2018年01月02日
【マーケティング】『♯HOOKED 消費者心理学者が解き明かす「つい、買ってしまった。」の裏にあるマーケティングの技術』パトリック・ファーガン
♯HOOKED 消費者心理学者が解き明かす「つい、買ってしまった。」の裏にあるマーケティングの技術 (T's BUSINESS DESIGN)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中の「ビジネス書フェア」からのマーケティング本。版元単独ではセールを行わないTAC出版さんの作品ということで、この機会を逃さず読んでみた次第です。
アマゾンの内容紹介から。
行動科学を専門とするイギリスの消費者心理学者パトリック・ファーガンが、「つい、買ってしまった。」の裏に潜むマーケティングの技術を、「10のしかけ(HOOK)」として紹介。
人間の脳の仕組みにもとづいて、消費者の無意識での行動を徹底分析。だから「つい、買ってしまった。」となるマーケティングの技術が盛りだくさんです。
「61%OFF」と値引率が高いこともあり、送料を考えるとKindle版が600円以上お得な計算です!
Trix Cereal Rabbit, 8/2014 by Mike Mozart of TheToyChannel and JeepersMedia on YouTube. #Trix #Cereal / JeepersMedia
【ポイント】
■1.メールのCCにアドレスを入れまくらない会社の同僚に大事なたのみごとをしたくて、メールのCCにアドレスをありったけ追加して送信した経験はないだろうか。実は、これは効果的な手段とは言えない。キティ・ジェノヴェーズ事件のような「責任分散」が起こるからだ。
ある大学の実験で、学生にあてて「教えてください」という件名のメールを送信した。「そちらの大学には生物学部はありますか?」と同年代の若者がたずねる内容だ。受信者に対して1対1で送るメールと、5人のアドレスに一斉送信するメールに分けた。すると前者では64%が返信していたのに対し、後者では返信率が50%に下がっていた。
■2.性的な刺激には関心が集まる
例を挙げよう。アメリカンフットボールのプロリーグNFLの優勝決定戦であるスーパーボウルは、中継視聴率が驚異的な数字となるため、各社が毎年こぞって特別なコマーシャルを出している。2013年のスーパーボウルで、インターネット・プロバイダーの「ゴーダディ・ドットコム」が1本のコマーシャルを流した。ぶさいくなオタク風の男性が、スーパーモデルとひたすらディープキスをするという内容だ。これがもっとも記憶に残る1本となり、ゴーダディの業績アップに大きく貢献した。コマーシャルの放映後、ドメイン売上は前年比40%も伸びたという。
■3.パッケージキャラクターにはアイコンタクトをさせる
2つ目の調査では、被験者にトリックスという商品名のシリアルを見せた。箱に描かれたマスコットのウサギが絵のなかでシリアルを見ているパターンと、被験者と目を合わせてくるパターンがある。その後、被験者にトリックスを選ぶかそれとも別のシリアルを選ぶかたずねると、アイコンタクトがなかった場合の被験者は、48%がトリックスを選んだが、アイコンタクトがあった場合は、その数字が61%に伸びた。
■4.恐怖という感情は意思決定をうながす
これを実際に行ったのがコーソダイルというマウスウォッシュ商品のキャンペーンだ。「歯肉から出血があるならマウスウォッシュを使いましょう、そうでないと歯が抜け落ちますよ」「目から出血したら無視しないのに、なぜ歯肉からの出血は軽視するのですか」と伝えたのである。目と歯肉をくらべたら目の出血のほうが危険度が高いに決まっているのだが、この比較は、不安を利用して購入をうながした。コーソダイルの売上は31%伸び、イギリス国内の市場シェアも2.3%アップした。
■5.受け手に自分の頭で考えさせる
こうした点から興味深いのが、マクドナルドの「タラッタッタッター、I'm lovin' it」というジングル(コマーシャルを印象づける短い音や曲などのこと)だ。当初、マクドナルドのコマーシャルではジングルを最後まで流していた。しかし、現在では言葉の部分を入れずに終わっている。そのおかげで、ジングルを耳にした人は、頭のなかで思わずつづきの歌詞をつぶやく。まるでパブロフ効果のように、ジングルを聞いただけで反射的に、「I'm lovin' it(わたしはマクドナルドが大好きだ)」と、自分に言い聞かせてしまうというわけだ。実際、このキャンペーンは売上面で大きな効果を出しているという。
■6.メッセージは具体的に
オムツブランドのパンパースの試みが、実際の効果のちがいを証明している。パンパースはかねてからユニセフと手を組み、利益の一部を貧しい国々の子どもたちのために投じている。その一環として、乳児に破傷風の予防注射を受けさせるキャンペーンを行った。一部の商品パッケージには「1パックの購入で、世界の新生児を破傷風から救います」というスローガンを掲載した。だが、「1パック=1ワクチン」とだけ書いたパッケージのほうが、はるかに成功率が高かったのである。
【感想】
◆短めなモノを集めた分、いつもよりポイントもちょっと多めにしてみました。いやでも、実際、ハイライト引きまくり。
この手の「売るための方策」がお好きな方なら、たまらないのではないでしょうか?
ベクトル的に、この本が近いかな、と思ったら、本書内で紹介されていたという。
アイデアのちから
参考記事:【オススメ】「アイデアのちから」が予想以上に面白かった件(2008年11月25日)
……ちなみにこの本も、同じく「ビジネス書フェア」の対象作品ですから、1月4日までなら「50%OFF」でお求めいただけます(小声)。
◆ただ、紹介されている本、という意味では、下記目次にある第9章(#HOOK 9)の「思考回路をショートカットさせる」でのこちらの方が、扱い大きめ。
影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか
参考記事:【速報!】最強のビジネス本「影響力の武器」の[第二版]がいよいよ登場!!(2007年08月18日)
何たって、この本のテーマである「希少性、社会的証明、権威、返報性、好意、コミットメントと一貫性」のいずれもが、確かに「思考回路をショートカットさせる」ためにあるものですから、これは当然でしょう。
もっとも、本書は主に「モノを売る」分野にフォーカスしている分、具体性という意味では、こちらの本の方が近いカモ。
影響力の武器 実践編
参考記事:【スゴ本】「影響力の武器 実践編」がやっぱりスゴかった件(2009年06月10日)
要は、こういった「人の心理面」に興味のある方なら、本書は十二分に楽しめる次第です。
◆さらに登場する事例も多種多様。
比較的最近出た本ですから、その分、新しい広告が数多く収録されています。
たとえば上記ポイントの2番目の「性的な刺激」の効果については、類書でもおなじみですけど、この広告は知りませんでした。
20230407追記:Googleから指摘があり、年齢制限のある動画のため非公開にしました。
……約30秒の広告のうち後半15秒はキスしまくりという(赤面)。
とにかく「セ●クス」「食べ物」「顔」の3つの要素は、人間の原始的な脳(いわゆる「爬虫類脳」)に、ダイレクトに働きかけるワケです。
◆一方、今般初めて知ったのが、上記ポイントの5番目のお話。
これは俗に「生成効果」と呼ばれ、受け手に表面的なメッセージを与えるのではなく、自分の頭で考えさせることで、より記憶の刻まれ方を強くする、というものです。
肝心の「タラッタッタッター、I'm lovin' it」というジングルは、こんなものらしく。
「これ、日本では流れてないよな?」と思ったのですが、ググったらこんなに色々ありました(知らなんだ)。
いくつか見ていくと、「タラッタッタッター」のメロディを聴いただけで、確かに「I'm lovin' it」と頭の中で再生されてしまいますね……。
◆なお、本書は具体的な広告や商品を紹介している関係で、フルカラーの写真が数多く収録されています。
ですから、私は普段はKindle Paperwhiteで読むことが多いのですが、PCかFire等のタブレットを使用されるのがオススメ。
ただ、写真以外にも、多色使いで表を整理してくれているのはありがたいのですが、強調部分の色使いまで、章ごとに変えるのは、華やかとはいえ、ちとやりすぎではないかと。
……いや、私はKindleのハイライトは、いったん黄色で全部引いてから、ピンクや青で色分けしてるんですが、この強調の色とかぶって分かりにくかったんですが(ワガママw)。
まぁでも、このコンテンツでこの作りの本が、セール中なら新書並みのお値段で読めるというのは、やはりお買い得だと思います。
マーケティング好きなら一読をオススメ!
♯HOOKED 消費者心理学者が解き明かす「つい、買ってしまった。」の裏にあるマーケティングの技術 (T's BUSINESS DESIGN)
PART 1 HOOKを深く理解するために
PART 2 あなたのメッセージが無視されないための10のHOOK
STEP 01 気づかせる
#HOOK 1 プリミティブにする
#HOOK 2 感情をわしづかみにする
#HOOK 3 わたしのこと? と思わせる
#HOOK 4 サプライズを駆使する
STEP 02 考えさせる
#HOOK 5 ミステリー要素を加える
#HOOK 6 ハードルをとことん下げる
#HOOK 7 物語のなかを歩かせる
STEP 03 行動させる
#HOOK 8 記憶にこびりつかせる
#HOOK 9 思考回路をショートカットさせる
#HOOK 10 プライミング効果を駆使する
PART 3 10のHOOKを実践するためのヒント
おわりに
解説
【関連記事】
【速報!】最強のビジネス本「影響力の武器」の[第二版]がいよいよ登場!!(2007年08月18日)【オススメ】「アイデアのちから」が予想以上に面白かった件(2008年11月25日)
【ティッピング・ポイント】「急に売れ始めるにはワケがある」マルコム・グラッドウェル(2007年07月18日)
【フツウにスゴ本】「ザ・コピーライティング」ジョン・ケープルズ (著), 神田昌典 (監修)(2008年10月20日)
【スゴ本】「影響力の武器 実践編」がやっぱりスゴかった件(2009年06月10日)
【編集後記】
◆本日の日替わりセールから。イシューからはじめよ ― 知的生産の「シンプルな本質」
各方面から称賛された知的生産本の名著が、再び日替わりセールに登場!
下記の通り私は単行本でレビューしていますが、以前のセールの際にこのKindle版も入手しました。
相変わらず中古がそこそこのお値段なのに、「69%OFF」ということで、Kindle版が900円以上お買い得です!
参考記事:【問題解決】『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』安宅和人(2010年11月30日)
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「マーケティング」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
当ブログの一番人気!
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです