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2017年06月28日

【習慣】『天才たちの日課』メイソン・カリー


天才たちの日課
天才たちの日課


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、以前HONZで成毛眞さんがレビューしていた作品。

きんどうさんの記事で知ったのですが、この本、7月2日まで「58%OFF」のセール価格のようです。

アマゾンの内容紹介から。
小説家、詩人、芸術家、哲学者、研究者、作曲家、映画監督…彼らはどうクリエイティブを保っていたか?161人の天才たちの「意外?」「納得!」な毎日の習慣。

なお、中古が1200円以上しますから、送料を考えると、このKindle版が700円弱お得な計算です!





/ Eric Weisser


【ポイント】

■1.アーネスト・ヘミングウェイ
 ヘミングウェイは成人してからはずっと早起きだった。午前5時半から6時ごろ、夜明けとともに起きる。これは前の晩に遅くまで酒を飲んでいても同じだった。息子のグレゴリーの回想によると、二日酔いとは無縁だったらしい。(中略)
 しかし彼独特の執筆中の癖はたしかにあった。ヘミングウェイは立って書いた。胸の高さまである本棚の上にタイプライターを置き、その上に木製の書見台を置いて、それに向かうのだ。最初の草稿は薄い半透明のタイプライター用紙を書見台にのせて、鉛筆で書く。それがうまく書けると書見台をタイプライターに替えて打っていく。ヘミングウェイは毎日、書いた語数を表に記録していた。それは「自分をごまかさないためだ」という。


■2.村上春樹
 長編小説を書いているとき、村上は午前4時に起き、5、6時間ぶっとおしで仕事をする。午後はランニングをするか、水泳をするかして(両方するときもある)、雑用を片づけ、本を読んで音楽をきき、9時に寝る。「この日課を毎日、変えることなく繰り返します」2004年の『パリス・レビュー』で村上はそう語っている。「繰り返すこと自体が重要になってくるんです。一種の催眠状態というか、自分に催眠術をかけて、より深い精神状態にもっていく」
 村上によると、長編小説を仕上げるのに必要な期間ずっとそれを続けるには、精神的な鍛練だけでは足りないという。「体力が、芸術的感性と同じくらい必要です」


■3.エリック・サティ
 1898年、フランスの作曲家サティはパリのモンマルトル地区から、労働者階級の住むパリ郊外の町アルクイユに移った。その後、死ぬまでそこで暮らすことになる。ところがほとんど毎朝、徒歩でパリの中心部まで出かけた。元の家までの10キロ近い道のりを、途中でひいきのカフェに立ち寄りながら歩いていく。(中略)
 研究者のロジャー・シャタックによると、サティの音楽の独特のリズム感や、「反復のなかの変化の可能性」を尊重するところなどは、「毎日同じ景色のなかを延々と歩いて往復したこと」に由来するのではないかという。じっさい、サティは散歩中に立ち止まって、アイデアを書きとめるところを目撃されている。


■4.ジャン・ポール・サルトル
伝記作家アニー・コーエン・ソラルによると、「サルトルが24時間のうちに摂取したものは、タバコ2箱、黒タバコをパイプで数服、アルコール(ワイン、ビール、ウォッカ、ウィスキーなど)を1リットル以上、アンフェタミン200ミリグラム、アスピリン15グラム、バルビタール数グラム、コーヒー、紅茶、豪華な食事」だった。サルトルは自分の体をぼろぼろにしているのはわかっていたが、健康と引き換えにしても、みずからの哲学体系をものにしたかったのだ。


■5.アガサ・クリスティ
 クリスティーは自伝のなかで、本を10冊書いたあとでも、自分をプロの作家だとは思わなかったと述べている。書類の職業欄にも、「主婦」以外に記入する気にはなれなかった。(中略)
 そのせいでクリスティーは、取材があるといつも困った。記者は必ず、机の前にいる著者の写真を撮りたいというからだ。だが、そんな場所はない。「私に必要なのは、しっかりとした台とタイプライターだけだった」とクリスティーは書いている。「寝室にあった大理石の天板の洗面化粧台は、いい執筆場所になった。食事の合間の食卓もよかった」


■6.ウディ・アレン
 僕が何年もかけて発見したのは、なにかちょっとした変化が刺激となって、新たな精神的エネルギーが噴出する、ということだ。たとえば僕がこの部屋から別の部屋に移ったとすると、それが刺激になる。外出して町に出たら、それはとても刺激になる。2階へ上がってシャワーを浴びたら、それもすごい刺激になる。だから僕はときどき余分にシャワーを浴びるんだ。ここ(リビングルーム)に降りてきて行き詰ったときに役に立つのは、2階へ行ってシャワーを浴びること。それですべてが打開されるというか、リラックスできる。


■7.オノレ・ド・バルザック
午後6時に軽い夕食をとったあと、ベッドに入って寝る。午前1時に起きて書きもの机の前にすわると、7時間ぶっとおしで書く。午前8時から1時間半仮眠して、午前9時半から午後4時まで仕事。その間、ブラックコーヒーを何杯も飲む(1日に50杯のコーヒーを飲んだともいわれている)。午後4時に散歩に出て、風呂に入り、6時まで客に応対する。そのあとまた同じスケジュールの繰り返し。「1日1日が私の手のなかで、日なたに置いた氷のように解けていく」1830年にバルザックはそう書いている。「私は生きているのではない。自分自身を、恐ろしいやり方で消耗させている──だが、どうせ死ぬなら、仕事で死のうとほかのことで死のうと同じだ」


【感想】

◆今回は1つ1つが短めなので、ポイントはいつもより多めにしました。

それでも全体で161人もの「天才」が紹介されていますから、これでもたった4.3%。

冒頭のリンク先で成毛さんが指摘されているように英米の文学者が多いため、ぶっちゃけ私は知らない方も結構いたのですが、ありがたいことに今は一瞬でググれますから、特に問題もありませんでした。

一応、単行本の方のページの内容紹介に、登場人物が50人ほど列挙されていますから、気になる方はそちらでご確認ください。


◆それにしても意外だったのが「朝型」が多かったこと。

これが普通のビジネスパーソン(特に実績を挙げているような人)が早朝からスタートしているなら分かるものの、時間的制約の少ない職種(作家、作曲家、画家等々)に従事している彼らは、別に朝から起きなくてはいけないワケでもありません。

上記ポイントの2番目の村上春樹が朝型なのを知った際には、「変わった人だなー」と漠然と思っていたのですが、むしろ珍しくはなかったという。

また、朝型の人は規律正しい生活を送る人が多いようで、チャールズ・ディケンズは長男に言わせると「市役所の事務員でも父ほど几帳面で規律正しい人はいないだろう」とのことです。

まさに本書のサブタイトル(Kindle版だとなぜか割愛されていますが)「クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々」、そのまんまだな、と。

……それなのに、空想に富んだ作品を書いていたという。


◆かといって、全員が全員、こうしたタイプではないのは当然で、上記ポイントの4番目のサルトルは、いわゆる「アーチストの自堕落な生活」を地でいっています。

ほかにも酒はもちろんのこと、タバコどころか薬を常用する人もちらほら見受けられました。

たとえばこのポイントの4番目にある「アンフェタミン」(日本では覚醒剤に指定)でKindle内を検索すると、W・H・オーデンポール・エルデシュアイン・ランドジェイムズ・T・ファレル等々がヒット。

せっかくこうした検索機能があるんですから、作風や分野とこうした嗜好品との関係を探りたかったのですが、時間がないので割愛(すいません)。

でも多分、統計的に有意な関連性は見つからないんじゃないか……というくらい人それぞれなんですよね。

これがたとえば、ロックバンドとかなら、まだアルコール漬けになりそうな気もするんですがw


◆ただ、こうした「習慣」と「業績」の関係について、興味深かったのが、上記ポイントの3番目のエリック・サティ。

サティの音楽が「『毎日同じ景色のなかを延々と歩いて往復したこと』に由来する」というのは、言われてみたらそうかもしれません。



また、割愛しましたが、フィッツジェラルドが短編を書いていた頃は、ナイトクラブ巡りにハマっていた(落ち着いて長編は書けなかった)模様。

ただし本書は「奇癖」ではなくて「日常生活」にフォーカスしているので、こうしたサンプルは少ないのですが。


◆なお、私はKindleで読んだので、ページ数はわからないものの、巻末には膨大な引用文献があります。

ただ、Kindleだと全体の何パーセントかは表示してくれるので、それによると、87%以降が該当……ということは全体のページ数にかけると50ページほどですかw

また、目次からは161人全員に直接飛べる(最近そうなっていないKindle版も多いです)ので、知ってる人物や気になる人物だけパラパラ見ても良いと思います。

ホントはKindleに検索機能があるんで、せめて「朝型」と「それ以外」くらいは集計したかったのですが、それはお求めになった読者さんにお任せします(他力本願)。


「天才」たちの日々の習慣を垣間見る1冊!

天才たちの日課
天才たちの日課
W.H.オーデン(詩人)
フランシス・ベーコン(画家)
シモーヌ・ド・ボーヴォワール(作家・思想家)
トーマス・ウルフ(作家)
パトリシア・ハイスミス(作家)
フェデリコ・フェリーニ(映画監督)
イングマール・ベルイマン(映画監督)
モートン・フェルドマン(作曲家)
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(作曲家)
ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン(作曲家)〔ほか〕


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『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』 - HONZ


【編集後記】

◆冒頭のきんどうさんの記事にもあるように、どうもフィルムアート社さんのKindle本が、本書のほかにもセールになっているようです。

感情類語辞典
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性格類語辞典[ネガティブ編]
性格類語辞典[ネガティブ編]

性格類語辞典[ポジティブ編]
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セール価格は7月2日までらしいので、気になる方はお早めにお求めください!


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