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2017年04月03日

【抽象化?】『具体と抽象』細谷 功


具体と抽象
具体と抽象



【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨日記事にした4月分の「Kindle月替わりセール」でも個人的に気になっていた1冊。

「地頭力」で知られる細谷 功さんが、私たちビジネスパーソンが知っておくべき「思考術」を指南してくれています。

アマゾンの内容紹介から。
永遠にかみ合わない議論、ヘイトスピーチ、ネットでの炎上。その根底にあるのは「具体=わかりやすさ」の弊害と、「抽象=知性」の危機。動物にはない人間の知性を支える頭脳的活動を「具体」と「抽象」という視点から検証。具体的言説と抽象的言説のズレを四コマ漫画とシンプル図解で表現。

なお、中古にはプレミアが付いていますから、今月中なら1200円以上お得なこのKindle版がオススメです!





summary / Payton Chung


【ポイント】

■1.「具体⇔抽象」の往復運動をする
 たとえ話のうまい人とは「具体→抽象→具体という往復運動による翻訳」に長けている人のことをいいます。
 うまいたとえ話の条件を考えてみましょう。
(1)たとえの対象がだれにでもわかりやすい身近で具体的なテーマ(スポーツやテレビ番組など)になっている。
(2)説明しようとしている対象と右記テーマとの共通点が抽象化され、「過不足なく」表現されている。
「抽象化の品質」を決めるのが2点目の条件です。共通点が、他にはあてはまらないような共通点であること、そして、2つの領域の相違点が、説明したいポイントとは関係ないものであることが必要です(そうでないたとえ話はフィット感がなく、「なんかちょっと違う」となります)。
 つまり、「共通点と相違点」を適切につかんでいることが抽象化、ひいてはたとえ話の出来映えを決定するというわけです。


■2.相手の「自由度」を意識する
 人に仕事を頼んだり頼まれたりするときにも、その人の好む「自由度の大きさ」を考慮する必要があります。
「こんな感じで適当にやっといて」と言われて、「いい加減な『丸投げ』だ」と不快に思う人は、具体レベルのみの世界に生きる「低い自由度を好む人」です。こういうタイプの人に、自由度の高い仕事の依頼をしたあとに、「たとえばこんな形で」と具体的なイメージの例を伝えてしまうと、それを「たとえば」にならず、文字どおり「そのまま」やってしまいます。「たとえば」によって抽象度を下げて上位の概念を伝えようとしている意図が、まったく伝わらないからです。
 逆に、自由度の高い依頼をチャンスととらえ、「好きなようにやっていいんですね?」とやる気になる人が、「具体⇔抽象」の往復の世界に生きる「高い自由度を好む人」です。


■3.上流と下流では必要な観点が違う
 上流の仕事は、コンセプトを決めたり、全体の構成を決めたりする抽象度の高い内容なので、分割して進めるのは不可能です。これが下流に進むにつれて具体化され、(ピラミッドを下っていくイメージで)作業が飛躍的に増えていくとともに、作業分担も可能になっていきます。同時に、求められるスキルも変わってきて、「全体を見る」よりは個別の専門分野に特化して深い知識を活用する能力が求められていきます。
 建築物の全体構想から個別(フロア別、部屋別)の設計、施工の流れを想定すれば、イメージが明らかになるでしょう。
 上流の仕事は個人(さらにいえば、最上流は1人)の作業から始まって、次第に参加者が増えていきます。上流で重要なのは個人の創造性で、下流で必要なのは、多数の人数が組織的に動くための効率性や秩序であり、そのための組織のマネジメントやチームワークといったものの重要性が相対的に上がっていきます。


■4.アナロジーとは「抽象レベルのまね」
 先進企業や競合他社のアイデアをまねする行為は、具体レベルで見た目のデザインや機能をまねすることであり、これは単なる「パクリ」となります。見た目が似ているものを「盗む」と、だれにでも気づかれ、かつ斬新なアイデアとはなりません。また場合によっては特許侵害となり、法律上も問題になります。
 アナロジーとは、「抽象レベルのまね」です。具体レベルのまねは単なるパクリでも、抽象レベルでまねすれば「斬新なアイデア」となります。ここで重要になるのが、第5章で述べた「関係性」や「構造」の共通性に着目することです。
 科学や技術的な発見、あるいはビジネスのアイデアなども多くは抽象レベルでのまね(アナロジー)から生まれています。たとえば活版印刷機はブドウ圧搾機から、回転寿司はビールのベルトコンベアから、あるいは生物からヒントを得た工業製品も数多くあります。


■5.情報をさまざまな抽象レベルで理解しておく
 具体レベルのみで考えている人は、500ページの本を3分で説明してほしいと言うと、「時間がないので最初の3章だけ」か「各章のはじめの部分だけを抜き出す」という選択肢しかありません。(中略)
 抽象化して話せる人は、「要するに何なのか?」をまとめて話すことができます。膨大な情報を目にしても、つねにそれらの個別事象の間から「構造」を抽出し、なんらかの「メッセージ」を読み取ろうとすることを考えるからです。
 しかもそういった「構造」や「メッセージ」を複数の階層からなる抽象のレベルで理解しているので、1分なら1分なりの「要するに」を、30分なら30分なりの「要するに」を話すことができます。(中略)
 重要なことは、膨大な情報を目の前にしたとき、その内容をさまざまな抽象レベルで理解しておくことなのです。


【感想】

◆タイトルから内容が想像しにくい1冊でした。

とはいえ、タイトルが内容とアンマッチなわけではなく、むしろまさに「モロにそのまんま」なのですが、書店でタイトルだけ見て、内容が分かった方がどれだけいるのやら。

私も以前、本書をリアル書店で見かけたものの「なんか難しそうだな」とスルーしていました(ダメじゃんw)。

実際日常生活において、「具体」とか「抽象」という言葉を多用している人は、まずいないでしょう。

……最も支持されたレビューのタイトルが「もっと具体まで落としたタイトルを(笑)」というのが、言いえて妙ですがw


◆ただし本書の内容は、本当は私たちの生活や仕事に直結するもの。

特に上記ポイントの2番目にあるように、「自由度の高い仕事」の「具体的なイメージの例」を1つでも伝えてしまうと、それが「そのまま行われてしまう」というお話は、先日のこの本でも触れられていました。

誰も教えてくれない 質問するスキル(日経BP Next ICT選書)
誰も教えてくれない 質問するスキル(日経BP Next ICT選書)


参考記事:【オススメ】『誰も教えてくれない 質問するスキル』芝本秀徳(2017年03月30日)

結局「たとえば〜」と伝えたツモリが、受けた方が「具体的には〜」だと考えてしまったということかと。

上記の本をお求めいただいた方には、おそらく本書の内容は、素直に腑に落ちると思います。


◆この「具体」と「抽象」のお話が、如実に表れているのが、上記ポイントの5番目でしょうか。

「要するにどういうことなのか」がサクっとまとめられるのは、高度な「抽象レベル」のなせるワザです。

さらには、「1分」「3分」「30分」といった「時間のボリューム」に合わせてまとめるためには、「さまざまな抽象レベル」で理解しなくてはなりません。

今まで、時間量ごとにまとめる切り口というのは、「話す内容のボリュームレベル」なのかと思ってましたが、この「抽象レベル」だったんですね!(←今さらw)

話をまとめるのが苦手な方は、本書の第15章「階層」をぜひご覧ください。


◆なお本書は、各章ごとにピラミッド図による「具体」と「抽象」の解説が付されています。

こちらはあった方が理解しやすいのでありがたいのですが、同じく各章ごとの4コマ漫画は、「なるほど」と思うものと、そうでないものの差があるようなw

というか、そもそもこの図や漫画のテイスト(表紙のイラストを参照のこと)の「とっつきやすさ」と、本の中身とがアンマッチだと思うワタクシ。

結構深いお話がされていますから、心して読んでくださいマセ。


気になる方は「月替わりセール」の対象期間中に買うべし!

具体と抽象
具体と抽象

序章 抽象化なくして生きられない
第1章 数と言葉
第2章 デフォルメ
第3章 精神世界と物理世界
第4章 法則とパターン認識
第5章 関係性と構造
第6章 往復運動
第7章 相対的
第8章 本質
第9章 自由度
第10章 価値観
第11章 量と質
第12章 二者択一と二項対立
第13章 ベクトル
第14章 アナロジー
第15章 階層
第16章 バイアス
第17章 理想と現実
第18章 マジックミラー
第19章 一方通行
第20章 共通と相違
終章 抽象化だけでは生きにくい


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【マッキンゼー流思考術?】『思考を広げる まとめる 深める技術』太田薫正(2014年05月29日)


【編集後記】

◆昨日の今月の「Kindle月替わりセール」の記事で人気だった作品をご紹介しておきます。

科学的に元気になる方法集めました
科学的に元気になる方法集めました


世界で一番やさしい会議の教科書(日経BP Next ICT選書)
世界で一番やさしい会議の教科書(日経BP Next ICT選書)


ドキュメント 銀行 金融再編の20年史─1995-2015
ドキュメント 銀行 金融再編の20年史─1995-2015


上2冊は分かるのですが、最後の1冊は当ブログとしては結構意外な気が……!?


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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