スポンサーリンク

       

2017年05月03日

【ブームの秘訣?】『「ない仕事」の作り方』みうらじゅん


「ない仕事」の作り方 (文春e-book)
「ない仕事」の作り方 (文春e-book)



【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、明日終了する「GW文春祭り」の中でも前々から読んでいたいと思っていた1冊。

サブカル系がお好きな方なら知らぬ人はいないであろうみうらじゅんさんが、いかにして「ブーム」を引き起こしてきたかを明かしてくださっています。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
本書では、それまで世の中に「なかった仕事」を、企画、営業、接待も全部自分でやる「一人電通」という手法で作ってきた「みうらじゅんの仕事術」を、アイデアの閃き方から印象に残るネーミングのコツ、世の中に広める方法まで、過去の作品を例にあげながら丁寧に解説していきます。
「好きなことを仕事にしたい」、「会社という組織の中にいながらも、新しい何かを作り出したい」と願っている人たちに贈る、これまでに「ない」ビジネス書(?)です。

なお、明日までなら「26%OFF」&「50%ポイント還元」のダブル適用で、送料加味した中古よりも400円以上お得な計算です。





Coco-Chan(Toyokawa City, Aichi Pref.) / mai:pluie


【ポイント】

■1.「マイブーム」という言葉の本当の意味
 今では皆さん「ここ最近、個人的に夢中になっているもの」の意で違和感なく使っていますが、そもそもブームは多数の人が同じことに夢中になる現象ですので、「アワーブーム」が正解です。「マイ(一人の)」「ブーム」は本来「ない」言葉なのです。
 それまで私は、自分が「これは面白い!」と思ったものやことがらに目をつけ、原稿を書いたり、発言したりしてきましたが、世の中の話題にならないことのほうが多かったことは確かです。
 そこで、「だったら流行るかどうかをただ待つのではなく、こちらから仕掛けていこう」という発想に至りました。私(みうら自身)の流行を、世の中に広めていく。本来、これが「マイブーム」の本当の意味だったのです。


■2.「ゆるキャラ」というネーミング
 まず、名称もジャンルもないものを見つける。そしてそれが気になったら、そこに名称とジャンルを与えるのです。
 前述の長い説明を、たった一言で表現するために私が考えたのが、「ゆるキャラ」でした。
「ゆるい」「キャラクター」の略です。これは本来矛盾した言葉で、キャラクターはゆるくては困ります。わざとゆるいキャラクターを作ろうと思う人や団体などはいません。しかし「ちゃんとした」キャラクターを作ろうとした結果、なんとも微妙な、なんとも中途半端な、なんともいびつなものができあがってしまったわけです。
 次章で詳しく述べていきますが、私が名づけたブームのほとんどの名称は、水と油、もしくは全く関係がないものを結びつけるようにしています。「マイ」「ブーム」もそうだということは前述しました。
 A+B=ABでなく、A+B=Cになるようにするのです。そしてAかBのどちらかは、もう一方を打ち消すようなネガティブなものにします。この「ゆるキャラ」は、その最たる例と言えるでしょう。


■3.ブームとは「誤解」
 この次に大きなブームへの転換期となるのは、「誤解」され始めたときです。
 意外と思われるかもしれませんが、それがブームの正体でもあります。
「昨今、ゆるキャラというものをよく見かけるが、実に言い得て妙だ」「日本独自の着ぐるみ文化に光を当てた」といった、思いがけない「深読み」をしてくれる人たちが現れます。「今まで私も気になっていたけど、確かにゆるキャラはおかしいよね」と、語り出す人たちも現れました。
 ブームというのは、この「勝手に独自の意見を言い出す人」が増えたときに生まれるものなのです。
 そういう意味で、あらかじめ「ゆるキャラとはこういうものです」という理論づけはしないほうがいいのです。人に誤解されたり、我がもののように言いたくなるような「余白」を残しておかなくてはなりません。


■4.重い言葉をポップにする
 ここまでで、私が世間ではマイナスとされているものを、「ポップ」に見せることを意図してやってきているということが、次第におわかりいただけているかと思います。
 このポップにするための、手っ取り早い方法は、何にでも言葉の終わりに「ブーム」か「プレイ」をつけてしまうことです。たとえば一般的にマイナスだと思われている単語である「童貞」や「失恋」も、「童貞ブーム」「失恋プレイ」と呼んでみるのです。
 失恋したら、それは誰だってへこみます。食事ものどを通らないと言われます。しかしそのとき、落ち込んでいる自分のその状態を「失恋プレイ」と呼んでみたら、どうでしょう? なんだかわざとやっているようで、気持ちが楽にならないでしょうか。


■5.「自分探し」ではなく「自分なくし」をする
 こんな仕事をしているので、私自身がさぞ自己主張が強いと思われがちですが、実はそうではありません。私が何かをやるときの主語は、あくまで「私が」ではありません。「海女が」とか「仏像が」という観点から始めるのです。 (中略)
 これも、私が若い頃に間違っていたから気づいたことです。私の「したい仕事」は世の中にあると思い込んでいました。しかし、どうやら、ない。だったら自分で作るしかない。しかしそこで自己主張をしてしまうと、世の中からすぐに「必要がない」「欲しくない」と気づかれてしまう。そこで自分を消し、あたかも「なかったもの」が流行っているかのように、主語を変えてプレゼンしてみる。すると、人々は「流行っているのかな?」と、ようやく目を向けてくれるようになる。
「自分探し」をしても、何にもならないのです。そんなことをしているひまがあるのなら、徐々に自分のボンノウを消していき、「自分なくし」をするほうが大切です。自分をなくして初めて、何かが見つかるのです。


【感想】

◆私は特にみうらさんのファン、というわけではありませんでしたが、本書は結構「目からウロコ」の教えが多々ありました。

まず上記ポイントの1番目の「マイブーム」という言葉が、みうらさんの造語だとは全然知らず。

今や市民権を得ているというか、普通に日常会話にも出てきていますが、実は1997年の「新語・流行語大賞」受賞語なのだとか。

1997年(平成9年)の「日本新語・流行語大賞」一覧と解説 - キーワードノート

上記リンク先のトップテンの下から2番目に掲載されており、ちゃんと「みうらじゅんさんが考案」とありますね。

そして実は、この「マイブーム」という考え方が、本書のテーマである「ない仕事」につながっているという。


◆その最たるものが、上記ポイントの2番目の「ゆるキャラ」。

まだこの言葉が生まれる前は、普通に「マスコット」と呼ばれていた、ただの「着ぐるみ」です。

物産展でこのマスコットたちに出会ったみうらさんは、これを「マイブーム」と決め、片っ端から収集。

当時はまだぬいぐるみもなかったので、カメラとビデオの二刀流で記録したのだそうです。

ただし、そのままでは人知れず終わってしまうので、その後雑誌へと売り込みに。

ところが連載がなかなか決まらなかったため、とうとうイベントを開いてしまいます。

みうらじゅんのゆるキャラショー [DVD]
みうらじゅんのゆるキャラショー [DVD]


さらにその2年後には、とうとう東京ドームで2日間に渡る物産展&ゆるキャラ総出演のショーまで開催したのでした。

みうらじゅん in 東京ドーム 郷土愛〈LOVE〉2004 [DVD]
みうらじゅん in 東京ドーム 郷土愛〈LOVE〉2004 [DVD]



◆さすがにここまでくると、「ゆるキャラ」も立派なブームに。

初めの頃は「うちのマスコットはゆるくない!」とお叱りを受けていたのが、やがては先方から「うちのキャラはゆるいですよ〜」「うちのゆるキャラを紹介してください」と積極的に売り込まれるようになったのだそう。

こうなるともう世間も止まりません。

上記ポイントの3番目にあるように、皆が勝手に解釈し語るようになります。

ちなみに結構意外だったのが、あの「ゆるキャラグランプリ」には、みうらさんはまったく関与していないということ。

ゆるキャラグランプリ オフィシャルウェブサイト

もはや、みうらさんの「マイブーム」にすぎなかった「ゆるキャラ」は、世間的な「大ブーム」となったワケです。


◆ところで今回、本書でこうしたみうらさんの活動を見てきて思ったのが、ネーミングの重要性。

「マイブーム」や「ゆるキャラ」はもちろんのこと、上記ポイントの4番目にも挙げた「ブーム」や「プレイ」も、言われてみたら、確かにいい意味で付けた言葉を軽くしてくれます。

そしてみうらさん自身が「その最たる例」と呼んでいるのが、この「親孝行プレイ」。

親孝行プレイ (角川文庫)
親孝行プレイ (角川文庫)


なんとドラマ化もされているようですね。

親孝行プレイ 第1巻 [DVD]
親孝行プレイ 第1巻 [DVD]


みうらさんいわく、仕事や家事が大変なときは、「会議プレイ」「残業ブーム」「ゴミ捨てプレイ」等々、心の中でつぶやいてみましょう、とのことです。


◆なお本書には、こうした「大ブーム」や「世間的にもよく知られたもの」以外にも、いわゆるサブカルの世界でみうらさんが手がけた事象が多々登場。

たとえば、私はほとんど知らなかったのですが、この『見仏記』は、「仏画」「仏像」ブームのきっかけとなったみたいです。

見仏記<見仏記> (角川文庫)
見仏記<見仏記> (角川文庫)


本書を読んで、私自身、なるほど「ブーム」とはこうやって起こせるものか、と納得しきり。

連載を得るための「接待」のお話や、デビュー前に糸井重里さんにフォローしてもらった「ウラ話」等も含めて、読みどころが満載でした。


「仕掛人」の「ブームの秘訣」がここに!

「ない仕事」の作り方 (文春e-book)
「ない仕事」の作り方 (文春e-book)

第1章 ゼロから始まる仕事―ゆるキャラ
第2章 「ない仕事」の仕事術
第3章 仕事を作るセンスの育み方
第4章 子供の趣味と大人の仕事―仏像


【関連記事】

「ブームはどう始まりどう終わるのか」中川右介(2007年01月12日)

いま、一番気になる『くまモンの秘密』を完全チェック!(2013年04月09日)

【99】ナイナイが売れるためにした7つの事(2012年11月15日)

【非道?】園子温監督の売れるための努力がパネェ件(2012年10月13日)

【人心掌握】有吉弘行の人心掌握術がスゴすぐる件(2009年04月18日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

僕らが毎日やっている最強の読み方―新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意
僕らが毎日やっている最強の読み方―新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意


先日ご紹介した佐藤 優さんの作品でも触れたのですが、当ブログの読者さんなら必読の1冊です。

参考記事:【オススメ!】『僕らが毎日やっている最強の読み方』池上 彰,佐藤 優(2016年12月16日)


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

この記事のカテゴリー:「マーケティング」へ

この記事のカテゴリー:「ブランディング」へ

「マインドマップ的読書感想文」のトップへ

スポンサーリンク




               

この記事へのトラックバックURL


●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。