2017年09月05日
【シングルタスク】『SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる』デボラ・ザック
SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも、密かに人気を集めていた作品。あのブライアン・トレーシーやケン・ブランチャードが絶賛しているということで読んでみたところ、なるほど生産性向上が期待できそうな1冊でした。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「一点集中」の画期的なノウハウと効果を説き、タイム誌、ファストカンパニー誌、フォーブス誌、ハフィントンポスト、CNN他、全米の話題を席巻、世界8か国で翻訳!
タスクからタスクにスイッチする際の脳のエネルギーの非効率や学界で新常識になっている「マルチタスク」の非生産性、「シングルタスク」の大きな効果、「集中力」や「フロー」の発揮の仕方、脳の「疲弊」を防ぐ方法ほか、科学的に「効率」と「生産性」を最大化するメカニズムを詳細に提示する。
なお、版元がダイヤモンド社さんということなので、私はセールを待たずにKindle版をゲットした次第です!
Christine de Pizan, Multi-Tasking / Mike Licht, NotionsCapital.com
【ポイント】
■1.「マルチタスク」とは「タスク・スイッチング」に過ぎない脳は注意を要するタスクに対処しながら、同時に流れ込んでくる情報を処理することはできない。
スタンフォード大学の神経科学者エヤル・オフィル博士は「人間はじつのところマルチタスクなどしていない。タスク・スイッチング(タスクの切り替え)をしているだけだ。タスクからタスクへとすばやく切り替えているだけである」と、説明している。
こうした行動を続けているとマルチタスクをしているような気分にはなるものの、現実には、脳は一度に2つ以上のことに集中できない。そのうえ、注意をあちこちに向けていると、効率が落ちる。
それだけではない。マサチューセッツ工科大学のアール・ミラー博士はこう述べている。「なにかをしているときに、べつのこと(タスク)に集中することはできない。なぜなら2つのタスクのあいだで『干渉』が生じるからだ。人にはマルチタスクをこなすことなどできない。『できる』という人がいるとしたら、それはたんなる勘違いだ。脳は勘違いするのが得意である」
■2.「マルチタスク」は知識の「応用力」が低下する
マルチタスクは集中力を鈍らせる。
いま私たちは、長時間、注意を持続する能力を集団で失いつつある。
そのうえ気が散っていると、状況の変化に適応する柔軟性も低下することがわかった。
1つの知識をべつの状況にあてはめて使えるようになることを「知識の転移」というが、マルチタスクを試みると、この能力が落ちるのだ。
『ネット・バカ』(篠儀直子訳、青土社)のなかで、著者のニコラス・G・カーは、情報を処理するプロセスをインターネットが大きく変えたことを説明している。
ウェブの出現により、データを調べる作業はとてつもなく楽になった。それまでは、調べたいことがあれば、いちいち近所の図書館まで足を運び、資料にじっくりと目を通さなければならなかった。
ところがウェブで検索ができるようになった結果、データを吸収し、記憶にとどめる能力は低下した。
資料の1ページ1ページを深く読み込むのではなく、スクリーンをざっと眺め、文章を浅く読むだけですませるようになったため、学習能力と記憶力が低下したのだ。
■3.「いま」という瞬間に集中する
通勤中やミーティングの前の空き時間、何かの列に並んでいるとき、眠りにつくときなど、あなたはどんなことを考えているだろう。
過去のいやなできごとを思い返したりはしていないだろうか?
あるいは、これから自分の人生はどうなるのだろうと、つい心配してしまう癖はないだろうか?
過去についてくよくよと考えるのも不安な将来を思い描くのも、無益なだけでなく、怠惰にすぎない。
そうした行為は、「いま」という瞬間を「ここ」で生きる邪魔をする。
私たちには過去を変えることも、未来を予言することも、他人を意のままに動かすこともできない。ただ、いまという瞬間、シングルタスクに集中し、自分の人生、仕事、周囲で渦巻いている世界を、よりよい方向に向けることだけが可能なのだ。
■4.デバイスの利用を自制する
世間には、だんだんお行儀がよくなり、愛すべき家族の一員になる子犬(もしくは電子機器)がいるいっぽうで、こちらの正気を失わせ、行く先々でカオスを生みだす子犬(もしくは電子機器)もいる。その違いはどこにあるのか。
答えは明快。トレーニングの有無、すなわちしつけができているか、できていないかの差だ。
そろそろ、あなたのスマホにもしつけをするべき頃合いだ。
「静かに」「おすわり」「テーブルに乗るな」など、厳しいトレーニングを始めよう。悪いのはスマホではない。スマホを甘やかし、つねにスマホに触れている、あなたの指が悪いのだ。
この問題から目をそむけつづけていると、「状況をコントロールする責任はつねに自分にある」という基本的な考え方を忘れてしまう。
そして問題の原因をメディアのせいにしたり(「しょっちゅう情報が更新されるんだよ」)、仕事のせいにしたり(「資料が山積みなんだよ」)、他人のせいにしたり(「しつこく話しかけてくるんだよ」)する。だが、こんな非難こそ無益というものだ。
■5.「類似タスク」をまとめて片づける
平均的な1日に、あなたが何度かおこなうタスクのなかで、似たようなタスクはないだろうか? 私が1日に複数回おこなう作業には「受信したメールを読み、必要があれば返信する」「必要な物(消耗品、署名が必要な書類、郵便物)をほかの部署にとりにいったり、もっていったりする」「電話をかける」「取材や打ち合わせの予定を組む」などがある。
こうした用事を「類似タスク」ごとにグループ分けし、1日の同じ時間帯にまとめて片づける予定を組もう。そうすれば、似たタイプのタスクに1日のうちに何度も時間を奪われて思考の流れを遮断されるのを防ぐことができる。 似ているタスクをまとめて片づければ、時間を節約できる。
【感想】
◆今まで当ブログでご紹介してきた中でも、マルチタスクの弊害を指摘していた作品がいくつかありましたが、本書はその「真打」とも言うべきもの。とにかく徹頭徹尾、マルチタスクを否定しています。
そもそも上記ポイントの1番目にあるように、「マルチタスク」とは幻想にすぎず、結局それは「タスク・スイッチング」に過ぎない、ということ。
ここで当然、「えー、でも音楽聴きながら作業してるよ?」という反論も出てきそうですが、本書曰く「その2つのタスクが脳の同じ部位を使わない場合は例外となる」とのことで、要は「意識的な努力を必要としない活動は、メインの作業と同時におこなうことができる」のだとか。
もっとも、運転中の携帯電話の使用は、たとえハンズフリーであったとしても危険なことは、この本でも指摘されていたとおりです。
錯覚の科学 (文春文庫)
参考記事:『錯覚の科学』が想像以上に凄い件について(2014年08月19日)
私に至っては、本を読んでいただけで、フツウに電車を何度も乗り過ごしていますから、あにはからんや……。
◆そのマルチタスク(厳密には「タスク・スイッチング」ですが、以下便宜的に「マルチタスク」とします)を行うことによる弊害は、上記ポイントの2番目にもあるとおりです。
さらにハーバード大学の研究によると、「注意を分散させていると、情報を記号化しにくくなる」そうで、それによって「記憶力が低下し、なにも思いだせなくなる事態も生じる」のだとか。
つまり、マルチタスクは「認知処理能力を低下させ、より深い学習を妨げる」というワケです。
ただ、ここで怖いのが、学生たちは「2つの複雑なタスクを同時に行うことができる」と思っていること。
「授業中、あるいは宿題をしている最中に、テキストやメッセージを打ったり、ネットに接続したりしていると成績が下がる」と言われても、にわかには信じられないでしょう。
◆そこで本書では、上記ポイントの4番目のように、デバイス利用の自制を提言しています。
具体的には「距離を置くこと」。
たとえば、スマホの代わりに、目覚ましやストップウォッチを使ったり、メモ帳を携帯したり等々。
またスマホ自体も、ミーティング中や電話中にはミュート設定にするか、しまっておきます。
たとえば相手からは見られていないからと言って、電話中にスマホに注意を奪われると、「心ここにあらず」な瞬間ができてしまう危険性も大。
その電話の相手が大事なクライアントだった場合、取り返しのつかないことになりかねません。
◆実はこれは、目の前の相手においても当然のことで、本書の第5章では「5分で周囲の信頼をつかむ」と題して、相手を尊重する方法を指南してくれています。
たとえば、部下の話を聞きながら、マルチタスクをする――デスクを整理したり、メッセージに素早く返信したり、パソコンの画面を見たり等々――上司が、「いつでも好きなときに立ち寄って」と言ったとしても、部下はどう思うか?
当然「きちんと話を聞いてもらえた」とも、「また相談したい」とも思わないでしょう。
逆に、もし上司が「相談に乗れる時間は数分しかない」と言ったとしても、その間アイコンタクトを続けて、話を傾聴したのなら、部下は満足します。
たった5分でもよそ見をせず、話に集中してくれるほうが、長時間、ほかの作業をしながら話を聞かれるよりもよほどいいのだ。今までマルチタスクしながら、人の話を聞いていた方は、ご留意いただきたく。
生産性を高めたい方なら、要チェックの1冊!
SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる
はじめに――つねに「1つ」に集中する
■INTRODUCTION シングルタスクの原則――たった1つの肝に銘じるべきルール
PART1 原則を固める
■第1章 マルチタスクを封印する――「同時進行」の誘惑から逃れる
■第2章 すべてを一気にシンプルにする――「一点集中術」とはなにか?
PART2 行動を変える
■第3章 脳の「集中力」を最大化する――脳がエネルギーを出せる環境をつくる
■第4章 全行動を「1つずつ」にする――最大の成果を出せる1日の行動法
■第5章 5分で周囲の信頼をつかむ――「ノー」を言うことで人望を集める
PART3 定着させる
■第6章 賢者の時間術「タイムシフト」――「最重要課題」を攻略する
■第7章 継続する方法――24時間「いまここ」にいつづける
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【編集後記】
◆自分のアマゾンアソシエイトの画面を見ていて、やたらガンダム本をお買い上げいただいていると思ったら、こんなセールをやっていたんですね。Amazon.co.jp: 【最大65%OFF】「機動戦士ガンダム THE ORIGIN V」上映記念: Kindleストア
テーマ的に記事にはできませんが、ガンダムファンの方はぜひご確認を!
ご声援ありがとうございました!
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