲男
甘いもの中毒 私たちを蝕む「マイルドドラッグ」の正体 (朝日新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった健康本。タイトルにはありませんが、ほぼ全編「糖質制限」を推奨している1冊です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「甘いもの」は「麻薬」である…。ごはんを「3分の1」にするだけでも効果あり!いわゆる覚せい剤などの「ハード・ドラッグ」ほどではないものの、「甘いもの」には依存性があります。甘い砂糖やごはんなどに含まれる「糖質」は、私たちの意志に関係なく、脳に直接働きかけて糖質過多になるように誘うことができる物質(マイルド・ドラッグ)なのです。その甘い誘惑から逃れる方法を、解説します。
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Sugar / Risager
【ポイント】
■1.炭酸飲料2リットルで血糖値500になる先に、角砂糖14個(55g)を水に溶かしただけの砂糖水の話をしましたが、実験だからなんとか我慢して飲めたのであって、甘すぎて非常にまずい飲み物です。
ところが、炭酸水で割って冷たくすると、とたんにおいしい飲み物に変わってしまいます。もし、コカ・コーラが炭酸なしの甘いだけの飲み物だったら、今日のように全世界に普及したでしょうか。おそらく誰も飲まなかったでしょう。
ただ、言うまでもないことですが、どんなに炭酸が入っていて爽快感があって飲みやすいといっても、含まれている糖質の量は、当然ながら炭酸の抜けたコカ・コーラと何ら変わりません。たとえば、2リットルのコカ・コーラには200gもの糖質が含まれているので、一気に飲めば、血糖値は500ほどにも上がってしまうのです。
■2.甘いものは、依存症を引き起こす危険性がある
麻薬などのハード・ドラッグは、こうした脳内にあるドーパミン報酬系を強烈に刺激します。ただし、仕事などによる正常なドーパミン分泌と違って、ドラッグによるドーパミン分泌は同時にそれを受け取る神経(受容体)をも破壊するといわれています。
そのために脳がその「適量」を判断できなくなり、本人の「意志」のいかんにかかわらず摂取量が増えて、イライラや不安、妄想といった禁断症状をともなう依存症となり、最悪の場合は死に至るというわけです。
じつは、砂糖と白米も麻薬と同じく、脳内のドーパミン報酬系を強く刺激します。だから、本人の意志とは無関係に依存症になってしまう危険性が高いのです。
■3.動物園のサルは甘すぎるバナナのせいで病気になる
英国デボン州のペイントン動物園が実践している「サルのバナナ禁止」は、糖質過多の弊害を知るうえで、非常にわかりやすい事例の1つだと思います。
禁止の理由は、「いまのバナナはサルが本来食べていた野生のバナナとは違って、糖分が多すぎるので、サルには不健康である」というもの。甘すぎるバナナが糖尿病や虫歯、胃腸の不調の原因になっているというわけです。同動物園では、サルのエサとしてバナナを与えないことにしました。その結果、健康状態がよくなって、さらに争いごとが減り平和的になったというのです。
■4.世界で続々と採用される「砂糖税」「ソーダ税」
たとえば米国の公立の小・中学校では、糖質過多の清涼飲料水の販売が2009年から全面的に禁止されているそうです。カリフォルニア州バークリーなどでは炭酸飲料などに課税する「ソーダ税」も導入されています。ワシントン州シアトルなどでも2018年から課税が始まるといいます。
また、フランスとハンガリーでは2011年、メキシコでは2014年から清涼飲料水やお菓子に課税する「砂糖税」やソーダ税が導入されており、英国でも同様の課税が2018年から始まる予定です。
じつは、日本の厚生労働省も有識者会議の提言を受けて、2015年頃から糖尿病などの病気予防を目的に「砂糖の摂り過ぎ」を抑える施策の1つとして、砂糖税について検討しているはずなのですが、ほとんど議論は進んでいないようです。
■5.無理せず糖質制限をする
何も堅苦しく考える必要はありません。ごはん、パン、麺類といった炭水化物を控えて、脂質とタンパク質をたっぷり食べていれば、自然に糖質制限になるというだけのことです。
三大栄養素の比率でいえば、目安は「炭水化物2割・脂質4割・タンパク質4割」。
ただ気をつけたいのは、摂取カロリーが不足しないようにすることです。 ごはん茶碗1杯をやめるなら、肉類の量を1.5倍に増やすといった「置き換え」が必要です。炭水化物を抜くなら「毎日卵3〜5個」というのもよい目安になると思います。
ココナッツ油やバター、生クリームといった栄養素がほとんど脂質の食品を多めに使うようにするのもカロリー不足を防ぐコツです。
【感想】
◆冒頭でも触れたように、本書はタイトルからイメージされる内容とは違い、「糖質制限」にページの大部分を割いています。ただし、「なぜ糖質制限をしなくてはならないか」という流れから、まず糖質の弊害を主張。
その最たるものの1つが、上記ポイントの2番目にあるような「依存症状」や「中毒症状」です。
ここでは、「麻薬などのハード・ドラッグ」という表現が出てきましたが、これはお茶の水健康長寿クリニック院長の白澤卓二氏の分類によるもので、いわゆる麻薬(覚せい剤、コカイン、ヘロイン、LSDなど)を「ハード・ドラッグ」、マリファナやタバコ、アルコールなどを「ソフト・ドラッグ」、砂糖や白米などを「マイルド・ドラッグ」と分類して、いずれも依存症を引き起こす危険なものとして注意を呼びかけているのだそう。
本書のタイトルにある「マイルドドラッグ」とは、そこから持ってきているワケです。
ちなみに、本書の著者である宗田先生は、「ドラッグになるものは動物ではなく、すべて植物である」という指摘をしており、なるほど確かに。
ハチやチョウが、蜜を吸うために集まるのも、葉や実を食べるために動物が集まるのも、植物の生存戦略ゆえである、と。
◆問題は、それに人間も踊らされていることで、糖質を摂り続けると、糖尿病になる可能性が飛躍的に高まります。
本書の第2章では、「『糖質過多』はこんなに怖い!」と題して、糖尿病並びに、その治療法について言及。
普通の病院では、どこでもそうだと思うのですが、一般的にはインスリンを注射することがまず行われます。
インスリンはどのような役割? | 糖尿病がよくわかるDM TOWN
しかし、宗田先生は、これに対して反対の立場を主張。
インスリンで無理やり血糖値を下げるのではなく、そもそも糖質を制限すればいい、と力説されています。
◆ただし現場では、糖質制限に対する反発も強く、そもそも栄養士や入院食を提供する医療の現場でも「炭水化物6割、脂質2割、タンパク質2割」という指導が行われているのだとか。
加えて、インスリン注射は、在宅自己注射指導管理料による保険点数も高く、お医者さんも儲かります。
さらに糖尿病が悪化して、人工透析による治療になると、点数もより高くなるという……。
こういう状況において、糖質制限による治療をしようとしても、反発の声があるのは当然でしょう。
実際、日本糖尿病学会は、糖質制限に対して慎重なスタンスを取っており、かつては強固に反対していたのだとか。
最近になって、日本糖尿病学会の理事長である門脇孝氏は「緩やかな糖質制限は推奨できる」と『週刊東洋経済』誌上にて発言したそうなのですが、同時に、糖質制限に対する疑念も強調しています。
そこで宗田先生は、その6つの疑念対して、本書の第3章にて念入りに回答。
実践する、しないにかかわらず、糖質制限を未だ疑問視されている方は、ぜひご確認していただければ、と。
◆一方、本書の第5章では、具体的な糖質制限方法を指南。
厳格なものから緩やかなものまで色々ある中、宗田先生がご自身の病院で妊婦さんたちに薦めているのは、「MEC食」なのだそうです。
提唱者でもある、こくらクリニック院長の渡辺信幸のお話がこちら。
MEC食で肉卵チーズを食べることの効果を渡辺信幸氏が解説 - ログミー
今までKindleセール本で、何度か「MEC食」本を見かけたのですが、買っておけば良かった……。
ただ、宗田先生ご自身は、上記ポイントの5番目にあるように、緩やかめな糖質制限でも良い、とも言われています。
上記では割愛しましたが、吉野家の「サラ牛(サラシア牛丼)」も高く評価されてらっしゃいますし。
実際にごはんも9割方食べた上で血糖値を計ったところ、それほど高くならず驚かれてました。
糖質制限をより深く知るために読むべし!
甘いもの中毒 私たちを蝕む「マイルドドラッグ」の正体 (朝日新書)
プロローグ 赤ちゃんは「甘いもの」が大嫌い!
第1章 ヒトは、なぜ「甘いもの中毒」になるのか?
第2章 「糖質過多」はこんなに怖い!
第3章 間違いだらけの「糖質制限」批判
第4章 糖質制限に「世界」は動いている
第5章 さあ、「糖質制限」を始めよう!
エピローグ 「糖質制限リアリスト」宣言
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【編集後記】
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ご声援ありがとうございました!
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