スポンサーリンク

       

2017年04月14日

【読書術】『「読む」技術〜速読・精読・味読の力をつける〜』石黒 圭


「読む」技術〜速読・精読・味読の力をつける〜 (光文社新書)
「読む」技術〜速読・精読・味読の力をつける〜 (光文社新書)



【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中の「春の光文社新書フェア」でも人気を集めている「読書術本」。

著者は先日『文章は接続詞で決まる』をレビューしたばかりの石黒 圭さんなのですが、実は今まで石黒謙吾さんとごっちゃになっていたという(恥)。

アマゾンの内容紹介から
「読む」のは「書く」より簡単、ではありません! 化石化した自分の読み方の癖に揺さぶりをかけ、新たな読みの引き出しを増やし、創造的な活動に結びつけるための8つの戦略を解説。

なお、中古が普通に高いため、セール期間内ならKindle版が400円弱お得となります!






Bank Station, London / markhillary


【ポイント】

■1.読みのプロセスの4段階
 第一段階の「画像取得活動」というのは、文字列を脳内に取りこむ活動のことです。白い紙に印刷された黒い文字を画像として取りこまないと、私たちの読解活動は開始しません。読む材料があって初めて読解活動は成立します。
 第二段階の「文字認識活動」というのは、画像として脳内に取りこまれた文字を、文字として認識する活動です。私たちが知らない文字に出会うと、思考が停止して読解活動が進みません。「文字認識活動」ができないからです。(中略)
 第三段階の「意味変換活動」というのは、文字列を意味に変換する活動です。ここでは、脳内の辞書と文法が活躍します。日本語ではあまり意識しませんが、外国語、たとえば英語を読むときには言葉の意味と文法がわかることの重要性を痛感します。26文字のアルファベットがわかったからといって、英語が読めるようになるわけではありません。(中略)
 第四段階の「内容構成活動」というのは、脳内の辞書と文法によって意味に変換した文字列を、すでに私たちの頭のなかにある知識やその場の状況(あるいは文脈)と結びつけ、実感をともなうイメージを構成する活動のことです。


■2.これから読む文章のスキーマを用意しておく
 以上見てきたように、これから読む文章のスキーマがわかれば、その文章を速く正確に読むことができます。
 スキーマを知るもっとも簡便な方法は、本の書名、記事の見出し、メールの件名、論文の目次などを見ることです。文章の冒頭に示されるこれらのものは、文章の究極の要約として機能し、読むかどうかの選別に役立つだけでなく、実際に読みはじめたときの内容理解の補助的スキーマとして機能します。
 また、文章の書き出しの一文も注意して見るくせをつけておくと、文章の内容が速く正確に読めるようになります。


■3.漢字だけを拾えば速く読める
 日本語の表記には「漢語は漢字、和語はひらがな」「実質語は漢字、機能語はひらがな」という二大原則があり、書き手はそれに、「常用漢字かどうか」「読者の年代や専門性」「漢字とひらがなのバランス」「自身のこだわりや好み」を加味して決めているのが普通です。(中略)
 私自身が文章を書くときは、「実質語は漢字、機能語はひらがな」という原則を基本的に最優先にしています。速読する読者がいることを念頭に置いているからです。つまり、漢字だけ拾っていけば、文章の内容がだいたいわかるように書いているわけです。なお、実質語というのは名詞・動詞・形容詞のような実質的な意味を担う言葉、機能語というのは助詞・助動詞・形式名詞・接続詞のような文法的な機能を担う言葉です。副詞については判断に迷うことも多いのですが、基本的には機能語として考えています。


■4.指示詞と接続詞をたどってつながりを把握する
 指示詞は接続詞とともに、文章を単なる文の集合ではなく、文の連鎖として理解させる働きを持っています。書き手は、無数の文を紡いで一つの文章を作りあげていきますが、その紡いだ軌跡が指示詞と接続詞に形となって残っているわけです。したがって、指示詞と接続詞をたどっていけば、文章のなかで展開された書き手の思考の筋が見えてきます。
 とくに指示詞を追っていくと、その文章の中心となっている話題、この文章では「マナー」がどのように文を超えて引き継がれ、どのような帰着点に至ったかがわかります。その意味で、第四章でも見たように、速読のさいにも着目すべき要素です。


■5.筆者の隠れた意図に注意する
 述べられている事実は同じです。違うのは、引用内容に引き続いて用いられている述部です。市長に疑惑が感じられる前者の文章では「うそぶく」「言い捨てる」「言葉を濁す」「声を荒げる」「言い放つ」「捨て台詞を吐く」という悪意のある言葉が使われています。一方、毅然とした対応と受けとれる後者の文章では「語る」「断言する」「返答される」「応じられる」「述べる」「話す」という中立的な表現が使われています。
 つまり、「 」に入った引用内容は変えなくても、引用動詞さえ変えれば、発言者にたいして悪感情を持たせることができるのです。読み手が引用動詞に着目して行間を読んでしまうと、市長に反感を抱かせ、あわよくば市長を失脚させようとする筆者の術中にはまることになります。このような操作をする新聞や雑誌には注意が必要です。筆者の隠れた意図を敏感に察知できるようになると、事実を曲解して伝える、記者の主観を忍ばせた文章のウソを見ぬけるようになります。


【感想】

◆本書は、そのタイトルにもあるように「速読」「精読」「味読」という3つの読み方について言及しています。

まず「速読」はその名の通り「速く読む読み方」であり、「精読」は「ゆっくり読んで深く理解する読み方」。

一方「味読」は、「文章を味わう読み方」であり、本来「文芸作品」等で用いられるべきものでしょう。

目的や用途に応じて、どれも大事なのですが、当ブログの読者さんにとって、一番興味があるのは、やはり「速読」ではないでしょうか。


◆その「速読」に関して、本書を読んで「なるほど」と思ったのが、一般的に速読術の本では、上記ポイントの1番目にある「画像取得活動」と「文字認識活動」に焦点を当て、そこをトレーニングすることが多い、という指摘です。

確かにそもそも「画像」が目に入らなければ読みようがないですし、それが「文字」として認識できなければ、「漢字」を「アート」と捉えてしまう欧米人と変わりありません。

そういう意味では、速読教室等で、まず「目の動かし方」から習い、反復練習によって「目の筋肉を鍛える」というのは、あながち間違ってないワケです。

そして、いざ「文字」が認識できても、読むことができるようになれないのは、上記ポイントの1番目にもあるとおり。

英語が読めるようになるには、アルファベットだけでなく、その先の「語彙」や「文法」も必要になるのは当然ですし、小学生のムスコが国語の問題で解いている「登場人物の気持ち」を答えるような問いには、さらに先の「内容構成活動」まで行う必要があります。

ちなみに速読教室では、同じ題材を繰り返し読むことによって、「意味変換活動」と「内容構成活動」を割愛しているのではないか、と。


◆続くポイントの2番目では「スキーマ」が登場していますが、意味が広すぎて分かりにくい気が……。

スキーマ - Wikipedia

このうち、文章理解の際に働く「内容スキーマ」とは、「インターネット上の記事やサイトの整理に用いられるカテゴリのようなもの」と、本書では言われています。

要は「結局、何の話?」ということでしょう。

たとえば
 鉄のくさりを両手で握って、行ったり来たりをくり返す。最初はゆっくりしているが、次第に速くなる。
とだけ言われても、何のことだか分かりません。

ところがこれが「ブランコ」の話だと聞くと、その瞬間にスキーマが働いて、一気に腑に落ちるという次第。

速読する際に、目次や小見出し、冒頭の行に注意をするのは、こういう仕組みがあるからなんですね。


◆同じく上記ポイントの3番目では「漢字」にフォーカスすることが提案されていますが、これは類書でも読んだ記憶がありますから、ご存知の方もいらっしゃるかと。

……「実質語」とか「機能語」なんて話は、今回初めて知りましたがw

また、上記ポイントの4番目の「指示詞」(いわゆる「こそあど言葉」ですね)と「接続詞」の話も、言われてみれば「なるほど確かに」。

なお、接続詞については、先日ご紹介したばかりのこの本で詳しく触れられているので、本書では「指示詞」を中心に解説されています。

文章は接続詞で決まる (光文社新書)
文章は接続詞で決まる (光文社新書)


参考記事:【文章術】『文章は接続詞で決まる』石黒 圭(2017年04月11日)

……この本も20日までならセール価格ですよ(小声)。

正直、この辺は、具体例と一緒に読んでもらう方が分かりやすいので、本書にて直接ご確認いただきたく。


◆その具体例でいうなら、上記ポイントの5番目の「引用動詞」の例は、読んでみて、明らかに筆者の「意図」が感じられるものでした。

長くなるので上記では割愛しましたが、最後の1文だけ両方を引用してみると、このような感じです。
またあらためて取材に来る旨を告げたところ、「お出でになるなら、きちんとした証拠を持ってきてほしい」と言い放ち、「そうでなければ、取材には応じられない」と捨て台詞を吐き、その場を立ち去った。
またあらためて取材に来る旨を告げたところ、「お出でになるなら、きちんとした証拠を持ってきてほしい」と述べ、「そうでなければ、取材には応じられない」と話し、その場を立ち去った。
……うーん、悪感情を持たせる意図がありありw

なお、この部分は「速読」とは違うのですが、本来本書はその大部分(ざっくり言って2/3?)は、「精読」と「味読」のお話ですから、「速読」を期待してお読みになる方はご留意を。

と言いますか、「速読」以外の読み方の方が、学ぶ機会が少ないので、むしろそちらを目的として読んでもらう方が良いかもしれません。

……私は文芸作品を読む余裕がないので、活用しようがないのですが。


ワンランク上の「読む技術」が得られる1冊!

「読む」技術〜速読・精読・味読の力をつける〜 (光文社新書)
「読む」技術〜速読・精読・味読の力をつける〜 (光文社新書)

 序章 なぜ「読む」技術を鍛えるのか

第1部 読みの理論
 第1章 「読む」ということ
 第2章 「読む」技術の多様性

第2部 速読―速く効率的に読む技術
 第3章 話題ストラテジー―知識で理解を加速する力
 第4章 取捨選択ストラテジー―要点を的確に見ぬく力

第3部 味読―文章世界に自然に入りこむ技術
 第5章 視覚化ストラテジー―映像を鮮明に思い描く力
 第6章 予測ストラテジー―次の展開にドキドキする力
 第7章 文脈ストラテジー―表現を滑らかに紡いで読む力

第4部 精読―深く多面的に読む技術
 第8章 行間ストラテジー―隠れた意味を読み解く力
 第9章 解釈ストラテジー―文に新たな価値を付与する力
 第10章 記憶ストラテジー―情報を脳内に定着させる力


【関連記事】

【文章術】『文章は接続詞で決まる』石黒 圭(2017年04月11日)

【読書術】『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』印南敦史(2016年03月07日)

【読書術】『本をサクサク読む技術 - 長編小説から翻訳モノまで』齋藤 孝(2015年08月08日)

【読書術】『「深読み」読書術: 人生の鉱脈は本の中にある』白取春彦(2015年01月23日)

【速読】「すごい速読術」斉藤英治(2008年08月04日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

3時間でわかるこれからの電力業界 ―マーケティング編―5つのトレンドワードで見る電力ビジネスの未来 (NextPublishing)
3時間でわかるこれからの電力業界 ―マーケティング編―5つのトレンドワードで見る電力ビジネスの未来 (NextPublishing)


中古にプレミアが付いている作品が「69%OFF」なので、「Kindle版が1300円強お買い得」なのはいいんですが、オンデマンド版が224ページしかないので、ページ数的には、実質「50%OFF」くらいかな、と。

それと、レビューが提灯記事っぽいんですよね〜w

……と、今日ご紹介した本を参考にして、「行間を読んで」みましたw


【編集後記2】

◆昨日までの予定だったCCCメディアハウスさんのセールが、「値引き」から「ポイント還元」に代わって継続中です。



【60%OFF】CCCメディアハウス「新生活のためのビジネス書 特集」開催中!【Kindle】(2017年04月06日)

いつまで続くかはまったく分からないので、買い損ねた方や、今セールを初めて知った方は、お早めに!


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

この記事のカテゴリー:「読書・速読」へ

「マインドマップ的読書感想文」のトップへ

スポンサーリンク




               

この記事へのトラックバックURL


●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。