2018年01月17日
【語彙力?】『大人の語彙力大全』齋藤 孝
大人の語彙力大全 (中経の文庫)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった1冊。おなじみ齋藤 孝先生が、社会人の「必須用語」を大々的に解説してくれています。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
仕事の力量があるかないかということ以前に、稚拙な表現や思慮の浅そうな表現をしていれば、社会人としてのレベルを低く見積もられてしまいます。
社会人としての評価を上げ、キャリア形成でつまずかない、軽く扱われないための「知性と教養を感じさせる語彙」483語を日本語研究の第一人者、齋藤孝先生が一挙解説!
なお、中古に定価以上のプレミアが付いていますから、若干お買い得なKindle版がオススメです!
dictionary / Trevor Pritchard
【ポイント】
■1.時宜を得る(じぎをえる)【意味|よい時期をとらえる。タイミングがよいこと。】
「時宜」とは、その時やその場に適しているという意味です。「時宜を得る」の意味で「時期を得る」や「時機を得る」と使うのは誤用です。「今回の企画は時宜を得ている」「彼は時宜を得た意見を出す」という使い方をします。
■2.放念(ほうねん)
【意味|気にかけないこと。心配しないこと。】
自分が心配しないことではなく、相手に「心配しないでください」と言うときに使います。その場合は「放心」も同じ。話し言葉よりも、書き言葉で使うことの方が多いでしょう。「なにとぞ、ご放念ください」
■3.語るに落ちる(かたるにおちる)
【意味|勝手にしゃべらせるとうっかり秘密をしゃべってしまう。】
「問うに落ちず語るに落ちる」を省略した言葉です。問い詰められると白状しないけれど、油断してしゃべっているうちに、つい本音が出てしまうという、人間の性を表しています。「彼は、ついに語るに落ちたね」
■4.忸怩(じくじ)
【意味|自分の行いを恥じ入る様子。】
「忸怩たる」という形で使います。自分に対してもどかしいという意味なので、腹立たしいというニュアンスで「最近の政治家には忸怩たる思いだ」と使うのは誤用です。「このような結果になってしまったことは、忸怩たる思いです」
■5.賢察(けんさつ)
【意味|相手を敬って、その人が推察することをいう言葉。お察し。】
これは、相手に「推し量ってほしいとき」に使う言葉。目上の人に、何かお願いをしたり、判断を任せたりするときに、「どうかご賢察いただきたい」と使います。こちらの出した条件や情報をよくよく考えて総合的に判断してほしい、というニュアンスになります。場合によっては、「賢いあなたですから、こちらの意図はわかるでしょう? どうかよい判断をお願いしますよ」とプレッシャーをかけるような、押しつけがましい言い方になることもあるので要注意。
■6.糊口(ここう)
【意味|暮らしを立てること。生計。】
もともとは「粥をすする」という意味で、転じて「暮らしを立てる」という意味になりました。「糊口をしのぐ」は、かろうじて生計を立てるという意味です。他に、貧しさを表す言葉に「赤貧」があります。
■7.睥睨する(へいげいする)
【意味|にらみつけて勢いを示すこと。】
「睥睨する」は他にも、横目でにらむこと、流し目で見ること、という意味があります。威圧するという意味では、多く「天下を睥睨する」という使い方をします。話し言葉では、まず使いません。「睨」はにらむという意味の漢字で、「あいつが悪いことをしないように睨みをきかせる」(勝手なことをしないように押さえつける)とか、「総選挙を睨んでの発言」(予測する、警戒する)というような使い方もします。
【感想】
◆以上、1つ1つが短めなので、今回は数は多めに選んでみました。ちなみに上記で挙げたものは、個人的に言葉自体を知らなかったり、言葉は知っていても、使い方が知らないモノが中心です。
たとえば、上記ポイントの2番目の「放念」は、パッと見で「放心状態」の「放心」のようなものかと思ったら、まったく違っていたという(恥)。
相手に「なにとぞ、ご放念ください」と言われて、目がテンにならなくてよかったですw
◆同じく意味を知らなかったのが、上記ポイントの5番目の「賢察」。
こちらも相手から「どうかご賢察いただきたい」と言われたら、立ち往生するところでした。
……こう、言われたら「忖度」すればいいんですよね(「忖度」も本書には収録されています)?
また、上記ポイントの7番目の「睥睨」も、口頭で言われたらまず分からなそうですが、「話し言葉では、まず使いません」とのことですから、ひと安心。
逆に書き言葉だと、「睨む」という漢字が入っていますから、なんとなく理解できそうではありますが。
◆一方、詳しい(正しい)用法を知らなかったのが、上記ポイントの4番目の「忸怩」。
「自分以外の人に対して使えない」というのは、今般初めて知りました。
ちなみに、上記ポイントの1番目の「時宜を得る」は、「時期を得る」や「時機を得る」とごっちゃになっていたワタクシ。
こういうのは、口頭で言われると区別しにくい上に、元から「時宜」という言葉自体を知らないと、「時期」や「時機」と間違えやすいと思います。
◆なお、今回上記で選んだフレーズは、下記目次における第1章と2章、並びに第6章からのもの。
それ以外の章の言葉、たとえば第4章の「カタカナ語」は「ステレオタイプ」「リテラシー」「ルーチン」といった、普通に使われているものが中心ですし、第5章の「ビジネスカタカナ語」も同様で、「フレキシブル」「ロールモデル」「トレードオフ」等々の見慣れた単語ばかりだったので割愛しました。
この辺は、普通に新聞や雑誌、書籍に接していれば、知っていても当然だと思うのですが、本書を読む層によっては、あまり縁がないのかもしれません。
さらに難儀なのが第6章で、ここは著者の齋藤先生らしく(?)、夏目漱石の作品に出てきた言葉のみを取り上げていますから、ビジネス書だけを読んでいたとしても立ち向かえないカモ!?
このように、比較的簡単なところから、ディープなところまでカバーしているのが本書の特長かな、と。
……さすがに表紙にある「これ1冊であとはいらない!」というのは、ちと盛っていると思いますがw
語彙力を高めたいなら要チェックな1冊!
大人の語彙力大全 (中経の文庫)
はじめに
1章【基本語】正しく使えて当然! 大人の基本語彙
2章【敬語】さりげなく使いこなしたい、大人の敬語
3章【言い訳】気持ちよく聞き入れてもらえる、大人の言い訳・謝罪・お願い
4章【頻出語】知らずに使うと恥ずかしい、大人の頻出カタカナ語
5章【ビジネス語】職場で圧倒的な差をつける、大人のビジネスカタカナ語
6章【漱石語】目指せ美しい日本語マスター、夏目漱石が使った語彙
おわりに
索引
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【編集後記】
◆本書の「よく一緒に購入されている商品」として上がっていたのがこちら。大人の語彙力ノート 誰からも「できる! 」と思われる
こちらは「言い換え」が中心のようですね。
ご声援ありがとうございました!
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