2017年02月24日
【読書】『1万人の脳を分析した医学博士が教える 脳を強化する読書術』加藤俊徳

1万人の脳を分析した医学博士が教える 脳を強化する読書術
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日ではなくて、2月初旬の「未読本・気になる本」の記事にて大人気だった1冊。著者の加藤俊徳先生は「脳番地」の概念でお馴染みですが、本書ではなんと「読書術」に挑戦してらっしゃいます。
アマゾンの内容紹介から。
ベストセラー『脳の強化書』で知られる医学博士による、初の読書術。脳内を働きごとに「思考系」「感情系」「伝達系」「理解系」「運動系」「聴覚系」「視覚系」「記憶系」の八つに分け、それぞれを鍛える本の読み方・選び方を解説する。
なお、中古に送料を足すと定価を超えてしまう以上、上記未読本記事の時点ではなかった「23%OFF」のKindle版がお買い得です!

01 Tom Lewis, Life and Health, 1972 (The functions of the various parts of the brain are shown here schematically) / 50 Watts
【ポイント】
■1.同じ本を何度も読む1回目に読んだ時、脳は新しい情報が入ることで興奮するのですが、新鮮な血液がガンガン上がるわりには、神経細胞の活動が不十分で酸素が使われずとても非効率なのです。そして使っているのは主に視覚系脳番地。「この漢字なんだろう?」「この登場人物、誰だっけ?」など、そこに書かれた文字情報に対して意識が向いてしまいます。
これが、2回目、3回目となると、脳も落ち着いてくる。単語や登場人物もわかり、だんだん理解系脳番地が働くようになるのです。そうするときちんとストーリーが追えるようになって、そこに自分の考えが乗っかるようになる。つまり、やっと思考系脳番地が使われだします。小説も一度ではなく、何度か味わうといいのです。
■2.「音読」で複数の脳番地を刺激する
言葉の意味や文章の内容を理解しようとする時に向いているのは、黙読です。主に理解系脳番地が刺激され、理解が進むにしたがって思考系脳番地が連携し、アタマの中で考えがまとまっていくのです。
一方、音読をしながら内容を深く理解するのは難しいですが、音読では主に伝達系脳番地と運動系脳番地が刺激されるほか、聴覚系脳番地や理解系脳番地なども連携します。音読では、脳全体を刺激できるのです。(中略)
いくつもの脳番地を同時に動かしながら言葉と触れ合える音読は、認知症予防にもなります。読書の得意な方でも、試してみる価値があると思います。
■3.マンガで視界的な理解力を高める
また、文字を読むのは得意でもアタマの中で文字が映像化されにくい人にとっても、マンガは理解を助けてくれます。こういったタイプの人は、文字を読んだだけでは、そこに書かれている人たちの「本当の表情」──つまり、本当の気持ち──が浮かんでこないため、物語を追っていくのが苦手です。
たとえば、小説で「大嫌い!」という女の子のセリフがあったとします。前後の文脈とそのキャラクターの描写から、本当は「好き」という気持ちがあることが受け取れるはずの場面です。小説ではその辺りがうまくわからなくても、マンガでその女の子の真っ赤な顔、必死な顔、言った後の走り去り方などが描かれていれば、「なるほどこの女の子は相手のことが好きなんだ」とわかるはずです。
■4.複数の本を同時進行で読む
小説を読みながら、ビジネス書と哲学書を読む、といったように、複数の本を同時進行で読むことは、思考系脳番地を刺激し、素早く判断する能力を養うのに最適です。
何かの本を読んでいるのをいったん打ち切って、違う本に手を出すわけですから、脳の中ではいろいろな思考が渦巻くことになります。小説を読んで感情にひたっていた脳が、ビジネス書で現実に引き戻されたりする。この切り替えが思考系脳番地が刺激します。
また、複数の本を同時進行で読む場合には、一気に読む場合と違い、「この本はここまで読もう」「前には何が書いてあったかな?」など、手順を考えながら読むことになります。読み方にも、手続きが必要とされるのです。これがやはり、思考系脳番地を刺激します。
■5.「スポーツ系マンガ」で行動したくなる脳を育てる
スポーツ系マンガを読んだ後に、ボールを打ちたくなったり、キックしたくなったりと、体を動かしたくなった経験はありませんか。
これは、映像がダイナミックに変わるマンガが、運動系脳番地を刺激した結果なのです。脳は元来、環境情報から影響を受けやすい臓器であることは、コマーシャルが購買行動に影響を与える現象からも明らかです。
家にこもってばかりいるなら、ぜひ、スポーツ系マンガを読んで、運動系脳番地を刺激し、実際のスポーツで汗をかいてみましょう。
子どもにとって運動系脳番地はまだまだ育っている途中で、非常に発達しやすい段階にあります。そのため、運動系脳番地への刺激を好む傾向があるのです。
【感想】
◆予想していた以上に「学び」の多い本でした。ただし、普通「読書術」の本というのは、「新しい読み方」が得られることが、そのメリットだったりするのですが、本書の場合、「今までの読み方」に「どういう意味があるのか」を理解できた、と言いますか。
たとえば、上記ポイントの1番目の「同じ本を何度も読む」というのは、別に新しい読み方でも何でもないわけですし、実際に繰り返し読まれている方も多いと思います。
私も「繰り返して読むと早く読める」「何度も読むと記憶に残る」という「現象部分」のみフォーカスしていたものの、「どこの脳番地を使っているか」までは考えたことがありませんでした。
……と言いますか、てっきり初見の方が「思考系脳番地」を使っていて、2度目以降は「考えずに読んで」いるのかと思っていたのですが。
◆一方、上記ポイントの2番目の「音読」ならば、「脳のさまざまな部分を使っている」ことが分かりやすい読み方かと。
特に何かを「暗記」する場合は、「読む」「聞く」「話す」といった動作を総動員することで、より一層記憶にも残りやすいものですが、これも「複数の脳番地を刺激する」からだと考えると腑に落ちます。
さらに本書では、「なりきり音読」なるものを推奨。
これは、その物語の主人公や、書いた著者になりきって読む方法で、通常の音読以上の効果が得られるとのことです。
確かにウチのムスコも、学校の宿題で毎日音読をしているのですが、とにかく早く終わらせようと、「早口の棒読み」がデフォルト。
そんな読み方じゃあ、読解力も深まらないよなぁ……と思っていたら、案の定、塾の国語のテストでも「登場人物の気持ち」をうまく読み取ることができません。
◆典型的なのが、そこに書いてある字面だけで気持ちを判断してしまうことで、上記ポイントの3番目にあるような「大嫌い!」なら、当然「大嫌い」と判断してしまいます。
ほかにも「大丈夫」と言ったなら「大丈夫」だし、「さみしくないもん」と言ったら「さみしくない」。
なるほどマンガなら真意がわかりやすそうですが、言葉と気持ちが逆になっていることを意識するようにしないと、結局文章題は解けないんじゃないかと。
ただ、その導入としてマンガが使えるのなら、適切な作品を選んで与えてみたいと思います。
個人的には、「言葉」から「状況」をイメージする能力は、マンガだとあまり育たないような気もする(いきなり提示されるので)んですけどね……。
◆むしろマンガに関しては、上記ポイントの5番目の「スポーツ系マンガ」が「運動系脳番地を刺激する」というお話に深く納得。
だから少年マンガには、スポーツ系が多いんですな。
私も先日の編集後記で触れたように、『ベイビーステップ』を読んで「運動系脳番地を刺激」していますしw←でも出不精

ベイビーステップ(1) (週刊少年マガジンコミックス)
……結局全巻買ってしまった自分(アフォ)。
なお、これは「アクション系マンガ」も同様らしく、たとえば『ONE PIECE』が大ヒットしているのも、躍動感あふれる展開が「運動系脳番地」を心地よく刺激しているからでは、と加藤先生は分析されています。
◆なお、割愛した中で興味深かったのが、「ベストセラーでコミュニケーション力を高める」というお話でした。
一般的にコミュニケーションというと、「友好的に付き合えること」「情報交換ができること」のように思われがちですが、加藤先生いわく、「コミュニケーションの本質は『記憶の共有』」とのこと。
つまり、「共通できる記憶」が多いほど、コミュニケーションが取りやすくなるわけで、そのためには「ベストセラーを読むのがオススメであり、これならたった1冊を読むだけで、たくさんの人と「記憶の共有」が図れます。
ベストセラー本を読んだら、ぜひ、実際に同じ本を読んだ人と意見を交換する機会を持ってください。「○○がおもしろかった」「□□で感動した」といった感想を共有することが、様々な感情を理解できるアタマを育ててくれます。なるほど、今後はこういう意識でベストセラーに接しなければ!
新たな読書の「気づき」が得られる1冊です!

1万人の脳を分析した医学博士が教える 脳を強化する読書術
序章 思い通りのアタマをつくる―8つの「脳番地」を鍛える読書
第1章 言葉好きの脳をつくる―「聴覚系脳番地」を鍛える読書
第2章 忘れない脳をつくる―「記憶系脳番地」を鍛える読書
第3章 言葉だけに頼らない脳をつくる―「視覚系脳番地」を鍛える読書
第4章 他人と自分の気持ちがわかる脳をつくる―「感情系脳番地」を鍛える読書
第5章 アイデアが生まれる脳をつくる―「理解系脳番地」を鍛える読書
第6章 素早く判断できる脳をつくる―「思考系脳番地」を鍛える読書
第7章 メッセージを出せる脳をつくる―「伝達系脳番地」を鍛える読書
第8章 行動できる脳をつくる―「運動系脳番地」を鍛える読書
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
大国の掟 「歴史×地理」で解きほぐす (NHK出版新書)
昨年11月の作品ですから、まだ比較的新しめ。
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