2017年11月17日
【知的生産術】『知的戦闘力を高める 独学の技法』山口 周
知的戦闘力を高める 独学の技法
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも一番人気だった「知的生産術本」。著者である山口 周さんの過去の著作は、当ブログにおいてどれも人気でしたから、本書への期待が高いのも分かります。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
本書は、限られた時間の中で、いかに費用対効果の高い「戦う武器」を手に入れ、実戦で手足のように使いこなすかについて、「戦略」「インプット」「抽象化・構造化」「ストック」の4つのステップから1冊に体系化する。
お飾りの知的武装ではなく、知識を本当に使える武器へと変える、超実践的な手法を紹介。この世をしたたかに生き抜くための、最強の知的生産術。
なお、版元のダイヤモンド社さんは、めったにセールを行わないので、1割引きでもお得なKindle版がオススメです!
Single study rooms / ocegep
【ポイント】
■1.独学を効果的に行う4つのモジュール(1)戦略どのようなテーマについて知的戦闘力を高めようとしているのか、その方向性を考えること(2)インプット戦略の方向性に基づいて、本やその他の情報ソースから情報をインプットすること(3)抽象化・構造化インプットした知識を抽象化したり、他のものと結びつけたりすることで、自分なりのユニークな示唆・洞察・気づきを生み出すこと(4)ストック獲得したた知識と、抽象化・構造化によって得られた示唆や洞察をセットとして保存し、必要に応じて引き出せるように整理しておくこと
■2.戦略の設定は「テーマが主、ジャンルが従」で
これは独学を行うにあたって大変重要なポイントなのですが、不思議なことに世の中でほとんど指摘している人がいないので、よく注意してください。
なにが言いたいのかというと、独学をするとなると、では「哲学を学ぶ」とか「歴史を学ぶ」とかといったように、ジャンルの設定から入ってしまいがちなのですが、大事なのはむしろ、自分が追求したい「テーマ」に方向性を持つということです。
テーマとは、自分が追求したい「論点」のことです。(中略)
一方、ジャンルとは「心理学」や「歴史」や「文学」など、コンテンツの分類科目のことです。(中略)
独学の戦略を立てるというと、「どのジャンルを学ぶか」と考えてしまいがちですが、これをやってしまうといつまでたっても「知的戦闘カ」は上がりません。なぜかというと、ジャンルに沿って勉強をするということは、すでに誰かが体系化した知識の枠組みに沿って勉強するということですから、その人ならではの洞察や示唆が生まれにくいのです。
■3.まったく違う「読み方」が求められるビジネス書と教養書
まず、ビジネス書の読み方について指摘すれば、基本は乱発される安易系を避けて、できるだけ名著を押さえ、読書ノートは作らない。狭く深く読むのがビジネス書ということになります。(中略)
一方で、リベラルアーツ関連の書籍については、先ほどのビジネス書と真逆になります。定番・名著と言われるものが確定しているという点では同じですが、ジャンルが多岐にわたるため、こういうた定番・名著をすべて読むわけにもいきません。
また、その内容は必ずしもビジネスへの示唆に直結していないため、後でどんなかたちでビジネスの役に立つのか、いま現時点ではよくわからないことも多い。そのため、後で立ち返って考えたり、参照したりするための読書ノートの作成が必須になるわけです。
■4.抽象化の具体的プロセス
たとえば蟻塚の例を挙げれば、「働き蟻ばかりの蟻塚よりも、多少サボり蟻が交ざっている蟻塚の方が生存確率が高い」というのが、蟻塚において固有に観察された事象であるとき、これを抽象化すれば、「ある生産システム=Aを想定したとき、このシステムの生存確率の最大値は、稼働率100%のところより低いところにある」という仮説Bが得られます。
そしてこの仮説Bの持ち主は、たとえば組織設計の際、あるいはプロジェクトチーム組成の際、あるいは個人的な勉強スケジュールの立案の際、この仮説Bに基づいて稼働率に若干余裕を持たせた組織を、あるいはチームを、あるいはスケジュールを組むでしょう。
これが独学によって得た知識を「抽象化・構造化」し、自分の意思決定に反映させる、ということです。
■5.本のアンダーラインは「事実」「示唆」「行動」に引く
さて、アンダーラインを引くのはいいとして、どういう箇所に引けばいいのでしようか?
基本的には「直感的に面白いと思った箇所」がその対象なのですが、もう少し噛み砕いて指摘すれば、次の3つがアンダーラインを引くべき箇所になります。(1)後で参照することになりそうな興味深い「事実」ここでポイントになるのが、自分がいいと思った情報、共感したり納得できる情報だけでなく、共感できない情報、反感を覚える情報にもアンダーラインを引いておく、ということです。
(2)興味深い事実から得られる「洞察」や「示唆」
(3)洞察や示唆から得られる「行動」の指針
なぜだと思いますか? 共感できない、反感を覚えるということは、その情報が自分の価値観や思考を映し出す反射鏡になるからです。
【感想】
◆予想どおり、なかなかに濃厚な1冊でした。ただし「独学」という言葉から想像していたものとやや違う点もあり、上記ポイントはその辺も含めて抜き出しております。
まずは上記ポイントの1番目の「モジュール」について。
山口さんいわく、「独学というのは、この4つのモジュールからなるシステムである」とのこと。
一方で「独学」をテーマにした類書のほとんどが、「独学術」というよりも、むしろ「読書術」や「図書館利用術」である、と指摘されています。
要は、このモジュールにおける「インプット」の部分にしかフォーカスしていない、ということ。
なるほど、言われてみれば「自分で本を読む」以上の独学法については、私自身あまり記憶にありません。
◆もちろんインプットも大事ですけど、そのインプットを行う前に、まずは「戦略」を定める必要があります。
上記ポイントの2番目では、戦略の設定の際に注意すべきことを挙げましたが、端折り過ぎて「テーマ」とは何ぞや、という部分が分かりにくかったかもしれません。
具体的には、たとえば山口さんの場合であれば、「イノベーションが起こる組織とはどのようなものか」ですとか「キリスト教は悩めるビジネスパーソンを救えるか」といったものなのだそう。
これらのテーマに対して、ジャンルを絞ってしまう(たとえば前者の場合なら「組織論」等)と、新たな気づきは得られません。
ですから逆に、さまざまなジャンルからインプットをすることで、示唆を得ている次第。
具体的には「歴史文学」、「政治哲学」、「映画」、「動物行動学」等々。
山口さんの場合、子どもを対象にした図鑑シリーズの「発明・発見」の巻からでも、イノベーションを興す人材や組織について示唆を得られたのだとか。
◆上記の「戦略」のお話は本書の第1章からなのですが、続く第2章ではいよいよ「インプット」の技法について。
上記ポイントの3番目では、一番「目からウロコ」だった、2種類の本の読み方を挙げてみました。
私自身の感覚からすると、「ビジネス書」で読書ノートを作る人は結構いるものの、「教養書」で読書ノートを作る人はあまりいない感じが。
しかし山口さんによると、これは逆であり、教養書で読書ノートを作らないと、その本から引き出せる知的成果は大幅に小さくなる、と言われています。
さらにもう1点言われていたのが、「インプットの時期」について。
よく言われる「アウトプットが必要になったらインプットすればいい」というのは誤りであり、むしろアウトプットをもとめられていない時期に「大量かつ無節操なインプットをしておく」ことこそが大事なのだそうです。
◆また、第3章では「抽象化と構造化」について言及。
ここでは上記ポイントの4番目で具体例を挙げましたが、要はこうした作業を行わないと、ビジネスの世界における「生きた知恵」にならないワケです。
そしてまさにこの「抽象化と構造化」こそが、本書のタイトルにもある「知的戦闘力を高める」ということ。
ただしこのスキルは、山口さんいわく「場数を踏むしかない」とのことなので、本書の他の事例等も参考にしていただき、文字通り「独学」でブラッシュアップしてください。
個人的には、この本あたりは参考になると思うのですが……。
具体と抽象
参考記事:【抽象化?】『具体と抽象』細谷 功(2017年04月03日)
知らぬ間に単行本が絶版となって(?)、中古に4000円以上のプレミアが付いていますから、上記ではKindle版をご紹介しております。
◆こうした「知的ストック」の収納方法については、続く第4章をご参考のこと。
上記ポイントの5番目では、アンダーラインの引き方をご紹介していますが、本書ではその後の「選り抜き法」や「転記法」等についても指南されています。
また、最後の第5章では、山口さんセレクトによる11ジャンルの99冊を紹介!
残念ながら当ブログでご紹介済みなのは、この本だけだったのですが……。
影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか
参考記事:【速報】『影響力の武器[第三版]』がいよいよ登場!(2014年06月09日)
当ブログの読者の皆さまにおかれましては、各ジャンルごとの解説をじっくり読んだ上で、残りの98冊を吟味してみてください(ただし個々の本の解説はありません)。
知的生産力を高める1冊!
知的戦闘力を高める 独学の技法
序章 知的戦闘力をどう上げるか?――知的生産を最大化する独学のメカニズム
第1章 戦う武器をどう集めるか?――限られた時間で自分の価値を高める
第2章 生産性の高いインプットの技法――ゴミを食べずにアウトプットを極大化する
第3章 知識を使える武器に変える――本質を掴み生きた知恵に変換する
第4章 創造性を高める知的生産システム――知的ストックの貯蔵法・活用法
第5章 なぜ教養が「知の武器」になるのか?――戦闘力を高めるリベラルアーツの11ジャンルと99冊
【関連記事】
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【オススメ!】『外資系コンサルのスライド作成術―図解表現23のテクニック』山口 周(2012年10月22日)
【抽象化?】『具体と抽象』細谷 功(2017年04月03日)
【編集後記】
◆上記の99冊の中に、丁度カドカワさんでセールとなっている作品があったので、そちらをご紹介。新訳 弓と禅 付・「武士道的な弓道」講演録 ビギナーズ 日本の思想 (角川ソフィア文庫)
「60%OFF」とお値打ち価格ゆえ、送料加算した中古よりも、Kindle版が300円以上お買い得となっています!
ご声援ありがとうございました!
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