2017年06月23日
【文章術】『3行しか書けない人のための文章教室』前田安正
3行しか書けない人のための文章教室
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日の「未読本・気になる本」でも人気だった1冊。著者の前田安正さんは、「朝日新聞ベテラン校閲記者」という肩書であり、この手の文章術本を結構出されていらっしゃるのですが、当ブログは初登場になります。
アマゾンの内容紹介から。
「3行以上、書けない」「そもそも書くことがない」──。
そんな文章コンプレックスもすっきり解消。
コツさえつかめば、3行の文章を20行に膨らませることもできる。
実例を交えながら、文章が肉付けされる過程を丁寧に解説する実践的な一冊。
上記未読本記事でも書いたように、Kindle版なら「23%OFF」とお買い得です!
writing... / lethaargic
【ポイント】
■1.主語と述語の関係を明確にした文をつなぐ「文を短く書こう」と言われるのは、一文が長くなると修飾語などさまざまな要素が絡み合って、主語と述語の関係があいまいになることが多いからです。できるだけシンプルに、主語と述語の関係を明確にする。そのために、1つの文は1つの要素で完結するように書こうという趣旨なのです。
とはいえ、読み手に対して話の内容をわかりやすく伝えるには、それぞれの要素について具体的な肉付けをして、ある程度ボリュームのある文章を書く必要があります。言い方を変えると、文章全体の情報量を増やしていくということです。
そのためには、主語と述語の関係を明確にした短い文をつないで、必要な情報を加えていけばいいということになります。本書ではこの方法を徹底してお伝えしたいと考えています。
■2.「WHY(なぜ・どうして)」の要素を加えていく
きのうデパ地下で晩ご飯買ったよ〜! おいしそう!これに写真をつければ、どんな晩ご飯を買ったのかは一目瞭然、説明はいりません。
これを文章だけで、誰にでもわかるように説明していくための手段として、5W1Hを使っていきます。とりわけ、重要な要素が5番目のW=WHY(なぜ、どうして)です。
「WHY=なぜ、どうして」の要素を書き加えていくと、具体的な情報が肉付けできるからです。「文章が書けない」という人のほとんどは、この「WHY」の要素を書いていないケースが多いのです。つまり、「いつ、どこで、誰が、何を、どうした」という4W1Dでできた骨だけの文で、情報の肉付けができていないということです。
■3.過去の話にも現在形を交ぜる
・銀座に新しいビルができたことを客観的に伝える場合は、過去形という構造になっています。これは、映画づくりの手法に似ています。(中略)
・ビルに能楽堂や屋上庭園、バスの乗降場所があるという部分は、現在形
・最後の感想部分は、過去形
このように、実際にその現場で動きを見せる場合は、現在形を使うのです。そうすると、主体的な動きが出てきます。
これは先に述べたように、ある状況から、行動を起こし、それによって変化していくのが、人間の行動パターンに似ています。このなかで、「状況」の報告は過去形で表すことが多く、「行動」は現在形で書くことが多くなります。つまり、文章に動きを出すためには、現在形をうまく生かすことです。言い換えれば、「行動」をいかに文章に書き込んでいけるか、ということでもあるのです。過去形ばかりで書いていくと平板な感じがするのは、この裏返しの理由によるのです。
■4.慣用句を使わずに表現する
父はいつも苦虫をかみつぶしていたような顔をしていた。(中略)「苦虫をかみつぶしたような顔」という慣用句だけでは、父の様子はうまく描き切れません。眉間に刻まれた皺、こけた頬、無精ひげ、胃の辺りを押さえる左手、爪の色、背中の薄さなど、細部を一つ一つ拾うようにして書いていきます。
そうすると、読み手にそのイメージが具体的に伝わり、文章に迫力が増してきます。
観察眼というと何やら難しいことのように思えますが、普段私たちが見落としていることに意識を働かせて、細部を記録することなのです。
■5.書きだしに困ったら、主題をさらけ出す
カルチャーセンターで「夏」というお題のエッセイを書いてもらいます。すると、「夏といえば、故郷・山形の夏の風景を思い出す」という書き出しをする方が、結構多いことに気づきます。
「夏」というお題を受けて、「夏といえば」と書いてしまうのです。(中略)
それほど、文章の書き出しは難しいし、怖いのです。書き出しに困ったときに、私がいつも参考にしているものがあります。春はあけぼの。やうやう白くなりゆく、山ぎはすこし明かりて、むらさきだちたる雲のほそくたなびきたる。清少納言の『枕草子』です。「春はあけぼの」と言い切るところがいいですね。冒頭の例でいけば、「夏は山形」と言い切ってもいいように思うのです。その方が、インパクトがあると思いませんか。
【感想】
◆文章術本にも色々タイプがあると思うのですが、大まかに分けると「何を書くか」と「どう書くか」に分けられるかな、と。たとえば「人を説得する本」なら前者ですし、「てにをはから指導する本」なら後者。
なお、あくまで一般論ですが、後者の方が「ルール」を重視する関係上、どの本もある程度同じ結論に落ち着くハズです。
対して前者は、ある程度「ルール」を踏まえているという前提で、「何を書くか」について著者が独自に論じていると思われ。
つまり、書かれている内容は、結構バラエティに富んでいるという印象があります。
◆そこで本書なのですが、そもそもタイトルにあるように「3行」レベルの例文を、どんどん肉付けしていく仕様。
長い文を削るパターンは良く見かけますが、逆に増量していく本というのは、おそらく当ブログでは初めてだと思います。
たとえば本書の例から1つ引用すると、
きのう、デパ地下で私は晩ご飯を買って帰った。という短い文があって、これに上記ポイントの2番目のように「5W1H」によって、どんどん情報を加えていくという(詳細は本書を)。
もちろん、その背景やら理由は、こちら側では分かりませんから、「どう改善したらいいか」とか考えようはないのですが、あれやこれやと情報が加わって、この例文の最終的な改善例だと、20字ほどの短文が、200字を超える文章(6文)になっています。
ちなみに、「6文」と書いたように、上記の文を「1文のまま」増やすのではなくて、上記ポイントの1番目にあるように、「主語と述語の関係を明確にした短い文をつないで、必要な情報を加えて」いますので、その点はご留意を。
◆また、個人的になるほど、と思ったのが、上記ポイントの3番目の「過去の話に現在形を使う」というTIPS。
引用が長くなるのを避けるため、上記では例文を割愛したのですが、意味が分かりにくいので、ここで改めて引用を。
銀座に新しいビルができたというので、遊びに出かけた。ビルに入るだけで2時間も行列に並ばなければならなかった。さまざまなブランドがビルのなかに収まっているが、単なる高級ブランドの集合ではないのだという。「人生を豊かにする」がコンセプトになっており、地下には能楽堂があり、屋上庭園も造られている。昨今の海外観光客のために観光バスの乗降場所もあり、そこから直接ビルに入ることができるという。なるほど、このように現在形を用いることで、「行動」が盛り込めるのだな、と。
それにしても、この人の多さには驚いた。この賑わいが落ち着いたころ、もう一度遊びに行こうと思った。
なお、過去形ばかりだと「平坦な感じ」と指摘されていますが、私の場合、単に文末のリズムを考えて、現在形を使うことが多かったです。
……「行動」とかは、あまり関係なさげなヨカン(ダメじゃんw)。
◆一方、上記ポイントの4番目の「慣用句を使わない」TIPSも、類書に比べると、かなり細かいです。
上記ではどういう部分に注目しているかが書かれていますが、実際の改善例だと、「苦虫をかみつぶしていたような顔」に「どうしてなったのか」から始まり、具体的な顔のパーツの状態にまで言及。
上記にあるように「文章に迫力が増してきます」というのも納得です。
ただ、「例文」と「改善文」のような「Before & After」がある場合、類書だと文を短くしたり、表現を変える改善がほとんどだと思うので、読者も自分で考えることはできるのですが、本書のパターンだと、この例に限らず「言われるがまま」に読み進めるしかないんですよね。
……もっとも私の場合は、自分でトライせずサクサク読んでしまうので、あまり気にならなかったのですがw
何を書くべきかの指針が分かる1冊!
3行しか書けない人のための文章教室
第1章 3行以上書くための基本
第2章 具体的に書くためのコツ
第3章 「観察眼」を身につける
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【編集後記】
◆昨日、土井英司さんがメルマガで激賞していたこの本なのですが。生涯投資家 (文春e-book)
「著者の与太話を書いて、話題性だけで売れている『多動力』と比べると、100倍価値のある本」とまで言い切っちゃってるので、今朝、アマゾンで確認したら、バリバリの新刊なのにKindle版が「50%ポイント還元」になっていますね!?
いつまでなのかが分からないので、お求めはお早めに!
【編集後記2】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。写真がもっと上手くなる デジタル一眼 撮影テクニック事典101 写真がもっと上手くなる101シリーズ
私はデジタル一眼持ってないんで活用しようがないのですが、「72%OFF」という激安設定のおかげで、Kindle版が500円弱お買い得となっています。
ご声援ありがとうございました!
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