2017年06月12日
【脳科学】『やめられない!ぐらいスゴイ 続ける技術』菅原洋平
やめられない!ぐらいスゴイ 続ける技術
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「科学・テクノロジー本フェア」の中でも特に注目されていた1冊。著者の菅原洋平さんは、「脳ネタ本」で当ブログでもおなじみの方ですが、本書は今までの著作とはひと味違う「目からウロコ」の作品でした。
アマゾンの内容紹介から。
「努力」「ガマン」「才能」すべて不要!著者累計30万部突破の著者が教える「今度こそ!」とサヨナラする方法。どんな三日坊主でも「最新脳科学」と「医療現場の実践手法」で続いてしまう!
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Hack The Brain Brasil / olabimakerspace
【ポイント】
■1.「やめたいこと」の魅力を話させる例えば、子どもに「いいかげんゲームをやめなさい!」とゲームの内容を知りもせず声をかける親がいるとします。すると、親の言うことは聞かず、子どもはゲームをやり続けます。
このときの子どもの脳は、ドーパミンによってゲームに過剰に注意が向いているので、親の声はそれを妨げるただの騒音です。
ところが、この声かけの時にゲームの内容について子どもと一緒に話すと、子どもの脳に変化が起こるのです。(中略)
ゲームについて親子で一緒に話すことで、ドーパミンの報酬と注意機能を分散して使わせるのです。
そして、親が「へー面白いね」と反応しようものなら、子どもの脳ではそれが新たな報酬になり強化されるわけです。今度は親の表情やセリフへの注意が高まります。これで、ゲームへの過剰注意は弱まるのです。
「いいかげんゲームをやめなさい!」と声をかけるより「どこまでいった?」「面白くなってきた」と言葉を交わす方が、注意は分散され、ゲームを切り上げることができます。
■2.その場でやった既成事実をつくる
「続ける」作業をやる気の如何によって判断してはいけません。やる気のように不確定なものに頼るのではなく、確実に再現性のあるものを重視しましょう。
休日になかなか勉強に取り組めないならば、休日の朝に目覚めたらいきなり何も持たずに勉強机に行ってください。(中略)
朝起きていきなり勉強机で勉強する。これはほんの少しの時間で大丈夫です。ここで重要なのは、勉強に集中することなのではなく、「その場所で勉強した」という既成事実を脳内につくることなのです。
朝起きて勉強した、という記憶が脳につくられてしまえば、あなたの脳は、「そこ(勉強机)に行きさえすればさっさと勉強が始められる」と記憶します。
これを実際に試していただくと、「ちょっとの時間だけのつもりだったけど意外と集中しちゃって気づいたら昼になっていた」という感想をいただくことが多いです。
■3.「4日以上」続ける
人間には、先ほどお話ししたサーカセマイセプタンリズムという3.5日リズムがあると考えられます。血圧の変動やてんかん発作など、生体反応には3.5日の周期があることが知られています。そして脳がある動作を習得して、それを一連の流れとして自動的に命令するようになるには、この3日の壁を超える必要があります。
リハビリテーションにおいて、あるエクササイズを日常的に継続するときや、睡眠外来で生活習慣を変えるとき、または仰向け寝の人がいびきを防ぐためにうつぶせ寝に変えるときには、4日継続できればその後も継続できることが多いです。脳の3.5日の壁をほんの少しだけ超えてあげれば、脳は、それを続けることの方が当たり前になるのです。
■4.「動き」と「結果」を言葉にする
動作を具体的にする簡単な方法は、その動作に数字を入れることです。「○回やる」「○分やる」「○ページやる」など、回数や時間、作業の分量の目標を数字にして言葉にしてみましょう。
仕事の効率を上げるにはどんな仕事にも締切を設けること、という話を聞いたことがあると思います。締切はたしかに有効ですが、脳が求めているのは、締切日ではなく、それを達成するまでの過程を予測することです。
締切を設ける方法をさらに有効にするには、やることとそれをやったらどうなるかをつぶやくことです。
脳は「10日までに仕上げる」と言われるよりは、「1時間で○○をやる」と言われた方が、今の動作を命令しやすいです。さらに、「1時間で○○をやる。そうすれば6割まで仕上がる」という感じでつぶやくと、脳内では、到達点までの距離と締切までの時間の関係が整理されます。
■5.もう1つ上の分類に読み替える
AさんとBさんとでは、くだらない仕事を引き受けることになっても反応が違います。
Aさんは、ご褒美が得られないくだらない仕事にはやる気が出ません。しかし、Bさんは、くだらない仕事をもう1つ上の分類からとらえます。
例えば、自分には関係ない会議の資料をまとめるはめになった。こんな場合でも、会議資料をまとめる、という作業のもう1つ上の分類「情報を整理して分かりやすい資料をつくる」ととらえ直します。分かりやすい資料をつくる練習ができると考えて作業に臨むので、Bさんにとってこのくだらない仕事は意味のある作業になり、ご褒美になります。
目の前の情報を、1つ上の分類に読み替える能力。
これさえ鍛えていけば、どんな状況に置かれても、行動し続け、それぞれの行動を自分の糧にすることができるのです。
【感想】
◆冒頭で「目からウロコ」と書いたのは、実は本書には、今まで私が知らなかった「脳とカラダの仕組み」がいくつか収録されておりまして。たとえば本書の序章にあったのが、「大きな書店で本を探していると、トイレに行きたくなる理由」です。
最近はあまりリアル書店に行かなくなった(徒歩圏内に書店がなくなってしまったため)私ですが、確かにそういう傾向は自分自身あった気が。
これは、書店で「目をキョロキョロする」ことが原因なのだそうです。
目をきょろきょろすることと、トイレに行きたくなることは、一見関係がなさそうに思えますが、この2つには、アセチルコリンという神経伝達物質が関係しています。……そんなこととは知らなんだ。
アセチルコリンは、自律神経のうちの副交感神経の働きに関与し、内臓機能を高める役割をしています。じつは、これが排尿を促しているのです。アセチルコリンはその他に、新しい刺激に対して反応するという役割も担っているので、刺激に反応して目玉をきょろきょろ動かす機能にも関わっているのです。
分かりやすくいえば、大型書店に行くと数多くの情報に触れて、目まぐるしく目が動き、その結果、トイレに行きたくなっているのです。
◆さらに、
・コーヒーを飲みすぎる人は、緊張する場面で体がかゆくなるといった症状も、実は脳の仕組みに関係しているとのこと。
・血液検査で鉄欠乏を指摘されている人は、物事に対して熱中できない
これらは同じく本書の序章からであり、本書のテーマとは直接関係ないとはいえ、「脳ネタ本」をそれなりに読んできた私にとっても、知らないことでした。
一方、テーマとややズレているようですが、上記ポイントの1番目は「やめたいことがやめられない人」に関するお話。
確かに我が家でもこういう傾向はあるものの、それは「頭ごなしではなく、理解を示した上で注意する」からこそ、言うことをきくのかと思っていました。
ここで登場する「ドーパミン」は、仕事中についついメールが来ていないかチェックすることや、SNSを見てしまうことにも関連していますから、思い当たるフシのある方は、本書の第1章にてご確認ください。
◆同様に上記ポイントの2番目も、我が家ではムスコが実践していまして、土日のみならず平日も朝6時半に起きて、それからほぼ5分以内に机に向かっております。
というか、それくらい頑張らないと、宿題が終わらない某大手塾のカリキュラムが鬼のような気がしないでもなく。
幸いムスコは、上記ポイントの3番目の「4日以上」はとっくに超えているので、もう完全に習慣として根付いているようです。
なお、「4日」の次の目標は「2週間」、その次は「1か月」だそうですから、何かを続けたい方はご参考まで。
もう1点、本書によると、この「続ける習慣」は「過去のリズム」に基づくので、必ずしも連続である必要はなく、たとえば1週間であれば7日中4日できていたら、過半数の方に同調していくのだそう。
◆また、本書で指摘されていたのが「言葉」の重要性です。
たとえば上記ポイントの4番目にもあるように、具体的な数字として言葉にした方が、行動に移しやすいとのこと。
逆に「ちゃんと」とか「しっかり」という「心理的な表現」だと、脳が混乱するのだそうです。
普通の自己啓発書でも、こうした「心理的な表現」を避けるよう述べている作品が結構ありますが、これらは「脳の仕組み」ゆえだったんですね。
さらに割愛したお話であったのですが、「くだらない仕事」をした場合に、それを「〇〇の練習をした」と言葉にすると、後で何をしたか思い出す際に、その言葉にした方の記憶が、もとの記憶より鮮明に思い出されるのだとか(詳細は本書の第5章にて)。
ちょっとした工夫によって、仕事に前向きに取り組めるのですから、これはぜひ試してみるべきではないでしょうか。
「最新脳科学」の薦めるTIPSがここに!
やめられない!ぐらいスゴイ 続ける技術
序章 こんなサインがあったら続けられない!
第1章 【やめる】ドーパミンに乗っ取られた脳を取り戻す
第2章 【自分で決める】脳はやらされ仕事が続けられない
第3章 【続ける】意欲のあるなしに関わらず、体が勝手に続ける
第4章 【続け続ける】環境や生活スタイルが変わっても、続けることが途絶えない方法
第5章 続けることで成果を上げる
【関連記事】
【脳科学?】『すぐやる! 「行動力」を高める“科学的な"方法』菅原洋平(2016年08月03日)【脳科学】『「すぐにやる脳」に変わる37の習慣』篠原菊紀(2016年09月19日)
【仕事術】『超一流のすぐやる技術』横山信弘(2016年07月15日)
【ファスト&スロー?】『意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策』阿部修士(2017年06月05日)
【スゴ本!】『ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣』イアン・エアーズ(2012年10月30日)
【編集後記】
◆今日の本に関係して、こちらもご紹介。「すぐにやる脳」に変わる37の習慣
やはり「科学・テクノロジー本フェア」の対象作品ですから、6月18日までならお買い得です!
なお、レビューは上記関連記事にてご確認ください。
ご声援ありがとうございました!
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