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2017年03月31日

【英語】『一生モノの英語力を身につけるたったひとつの学習法』澤井康佑


一生モノの英語力を身につけるたったひとつの学習法 (講談社+α新書)
一生モノの英語力を身につけるたったひとつの学習法 (講談社+α新書)



【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて一番人気だった英語勉強本。

お手軽な「裏ワザ」等とは真逆とも言える「正攻法」のやり方が、全編を通して展開されている1冊です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
英語学習の世界を知り尽くした著者が、一生使える本当の英語力を身につけるための学習法を示す。
必ず英語力が身につく最良の参考書も厳選。
英語を本気で身につけたい人、必読!!

なお、本日から配信されているKindle版は、講談社さんにしては珍しくお買い得なので、こちらもお見逃しなく!





In studying English. / CanadaPenguin


【ポイント】

■1.文法学習は「量から逃げない」
 初期の文法学習において、最も大切なことの1つは「量から逃げない」ということです。第1章で確認した通り、英語話者は、膨大な量の文法知識を用いながら英語を駆使しています。よって、繰り返しになりますが、彼らが書いたり話したものを理解し、また彼らと同じように書いたり話したりするためには、われわれも、ネイティブが深層の部分で持っているのと同じだけの、膨大な量の文法知識を獲得しなくてはなりません。
 とにかく英語学習においては、どこかの段階で覚悟を決めて、緻密に分類された文法知識を大量に身につけなければ、普通の人は高みに達することができないのです。これが揺るがしがたい現実なのです。第1章で見た西脇順三郎の発言「英文法を徹底的にやれ」も思い出してください。


■2.「読む」がすべての基本
 文法の基礎力を固めたら、次に行うべき作業は、何よりも「読解演習」です。「読む」「聴く」書く」「話す」の4つの技能のうち、「読む」がすべての基本だからです。(中略)
 しばしば、「日本の英語教育では、文法と読解に力をかけすぎているので、読むことはできても話せない」というようなことが指摘されますが、これは現実を大きく見誤った批判です。実際のところは「文法と読解の学習があまりにも不十分なので、読むことができない文が多すぎる。よって聴くこともできないし、書ける文、話せる文も、短いもの、簡単な内容のものに限られてしまっている」という状況です。(中略)
残念ながら、日本の9割以上の英語学習者は、「読めるけど話せない」というような高いレべルからは程遠いところにいます。「そもそも読めない」のです。読解力があまりにも足りないがゆえに、その後の大きな発展のための道が開かれていないまま、停滞してしまっているのです。


■3.リスニングは手元にスクリプトを置いて行う
 理想のリスニング演習の方法は、まずは音声を聞き、何を言っているのかを考え(できれば紙に書き)、英文を見て答え合わせをする、という方法です。読み上げられている英文のスクリプト(script:英文が書かれたもの)が手元にない状態でリスニング演習をしても、ほとんど意味がありません。一言一句をチェックするという、緻密な答え合わせの作業が必要なのです。
 さて、答え合わせをする際に、高度な読解力、そして豊かな語彙力があれば、主体的に学ぶことができます。聴き取れなかった箇所、理解できなかった部分に対して、次のように反応できるのです。
「この表現は文字で見れば瞬時に理解できるけど、音になると弱いな。"文字としての認識"と"音としての認識"に隔たりがある表現だ。音としてもとらえられるようになろう」(後略)


■4.単語集、熟語集を利用して「和→英」の練習をする
 単語集、熟語集の典型的な利用の仕方は、和訳の部分を隠して、訳せるかをチェックしていくという方法です。ただ、「話せる」ためには、基本レべルの単語集、熟語集に載っている語彙は、英作文で「自分で生み出せるもの」にまでしなくてはなりません。
 たとえば、多くの単語集にdefect(欠点)という語が掲載されていますが、この言葉は、人と話していて、いつ必要になるかわからない基礎レべルのものです。つまり、「話せる」を目標にするのなら、この語に関しては「英→和」だけでなく、「和→英」にも対応できなければなりません。
 基礎語彙をまんべんなくアウトプットできる状態にするためには、単語集、熟語集を利用して、「英→和」のみならず「和→英」の作業も実行してください。つまり和訳のほうを見て、単語、熟語が言えるかをチェックするのです。


■5.ひたすら音読と筆写をする
 意味を理解した英文を、内容を考えながら、感情を込めて、気合を入れて、何十回、何百回も音読し、書き写すことにより、確実に英語のセンスが身についていき、恐れのようなものが少しずつ氷解していきます。先の引用でも、「こうすると、自分の中に英語の回路が作られていき、通訳の現場に臨む心と身体の準備が出来上がるのです」と述べられていますが、「同時通訳の神様」とも呼ばれた國弘正雄でさえも、音読・筆写という、実に平凡で単純な作業に頼り、英語の感覚を磨いているということがわかります。


【感想】

◆冒頭でも触れたように、思いっきり「正攻法」なやり方が展開されている作品でした。

帯に「『達人』たちもこの道を通ってきた」とありますが、本書では語学学習の大家たちが何人も登場し、その秘訣を明かしているという。

上記ポイントでもこのお二方が登場していますが……。

西脇順三郎 - Wikipedia

國弘正雄 - Wikipedia

上記ポイントでは登場しないものの、その最高峰とも言えるのが、「超人」井筒俊彦氏でした。

井筒俊彦 - Wikipedia

上記Wikipediaでも「アラビア語、ペルシャ語、サンスクリット語、パーリ語、ロシア語、ギリシャ語、中東(特にイラン)等の30以上の言語を流暢に操り」とあるように、日本人として、というよりも、世界的に見ても稀にみる語学の天才だった模様。

……私は本書を読むまで、そのお名前すら知らなかったのですが。


◆そして、これら「達人」が行ってきた勉強法というのが、「辞書を丸暗記するほどの語彙習得」と「徹底的な文法習得」(詳細は本書を)。

これは以前からたびたび批判されてきた「受験勉強法」に近いものです。

要は「魔法のような英語学習法は存在しない」「膨大な量の努力抜きでの英語習得などありえない」というのが本書の主張。

それでも、英語を勉強していく過程で「何か特別な勉強法があるのではないか」という気持ちになり、「ワープのような道」を求めてしまいたくなったら、「この本を読め」とのことです。

英語達人列伝―あっぱれ、日本人の英語 (中公新書)
英語達人列伝―あっぱれ、日本人の英語 (中公新書)


この本を読むと「奇跡のような勉強法などどこにもない」ことが分かるのだそう。


◆さて、こうした「達人たちのアドバイス」とともに、本書で数多く登場するのが「おすすめの参考書」群。

巻末にリストとしても列挙されている(立ち読みで確認するのに便利w)ものの、本文では「なぜおすすめなのか」「どう使うべきか」等々が解説されていますから、やはりそちらをお読みいただきたいところです。

ちなみに今度中2になるムスメが、壊滅的に英語ができないので、本書で推薦されているこの2冊を購入したのですが。

基礎がため 一生モノの英文法 BASIC MP3 CD-ROM付き
基礎がため 一生モノの英文法 BASIC MP3 CD-ROM付き


プログレッシブ中学英和辞典
プログレッシブ中学英和辞典


決め手となったのは、本書に「特に英語に対する苦手意識が強く、とにかく何が何でも救われたいという方、あるいは英語を学び始めて間もないという方」は、「他のどの書籍よりも、まずはこの2冊から」という一文があったから(本書の第7章「辞書活用術」をご参照のこと)。

もちろん、こんな初学者向けではない、はるかに高度な参考書もガンガン登場していますから、中級以上の方もきっとご満足いただけると思います。


◆ところで第8章では「ネイティブスピーカー」について掘り下げており、ここも非常に勉強になりました。

一般的に英会話学校等では、「ネイティブスピーカー」の先生の方が優れている、と授業を受ける側としては考えがちですが、果たしてそうなのか、と。

たとえば私たち日本人が、日本語を学ぶ外国人から「なぜ『風』は『冷たい風』でも『寒い風』でもいいのに、『ビール』は『冷たいビール』であって、『寒いビール』と言えないのか?」と聞かれたら、おそらく答えられないでしょう(私はできませんでした)。

つまり「母語として操る能力がある」という事実は、「その言語が運用されているメカニズムを説明する能力がある」ということに自動的に結びつくわけではありません。

同じことが英語にも言えるわけで、英語のネイティブスピーカーのほぼ全員が、日本語を母語とする英語初級者に対して、効果的な指導を行えないのだそうです(やさしい短文を除く)。

では逆に、どういうときにネイティブスピーカーが頼りになるか、というと、学習者が中級、上級になったときの「添削係」「質問の回答者」として。

一定レベル以上になると、ある英文が本当に正しいかということは、どうしても母語話者でなくては判断できない部分が多いのだとか。


◆以上のように、本書は一般的に考えられている「英語学習法」とは、やや異なるものでした。

それだけに反発を覚える人や、ラクな方法がないことで失望される方もいらっしゃるかもしれません。

特に一般のビジネスパーソンは、愚直に英語学習に投下できる時間があるかの方が問題ですし、なかなか実践するにはハードルが高そうな……?

ただし、英語勉強本のブックガイドとしてはかなり秀逸だと思いますから、それ目当てで読むのもアリだと思います。


「骨太」な英語勉強法がここに!

一生モノの英語力を身につけるたったひとつの学習法 (講談社+α新書)
一生モノの英語力を身につけるたったひとつの学習法 (講談社+α新書)

第1章 なぜ高い文法力が必要なのか
第2章 英文法の学び方
第3章 なぜ高い読解力が必要なのか
第4章 語彙力をつけるには
第5章 英語を書く、英語を話す
第6章 すべてを統合する音読・筆写
第7章 辞書活用術
第8章 ネイティブスピーカーの限界と底力
第9章 英語に呑まれないために


【関連記事】

【英語学習】『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』田浦秀幸(2016年02月06日)

【英語学習】『7カ国語をモノにした人の勉強法』橋本陽介(2013年08月04日)

【英語】「英語学習7つの誤解」大津由紀雄(2007年08月19日)


【編集後記】

◆もう1冊ムスメ用に検討中なのがこちらの英単語本。

音声ダウンロード付 カラー改訂版 まるおぼえ英単語2600
音声ダウンロード付 カラー改訂版 まるおぼえ英単語2600


……本書で紹介されているせいなのか、現在在庫切れなのですが。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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