2017年04月16日
【こころの技法?】『人間を磨く〜人間関係が好転する「こころの技法」〜』田坂広志
人間を磨く〜人間関係が好転する「こころの技法」〜 (光文社新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中の「春の光文社新書フェア」でも注目されていたコミュニケーション本。著者である田坂広志先生の作品は、当ブログでも何冊か取り上げてきましたが、この手のテーマは多分初めてだったと思います。
アマゾンの内容紹介から。
なぜ、欠点の多い人間が好かれるのか?「嫌いな人」は、実は、自分に似ている、人間関係がこじれていく「本当の理由」、心がぶつかったときこそ、「絆」を深める好機、どうすれば、本当の自信と強さが身につくのか?今すぐ実践できる「7つの技法」。
なお、20日までのセール期間中なら、このKindle版がお買い得です!
Advising May 2016-7 / University of the Fraser Valley
【ポイント】
■1.自分の中に「様々な人格」を育てるこのように、我々の心の中には、幾つもの人格があるだけでなく、それらの中には、「鬼」と呼ぶべき人格や、「悪」と呼ぶべき人格も存在する。そのことは、冒頭に述べた親鸞の「心は蛇蝎のごとくなり」という言葉にも示されており、また、文学も含め、人間というものを深く洞察した古典においては、すでに、様々な形で語られてきたことである。
大切なことは、自身の中にある「鬼」や「悪」と呼ぶべき部分から目を背けることなく、その存在を認めつつ、それらの人格を御していくことのできる「もう一つの人格」を育てていくことである。
■2.自分の非や欠点を素直に自覚する
すなわち、もし我々が、自分の非や欠点がゆえに、相手や周りの人々に迷惑をかけたとしても、心の中で自分に非や欠点があることを自覚し、自分の非や欠点を相手や周りに対して認めることができるならば、人間関係は、決しておかしくならない。また、それができるならば、それだけで、こじれた人間関係が良くなっていくことさえある。
なぜなら、仕事や生活において人間関係がおかしくなるときというのは、必ずと言って良いほど、互いに「相手に非がある」「自分には非はない」と思っているからである。
■3.自分から声をかけて謝ることによって学んだ2つのこと
1つは、こうして、自分の非を認め、自分から声をかけ、謝ることができたとき、ほとんどの場合、相手もまた、自分の非を認め、謝る姿を示すということ。すなわち、しばしば「相手の姿は、自分の姿の鏡である」ということが言われるが、この体験を通じて、その言葉が真実であることを学んだ。
もう1つは、こうして、互いが和解する瞬間とは、ただ、人間関係が元に「修復」される瞬間ではなく、互いが、さらに深いところで結びつく「深化」の瞬間であるということ。すなわち、互いの「小さなエゴ」がぶつかるという体験は、処し方を誤らなければ、互いの関係を、さらに深める好機であるということを学んだ。
■4.その相手を好きになろうと思う
企業の現場で、そうした「人を好きになる」という努力をしていると、次第に、好き嫌いということは、変えがたい「感情の問題」ではなく、努力次第で変えられる「意志の問題」であることが、身体的に分かるようになってきた。
しばしば、世の中には、「嫌いなものは、嫌い」という言葉を簡単に発する人がいるが、それは、残念ながら「成熟した精神」とは言えないだろう。
もとより、人間には、「どれほど努力しても好きになれない人」というものがあることは否定しないが、「嫌いなものは、嫌い」という言葉は、少なくとも、「好きになる」ための努力を尽くした後に、心から零れ落ちるように出てくるべき言葉であろう。
そして、1人の未熟な人間である著者の人生を振り返ってみても、出会った当初、「この人は好きになれない」と思った人物と、何年かの歳月を共に歩み、不思議なほど深い結びつきになることは、何度もあった。
■5.将来に和解の余地を残す
例えば、別れ際に、「顔も見たくない」「二度と会いたくない」「もう信用できない」「裏切られた」「こんな人とは思わなかった」「見損なった」といった破壊的な言葉を吐いて、別れる。
こうした別れ方は、将来、互いの心が変わり、互いの心に「和解をしたい」という思いが浮かんでも、過去に吐いた破壊的な言葉が「心の障害」となって、一歩を踏み出せなくなる。「あんなことを言って別れたのだから、いまさら……」といった心境が邪魔になって、一歩を進められなくなる。
「人間関係が下手な人」とは、「人とぶつかってしまう人」のことではない。
「人とぶつかった後に、和解できない人」であり、
「人とぶつかった後に、和解の余地を残せない人」のことである。
【感想】
◆本書のメインタイトルである「人間を磨く」。これについて、著者の田坂先生は「非や欠点の無い人間を目指して生きる」のではなく、「非や欠点もある未熟な自分を抱えて生きる」のだと言われています。
さらに「人間を磨く」、すなわち「人間力」を身につけるために、世間一般では「古典」を読むことを推奨されているものの、それがなかなかうまくいかない理由について言及。
上記ポイントの1番目はその中の1つであり、私たちは古典を読むとき、「『善』なる姿しか持たない『統一的人格』を理想像として追い求める」べきではなく、自身の中に、「『鬼』も『悪』も『邪』も含めた幾つもの人格を見出し、それらの人格に光を当てる」よう言われています。
なお、複数の人格の考え方については、やはりセール対象である、田坂先生のこの本をご参考のこと。
人は、誰もが「多重人格」〜誰も語らなかった「才能開花の技法」〜 (光文社新書)
参考記事:【才能?】『人は、誰もが「多重人格」 誰も語らなかった「才能開花の技法」』田坂広志(2015年05月22日)
◆そして、古典を読むよりも、むしろ日々の仕事や生活における「人間関係」によってこそ、人間力は身につく、として、その「人間関係」において留意すべきことを挙げられています。
それが「心構え」「心の在り方」としての、「こころの技法」。
というワケで、本書では7つの「こころの技法」を述べていくのですが、それぞれについては、実は下記目次にあるとおりです。
実際、上記ポイントの2番目以降は、すべてこの「こころの技法」に関するものであり、上記ポイントの4番目は、目次そのままですねw
これらはみな、日頃から意識しておくことで、よりよい人間関係が築けること必至なものばかりです。
◆たとえば、上記ポイントの2番目にある「自分の非や欠点を素直に自覚する」は、「形だけの謝罪の言葉」とは、似て非なるもの。
自分に何か非があった場合、謝罪しないのも問題ですが、表面上謝っておいて、心の中で「自分は悪くない!」と叫んでいると、それは「無言のメッセージ」として周りが敏感に感じ取ってしまいます。
逆に素直に非を認めて謝罪できる人は、人間関係が悪くなりません。
帯にある「なぜ、欠点の多い人間が好かれるのか」という問いがまさにそれで、何か失敗等しても、あっけらかんと謝れる人は「憎めない人」として、かえって好かれたりするという。
また、素直に言葉にすることができない人でも、「そっと差し入れする」等の「無言のメッセージ」で相手に伝えられれば、それは同じです。
◆とはいえ、前日に激しくぶつかっておいて、翌日すぐ謝るというのは、なかなか気まずいもの。
それでも意識すべきなのが、第2の「こころの技法」である「自分から声をかけ、目を合わせる」です。
……でも、そうやって謝って、相手からさらに非を責められたらどうするか?
これについては田坂先生いわく、今まで1度たりとも「お前に問題があるんだよ!」と言われたことはないのだそう。
上記ポイントの3番目では、こうして自分から謝ることで学んだ2つのことが挙げられています。
とくに2つ目の「さらに深いところで結びつく」というのは、仲直りによって経験されたことのあるかたも多いのではないか、と。
◆さらに本書では一歩進んで、「好きになれそうもない人を好きになる努力」までも推奨しています。
なお、実際にこれは、田坂先生が新入社員の頃、配属前の人事部長の訓示で言われたことなのだとか。
上記ポイントの4番目では、それについて掘り下げていますが、具体的な技法として「人間を見つめる5つの視点」が列挙されていますので、そちらをご参考のこと。
いずれにせよ本書は、田坂先生ご自身の経験も数多く紹介されており、先生の「リアルな一面」を垣間見ることができました。
田坂先生の「達観された雰囲気」も、このような「こころの技法」を駆使されてきたゆえなのだと納得した次第。
よりよい人間関係を目指したいなら必読!
人間を磨く〜人間関係が好転する「こころの技法」〜 (光文社新書)
人間関係が好転する「こころの技法」
第1の「こころの技法」 ‐ 心の中で自分の非を認める
第2の「こころの技法」 ‐ 自分から声をかけ、目を合わせる
第3の「こころの技法」 ‐ 心の中の「小さなエゴ」を見つめる
第4の「こころの技法」 ‐ その相手を好きになろうと思う
第5の「こころの技法」 ‐ 言葉の怖さを知り、言葉の力を活かす
第6の「こころの技法」 ‐ 別れても心の関係を絶たない
第7の「こころの技法」 ‐ その出会いの意味を深く考える
「人間を磨く」ことの真の意味
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。シンクロニシティ[増補改訂版] ― 未来をつくるリーダーシップ
中古がまだまだ高く、送料考えたらKindle版が800円弱お得な計算です。
……ぶっちゃけテーマ的には、今日の本より田坂先生らしいんですがw
ご声援ありがとうございました!
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