2017年04月15日
【文章術】『「超」実用的 文章レトリック入門』加藤 明
「超」実用的 文章レトリック入門 (朝日新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった文章術本。著者の加藤さんは、朝日新聞社に入社後、社会部記者や「週刊朝日」編集長を経て、朝日新聞論説委員として夕刊1面コラム「素粒子」を担当された経歴をお持ちの方です。
アマゾンの内容紹介から。
「いい文章」ほど、レトリックが駆使されている!読む人を飽きさせない、元週刊誌編集長の文章塾。直喩・暗喩・挿入法・擬人法・奇先法・誇張法など、さまざまある「レトリック」を少し取り入れるだけで、「おやっ」と思わせる、意外性ある文章に。文章の「センス」が磨かれる、とっておきのワザを伝授!
なお、まだ出たばかりの新刊ですが、Kindle版が「23%OFF」とお買い得なのもポイント高いです!
Writing. / Strupey
【ポイント】
■1.列挙法のワンポイントアドバイス例えば、パーティーに出席したことを文章にする場合、「テーブルにはいろいろな料理がいっぱい並んでいた」と大ざっぱに書かないで、具体的に料理名を挙げていくことです。「オードブル、サラダ、ローストビーフ、チキンの煮込み、エビのチリソース……」などと列挙法で書いていけば、文章にリアリティーが出てきます。視覚的効果も生まれます。
■2.倒置法で意外性と強調を生む
「おめおめ信じたものだ、この私が」「餞別まで渡したのだ、この私が」のくだりが倒置法です。主語と述語の順番を逆にした倒置法の繰り返しによって、先生のハラワタが煮えくり返る憤怒と屈辱の思いが、よく伝わってくるではありませんか。
このように、倒置法は語順を意識的に変えることで、感情の高まりを印象づけるレトリックです。これが、「この私がおめおめ信じたものだ」「この私が餞別まで渡したのだ」と主語と述語をふつうの順番通り書いて表現していたとしたら、どうでしょう。読者に伝わってくる先生の地団駄ぶりも半減してしまいます。
■3.陳腐な印象にならない擬人法
比喩の直喩や隠喩の場合なら、陳腐で使い古された喩えを使うと、すぐに鼻についてしまいます。うまい喩えを思いつくには、それなりのセンスが必要です。
ところが、擬人法は意外に、うまい下手が気にならないレトリックです。そればかりか、「社会が病んでいる」とか「地球にやさしい環境」など、慣用句として手垢のついた擬人法が繰り返し使われていますが、なぜか陳腐感を与えないから不思議です。擬人法というレトリックが生まれながらにもっている、育ちのよさといえそうです。
■4.起承転結の「転」で話のピークを持ってくる
私が教えているエッセイ教室では、漸層法としての起承転結を教えています。起承転結というと、「起」で話を書き出し、「承」でさらに展開し、「転」で少し視点を変え、「結」で全体を関連づけてしめくくる、というように習っているのではないでしょうか。
これは漢詩の起承転結を転用しているだけで、実はエッセイの構成法としてほとんど役に立ちません。
漸層法の起承転結をどう教えているかというと、読む人に一番伝えたいことを「転」で書きましょう。例えば日常生活には感動したことや驚いたこと、何か発見したことなどさまざまなドラマがあります。その伝えたいドラマのクライマックスが「転」にくるように構成して書きましょう、と。
こう教えるだけで受講者のエッセイが見違えるように変わります。
■5.換喩のワンポイント・アドバイス
例えば、父親の思い出を書くとしたら、漠然と感想のようなものを書かないで、父親が愛用した品々を思い出してみることです。パイプだとか、釣り竿とか、ゴルフ道具とか。とりわけこだわった愛用品はありませんでしたか。きっとその道具には父親の性格や価値観が投影されているはずです。物で人を描く。換喩のもっとも得意とする領域です。
【感想】
◆本書の「はじめに」の冒頭で、著者の加藤さんが、ある直木賞作家に「プロになれそうな文章と、そうでない文章」の違いを尋ねるシーンがあります。なんでもこの作家氏は、一時期、文芸誌の文学新人賞の下読み(全応募作を最終選考に絞り込む作業)をしており、「才能を見出す」作業に携わっていたとのこと。
「強いて挙げるとすれば、やはり文章レトリックの使い方かな」という発言に続けて、こう言われたそうです。
「文章を読んでプロになれるか、なれないかを単純に判断しろと言われたら、レトリックのうまい下手がその境界線かなあ。プロになる人はどんな人も、比喩が抜群にうまいよね」というワケで、本書はそのレトリックの重要性や使い方をビッチリ指南してくれる次第。
◆具体的なレトリックについては、冒頭の内容紹介にもいくつか挙げられていました(まさに上記ポイントの1番目の「列挙法」ですねw)が、実はアマゾンの内容紹介のフルバージョン版に、小見出しごとすべて載せられているという。
つまり第2章以降は、すべて各レトリックの解説になります。
数えてみたところ、その数全部で30。
ちなみに各レトリックは、すべて実際の文芸作品等からの引用による具体例があるのですが、ボリュームの関係で割愛させていただきました。
……と言いつつ、上記ポイントの1番目や5番目は、第6章を除く各レトリックの節の最後にある「ワンポイントアドバイス」をそのまま持ってきており、「ワンポイント」というだけあって、かなり少なめなんですがw
◆さて、実際にそれぞれのレトリックを見ていくと、私自身も意識せずに使ったことがあるものも、いくつか見受けられました。
上記ポイントの1番目の「列挙法」もそうですし、ポイントの2番目の「倒置法」も、日常会話ではよく耳にします(単に整理して話していないだけかもしれませんが)。
ただ、上記ポイントの3番目の「擬人法」は、比較的良く見かけますが、他の比喩に比べて「うまい下手が気にならないレトリック」というのは意外でした。
ちなみに今回は割愛しましたが、この逆である「擬物法」(人を物にたとえる)も「うちの夫は『粗大ゴミ』」のように、普通に使っている気が。
また、私の多用している「体言止め」は、レトリックでいうと「省略法」の中の1つだそうです。
◆一方、その名前すら聞いた記憶がなかったのが、上記ポイントの4番目の「漸層法」。
これは、表現をだんだん強めて尻上がりにもっていくレトリックになります。
「そんなの文芸作品だけじゃね?」と思ったら、普通に自己啓発書にも使われている模様(特に成功本)。
ただ、上記ポイントで指摘されているように、「起承転結の『転』で話のピークを持ってくる」という書き方は、初めて知りました。
なんでもこの構成で書くと、読む人が最後まで読んでくれるようになる、とのことなので、気になる方は本書にて詳細をご確認のこと。
◆本書は一部を除いて、ビジネス文書で活用できるタイプの技法ではなく、どちらかというと、作文やエッセイ等で実践すべきものかと。
確かに上記ポイントの5番目の「換喩」の、「思い出の品で語る」手法は効果的だと思います。
また、こうしたブログやSNSでも使えますから、知っておいて損なことはありません。
問題は、知っていても意識して使わないと、すぐ忘れてしまうことなのですが……w
ワンランク上の文章を書きたい方に!
「超」実用的 文章レトリック入門 (朝日新書)
第1章 レトリックの戦場から
第2章 簡単で頻度が高いレトリック
第3章 人を惹きつけるレトリック
第4章 現代を映し出すレトリック
第5章 何かに喩えるレトリック
第6章 小技のレトリック
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