2017年12月14日
【仕事術】『抵抗勢力との向き合い方』榊巻亮
抵抗勢力との向き合い方
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、まさに本日終了となる「日経BP社キャンペーン」の対象作品からの仕事術本。昨夜お送りした前日ランキングでもランク入りした人気作です。
アマゾンの内容紹介から。
抵抗には「4段階」の強さがある。「隠れた抵抗」を見逃すな。業務改革のプロが対処法を指南―プロジェクトの局面ごとによく出る抵抗の例、マズイ対処の仕方、良い対処の仕方などを体系立てて、かつ、実例を交えて解説。実際にプロジェクトで使って効果が高かった方法論だけを、変革プロジェクトを推進する立場にあるプロジェクトリーダーの視点でまとめた。
セール自体は今日までなので恐縮なのですが、このKindle版が実質800円弱お買い得です!
Facilitator Jost Wagner in Aktion / boellstiftung
【ポイント】
■1.抵抗が「自然の摂理」である3つの例●現状維持バイアス変化に対する強い動機や危機感がない場合、「まあ、今のままでいいか」と考えてしまう心理傾向を指す。未知のものや未体験のものを受け入れず、現状は現状のままでいたいと、誰もが自然に考えてしまう。●保有効果自分が現在所有しているものに高い価値を感じ、それを手放すことに強い抵抗を感じてしまう心理効果のこと。結果として新しいものを手にしたときに得られるメリットよりも、今、手にしているものを失うことによるデメリットを強く感じ取ってしまう。●損失回避性(プロスペクト理論)「利益」と「損失」では「損失」の方がより強く印象に残り、それを回避しようとする行動を取ること。言い換えると「とにかく損はしたくない」ということだ。新しいことにチャレンジして得られる「利益」と、被る可能性のある「損失」を比較すると、「損失」を重く捉える傾向にある。そのため、「利益」が相当に大きくない限り、行動を起こせなくなる。
■2.反論せずに、まず共感する
多くのリーダーは共感することがおろそかになっている。誰かが「この進め方で本当にあるべき姿を描けるのでしょうか? 何かモヤモヤするんです」と言ったとしよう。それに対して、リーダーがこんな返事をしてはダメだ。NG返答1「いや、それはちゃんと考慮しています」(中略)では、どうすればいいのか。やるべきことは極めてシンプルだ。こんなふうに一言添えて、共感の姿勢を示すだけでいい。OK返答1「ありがとうございます。普通はそう感じますよね。でも実はかなり考慮していまして」 (中略)まず発言に共感し、相手に感謝していることを言葉でしっかりと伝えるのだ。ささいな違いだが、心理的にはこれが本当に大きな違いになる。まとまっていなくても、間違っていても、とにかく発言すればいいんだと思ってもらえれば、兆候はグッと拾いやすくなる。
■3.正しく批判を受け取るための3つのポイント
●指摘事項を見える化して整理するバッと挙げられる指摘には、よくよく聞いてみると同じことを違う観点から話していたり、批判ではなく単に質問だったりするものも混在している。これらを見える化し、整理して本当の指摘事項を寄り分けていくことが第一歩である。●受け止めたことが伝わるようにする指摘をきちんとまとめておけば、「あ、この間のご指摘ですよね。ここに書き留めてあります」とか、「前回のご指摘はシステムを作る段階になったときに、しっかりと対応しようと思っています。忘れないように、ここに記録していますよ」と言えるようになる。これが心理的な安心感を生み出してくれる。●「"一緒"に解決する」モードに移行する指摘や不満を物理的に書き出してみること。「目に見えない批判」を「書き出された批判」にすることで物理的に存在させることが有効だ。面白いのだが、物理的に目に見えるようになると、「Aさんの批判」は「誰かが言った批判」になる。つまり、人物と批判が切り離され、独立して存在するようになる。こうなると「批判者vs推進者」の構図から、「(批判者+推進者)vs書き出された批判たち」という構図が作りやすくなるのだ。
■4.自分のことではなく、他人事として考えてもらう
今の立場から離れて考えてもらうために、こんな問い掛けをしてみるとよい。
「今この業界に新規参入する会社がゼロからこの仕事を設計するとして、やっぱり同じようなやり方をしますかね?」
これはなかなか効く。自社のしがらみをいったん取っ払って考えることができるので、現状維持から抜け出すキッカケが作りやすい。実際、「いやあ。だったら、こんな業務にはしないよな」と言ってくれることも多い。そうなればすかさず、「なるほど、どうしてでしょうか?」と掘り下げていけばよい。そのあとで大抵は「でも、ウチの現状では無理だな」と言われるが、話のキッカケとしてはよい。
他にも「ライバルのA社だったら、同じようにやりますかね?」「仮に組織の制約がなかったとしたら…」「仮にあなたが社長だったら…」など、仮定を無理やり置いて考えることを促すことはかなり有効だ。
■5.チームの主体性を引き出す「経営陣の7つの行動」
(1)「答え」を示すのではなく、「答えにたどり着くヒント」を示す
(2)思いの丈は最初に語る
(3)意思決定の場では「なぜそう考えたか」に焦点を当てる
(4)細かいことには目をつぶり、本質を押さえる
(5)チームの検討結果に対して、明確な意思決定をする
(6)プロジェクトで検討すべき範囲を示す
(7)より高く、より広い視点でアドバイスをする
(詳細は本書を)
【感想】
◆本書曰く、変革を起こそうとすると、抵抗は「必ず起きる」、とのこと。その理由は、自然の摂理とも言うべき、上記ポイントの1番目に掲げた「人間の心理」によるものです。
どれもこれも、バイアスや行動経済学を取り扱う本ではよく登場しますから、当ブログの読者さんにはおなじみかと。
要は「抵抗勢力」に反対されたからと言って、「何もわかっていない」「保守的だ」等々と、見下してはいけないワケです。
むしろ「必ず起こるもの」だと理解していれば、感情的にならず、冷静に対処できる次第。
◆そして、内容紹介にもあるように、抵抗には4つの段階があるのだそう。
レベルごとに列挙すると
レベル1:モヤモヤ/違和感となります。
レベル2:まっとうな指摘
レベル3:何が何でも反対
レベル4:潰しにかかる
実はレベル1の時点から対処することが大事で、ここでミソとなるのが、上記ポイントの2番目の「反論せずに、まず共感する」です。
ポイントでは中略しているように、実はNGパターンもOKも複数あるのですが、詳しくは本書にて。
こうした対応も、抵抗が「必ず起きる」と理解していれば、難しくはないと思います。
このレベル1では他にも、「共有すべきものは資料に落とす」というTIPSも見逃せないところかと。
◆その次のレベル2「まっとうな指摘」になってしまったら、まず行うべきは「指摘や不満を"明らかに"する」こと。
そのためには本書の第3章にある、上記ポイントの3番目に掲げた3つの点が重要になってきます。
この中では特に3番目の「指摘や不満を物理的に書き出してみる」というのがミソかな、と。
実際、言語化する時点で、問題の本質が明らかになりますし、上記で触れられているように、対立の構図が「批判者vs推進者」から、「(批判者+推進者)vs書き出された批判たち」へと変わるワケです。
実はこの第3章では、この「問題」が明らかになった後の、「解決」にまで踏み込んでいるのですが、そこで考えなくてはならないのが、「問題解決の6層構造」なるもの。
「現状、課題、原因、施策、効果/投資/リスク、目指す姿」の6つの層のうち、「どの層について議論しているのか」を常に意識して議論すると良いそです(詳細は本書を)。
◆また、さらに抵抗が強い場合(「とにかく反対!」等)には、もはや「客観的な判断力」は期待できません。
そういう場合の対処法も、本書では6つほど言及されており、その1つが上記ポイントの4番目の「自分のことではなく、他人事として考えてもらう」です。
確かに自分のことと違って、他人事だと客観性が取り戻せるもの。
そして、こうした強力な抵抗をした人たちも、いったん巻き込むことができれば、「最初は気に入らなかった鼻につくプロジェクト」から、「俺がアドバイスしてやっているプロジェクト」へと考え方が変わります。
なるほど、抵抗勢力をこうして味方につけていくことが、プロジェクト遂行には大事な事なんだな、と。
◆ただ、これはプロジェクトに限らず、日々の仕事でも言えることです。
上司にOKをもらったり、多部門と協同して行う仕事であれば、本書のTIPSはどれも有益なハズ。
また、私のような自営業でも、クライアントに何かしらお願いすることがある際には、色々と使えそうだと感じました。
さらに本書は、物語形式ではないものの、実際にあったエピソードがふんだんに織り込まれているのが、ポイント高し。
強いていちゃもんをつけるなら、数式がないんですから、縦書き形式にして欲しかったな、と。←ワガママw
プロジェクトや業務変革を行う方なら必読です!
抵抗勢力との向き合い方
第1章 抵抗とは何か 抵抗は至るところで発生する
第2章 計画策定期 隠れた抵抗に対応する
第3章 計画策定期 表立った抵抗に対応する
第4章 施策実行期 サボタージュに対応する
第5章 立ち上げ期 「立ち上げ期」の重要性を知る
第6章 立ち上げ期 納得度が高いプロジェクトゴールを定める
第7章 立ち上げ期 プロジェクトチームの熱量を上げる
第8章 立ち上げ期 経営陣を味方に付ける
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【編集後記】
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テーマ的には当ブログでも気になる方はいらっしゃいそうな?
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ご声援ありがとうございました!
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