2017年04月05日
【交渉術】『本当に賢い人の 丸くおさめる交渉術』三谷 淳
本当に賢い人の 丸くおさめる交渉術
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、4月の「Kindle月替わりセール」にて個人的にチェックしていた1冊。「交渉術」は当ブログでもコンスタントな人気がありますから、気になった方も多いと思います。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
頭がいい人はケンカしない──「日本一裁判しない弁護士」と呼ばれる円満解決のプロが、超一流の人と1万件の交渉から学んだ、仕事も人間関係も円滑に行く「丸くおさめる交渉術」を初公開! ビジネスでもプライベートでも一生使える交渉スキル、教えます! 誰もが気づかないうちに、毎日たくさんの交渉をしています。交渉上手になれば、お金も仲間も手に入り、人生が好転します!
中古はそれなりにしますから、送料を考慮すれば、このKindle版が500円弱お買い得です!
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【ポイント】
■1.相手を喜ばせて自分も得をする交渉は成功したわけですが、そのときあなたが、
「うちは他にもいくらでも仕入れる先があるんだから5%値下げしないとおたくとは取引しないよ」
などと値下げを強要していたとしたら、相手は
「値下げを無理強いされて、不当な条件をのまされた」
と思ってしまいます。
これでは相手を喜ばせたことになりません。
しかし、あなたが
「御社は当社にとって本当に大切な仕入れ先なんです。これまでは年間10トン程度の取引でしたが、向こう3年間、年間15トン以上仕入れさせていただくことを保証しますから、5%の値下げをお願いできませんか。うちも競争力のある製品を作るために努力しますのでぜひ協力してください。今後とも末永いお付き合いをお願いしたいのでお願いします」
とお願いしたとしたら、相手も前向きな気持ちで値下げを検討してくれるはずです。
■2.図々しい条件から始めない
交渉の最初の段階ではとんでもなく図々しい条件を出して、そのあと少しずつ譲歩していけばいいと考える人はたくさんいますし、実際に欧米流の交渉術ではそのように教えるものが多いようです。
しかし、私は、交渉を丸くおさめるためには、できるだけかけひきをしないことをおすすめしています。(中略)
図々しい条件からかけひきをすることは、無限に段階のある価格の中から、どこまでであれば自社に有利な条件を受け入れてもらえるかという果てしない作業を繰り返すことになるのに対し、最初から掛け値なしの本音を提示すると、いきなりこの条件を受け入れるか否かの二者択一を迫ることができるのです。
■3.必ずしも合意する必要はない
自分の営業成績や自社の利益だけを考えると、無理をしてでも自社の商品やサービスを売りたくなりますが、相手が断りたいと考えているときは上手な断られ方をしましょう。相手にとって本当に役立つのは他社製品だと感じた場合には思い切って他社製品を勧めてあげてください。
大切なことは今売ることよりも相手との縁を切らないことです。
今は相手にニーズがなくても、いずれニーズが生まれることもありますし、交渉相手の知り合いにあなたの商品が必要な人が現れるかもしれません。
うまく縁をつなげておけば、こんなときに必ずあなたに声がかかります。
あなたが断る場合も同じです。たとえ、これまで長年続けてきた取引を中止せざるを得なくなったとしても、将来また取引が再開となることもあり得るのですから完全に関係を遮断するのではなく、取引は切れても気持ちではつながり続けるような断り方を考えてみてください。
■4.バトナは複数用意する
先のシステム会社K社との交渉の例で、あなたがインターネットでパソコンの相場が1台15万円くらいだと調べただけだった場合、K社が「では1台15万円で納めましょう」と言ってきたら、「それくらいが相場なのだから仕方ないかな」と考えてしまうかもしれません。
しかし、別のL社にも見積もりをしてもらったところ、1台14万円で納入してくれることがわかったとしたら、K社に対しては「14万円より安くなりませんか」と交渉することができます。
バトナは多ければ多いほど良いですし、複数のバトナを用意するのであれば、できるだけ条件の良いバトナを用意してください。
同じ機種のパソコンをネットショップでは13万円で買うことができるし、パソコンのLAN配線や設定は、一緒に独立する同期の仲間に詳しい人がいるので自分たちでもできるということになれば、もっと有利に交渉を進めることができるのです。
■5.過去のことではなく将来のことだけを話す
では、なぜ交渉においては、将来のことだけを話すべきなのでしょうか。
それは、交渉の目的は常に、自分と相手が今後どのような関係を持つかという将来の条件を合意することにあるからなのです。
ところが、いざ交渉が始まると、少しでも自分に有利な条件で合意するために、つい「悪いのは相手だ」「以前もこんなことがあった」「こんどは相手が譲るべきだ」などと過去の話を持ち出してしまいがちです。(中略)
過去の話は感情論になりがちですが、将来どうするかに焦点を当てると、お互いが経済的な損得、すなわち「勘定論」で語れるようになります。今後のお互いのためには、こうした方がいいですね、という前向きな話し合いができ、円満決着を図れますので、禍根を残さず、また顔を合わせたときにも友好的な関係を続けることができるのです。
【感想】
◆本書はいわゆる「弁護士さんによる交渉術」の本なのですが、タイトルにもあるように「丸くおさめる」のがテーマです。何せ著者の三谷さんは「日本一裁判しない弁護士」と呼ばれるお方(エビデンスはありませんがw)。
とにかく三谷さんご自身は、「裁判を起こして勝訴する」のではなく、「話し合いでスピーディに解決する」ことを基本方針としているのだとか。
というのも、かつては裁判で勝利を重ねたものの、相手の恨みを買うこともあってか、クライアントの満足度はあまり高くなかったから。
今では「相手を打ち負かす交渉」ではなく、「相手が喜び、自分も得する交渉」を心掛けているのだそうです。
◆それが如実にあらわれているのが、上記ポイントの1番目。
価格だけを争点とするのではなく、他の条件を加えて交渉を進めています。
ここでは「取引期間(数量)」が加わっていますが、他にも「納期」や「支払い条件」等も考えることは可能なハズ。
なお、こうして取引を長期化することによって、取引先が「あそこの会社はいいよ」と口コミで広めてくれることも狙っている模様。
……もっとも、そうなると「ネガティブな口コミ」も怖いですから、当然相手にとって無理な要求は、しにくくなるワケですが。
◆また、ユニークだったのが上記ポイントの2番目。
そこでも言われているように、類書ではある程度「ふっかけた」状態からスタートすることを勧めているものが多いです。
なぜなら最初に言った条件(特に金額)が、「アンカリング」となるから。
アンカリング - Wikipedia
ただ、最初に吹っかけておいて、そこから譲歩すると、相手は「これだけ譲歩できたのだから、まだ譲歩できるはず」と交渉が長期化し、かつ、結果も不利になる、と三谷さんは言われています(詳細は本書の実例にて)。
一方、本書で推奨するやり方は、妥協できないギリギリの条件を最初から言って、それで取引するかしないかの「二者択一」を迫るというもの。
確かにこれだと「長期化」することはないものの、結果についてはケースバイケースのような気もしますが……。
個人的には、「吹っかける」必要はないものの、「1回くらいは譲歩する」余裕はあった方がいいんじゃないか、と思ってみたり(素人考えですが)。
◆そして上記ポイントの3番目は、似たようなこと(他社を薦める)を、顧客サービスで有名ないくつかの小売店では実際にやっていたと思います。
このTIPSも、「サービス本」では目にしたことがありますが、まさか「交渉術本」に登場するとはw
なるほどこうすることによって、交渉相手と将来的に取引が生まれる可能性もありますし、他を紹介してくれることもあるかもしれません。
なお本書の第5章では、この部分をもっと掘り下げた「ご縁をつなげる上手な断り方」や「ご縁が切れない上手な断られ方」という節もありますから、気になる方はこちらにてご確認を。
◆さらに本書の第6章では、「ケース別! 丸くおさめる交渉 実践例」と題して、ケーススタディが5つほど。
「価格交渉」「納期交渉」「クレーム処理」「社内の上司・部下交渉」「電話やメールでの交渉」と、どれもビジネスシーンでは起こりえるものばかりです。
ただし収録されているのが上手くいっている例だけなので、自分でも簡単にできそうに思えてしまうのがちょっと怖いな、とw
あくまで三谷さんは、弁護士さんで、かつ、1万件以上の交渉をされているのですから、その辺は割り引いて考えていただきたいところです。
交渉をうまくまとめたい方に!
本当に賢い人の 丸くおさめる交渉術
第1章 丸くおさめると仕事も人間関係もうまくいく
第2章 丸くおさめる交渉で大切な3つのこと
第3章 どんな難問もスピード決着する技術
第4章 相手が思わずYESと言ってしまう交渉戦略
第5章 相手も自分もトクする交渉の極意
第6章 ケース別! 丸くおさめる交渉 実践例
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【交渉術】『プロ弁護士の「心理戦」で人を動かす35の方法』石井琢磨(2013年07月29日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント (文春新書 868)
中古がほぼ底値なので、お買い得でもないのですが、下記のとおりレビューしていますので一応。
400円しないで読める作品としては、悪くないと思います!
ご声援ありがとうございました!
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