2017年09月15日
【オススメ】『人を操る説得術 ──7ステップで誰でもあなたの思いのまま』ニック・コレンダ

人を操る説得術 ──7ステップで誰でもあなたの思いのまま
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも、注目していたコミュニケーション本。単行本の発売は明日16日なのですが、一足先にリリースされたこのKindle版が「26%OFF」と大変お得なので、さっそく読んでみた次第です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
読心術の第一人者であり心理学研究者でもあり、マーケティングを学んだ経験もある著者は、膨大な数の学術文献を参照し、さまざまな実験によって証明された原理を用いて、自らのメソッドを構築した。つまり、これらの戦術には学術的な裏付けがある。
本書で紹介する戦術を有効に活用すれば、思考だけでなく、感情も、そして行動も、思いのままにコントロールできる。ただし、これらの戦術は非常に強力なため、けっして悪用しないこと。
本書の冒頭で、ロバート・チャルディーニやダニエル・カーネマン、ダン・アリエリー等々に謝辞を述べているだけあって、彼らの本がお好きな方なら、楽しめることウケアイな1冊です!

PA: Working America Voter ID & Persuasion / AFL-CIO Field
【ポイント】
■1.キーワードを潜ませることで、考えをプライミングするぼくはいま、「マインド・リーダー」としてパフォーマンスをしているが、「超自然的現象」といったものは一切使っていない。実際、「心を読む」にはたった3つの方法しかない。次のどれかだ。(1)マジックあるいはインチキ(手先の早業など)によって、相手が考えていることがわかると見せかける。ぼくが使うのはおおむね3番目の方法だが、効果を高めるために1番目と2番目の方法も使うことがある。
(2)ボディランゲージや言葉以外の行動、そのほか一般的なヒントから、相手の考えていることを推測する。
(3)特定のことを考えるように無意識のうちにプライミングして、それから"心を読む"。
3番目の方法を使って、無意識のうちに相手に何か(「イースターのウサギ」でも「オレンジ色」でも「ケーキ」でも何でもいい)を考えさせるときには、特定の考えをプライムさせるキーワードをこっそりセリフのなかに忍ばせておく。この章の冒頭で、数字の「7」を思い浮かばせる例を示した。もうひとつ例を挙げてみたい。ここでも、いちばんはじめに思い浮かんだものを答えてもらいたい。畑の野菜をひとつ思い浮かべてほしい。
■2.客にお世辞を言うだけでチップが多くなる
あなたがウェイターかウェイトレスなら、客のメニューの選び方にちょっとしたお世辞を言うだけで(たとえば、「わたしも昨日それを食べたんですけれども、とてもおいしかったですよ。いいものを選びましたね!」)効果がある。このセリフがそれほど強力なのには、とりわけ3つの理由がある。(1)食事に対して高い期待をもたせることができる。期待が高まっているので、客は食事をより好意的にとらえるようになる(3章で説明した)。その結果、食事全体が楽しくなり、チップの額も大きくなるかもしれない。
(2)簡単なお世辞を言うことで、相互性のシーソーを客のほうに傾け、お返しをしなくてはならないという強いプレッシャーを与える。チップをたっぷり置いていくのが、いちばんのお返しだ。
(3)自分も同じものを食べたと告げることで、共通性が明かされる。次章で説明するように、「偶然の類似性」があるとわかると、あなたが好かれる可能性は高くなり、多くのチップをもらえるチャンスも増える。
■3.「社会的プレッシャー」で売上を伸ばす
あなたはスーパーマーケットの店長で、「アンカリング」、「制限」(13章で取り上げる)、「社会的プレッシャー」を使って、ある商品の売り上げを伸ばそうと思い立った。キャンベル・スープの缶詰が置いてある棚の近くに、あなたはこんな貼り紙をした。「おひとりさま12個まで」
何の変哲もない貼り紙だが、このメッセージには強力なパンチが含まれている。理由はいくつかある。第一に、12という数字がアンカーとなり、客がその数字へと近づいていこうとする。ひとつかふたつだけではなく、このアンカーに影響を受けて、よりたくさん買うようになる。第二に、13章で説明するように、この缶詰を購入する力を制限することで、「心理的リアクタンス」を呼び起こし、買いたい気持ちをさらに強くさせることができる。第三に、掲示によってこの缶詰スープが人気商品だと示唆して社会的プレッシャーを与えることができる(人気商品でなければ、購入できる数を店が制限したりはしないはずだ)。
■4.興奮に別のラベルを貼ることで不安を和らげる
強盗にあうのと宝くじに当たるのは、性質がかなり異なるシナリオだが、いずれも同じような身体反応を引き起こす。シャクターとシンガーによると、生物学的な反応が同じであるにもかかわらず、ふたつのシナリオから生じる感情が非常に異なるのは、われわれが環境や状況を考慮に入れて興奮に名前をつけるからだ。強盗にあったときには、強盗にあったと認識して興奮に「恐怖」というラベルを貼る。宝くじに当たると、大金を手にしたと認識して、興奮に「喜び」というラベルを貼る。今度あなたが恐れを感じるような状況(人前で話しをする場面など)に直面したら、興奮に別のラベルを貼ることで不安を和らげることができる。たとえば、この興奮はわくわく感だと考えればいいわけだ。
■5.Tシャツをネット販売するなら3段階で
第一段階では、買いたいTシャツの種類を選んでもらう。半袖か長袖かなどだ。次に、色を選ばせる。そして第三段階がデザインだ。絵がプリントされたTシャツか運動用かなどだ。
この3つを選んだあとに、条件に合ったTシャツのリストが表示される。この選択肢は価格帯によってグループ分けしてもいい。この一連のプロセスには多くの利点がある。
第一に、最終的な選択肢を大幅に絞り込むことができるので、ほかのTシャツを選べないことから生じる損失感を軽減できる。 第二に、訪問者はカテゴリーから選ぶことになる(種類、色、デザイン、価格帯など)。カテゴリーが存在するだけで多様性があると感じられ、顧客満足度が上がることが研究で確認されている。 第三に、訪問者は、すべての組み合わせからひとつを選ぶのではなく、ある程度の数の選択肢のなかで、いくつかの選択を行う(半袖にするか長袖にするかなど)。これによって、それぞれのカテゴリーのなかの選択肢は検討できる範囲の数になり、情報オーバーロードを抑えられる。
【感想】
◆引用部分がボリューミーですが、これでも、一応箇条書きで簡潔にまとめられている部分ばかり選んでおります(5つ中4つ)。ただ、実際のところ、本書は付箋ならぬハイライトひきまくり。
下手したら、Kindle本では過去最多かもしれません。
というのも、内容的には冒頭で触れたように、ロバート・チャルディーニやダニエル・カーネマン、ダン・アリエリーといった著者陣が好きな方なら、ツボであろうテーマばかりだから。
彼らの本でおなじみの実験や研究例も、登場の都度、どこからの引用かが明示されますし、その結果、巻末には鬼のように参考文献が掲載されているという仕様。
もはや構成的には、どこかの博士や教授の書いた本と遜色ありません(著者のニック・コレンダは「マインド・リーダー」ですが)。
◆しかも、そうした法則の解説だけにとどまらず、各章ごとに「現実世界への応用」と題して、実際に活用する具体例も登場します。
たとえば上記ポイントの3番目もその1つ。
本書では、実際に行われた実験結果も紹介されており、それによると「制限なし」の場合、平均で3.3個が、「おひとりさま4個まで」の場合、平均で3.5個が、「おひとりさま12個まで」の場合、平均で7.0個が売れたのだそう。
本当に数が少なくて制限せざるをえない場合は別として、本来制限する必要のない場合には、多めに設定した方が「アンカリング」が効いて、そちらに引きずられるんですね。
……確かに、私が美容院に行くたびに寄っている某繁華街のドラッグストアでは、「お1人様2個まで」として、とある健康食品を販売しているんですが、もしこれが4個だったら毎回4個買ってるであろう自分。
◆同様にポイントの5番目のTシャツの販売例も、実際にネットショップを運営されている方なら、参考になりそうなケースかと。
選択肢が多過ぎると、かえって購買意欲が下がるというのは、「ジャムが24種類あるより、6種類ある方が売れる」という話が有名ですけど、これはてっきり選べなくて「思考麻痺」ししてしまうからなのかと思っていました。
一方本書によると、「思考麻痺」だけでなく、上記ポイントでも述べているように「他の選択肢を選べないことから生じる損失感」もある模様。
なお、ここでは理由を3番目までしか引用していませんが、実際にはあと2つ理由がありますので、詳細は本書にてご確認を。
私のクライアントでも、ネットショップを持っているものの、商品がダーっと列挙されてるだけ(最低限のカテゴリーはあるのですが)のところがあるので、これは教えてあげないと……。
◆また本書の特徴として触れておきたいのが、それぞれの部分で紹介したTIPSを、即、私たち読者に実践してみせていること。
それも1か所や2か所どころの騒ぎではなく、何度も何度も執拗に体験させてくれます。
たとえば、上記ポイントの1番目を、もう1度サラッと読んでください。
〜reading time〜
一番最後に「畑の野菜をひとつ思い浮かべてほしい」とあるのですが、何を思い浮かべましたか?
……実はこれ、「ニンジン」と答えてしまうケースが多いのだそう。
なぜならば、すぐ直前で「イースターのウサギ」「オレンジ色」といったキーワードが刷り込まれているから。
活性化拡散の原理のとおり、こういった言葉が無意識のうちに「ニンジン」のスキーマを前面に押し出し、すぐに答えを出すよう求められると、脳が活性化されている「ニンジン」を選ぶ可能性が高いのだ。素で私も「ニンジン」と答えてしまい、悔しい思いをしたのですがw
同じようにまんまと「ニンジン」と答えた人は、本書を買うように!(←アサマシw)
◆ちなみに本書は、上記でロバート・チャルディーニの名前を挙げたように、『影響力の武器』に収録されている事例が、いくつも登場しています。
ただし、それだけに留まらず、実社会での活用にまで踏み込んでいるところから、むしろこの本の方にテイスト的には近いかも。

影響力の武器 実践編
参考記事:【スゴ本】「影響力の武器 実践編」がやっぱりスゴかった件(2009年06月10日)
ただ、ちょっと残念だったのが、誤植とは違う(?)のですが、本書は縦書きの本なのに、一部誤って横書き(というか字が横向きで縦並び)になっている部分があること。
これは文末に参考文献を載せる際、そこが英文(「Fitzsimons & Bargh, 2003」等)であるがゆえに、必然的に横書きなのですが、どうもそれに引っ張られているようです。
もちろん普通に読めますけど、版元さんには、修正していただいた上で、「再ダウンロード」での対応を望みたいな、と。
もっとも、そんな瑕疵が気にならないくらい、中身は充実しているんですけどね。
チャルディーニ好きなら「買い」の1冊!

人を操る説得術 ──7ステップで誰でもあなたの思いのまま
STEP 1. 認識を形づくる
STEP 2. 行動と一致した態度を引き出す
STEP 3. 社会的プレッシャーを与える
STEP 4. メッセージを定着させる
STEP 5. メッセージをもっとも効果的に提示する
STEP 6. モチベーションをさらに高める
STEP 7. 影響を持続させる
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【速報!】最強のビジネス本「影響力の武器」の[第二版]がいよいよ登場!!(2007年08月18日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
生業としての小説家戦略 専業作家として一生食っていくための「稼げる」マニュアル54 (スマートブックス)
目指すのは「ビジネス書著者」とは違い「小説家」ではあるのですが、出版業界のウラガワ(?)も垣間見れそうですから、著者志望者の方は要チェックかと。
お値段的にも「399円」とお手頃です。

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