2017年07月29日
【デザイン思考】『問題解決に効く 「行為のデザイン」思考法』村田智明
問題解決に効く 「行為のデザイン」思考法
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨夜告知した「夏休み、社会科学特集キャンペーン」の中からセレクトした1冊。当ブログでも人気である「デザイン思考」の流れを汲む作品だけに、気になっていた方も多いと思います。
アマゾンの内容紹介から。
人の行動に着目し、改善点を見つけてより良く、新しい形を見つけていくデザインマネジメントの教科書。パナソニック、富士通、コクヨファニチャー、アップリカ、日本能率協会など多くの企業が導入、実績を上げた考え方とワークショップのすべて。
単行本の中古が1200円近くするため、セール期間内であれば、Kindle版が実質800円弱お得な計算です!
Stacking mugs / kenbauer
【ポイント】
■1.究極の理想は「立ち止まらないデザイン」「行為のデザイン」とは、対象をモノだけに絞らず、人や情報、環境を含んだ中で「行為がスムーズに美しく振る舞われるためにどうあるべきか」を考えるデザインです。だからまずユーザーが目的を達するための動き・行為に着目します。もし利用中に動きが止まるのであれば、それは利用法がわからないとか、いったんやめて戻らなければいけないなど、プロダクトに「バグ」があるということです。
使う途中で不都合や不便を感じるプロダクトは、口コミ評価をインターネットで検索できるこの時代では生き残ることは難しいでしょう。しかし「行為のデザイン」を経ればプロダクトを開発する段階でそれらユーザーの行為を止める「バグ」を事前に発見し、解消することができるのです。
■2.人・時空・目的が生み出すシーンを考える
たとえばあなたがあるカフェチェーン店の容器開発者だとします。目的を「熱いコーヒーを飲む」と設定し、人を「昼休みにコーヒーを買いに来た女性」と設定しました。この場合どんな手段であればその目的を達することができるでしょうか。(中略)
もし熱いコーヒーが持てなければ「バグ」になってしまいます。店内で飲むならマグカップがよいでしょうし、持ち帰るのであれば紙やプラスチック製の素材が軽くてよさそうです。マグカップなら熱が伝わらない取っ手が必要です。また、店内で移動するならトレイを水平に保つのが大変です。滑りやすい底のマグカップであればトレイの上で動いてしまうかもしれません。滑り止めがあると安心できそうです。
このほか持ち帰り用のカップにも取っ手をつけたり、手持ちしても熱が伝わらない素材で作るなど、方法がいくつかあります。持ち帰るときにこぼれると「バグ」になるので、フタなどの解決策が必要です。このように行為の流れを小分けして考えていきます。
■3.マジョリティを基準にする
皆さんは外から帰ってきたら、ジャケットとズボンをどうしますか。まずジャケットを脱ぎハンガーに掛けるのではないでしょうか。そのあとズボンを脱いでハンガーに掛けようとするけれど、すでにジャケットが掛かっていてズボンは掛けづらくなっています。(中略)
解決するには2つ方法があります。1つは、面倒ですが掛けてあるジャケットをいったん外してズボンを掛けること。目的は達せられますが、後戻りを含む動きはあまり美しい行為とはいえません。
もう1つは、ジャケットではなくズボンから脱いでハンガーに掛けること。これなら行為を止めることなくすんなり両方をハンガーに掛けられます。しかし、この順番で着替える人がどれだけいるでしょうか。(中略)
私がいつも話をするのは、マジョリティとマイノリティについてです。先にズボンを脱ぐ行動をとる人は100人に1人ほどのマイノリティです。ところがこういう行動をとらないとハンガーを正しく使えません。ということは、このハンガーはマイノリティ用にデザインされているのだといえます。
しかし、プロダクトデザインというのはマジョリティのためにあります。世の大多数の人がなじんでいる手順を基準に考えなければ受け入れてもらえません。
■4.「サムシング・インサイド」を宿す
私は、人の一生を超えて愛されるプロダクトやサービスには「サムシング・インサイド(Something inside)」が宿っていると考えています。「サムシング・インサイド」とは、精神的なもの、感情的なものなど、人間に影響する魅力や、最後に残る根幹のことです。物理的な原理で効率を求めていては辿り着けない要素です。
「行為のデザイン」ではバグだけでなくプロダクトやサービスの良さや価値も見つかります。それは、プロダクトやサービスを細かく検証しているうちに、どの人からも良いと評価される「核」が抽出されるからです。いわば「サムシング・インサイド」のタネであり、これらを形やコンセプトに組み込めば、競合他社とは比較できない作り手の理念や感性が織り込まれ、真の強さを持ったプロダクトやサービスが生まれます。
■5.8つの基本的なバグ
(1)矛盾のバグ(コントラディクション・バグ)
(2)迷いのバグ(パープレキシティ・バグ)
(3)混乱のバグ(カオス・バグ)
(4)負環のバグ(ネガティブスパイラル・バグ)
(5)退化のバグ(リトログレッション・バグ)
(6)精神的圧迫のバグ(プレッシャー・バグ)
(7)記憶のバグ(メモリー・バグ)
(8)手順のバグ(プロセス・バグ)
(詳細は本書を)
【感想】
◆タイトルにある「問題解決に効く」というフレーズが、すんなり腑に落ちる1冊でした。なるほど、生活におけるさまざまな問題は、デザインによって何とかなることが結構あるものなのだな、と思った次第。
ただし、その「問題」について、意識している人がどれくらいいるのでしょうか?
たとえば、上記ポイントの3番目のハンガーの件は、「ハンガーとはそういうものだ」と思っていましたから、問題があるとは考えたこともありませんでした。
これに対して、本書の主張する「行為のデザイン」は、ある方法で解決を図っているのですが、図がないと分かりにくいので、詳しくは本書にてご確認を。
◆ちなみに、このハンガーの問題は、上記ポイントの5番目の「8つの基本的なバグ」でいうところの、8番目の「手順のバグ」に該当します。
同じ「手順のバグ」として本書で挙げられているのが、電車の切符販売機。
行き先までいくらかかるか分からなければ、一歩下がって上の方にある料金表を確認し、再度購入する必要があります。
ここで「マジョリティ」を基準にするなら、販売機を「料金表示」ではなく「駅名表示」にすれば、ユーザーは止まらずに切符を買うことが可能。
実際、海外の切符販売機は、駅名だけでなく、路線図からタッチして購入できるものが増えているそうです。
◆他にも上記の画像のように、マグカップが積み重なっているような状態は「混乱のバグ」に該当。
要は取っ手の部分があるため、スタッキングできないのが問題なワケです。
そこで、これを解決したのが下記の「stamug」という商品。
【METAPHYS│メタフィス】stamug スタマグ【64040】マグカップ/コーヒーカップ/ティーカップ/スープカップ/スタッキング (グロスホワイト/在庫有り)
確かにデザイン的にも美しいとは思いますけど、お値段がちょっと……(大汗)。
また「退化のバグ」の解決例として挙げられていたのが、こちらの消しゴム「viss」。
METAPHYS 消しゴム viss/ヴィス(B)
「どんなに使われても小さな文字に対応できる角が必ず出ているデザイン」であり、同時に広い面にも対応できる商品とのことです。
……こちらも消しゴムとしては、お値段が(ry
◆なお、本書の最終章では、「行為のデザイン・ワークショップ(S・S・FB法)の開き方」と題して、かなり細かい内容まで展開されています。
細かい手順や注意事項にも、多々触れられており、実際にワークショップを開こうとされる方にとっては、非常にありがたいのではないでしょうか。
ただし、私のように普通に本書を読む人間にとっては、オーバースペックと言いますか、別になくても良かったわけでして。
もっとも、その前の部分までの「問題解決の手法」だけでも、本書を読む価値は十分あると思います(今ならセール価格ですし)。
デザイン思考を学ぶために読むべし!
問題解決に効く 「行為のデザイン」思考法
第1章 行為のデザインは、開発力を加速させる
第2章 バグの種類とその解決法
第3章 デザイン化= 「可視化」のプロセス
第4章 行為を誘導する「アフォーダンスデザイン」
第5章 行為のデザイン・ワークショップ(S・S・FB法)の開き方
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。地頭力を鍛える
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