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2017年02月28日

【講演&対談】『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』山中伸弥,羽生善治,是枝裕和,山極壽一,永田和宏


僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう (文春新書)
僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう (文春新書)



【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも注目を浴びていた1冊。

当初、普通の講演録かと思ったのですが、実際には山中伸弥さん、羽生善治さん、是枝裕和さん、山極壽一さんの講演録プラス、それぞれの方と永田和宏さんとの対談を収録したものでした。

アマゾンの内容紹介から。
京都産業大学での講演・対談シリーズ「マイ・チャレンジ一歩踏み出せば、何かが始まる!」。どんな偉大な人にも、悩み、失敗を重ねた挫折の時があった。彼らの背中を押してチャレンジさせたものは何だったのか。

なお、すでにKindle版も配信しておりますので、そちらもご検討を!





State of the State Address / MDGovpics


【ポイント】

■1.自分の成果をアピールすることも大事(山中伸弥)
アメリカの研究所では、順番にプレゼンテーションをしてそれをビデオに撮る。そして、自分の発表が終わったら退席して、本人がいないところで、みんなでそれをさんざん批判するんです。その批判しているところもビデオに撮っておいて、それを後で見るというすごい授業なんですが、ときどき教授もこの授業を受けにきたりしています。
 そのときに身に沁みたのは、研究者にとっていい実験をするのは非常に大切。でもそれは半分。それと同じぐらい、自分のやった結果をどのように伝えるか、どう論議するか、どう講演で発表するかが大切だということです。これについては、再三再四、口やかましく言われました。


■2.感動が挑戦をつづける原動力になる(羽生善治)
 十代で棋士を目指した私が、トレーニングとしてよくやっていたのが、江戸時代の人が作った詰将棋の問題集を解くことでした。(中略)
どうしてそんな難しい問題に数多く取り組めたかというと、解けたとき、その手順の美しさや構想力に深く感動したからです。二百年前、三百年前の人が、よくもこんなに素晴らしい問題をつくり上げたなぁと感心したからこそ、つらくても苦しくても、続けることができた。
 何か物事に挑戦していくとき、ただ結果だけを求めていると、どうしてもうまくいかなくて、苦しくなってしまうことがあります。ですから、そのプロセスの中で、「ああ、これってすごい! おもしろい!」とか、「やる価値があるなあ」といった感動を見つけられるかどうか。それが、挑戦し続けていくときの大きな原動力になると思います。


■3.「いろいろな長さの物差し」を持つ(羽生善治)
例えば同じ一手を指すのでも、それを短期的に見るのか長期的に見るのかで変わってくる。目の前の勝負に勝つことはもちろん大事ですが、長く将棋を続けていくには目先の勝負以外のところで、新しいことも試していかなくてはならない。ピジネスにたとえるなら、勝負で勝つことは目先の利益だと思うんですが、それとは別に先行投資もしなくてはならないというのと同じではないかと思います。
 ですから、手堅く勝てそうな方法を続けることは一見安全なように見えて、長い目でみればリスクが高いともいえる。逆に、その一局で見たらすごい挑戦に見えたとしても、長期的に見ると、この先も勝ち続けるためにはそれが安全策だったというケースもあるわけです。


■4.誰か1人に向けて作る(是枝裕和)
先ほどお話しした「地球ZIG ZAG」のプロデューサーから最初に言われたのは、「誰かひとりに向けてつくれ」ということでした。視聴者なんてつかみどころかないから、誰かひとり、おまえの彼女でもいいし、母親でもいい、子どもでもいいし、田舎のおばあちゃんでもいいから、その人にわかるようにつくれって。このひとことが今も役に立っていて、なるべく守るようにしています。
 たとえば『奇跡』という映画は、そのときまだ3歳か4歳だった自分の子どもに向けてつくりました。この子が、映画に出てくる子どもたちと同じ齢ごろになったときに見せることを想定して、将来の自分の子どもに向けてつくろうと思ったら、自然と子どもに語り掛ける言葉遣いになった。あ、こういうことか、と思いました。


■5.師とは矜持を教えてくれる存在(山極壽一)
矜持というのは難しい言葉かもしれませんが、姿勢とか構えとかいう意味で、研究とは何か、何をしてはいけないかを教えてくれる存在だったという気がします。僕らフィールドワーカーは、今でこそ学生を現地に連れていきますが、自分たちの頃は先生は決して一緒に来てはくれませんでした。僕らは自分ひとりで、研究地域に出かけたわけです。そこでいろいろな出来事に出会うたび、師匠の顔を思い浮かべる。そして、「伊谷さんだったらこうするだろうな」と考える。それが「矜持」の指し示すところと言ったらいいでしょうか。先生が実際にやってみせてくれなくても、僕らには伝わる。そこまで感性で訴えることができる存在が師匠ですね。


【感想】

◆冒頭ならびに内容紹介でも触れているように、本書は「マイ・チャレンジ一歩踏み出せば、何かが始まる!」という講演・対談シリーズを収録したもの。

これは京都産業大学の創立50年を記念して行われたものであり、企画立案は永田和宏さん自身が行われたのだとか。

ちなみに、私は永田和宏さんのことを存じ上げなかったのですが、「京都産業大学タンパク質動態研究所所長、京都大学名誉教授」という肩書をお持ちであり、さらには歌人でもあるそう。

永田和宏 - Wikipedia

そして今回のゲスト4人は、永田さんが「よく知っていて、しかも尊敬している」という方々。

ただし、このシリーズでは「あんな偉い人でも、なんだ自分と同じじゃないか」ということを、出席者に感じ取ってほしかったのだそうです。

ということで、タイトルにもある「何者でもなかった頃の話」につながるワケなのですが。


◆さて、それぞれのゲストのお話について触れていくと、まず初っ端の山中伸弥さんは、医学部に進学したものの、ご本人いわく「外科手術の才能がなかった」のだそう。

20分で終わるはずの手術に2時間もかかってしまい、指導教官には「ジャマナカ」と呼ばれていた……というのは意外でした。

そこで研究者の道を選び、やがて渡米しますが、この時点では英語のスピーキングやリスニングが、ほとんどできなかったのだそうです。

その米国ではES細胞と出会い、研究も順調に進み、研究者としての自信を付けた上で帰国の途に。

ところが帰国後は、論文が掲載されなかったり、米国では係の人がいてやってもらえた実験用のネズミの世話(200匹に増加w)を自分でやらなくてはならなかったりと、軽い鬱のような状態に陥ってしまったのだとか。

そこからどう復活し、iPS細胞の研究を始められたか……等々については、本書をご覧ください。


◆続く羽生善治さんは、若くしてプロへの道を歩まれた以上、本書で言うところの「何者でもなかった頃」というのは、厳密にはありません。

その一方で、当ブログでも何冊か著作をレビューしているように「将棋の実用書以外」での作品も多々。

Amazon.co.jp: 羽生善治

結果、上記ポイントの2番目、3番目にあるように、自己啓発書に載っていそうなお話を聞くことができました。

ちなみに、羽生さんの失敗談(?)的なお話としては、2004年に一冠のみとなった際、生活を心配したファンの方々から、米とか味噌とか野菜が大量に送られてきたのだそうですw


◆第3章では映画監督の是枝裕和さんが登場。

失敗談としては、テレビ制作会社のディレクター時代に、「仕込み」というか「やらせ」をして撮影したことが紹介されています。

結局そこで、先輩のカメラマンに怒られて目が覚めたそうなのですが、その一件がなかったら、「映画監督」としての今の地位もなかったのかも。

また、最後の章の山極壽一さんは、「京都大学総長」という肩書を見て、どんな話が聴けるのかと思いきや、「ゴリラの話」がメインだったという……。

実際、山際さんといえば「ゴリラ」が有名らしく、お名前で「山極壽一 ゴリラ」でググったら、「ほぼ日」で語りまくってらっしゃるのを発見しましたw

おさるの年にゴリラの話を。-ほぼ日刊イトイ新聞

……さすがに本書では、ここまで「ゴリラ話」には終始しませんがw


◆以上4人の方々の講演並びに永田さんとの対談を振り返ってみましたが、皆さん何らかしらの「つながり」や「面識」が永田さんとあったこともあり、終始和やかな印象を受けました。

特に山中さんは、京大の研究室時代に、隣の部屋が永田さんだったのだとか!?

また、羽生さんの第72期の名人戦第3局の観戦記を永田さんが書かれているとのこと。

第72期 将棋名人戦七番勝負全記録―羽生、名人位奪還
第72期 将棋名人戦七番勝負全記録―羽生、名人位奪還

森内俊之名人に4年連続で挑戦する羽生善治三冠。
4連勝で名人位を奪還、羽生名人返り咲きとなった第72期の全記録を収載。
特別観戦記として、俳人・長谷川櫂、歌人・佐佐木幸綱、永田和宏の3氏が
詠句歌とともに熱い対局の様子を寄稿した“名人戦競詠"も収録。
あ、ホントだw

永田さんが意図した「自分と同じじゃないか」という風に思えるか否かは、読む人それぞれでしょうけど、普通に「講演&対談録」として面白かったです。


良質な「講演&対談集」がここに!

僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう (文春新書)
僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう (文春新書)

第1章 山中伸弥(京都大学iPS細胞研究所所長)
「失敗しても、夢中になれることを追いかけて」
【対談】環境を変える、自分が変わる

第2章 羽生善治(将棋棋士)
「挑戦する勇気」
【対談】”あいまいさ”から生まれるもの

第3章 是枝裕和(映画監督)
「映画を撮りながら考えたこと」
【対談】先入観が崩れるとき、世界を発見する

第4章 山極壽一(京都大学総長、霊長類学者)
「挫折から次のステップが開ける」
【対談】おもろいこと、やろうじゃないか


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【勝負師対談】『人生で本当に大切なこと』王 貞治,岡田武史(2011年12月07日)


【編集後記】

◆本日でセール終了となるこちらの2つのセールですが。

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昨夜の前日ランキングの記事を受けて、この辺りが人気でした。

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一応、ご参考まで!


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