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2017年10月09日

【怒り】『科学の知恵 怒りを鎮める うまく謝る』川合伸幸


科学の知恵 怒りを鎮める うまく謝る (講談社現代新書)
科学の知恵 怒りを鎮める うまく謝る (講談社現代新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事で、個人的に注目していた「科学的自己啓発書」。

著者の川合さんの専攻は「比較認知科学・認知科学・実験心理学」ということもあって、エビデンス満載のアプローチがなされています。

アマゾンの内容紹介から。
現代人必読!なぜ謝罪はうまく伝わらないのか?怒り、謝罪、仕返し、赦しにまつわるサイエンス!ビジネス、家庭を円滑にするためのヒント。

なお、Kindle版なら数十円とはいえ、お買い得です!





Angry Kitty / CJ Sorg


【ポイント】

■1.寝転がると脳は怒りを感じない
 実験参加者の半数は普通にイスに座ってひどい評価のついた採点結果を聞きました。残りの半数は、リクライニングシートをめいっぱい倒して、ほとんど寝転んだような状態で同じ評価のついた採点結果を聞きました。
 その結果、普通にイスに座って採点結果を聞いた参加者は、実験前に測定したときにくらべて、前頭前野の左半球の脳の活動(脳波のアルファ波と呼ばれる帯域の電位)が強まっており、主観的な怒りも強くなっていました。
 それに対して、仰向けの姿勢で侮辱的な採点結果を聞いた参加者は、実験前と同じように左半球前頭前野の脳波は活性化しませんでした。


■2.仲直りするための5つのステップ
 夫婦や職場の人間関係について研究するワイドナー大学のショーリーは、「関係を修復するうえでもっとも大切なのは、人間関係においてもめごとが発生するのは当たり前と理解することです。言い争いを避けるのではなく、うまく対処するほうが建設的でよいでしょう」とアドバイスしています。ショーリーは仲直りするための5つのステップを挙げています。
・ケンカを収めようとして安易に謝らないで、お互いに怒りが鎮まるまで待つこと
・自分が正しいとの思い込みを捨てること
・相手の立場に立って考えてみると、他の人はどう感じると思っているかを話してみること
・相手が感情をぶつけてくることを攻撃だと考えないこと
・自分は態度を変える意思があることを示すこと


■3.良い謝罪の8ヵ条
・自責の念の表出(悔恨)
・責任の自覚(責任)
・補償の申し出(解決策の具体的な提案、補償)
・そのような行為をするに到った理由の説明(説明)
・今後は適切に振る舞うことの約束(改善の誓い)
・被害者を傷つけたり不快にさせたことの認識(被害者への労り)
・自分の行為が不適切であったことを認識(不適切な行為の認識)
・赦しを請う(容赦の懇願)

(詳細は本書を)


■4.怒っている自分を傍観者として見れば、怒りは抑えられる
 ブッシュマンたちは「自己距離化」を重視していますが、じつはさらに重要なのは「再評価」です。「再評価」とは、自分に生じた出来事を「別の視点で考え直すこと」です。「自己距離化」が重要なのは、当事者ではなく傍観者として見つめ直すことを促すからです。そうすることで、ひどいことをされた被害者としての立場だけでなく、もう少し広い客観的な視点から自分の身に起きたことを冷静に考えられるのです。
 この自己距離化による再評価は、不快な経験をもう一度経験させずに思い返すための有効な方法とされています。ある意味で記憶を書き換えるともいえるかもしれません。同じ視点で腹立たしいことをふりかえれば、「思い出し怒り」が増幅しますが、自己距離化による再評価で、起こった出来事を違った視点から見た出来事として記憶すれば、怒りは再燃しないのです。


■5.血糖値があがると攻撃性が低下する
 ブッシュマンたちは、後で説明するセルフ・コントロールを機能させるには脳で大量のエネルギー(グルコース)が必要になると考えました。血中のグルコースが少ないと攻撃的になるのではないか、という予測を立てて、実験参加者の半数にグルコース(砂糖)の入ったレモネード味の飲料を、残りの半数にはグルコースの入っていない同じ飲料(砂糖の代替物が入ったもの)を飲ませて、体内に取り込まれた8分後に、この研究室でよく用いられる攻撃性を測定するボタンの早押しゲームをおこなわせました。その結果、グルコースの入った飲料を飲んだ参加者のほうが攻撃性が少なかったのです。


【感想】

◆本書は怒りや謝罪、赦しといったテーマについて多角的に解説しているのですが、上記ポイントでは私たちの「実生活に活かせる」TIPSを中心に抜き出しました。

結果、いくつか興味深いお話を割愛しております。

たとえば、身体的な動作によって「意識的に怒りを感じる方法」。

具体的には「右手を強く握る」ことであり、これは「脳が身体の状態を誤認識する」からになります。

ちなみに「右手」を握るのは、「怒りを感じると左側の大脳半球が活性化」するためで、実験では「左手」と比較した上で、「右手を強く握る」ことの効能を実証しているのですが、TIPS的に使い道が思い浮かばないという。


◆同じ身体的な動作でも、「怒りを抑える」TIPSなら逆に大歓迎、ということで挙げたのが、上記ポイントの1番目の「寝転がる」。

これはテキサスA&M大学のハーモン゠ジョーンズたちの実験によって2009年に確認されたものです。

ただし、通常の状態であっても、寝転がった状態であっても、侮辱的な採点結果を聞いた参加者たちは、どちらも「強い不快感」を覚えていたことには変わりないそう。

要は、寝転んだ状態だと、相手につっかかろうとする気持ちが弱まるので、脳の活動として表れなかったらしいです。

なお、NHKの朝の情報番組の取材が入った際に、実際にアナウンサーに対して実験してみたところ、「やらせではないだろうか」と思うくらいのデータが得られたとのことw

ググってみたら、どうも「あさイチ」だったようですね。

怒りを感じたらこうすると解消できるらしい、という方法がなんかシュール過ぎる「これや」「面白いな」 - Togetterまとめ


◆同じく、「怒りを抑える」TIPSなのが、上記ポイントの4番目と5番目。

まずポイントの4番目の「傍観者として見る」というのは、上記ポイントの2番目にもある「相手の立場に立って考えてみると、他の人はどう感じると思っているかを話してみる」ということにもつながってきます。

ただ、もっと簡単なのがポイントの5番目の「血糖値を上げる」ことでしょう。

これはオハイオ州立大学のブッシュマンらによって、2011年に確認されたもので、逆に私たちが普段、空腹時にイライラするのは、血糖値が低いからだと考えられます。

ちなみに上記の「あさイチ」では、主婦の方に「イライラしたら砂糖入りの甘い紅茶を飲んで、ソファーで仰向けに寝転んでください」と依頼したら、「ご自身でも驚かれるくらい、イライラしなかった」とのこと。

これなどは、ポイントの1番目と5番目の「合わせ技」であり、より一層効果があったのかもしれませんね。


◆一方、自分が自分の怒りではなく、相手の怒りを抑えるTIPSなのが、上記ポイントの3番目です。

最近、企業が不祥事によって謝罪するケースを良く目にしますが、基本的にはこの8ヵ条を守っていれば大丈夫。

その際「核」となるのは、最初の3ヵ条で、付加的な要素が残りの5ヵ条なのだとか。

また、上記では割愛しましたが「悪い謝罪の4つの要素」なるものもあり、具体的には以下の4つになります。
・不快な行動や失言を正当化する(正当化)
・被害者を批難する(逆ギレ)
・弁解をする(弁解)
・事態の最小化をはかる(矮小化:たとえば、「ほんの冗談だった」と言うなど)
公私ともども、謝罪する際にはご留意ください。


◆実は今回、上記でポイントとして挙げたのは、第1章から第4章までの部分からであり、残りの2つの章はまるっと割愛しています。

まず第5章は「仕返しと罰」ということで、「怒り」によって、具体的な「仕返し」にまで踏み込んでいますから、話としては興味深いものの、できればその前で踏みとどまっていただきたく。

一方第6章の「赦し」では、「何かされた」場合でも「仕返し」せずに「赦す」ことで、得られるものがあることを指摘しています。

実際、赦したほうが、心身の健康にはよいことが、実証的研究によって確認されている模様。

巻末には、参考文献のエビデンスがびっしり掲載されていますし、「怒り」の仕組みからその対処法まで幅広く学べる本書は、なかなか掘り出しものだと思います。


科学的に「怒り」に対処するために読むべき1冊!

科学の知恵 怒りを鎮める うまく謝る (講談社現代新書)
科学の知恵 怒りを鎮める うまく謝る (講談社現代新書)
第1章 怒りのメカニズム
第2章 関係の修復――怒った人は相手に謝ってほしいのではない
第3章 効果的な謝罪
第4章 怒りの抑え方
第5章 仕返しと罰
第6章 赦し


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【編集後記】

◆昨日のSBクリエイティブさんのセールで人気だったのは、この3冊でした(順不同)。

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一応ご参考まで。


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