2017年03月10日
【裏話?】『「ヒットソング」の作りかた 大滝詠一と日本ポップスの開拓者たち』牧村憲一
「ヒットソング」の作りかた 大滝詠一と日本ポップスの開拓者たち (NHK出版新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」にてゲットした音楽本。ホントはこの本、レビューせずに単に1人で読んで楽しむつもりでいたのですが、昨日読了した某新刊Kindle本のハイライトが、一晩たっても「Your Highlights」に反映されないため、急遽登板願うことになりましたw
アマゾンの内容紹介から。
なぜ彼らの歌は色褪せないのか?シュガー・ベイブや竹内まりや、加藤和彦、フリッパーズ・ギター、そして忌野清志郎+坂本龍一の「い・け・な・いルージュマジック」など…、数々の大物ミュージシャンの音楽プロデュースを手掛け、今日まで四〇年以上業界の最前線で活動を続けてきた伝説の仕掛人が、彼らの素顔と、長く愛され、支持され続けるものづくりの秘密を明らかにする。
ある一定以上の年齢の方なら「なるほど、そうだったのか!」と「目からウロコ」となる1冊です!?
YMO in London / markhillary
【ポイント】
■1.大滝詠一「サイダー'73」放映秘話さて、「サイダー'73」はスタッフ間では好評だったのですが、直前になってクライアントから「作り直してほしい」と言われました。「蓄膿症みたいな声」という反応がありましたが、この言葉を半信半疑の思いで聞いたことを思い出します。 (中略)
最終的には、大滝詠一の「サイダー'73」をどうしても世に出したいというスタッフ全員の気持ちが阿吽の呼吸となって、代わりの曲が間に合わなかったこともあり(ひょっとして手続きを遅らせたのか)、とりあえず1週間だけという約束で大滝さんの「サイダー'73」がオンエアされることになったのです。
でも、本当はもっと強く大滝さんを守ろうとした人の意思が、そこには関わっていたのではないかという気もします。(中略)
オンエアされた大滝さんの「サイダー'73」には、ものすごい反響がありました。それでガラッと空気が変わり、あれほど頑なだったクライアントも「このまま続行」という判断を下しました。
■2.大貫妙子「ヨーロッパ路線」変更秘話
この4枚目のアルバムでの路線変更は、今から振り返れば思い切ったものだったと思います。前作ではアメリカ的世界観を前面に押し出していたにもかかわらず、その真逆とも言える「ヨーロッパ路線」でいこうというのですから。
僕はそのコンセプトは自分の胸の中だけにしまっておき、周囲にはいっさい伝えないことにしました。(中略)
そういう意味では、この『ロマンティーク』というアルバムは、1冊の本を作るように最初からタイトルもデザインも全部決め、隅々まで計算した緻密な設計をもとに作り上げていった作品と言えます。また前回のアルバムでは、船頭多くして船山に登るというような状況になってしまった反省から、今回はアルバムに関わるスタッフを極力少なくして進めることにもしました。アレンジをお願いするのも、坂本龍一さん、加藤和彦さんの2人だけに絞り、片面ずつ担当してもらうことにしたのです。
結果的に大貫さんはもともとあった彼女らしい音楽性に加え、吸収した膨大な情報を自分の血肉にすることで、素晴らしいアルバムを作り上げてくれました。
■3.YMO結成秘話
グループ結成のきっかけは次のようなものでした。アルファレコードから出された細野晴臣さんのソロアルバム『はらいそ』に収録されている「ファム・ファタール」という曲のレコーディング後のことです。参加していた高橋幸宏さん、坂本龍一さんとのセッションに満足した細野さんは、2人を自宅に招き、YMOの構想について話しました。(中略)
細野さんは「マーティン・デニーの曲『ファイアー・クラッカー』を、シンセサイザーによるディスコミュージックとして作ろう、それを全世界で260万枚売る」のが目標と誘ったのだそうです。
じつは「イエローマジック」構想は、細野さんの中で前々からあり、日笠さんは細野さんから「これからはブラックでもホワイトでもなく、イエローマジックだ!」と聞かされていたと言います。
■4.「い・け・な・いルージュマジック」完成秘話
「い・け・な・いルージュマジック」というタイトルが無事通ったことで火がついたのか、曲の仕上げはものすごい勢いで進みました。しばらくして坂本さんが「何か足らないと思わない?」と悩み始めました。
聴いてみて、僕は何が足りないのか、すぐに気づきました。そこで「アッコちゃんの『ほーら、春咲小紅』の『ほーら』がないですね。この曲にはそういう呼びかけがいるのでは?」と言うと、坂本さんは「そうそう、それそれ」と納得の顔です。(中略)
そこで、坂本さんは清志郎さんに「ここのところに、何か言葉入れて」と話をふりました。その言葉は「ベイビー」だと、みなわかっていたと思います。すぐに清志郎さんが鼻歌で「ベイベー、オー、ベイベー」と歌うと、そこにいた全員の笑顔が弾けました。
2度繰り返したのは清志郎さんのセンスです。しかも「ベイビー」じゃなくて「ベイベー」。「い・け・な・いルージュマジック」が完成した瞬間です。
■5.『オリーブ』に宣伝を打ったフリッパーズ・ギター
ここで言うパンクというのは、本質的には尖っているものをそのまま正反対の世界の中に投げ込む、ということです。そこで、ロック誌全盛時に、ロック誌をやめて女の子の雑誌に広告を打て、と言いました。
何を言い出したのかと、櫻木くんも最初は半信半疑だったと思います。常識的には無謀すぎるアイディアでした。でも、普通のことをやっていては何も起こらない、そう伝えました。
僕はかつて竹内まりやさんのデビュー時にマガジンハウスの男性誌『ポパイ』からヒントを得たように、今度は同社の『オリーブ』に目をつけました。結果的に1978、79年に活用した手法は、10年の歳月を経た1988年から89年でもまだ有効でした。つまり、何もせずとも彼らの音楽性に気づいてくれるコアな音楽ファンだけではなく、彼らとライフスタイルを共有できる購買者、リスナーにもアピールすることで購買層を広げるやり方は、時代が変わってもうまく機能することがわかったのです。
【感想】
◆自分で書いてみて今さら思ったのですが、若い世代の方々には「なんのこっちゃ」なアーチストばかりな気がwそもそも大滝詠一さんをタイトルに持ってきているくらいですから、本書のターゲット層は、「アラフォー以上」だと思います。
少なくとも、このアルバムの大ヒットを体験している世代でないと。
A LONG VACATION
と言いつつ、私自身、上記ポイントの1番目の「サイダー'73」は、絶対聴いているハズなのに記憶にありませんでした。
逆に山下達郎さんのこちらのCMは、覚えているどころかかなり好きだったんですよねぇ。
◆また、上記ポイントの2番目にある、大貫妙子さんの『ロマンティーク』というアルバムは、私が学生時代に一番ハマったLP(死語w)の1つでした。
アマゾンでもめっちゃ評価が高いですね。
ROMANTIQUE
特にこの中に入っている坂本龍一さんプロデュースによる「雨の夜明け」という曲が大好きで、パリに旅行した際は、現地の風景を見ながら聴きたくて、カセットに落として(これも死語w)持参したというw
このアルバムからの3作は「ヨーロッパ3部作」と呼ばれ、大貫妙子さんのターニングポイントとなったと思います。
AVENTURE
Cliche
いずれにせよ、それまでのアメリカ路線から、いきなり方向を変えた裏には、本書の著者である牧村さんの働きかけがあった模様。
僕は大貫さんに大量の資料を渡しました。ニューシネマ、ヌーヴェル・ヴァーグ等の映画、『ニューヨーカー』誌の短編集や図鑑、写真集、そして当然レコードです。例えばフランソワーズ・アルディ、ピエール・バルー主宰のサラヴァ・レコードのブリジット・フォンテーヌ、ピエール・バルーの盟友であるフランシス・レイやフランソワ・ド・ルーベ、ジョルジュ・ドルリュー、ミシェル・ルグランのレコードなど、これらの音楽はいずれも極めてヨーロッパ的な響きを持つものでした。……当時のファンでしたけど、全然知らなんだ。
◆一方、上記ポイントの4番目に出てくる「い・け・な・いルージュマジック」も、リアルタイムでCMを見てた方は少ないんでしょうか……?
CM動画がないので、フルバージョン(?)ですが。
上記ポイントで「タイトルが無事通った」とありますが、実はこの曲、資生堂から与えられていた仮タイトルが「すてきなルージュマジック」だったのだとか。
それを勝手に「いけない」に変えてしまったのですから、話がこじれかかります(「このタイトルでないとやらない」と2人が言ったとか)。
これも結局、牧村さんが資生堂の宣伝責任者である専務に2時間もらい、アドリブで「いけない」である必然性を熱弁し、無事通ったのだそう。
◆さらに最後のフリッパーズ・ギターだけ、ちょっと時代が新しめですが、ここでも牧村さんは暗躍(?)していました。
上記ポイントの5番目では、サラッと宣伝についてだけ触れていますけど、持ち込まれたライブのテープにピンときて、メンバーを呼び、デモテープを制作したのは、ほかならぬ牧村さん。
なお、彼らのデビューアルバム発売後、大滝詠一さんと加藤和彦さんが連絡を取ってきた(加藤さんは「セカンドアルバムのプロデューサーをやらせてほしい」とまで言ってきた)のだそうです。
……すいません、本書に出てくるアーチストのほとんどは、それなりにアルバムを持ってたり、CMを知ってたりする私なんですが、フリッパーズが出たころは、モロに洋楽のブラック系にハマっていて、とんと疎いという。
そ、そういえば、小沢クンが久しぶりに新譜出しましたよね!←とってつけたようにw
流動体について
◆いずれにせよ本書は、こうした日本の音楽業界の裏話が多々。
当時のこの手の音楽にハマっていた方なら、きっと楽しめると思います。
ただ、いかんせん、年齢層はかなり上になりますよねぇw
新しい世代の方は、本書片手に音楽サイトを漁って、曲を聴きまくるのもいいかもしれません。
今月中なら399円ですので、この機会にぜひ!
「ヒットソング」の作りかた 大滝詠一と日本ポップスの開拓者たち (NHK出版新書)
序 章 1974年に始まる物語
第1章 音楽業界に起きていた地殻変動
第2章 巡り合うポップスの才能たち
第3章 ライブハウスがミュージシャンを育てた
第4章 1980年代に花開いたもの
終 章 「渋谷系」の時代へ
【関連記事】
【音楽】『ヒットの崩壊』柴 那典(2016年12月01日)【Amazonキャンペーン有】『すべてのJ-POPはパクリである (~現代ポップス論考) 』マキタスポーツ(2014年02月01日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。熱狂の王 ドナルド・トランプ
中古も結構値下がりしてますけど、「74%OFF」の499円というのは激安!
送料加味した中古よりも800円弱お買い得です。
ご声援ありがとうございました!
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