2017年02月26日
【恋愛×数学】『恋愛を数学する』ハンナ・フライ
恋愛を数学する (TEDブックス)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だったモテ本。著者のハンナ・フライ女史は、「ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)高等空間解析センター所属の数学者」という肩書であり、理系アプローチにて恋愛を語ってくれています。
アマゾンの内容紹介から。
あらゆる自然現象にルールがあるように、人間の恋愛もパターンに満ち溢れている。ならば、数学の出番。恋人の見つけ方から、オンラインデートの戦略、結婚の決めどき、離婚を避ける技術まで、人類史上もっともミステリアスな対象=LOVEに、統計学やゲーム理論といった数理モデルを武器にして挑む。イギリスBBCなどでアウトリーチ活動に励む数学者が、人生の一大事に役立つ驚くべき知見を引き出しつつ、「数学と恋愛する」楽しさをも伝える。
なお、お値段的には若干とはいえ、Kindle版がお得です!
Hannah Fry - re:publica 2014 / re:publica 2017 #LoveOutLoud
【ポイント】
■1.自らアプローチした方が良い結果となるこの設定は、「安定結婚問題」として知られています。そして登場人物たちがパートナーを見つけた手順は、「ゲール・シャプレイ・アルゴリズム」と呼ばれるものです。カップル成立の背後にあるこの数学をよく調べてみると、とんでもない結果が見えてきます。男の子と女の子が何組いたとしても、男の子のほうからアプローチしていくのであれば、次の4つは必ず真となるのです。1 全員がパートナーを得る(中略)3と4は特に驚きの結果を示しています。簡単に言えば、繰り返し断られるリスクを冒して求愛するグループのほうが実は、のんびり構えて求愛者の口説きを受けるだけのグループよりも、はるかに良い結末になるのです。
3 全員のパートナーが決まったとき、男性はみな、可能なかぎり最良のパートナーと一緒になっている
4 全員のパートナーが決まったとき、女性はみな、自分にアプローチしてきた中で一番ましな相手と一緒になっている
■2.「個性的な顔」の方がそこそこ美形よりモテる
魅力の評価で5を取れば、たくさんメッセージが届くのはわかります。しかし驚くべきことに、α1の項の頭が+0.4ということは、OkCupidでは、5段階評価の1を付けた利用者100人につき、40件多くメッセージが届くということです。読み間違いではありません。あなたの顔をブチャイクと思う人がいたほうが、メッセージを多くもらえるんです。
それと対照的に、α4の項の頭が−0.1ということは、魅力を4と評価する人100人につき、メッセージは10件少なくなるということです。あなたの魅力を5段階の4と評価する人がいると、実はあなたに不利になります。
まとめると、あなたのことをきれいだと思ってくれる人が多少ともいるなら、その他の人には醜いと思われたほうが、誰からもそこそこかわいいと思われるよりもずっといいのです。
■3.性感染症のハブを見つけ出す方法
若くて美しい4人のお姫様を想像してください。シンデレラ、白雪姫、アリエル、眠れる森の美女です。全員が1人のセクシーな王子様と関係を持ってしまい、性的関係のネットワークができました。さしあたり、お姫様同士には接点はありません。(中略)
ワクチン接種の対象をこのグループからランダムに選んでくれば、ハブに当たるのは5回に1回だけです。代わりにこんな方法はどうでしょう? 誰かをランダムに選びます。たとえば、かわいいアリエルに、あなたが寝た相手にワクチンを打ちたいから教えて、とお願いするのです。アリエルは王子様のところに連れて行ってくれるでしょう。同じように、シンデレラをランダムに選んでも、一緒に寝た相手を教えてと頼めば、彼女も王子様のところに連れて行ってくれるでしょう。眠れる森の美女でも、白雪姫でも同じです。
アルゴリズムにこのような簡単な1ステップを加えることで、ハブを見つけ出す確率は5分の4に上がります。ずっといい賭け率ですね。
■4.最初の37%の期間に会った相手は無視する
たとえば、初めて付き合うのが15歳で、40歳までには身を固めるのが理想だとしましょう。そのお付き合い期間のはじめの37%のあいだは(24歳の誕生日をちょっと過ぎるまで)、全員ふるべきです。この期間で婚活マーケットの感覚を養い、人生のパートナーに対して何を期待するのか、現実的な考え方を手に入れましょう。このお断り段階が過ぎたら、その後に現れた中で、それまでに出会った誰よりも優れている最初の人物を選ぶのです。
この戦略に従えば間違いなく、あなたの仮想リストの一番上にいるパートナーを見出す確率は最大になります。
■5.ネガティブの閾値は低い方が良い
さて、私は常々、良い人間関係には妥協と理解が肝心だと考えていました。ですから、私だったら、ネガティブの閾値をうんと高いところに保とうとするのが最善だろうと予想したでしょう。普段はパートナーを自由にさせておき、本当に重大なときにだけ問題提起する、そんな人間関係が良いだろうと。
ところが、真実は正反対だと研究チームは明らかにしたのです。
ネガティブの閾値がとても低い人たちのほうが、人間関係がうまくいっていました。そのような人間関係では、カップルは互いに不満を出し合い、日頃から小さな問題を修復するよう、一緒に努力します。この場合、カップルは感情を押し殺したりせず、些細なことがきっかけで均衡を失い爆発してしまうこともありません。
【感想】
◆私の当初の予想以上に、「数学的アプローチをしている」作品でした。まず、初っ端の「自らアプローチした方が良い結果となる」というお話は、そりゃ、待っているより、自分の好みの子にアプローチした方が、良い結果になるだろうことは、計算しなくとも何となくわかります。
しかし本書では、実際に男性3人(ロス、チャンドラー、ジョーイ)、女性3人(レイチェル、フィービー、モニカ)が、ぞれぞれ自分の相手に対する選択肢の順位を3番目まで持っていると設定し、シミュレーションを実行。
男性が女性に声をかけたとして、実際に出来上がったカップルが、男性、女性、それぞれの選択肢の順位が第何位かを比較しています。
上記では割愛しましたが、今回の設定ですと、男性は自分にとって1位、2位、1位の女性とカップルになったのに対して、女性の方は2位、3位、2位の男性とマッチ。
しかし、逆に女性の方から逆ナンしたらどうなるかというと、女性にとっての1位、1位、2位とカップルになるのだそう(男性にとっては、2位、2位、2位)。
……と言うワケですから、男性の皆さんにとっては、玉砕上等で、アプローチしていただければ、と。
◆また、上記ポイントの2番目の「個性的な顔」のお話については、その大手出会い系サイトOkCupidの創業者である、クリスチャン・ラダー自身の本でも言及済みでした。
ハーバード数学科のデータサイエンティストが明かす ビッグデータの残酷な現実―――ネットの密かな行動から、私たちの何がわかってしまったのか?
参考記事:【出会い系?】『ハーバード数学科のデータサイエンティストが明かす ビッグデータの残酷な現実』クリスチャン・ラダー(2016年08月08日)
ただし本書では、上記ポイントでも触れているように、具体的な数式まで掲載(ただし数式自体は、テキストで表現できないくらい複雑なので割愛)。
実際に会員が「自分のプロフィール写真が異性から評価された5段階評価の魅力」に応じて、何通メッセージをもらうかを回帰分析によって明らかにしています。
その結論は、上記でも触れているように、一部の異性から気に入られる外見なら、それ以外の異性からは拒絶される方がマシ、というもの。
それを踏まえて、著者のフライ女史は「プロフィール写真を選ぶなら、自分の欠点(肥満、ハゲ等)を隠してないものを選ぶべき」とアドバイスしています。
なぜなら、気に入る人はそれでも気に入るし、気に入らない人が出てくるくらいの方が、メッセージが増えるから。
これは結構「目からウロコ」ですが、実際に会ってからの事も考えると、かなり妥当だと思います。
◆また上記ポイントの4番目の「最初の何人かは有無を言わさずふる」方法は、元々は「秘書問題」と言われるもの。
秘書問題 - Wikipedia
こちらも数式が複雑で、テキストでは割愛しますが、要は「生涯に付き合う人数が決まっているのなら、最初の37%の恋人は有無を言わさずふる」のが最善手なワケです。
ただし、「生涯に付き合う人数」など分かりようがないので、本書ではそれをアレンジし、「人数」ではなく「期間」にしているのがミソ。
何歳から付き合い始めたかは分かりますし、自分が何歳で身を固めるかは決められますから、その期間に応じて、最初の37%の期間に会った異性は、全員ふる、ということになります。
もちろん、「その37%の期間に一番魅力的な異性と出会う」可能性も否定できませんが、確率論から言うと、これが最強らしく。
◆なお、上記ポイントの5番目に関連して、本書では「カップルが互いに対して示すポジティブ/ネガティブの度合いを示すスコア」が登場します。
これは、心理学者のジョン・ゴットマンが研究したもので、以前この本でも軽く触れた記憶が。
その科学が成功を決める
参考記事:「その科学が成功を決める」がもっと評価されるべき5つの理由(2010年03月23日)
ただし、本書ではさらに、この研究に途中から加わった数学者のジェームズ・マレーによる数理モデルをも紹介しています(すいません、これもテキストでは打てません)。
ちなみに、この数式のスゴいところは、単に夫婦関係にとどまらず、軍拡競争を続ける2国間の関係をもカバーしているということ。
夫婦も二国間も、不満は溜め込まない方がいいようです。
◆ところで、本書は「TEDブックス」というだけあって、本書の概要については、TEDの動画で視聴することが可能。
上記で割愛せざるを得なかった数式も、上記動画ではいくつか出てきますので、良かったらご覧ください。
そして実際に、本書を読んだからと言って、モテモテになるとは思えませんが、こういう考え方もある、と知れただけでも、自分の人生が豊かになった気がw
特に「理詰めで物事を考えたい方」にオススメしたいと思います。
「恋愛」に潜む「数学」がここに!
恋愛を数学する (TEDブックス)
イントロダクション
第1章 恋人ができるチャンス
第2章 美しさはどれくらい重要か
第3章 夜遊びの喜びを最大化するには
第4章 オンラインデート
第5章 恋の駆け引き
第6章 セックスの数学
第7章 いつ身を固めればいい?
第8章 結婚式を最適化する方法
第9章 末永く幸せに暮らすために
エピローグ
【関連記事】
【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)【出会い系?】『ハーバード数学科のデータサイエンティストが明かす ビッグデータの残酷な現実』クリスチャン・ラダー(2016年08月08日)
「その科学が成功を決める」がもっと評価されるべき5つの理由(2010年03月23日)
【モテ】「なぜ、その人に惹かれてしまうのか?」森川友義(2007年09月14日)
【編集後記】
◆カドカワさんの方で、大規模なセールが行われているようなのですが、その影響なのか、ビジネス書がメインの中経出版さんの作品も、なし崩し的に「ポイント還元セール」状態となっております。Amazon.co.jp: 中経出版: Kindleストア
……どうも「今日2月26日まで」らしいので、よろしかったらお早めにご確認ください!
ご声援ありがとうございました!
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