2017年12月13日
【お金】『新しい時代のお金の教科書』山口揚平

新しい時代のお金の教科書 (ちくまプリマー新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった1冊。よくある「お金本」なのかと思いきや、かなり大胆な見解を述べられており、勉強になりました。
アマゾンの内容紹介から。
お金の始まりは物々交換ではなかった?!仮想通貨、時間通貨…お金とはそもそも何なのか?どんな仕組みなのか?目まぐるしく変化する今こそ知っておきたいお金の話。
現時点で中古にはプレミアが付いていますから、Kindle版がオススメです!

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【ポイント】
■1.お金とは何か?お金を定義するならば、「譲渡可能な信用」あるいは「外部化された信用」ということになります。でもこの定義はちょっと難しいので説明が必要かもしれません。(中略)
まず「信用の母体」があります。母体は現在は国ですが、鉱物でも個人でも、はたまたビルや馬でもいいのです。将来はそうなるでしょう。いずれにせよその母体の価値をみんなが認知し信用している必要があります。そしてその信用の母体が母体の外に出したもの、それがお金です。このお金は信用を内部に持ちながらも匿名の存在として、みんなの間で取引に使われるルールとなるのです。これが基本的なお金の仕組みです。
■2.あらゆるモノがインフラ化(無償化・低コスト化)する
以上のものをまとめると、あらゆるモノがインフラ化(無償化・低コスト化)する方向にあるということが言えます。
これはすなわち、モノビジネスは終わりを告げているということに他なりません。生存欲求を満たす財(モノ)については、一部の大規模企業がその提供を独占していきます。そして上記の状況に加えデフレ状況下において生活物資が安価に抑えられている状況にあります。実際、政府の金融政策以上に、事業家による効率化とイノベーションの速度は速く、原材料の調達や消費者同士のシェアリングエコノミーを含め、モノの価格は低下を続けて限界費用を限りなくゼロに近づけていくでしょう。そしてメルカリのような二次市場(中古)を活性化させる企業がますます世界からモノの無駄な製造を減らしてゆくでしょう。
■3.仮想通貨の短期的隆盛
今世紀主流になるのはビットコインを中心とした無国籍通貨であるというように思われていますが、私は懐疑的です。各国の中央銀行が今のようにお金を刷り続けていればいずれまたその金融政策は失敗を繰り返すでしょう。その時には代替手段である仮想通貨に注目が集まります。しかしその注目は国家の凋落と信用管理の失敗に呼応した相対的なパワーであり本質的な意味で仮想通貨の信用を前提としたものではありません。なぜなら仮想通貨は、第2章で述べた貨幣の二大要素の1つである信用の担保が難しいからです。これまでの法定通貨を発行していた国家は世界に約190しかありません。GDPや徴税権の下支えもありました。したがって発行できる通貨も限度がありました。一方で無国籍通貨はビットコイン(Bitcoin)以外にもすでに350くらいは存在していると言われます。乱立しやがてそのほとんどすべてが淘汰されてゆくでしょう。
■4.雇用や労働から人々は離れ始めて時間を大切にする
これまでの経済は「労働の商品化」を促し、社会規範として勤労、法令として労働の権利というラベル付けを行うことで、仕事(職業)を、社会の内部に取り込み雇用の体制を促してきました。朝から晩まで汗水たらして働くことが尊いという価値感でした。
仕事の形は、より一層、近代がその秩序維持の中で創り上げてきた「雇用」から離れてゆきます。つまり、会社に所属し、非生産的な時間を固定的に販売するのでなく、その提供する価値の対価を多様な契約(コントラクト)形態によって提供し、希少性の高い時間は、心身の回復と人間同士の信頼関係の構築、時間価値の増幅のための学びや投資に充てられることになるでしょう。
■5.お金について意識するべき10の習慣(抜粋)
●購買意思決定の「1,2,3ルール」を意識しよう「1」は、一度に買うのはたった1つであり、「2」は、購入判断は1回目でせず2回目以降にして、冷静に考察する時間を作る、「3」は、3つ以上のものを「比較」せよ、というルールです。この「1,2.3ルール」を遵守するとまず無駄な出費が減ります。●Don't make money, Create Credit(カネを稼ぐより、信用を創る。)お金とは、信用を数値化したものに過ぎない。お金を稼ぐことでなく、信用を創ることに注力しましょう。●お金でお金を増やすことはやめようお金はアミノ酸と同様、それ単体では存在しえません。「想い」や行動と結びついた時に価値を生じます。お金単体を増やすことを考えず、それを価値創造の1要素として扱いましょう。●価値を生み出し貢献してゆくギバーとして生きよう仕事とは才能を貢献に変換する作業です。自分の個性を再発見し、「才能」と「貢献」に焦点を当て続けていきましょう。(詳細は本書を)
【感想】
◆流し読みで済ますのが難しい1冊でした。まず第1章では、お金の歴史が解説されるのですが、そこで知ったのが、「お金が物々交換から始まった」のは嘘だと言われているというお話。
有力な説の1つが、ミクロネシアにあるヤップ島の巨大な石貨「フェイ」がその起源だというものです。
石貨 (ヤップ島) - Wikipedia
ただ、そこで重要なのが、石貨自体に価値があるのではなくて、そこに記帳されたやりとりの記録(ナマコ3匹とかヤシ1個等々)が大事だということ。
これはすなわち、ビットコインをはじめとした仮想通貨や、その元となっているブロックチェーンの「分散台帳システム」に通じるものです。
……まさか仮想通貨の考え方が、石貨と同じようなものだったとは。
◆その仮想通貨絡みで言及されているのが、上記ポイントの3番目。
確かに仮想通貨は、国家が発行しているワケではありませんから、信用の担保は難しいです。
山口さんの考えでは、上記のように「乱立しやがてそのほとんどすべてが淘汰されてゆく」とのこと。
ただ、それがいつかが分からないからこそ、今現在バブル状態になっているんですよね……。
今そこにある「仮想通貨バブル」という危機 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
この「信用さえあれば、貨幣が発行できる」という考え方は、一時話題となった「Valu」も同じです。
VALU - Wikipedia
そう考えると、仮想通貨がいつか破綻する、というのも分かる気が。
◆ところで、この仮想通貨バブルが崩壊した後、お金がどのような方向に向かうかが、本書の第3章では明らかにされています。
1つは「時間主義経済」で、「ほとんどの産業が人間の時間を主要な資源とする産業となり時間が通貨そのものとなって流通する」というもの。
上記ポイントの4番目は、この「時間主義経済」の解説の一部になります。
もう1つは「記帳主義経済」で、「モノを対象としながらもそれをお金を使わないで流通させよう」というもの(ブロックチェーン技術等はここに該当)。
これだけでも、今ひとつピンと来ないかもしれませんが、その先にある「信用主義経済」は、もっと漠然としたものになります。
山口さんいわく「人々が求めるものが信用であり、それをやり取りするのも信用である」とのことなのですが、スイマセン、私にはちょっとイメージできませんでした。
一応本書には、それぞれの経済について解説されていますので、詳細はそちらにてご確認を。
◆それに比べると、理解しやすいのが上記ポイントの5番目にある「お金について意識するべき10の習慣」でしょうか。
ぶっちゃけ今回、本書全体を理解できたとは言い難かったので、この部分だけで記事1本書こうかとも思ったのですが、さすがに自重した次第。
注意したいのは、この「10の習慣」は本書をまとめたものではないということで、結局リアル書店でここだけ読んでも全体像はつかめません。
ちなみに本書は新書だと200ページない作品なのですが、読むのに結構時間がかかりましたので、一応ご留意を。
……というか、「ちくまプリマー新書」って、対象年齢が低めじゃなかったでしたっけ?
私は最低でも、もう1回は読まないといけない模様(大汗)。
「これからのお金」を理解するために!

新しい時代のお金の教科書 (ちくまプリマー新書)
はじめに
第1章 ピカソがお金持ちだったわけ――お金の歴史
第2章 お金の正体を知ればもっと自由になれる――お金の本質
第3章 お金を中心に大きな転換が起こっている――お金の変化
第4章 お金がなくなるかもしれない――お金の未来
第5章 21世紀のお金との正しい付き合い方
おわりに
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【オススメ】『評価と贈与の経済学』内田 樹,岡田斗司夫 FREEex(2013年02月28日)
【幸せ】『LESS IS MORE 自由に生きるために、幸せについて考えてみた。』本田直之(2012年06月15日)
【編集後記】
◆最近アマゾンで購入したナッツがこちら。
小分け4種 ミックスナッツ 1.05kg (35gx30袋) 箱入り 産地直輸入 無塩 無添加 食物油不使用 (生くるみ30% アーモンド35% カシューナッツ15% 生マカダミア20%)
無塩なので、最初は文字通り味気なかったのですが、最近ではナッツ本来の甘さが感じられるようになりました。
小分けタイプですから、湿気を気にすることもなく、ムスコの塾にもおやつ代わりに持たせています。
また、今まで買っていた商品よりも、グラム当たりのお値段も低く、結構お買い得なヨカンw

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