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2018年01月01日

【怒り?】『〈新版〉自分を支える心の技法』名越康文


〈新版〉自分を支える心の技法(小学館新書)
〈新版〉自分を支える心の技法(小学館新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのも、昨日に続いて、現在開催中である小学館「50%ポイント還元セール」からの1冊。

精神科医であり、テレビやラジオでおなじみの名越先生が、「怒り」の対処法について指南してくれています。

アマゾンの内容紹介から。
日本人は「怒りに甘い文化」を持っており、わけもなく怒りくるう怪獣や、怒声まじりに主張する政治家たちになぜかシンパシーを抱いてしまう。しかし、怒りにまかせたコミュニケーションはストレスの元になるだけ。家族関係、友人関係、仕事上の人間関係などで生じるストレスの多くは、不幸なコミュニケーション=対人関係に行き着く。テレビやラジオで人気の心理学者が、対人関係の難題をスッキリ解決する「心の技法」を解き明かす!名越流の8つのレッスンで生き方が変わる!

12月に出たばかりの新書であり、中古に送料を足すと定価を上回りますから、Kindle版が400円弱お買い得です!





nina mala / Arturo J. Paniagua


【ポイント】

■1.怒りで他者をコントロールする
 もちろん、本当のところは確認しようがありませんが、九分九厘、間違いないと思いませんか。赤ちゃんの「おぎゃー!」は「怒り」の表明である。(中略)
 この怒りを媒介にしたコミュニケーションが、僕らのコミュニケーションの最下層にあります。僕たちは人生の最初に、怒り、泣きわめくことによって、自分の不快を除去することを学ぶのです。怒ることによって、不快を快に変えることができるメカニズムを身につけ、さらに踏み込んでいうなら、「怒ることによって相手を動かす」「怒ることによって自分の不快を解消する」ことを念入りに学ぶのです。


■2.僕らは怒っている人に弱い
 ブログやツイッターの炎上、あるいは口論などを見てもそうです。文脈を超えて、過剰に怒っている人のほうが支持を得る、ということが往々にして起きる。冷静な議論よりも、怒っている人、感情的な人のほうが場の空気を支配してしまう傾向があります。
 この背景にはやはり、僕らが文化的に、解離的なあり方を好み、許容してきたことがあると思います。ある種の"トラウマ"を抱えている(ように見える)人が、抑圧された感情を爆発させる。そうした「解離的な怒り」を僕らの文化はもてはやしてきた部分があり、現実社会でも力を持つに至っています。実際、選挙前の街頭インタビューなどを見ると「(既存の社会体制に対して)怒っている人のほうが正義感が強そうで信頼できる」といった意見を目にすることも珍しくありません。


■3.「呪文」で怒りを消す
 特定の念仏に抵抗がある人のために、効果抜群の呪文をひとつ紹介しておきます。これは、スリランカ上座仏教のスマナサーラ長老が紹介されていた方法なのですが、怒りにとらわれているときに、「私は怒っている。私は怒っている。私は怒っている……」と5回ほど、心のなかでゆっくり唱えるというものです。そうすると、自分のなかにある怒りはほとんど消え、気持ちをリセットすることができる。これこそ「ばかばかしい」といわれそうですが、完全といっていいくらい消えるのです。
 どうしてこんな方法で怒りが消えるかといえば、「怒り」が心のなかで起こっている現象だからでしょう。たとえば、「とても厄介な人がいて、職場に行くのが嫌で嫌で仕方がない」という悩みがあったとします。この場合、「厄介な人」が事実だったとしても、そういう人がいることで「嫌で嫌で仕方がない」と思うのは、あくまで自分の心のなかで生じている「怒り」にすぎません。「一瞬で変わる」心のなかの出来事は、基本的にコントロール可能なのです。


■4.「明るさ」は自分でつくる 
 もう一度、肝に銘じておいていただきたいのは、「心の明るさは自分でつくる」ということです。怒りを消すのはほかの誰でもない、自分の仕事なのです。当たり前のことのようですが、これは非常に大事なポイントです。
 というのも、怒りを消すためには、「自分の怒りは他人のせい」という考えから、徹底的に抜け出しておく必要があるからです。怒りが僕ら人間にとってある種の宿命であること、怒りが僕らの心を疲れさせ、人間関係を壊していること、そこまでは受け入れることができたとしても、「自分の怒りは他人のせい」という考えから抜け出せなければ、怒りを消すことは難しいのです。
 怒りというのはあくまで自分の心のなかの問題です。「自分の怒りは、自分のせい」なのです。怒りは自分の心のなかで生じているもので、それ以上でも、以下でもありません。なぜ、このことを念入りに書いているかというと、「他人の力で自分を明るくしてもらう」よりも、「自分で明るくなる」ほうが、ずっと簡単に楽になれるからです。


■5.嫌いな人のために祈る
「嫌いな人のために祈る」のが難しければ、最初は自分や家族、親友たちの幸せを祈る。次に、付き合いは浅いが取り立てて悪感情も抱いていない人のことを祈ってみる。そして最後に、「もののついで」でもよいので、その人のことも祈ってみる。
 そんなふうに、だましだましでもかまわないので、「嫌いな人の幸せを真剣に祈る」ことができるようになると、だんだんとイメージのなかのその人が笑顔になってきます。そうすると、その人の前に立ったときに、苛立ったり、緊張したり、妙な心理状態になったりすることがなくなっていくのです。


【感想】

◆本書の「はじめに」には、対人関係の問題をどう解決するかの「結論」が書かれています。

著者の名越さんいわく、「結局のところ、自分の心に向き合うしかない」とのこと。

つまり、「相手の気持ちを考えるのではなく、自分自身の心のありようを変えていくこと」が大事なのだそうです。

中でも重要なのが、冒頭でも触れた「怒り」という感情。

本書はタイトルに「怒り」というフレーズは出てこないものの(帯にデカデカと載っていますが)、ほぼ全編を通して、その対処法が述べられています。


◆まず「目からウロコ」だったのが、上記ポイントの1番目にある、私たちは赤ちゃんのときから、「怒り」によって親を動かしていたという指摘。

赤ちゃんが「おぎゃー!」と泣いているのが、「怒り」という風には考えたことがありませんでしたが、言われてみると確かにそう見える気がします。

しかも、この「怒り」を向ける相手が、両親(や家族)なわけですから、「小さい頃から自分の大切な人に怒りをぶつける」のが当たり前として生きていく次第。

さらにこうした習慣が根底にあることから、私たちは上記ポイントの2番目にあるように、「解離的な怒り」(文脈なく怒る、感情を爆発させる怒り)に弱いです。

なお、こうした傾向あるのは、私たちの多くが、自分の心の中に「解離的な怒り」があるため、同じようなタイプの怒りに同調してしまうから、であるとのこと。

そう言われても「自分はそんなことはないわー」と私は思ったのですが、実はこの「解離的な怒り」の奥底にあるのは、あえてひと言で表現するなら、「私の言うことを聞いてほしい」「自分の思いどおりに動いてほしい」という愛情欲求なのだそうです。

そして、日頃封印している「愛情欲求」が、何かの拍子に顔を出すと「解離的な怒り」につながるそうですから、心当たりのある方はご留意ください。


◆そこで本書で紹介されているのが、「怒り」に対処するためのエクササイズの数々。

上記ポイントの3番目や5番目を初めとして、「深呼吸」や「シャワーを浴びる」といった方法が、手順とともに収録されています。

中でもユニークだったのが「木に抱きつく」というものw

名越さんは、最近これをオススメされているらしく、向き不向きはあるものの、効く人には効果絶大なのだそうです。

ちなみに、こうしたエクササイズは、どんな方法を選んでも「必ず毎日やる」ことが大事なのだとか。

まずは1週間、毎日続けてみて、それができたら10日、2週間と伸ばしていく。

それができれば、心の状態もだいぶ変わってくるようです。


◆なお、本書はタイトルに「〈新版〉」と着いているように、5年前に出たこの作品に大幅加筆したものだそう。

自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン
自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン

どのくらい加筆されたかは分かりかねるのですが、そちらの中古は送料を加味しても、今回のセール価格より数十円安くなります。

ただ、Kindle版がないため、Kindleで読みたい方は、今回の新書の方をお読みいただきたく。

もちろん、セール期間内である1月4日までにお求めください。


「怒り」と向き合うために!

〈新版〉自分を支える心の技法(小学館新書)
〈新版〉自分を支える心の技法(小学館新書)
レッスン1 「心」とは何か
レッスン2 人はなぜ怒るのか
レッスン3 怒れる人を礼賛する日本人
レッスン4 「怒り」の正体を知る
レッスン5 「心の基準点」をつくる
レッスン6 対人関係をストレスにしない
レッスン7 自分自身と対話する
レッスン8 「性格分類」を学んでストレス解消!


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【編集後記】

◆昨日ご紹介したこちらの作品ですが。

これからの世界をつくる仲間たちへ
これからの世界をつくる仲間たちへ

特に下記レビューがブクマされまくったり、RTされまくったワケではないのですが、想定外というか多くの方にお買い求めいただけた模様(多謝!)。

私だけじゃなくて、表紙やタイトルで勘違いされている方も結構いらっしゃると思いますので、まだの方はレビューを参考にご検討ください!

参考記事:【オススメ!】『これからの世界をつくる仲間たちへ』落合陽一(2017年12月31日)


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