2017年02月17日
【科学的?】『科学的に元気になる方法集めました』堀田秀吾
科学的に元気になる方法集めました
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、1月下旬の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げていた1冊。タイトルに「科学的」とあるように、いわゆる「科学的自己啓発書」として、興味深く読むことができました。
アマゾンの内容紹介から。
国内外の最新の研究結果から科学的に効果が証明された、元気になれるアクションを紹介したビジネス書です。
なお、上記未読本記事の時点ではなかったKindle版も現在配信されていますので、そちらもご検討を。
happy / Carmela Nava
【ポイント】
■1.とにかくやり始める人間はこれまで、「何かをするとき、まずは頭で考えてから、脳で命令を出して行動を起こしている」と考えてきました。
ところが、心理学や脳科学の世界では、人は「行動してから考える」というのが常識になりつつあるのです。(中略)
リベットというアメリカの生理学者が行った実験では、動作を行う準備のために送られる信号が、動作を行う意識の信号よりも350ミリ秒も早かったことがわかっています。
つまり、考える・心で念じることより、実際の動作のほうが脳に与える力は強いのです。
■2.動作にかけ声を加える
急なトラブル対応や無理やり押しつけられた仕事など、気乗りしない仕事をするとき、みなさんはどうしているでしょうか。
そんな場合に有効な方法は、「声を出しながら、目の前のことにあたる」ことです。
リヨン大学のラバヒらが行った実験で、被験者に「ジャンプ!」と言わせて垂直跳びをさせたところ、平均で5%高くなった、という結果が出ました。
声に出すことで自然とやる気が引き出され、本来持っている力を発揮しやすくなるのです。
たとえば空手や総合格闘技の選手がパンチやキックを出すときに「シュッ」と声を出しながらやっているのを見かけることもあると思います。これもやはり、動作のイメージに合う擬音を声に出すことで技にキレが出て、早く強い技が出せるからです。
■3.ぼーっとすることで使っていない脳を元気にする
また、ワシントン大学医学部のレイクルらの研究によると、何か行動をしているときと、ぼーっとしているときの脳の働きを比較したところ、後者のほうが記憶に関する部位や価値判断に関する部位が活発に働いていたという報告もあります。
脳の血流の総量は何かをしているときも、何もしていないときも同じです。
何かをしているときは、その行動をするための脳の部位に血流が多く流れます。反面、一部に血流が集中することでその他の部分の動きは鈍くなります。
一方、ぼーっとしている場合は、何かをしているときには使われていなかった部位にもエネルギーが行き届くのです。そのために、それまで浮かんでこなかったような考えが浮かんだりします。
ぼーっとすることで、使っていない脳の部位を元気にできるというわけです。
■4.「メンタル・コントラスティング」で大きな目標を達成する
これは、人間は「目標達成のための障害を克服できる」とわかれば元気が出るし、克服できないと元気がなくなるので、実現したい未来と現在の障害を比べて、どんな障害があるかを知り、実現可能性が高いものを選んで実現していくことで、限りがある「資源」である元気、時間、そして注意力をムダなく配分でき、目標の達成率が高くなるという考え方です。
つまり、「いつか好きなことをしたい」というモチベーションとともに、今目の前のできることをコツコツこなしていくことが大事だということです。
この2つがあって、モチベーションと元気を維持していくことができます。その結果、より大きな目標を達成できるようになるのです。
■5.試験前に不安を紙に書き出す
シカゴ大学の心理学者ラミレスらの行った実験があります。
その実験内容は、試験直前の10分間に、試験について不安に思うことを紙に書き出すということ。
すると、不安を書き出した場合と、そうでなかった場合では、書き出したほうが成績がアップしたという結果になったのです。
ちなみに、試験前に手を動かすことで脳に刺激が与えられた──というわけではなく、別の実験結果と照らし合わせて、「成績がアップしたのは試験についての不安を書き出すことで得られた効果」だそうです。
では、なぜそのような効果が出たのかというと、そうすることで脳の「ワーキングメモリ」が解放されるからなのです。
【感想】
◆タイトルとおり、徹頭徹尾「科学的」であることにこだわった1冊でした。何せ本書の「はじめに」には、本書の特徴として次の2点を挙げているくらいでして。
1 2017年現在、世界の科学論文などで紹介されている科学的根拠(エビデンス)のあるノウハウだけを集めました特にエビデンスについては、巻末に「参考文献」として一挙に列挙。
2 誰でも、どんな環境でも実践できる簡単なものを集めました
そのほとんどが英文であることからも、原典に当たった上で書かれていることがうかがわれます。
どれとは申しませんが、「博士」や「教授」という肩書の人が書いた本でも、エビデンスがない作品もある中、このつくりはかなりのものだな、と。
◆まず、初っ端の「とにかくやり始める」というのは、今まで読んだ本の知識から「側坐核」のおかげだと思ってましたが、もう1つ理由があったとは。
ちなみに本書でも「側坐核」の働きについては触れているものの、「側坐核 やる気」辺りでググっていただくと、解説しているサイトがいくつも見つかると思います。
また、本書曰く「『やり始める』ためには1つだけポイントがある」とのこと。
それは、やりたくないことをやるための障害を、できるだけ減らしておくこと。普段からデスク周りを整理整頓しておく、というのも仕事や勉強をスムーズにスタートさせる要因なんですね。
……逆に、勉強中に気になって掃除をし始めると、「側坐核」のおかげで「やる気スイッチ」が入ってしまうので要注意w
◆一方、上記ポイントの2番目の「かけ声」は、個人的にはテニス観戦でお馴染みでした。
昔から、声出すくらいなら、その分力を込めれば良いのに、と思っていたのですが、あのかけ声もムダではなかったとは!?
なお、仕事場等で周りに人がいて、かけ声を出すのが無理な場合は、声を出さなくても良いのだそう。
たとえば上記ポイントの実験でも、「ジャンプ!」と心で念じたり、「ジャンプ!」と言っている音声を聞いたり、また、「ジャンプ!」という単語を見せるだけでも効果があったのだとか。
なるほど、実際に声を出さなくてもいいのなら、ぜひ日常生活に取り込んでおきたいところです。
◆さて、これら2つのポイント(とポイントの3番目)は、本書の第1章と第2章からそれぞれ引用しましたが、本書の第3章では逆に、元気を出すために「やってはいけない習慣」について言及。
その中の1つが「ののしり言葉」です。
よくネットでは他人を批判したり、ののしったりする人が見受けられますが、「東フィンランド大学のネウヴォネンらによる研究」によると、「攻撃的な物言いをしている人は、認知症になるリスクが高くなるという結果が得られた」とのこと(こえー!?)。
では、ネットでうっぷんを晴らさず、別のものに当たればいいかというと、本書によるとそうでもない模様。
たとえば「怒ったときにパンチング・バッグを殴る」という行為も逆効果なようで、「アイオワ大学のブッシュマンらの研究」によると、「パンチング・バッグを殴った被験者はバッグを叩くことを楽しんだものの、怒りはおさまるどころか、怒りの対象の相手、ひいては関係ない人にまで怒りをぶつけるようになった」のだとか。
つまり、怒りの行動は、一度でも表現してしまうと広がってしまうということです。……これも心しておかねば。
◆さらに第4章では「心を平静に整えてくれる習慣」ということで、「元気になる」というよりは「やすらぎ」を追求しています。
よくお茶を淹れて「ほっとひと息」つくことがありますが、あれも「自律神経を整える効果」があるのだそう。
というのも、「『デフォールト・モード・ネットワーク』といって、何もしていないときには脳が整理されて、リセットされる」から。
さらにコーヒー豆の香りには、「睡眠不足や疲労の原因とされている『活性酸素』によって破壊された脳細胞を呼び戻す効果がある」という研究結果が、ソウル大学の実験によって証明されたそうです(詳細は本書を)。
この実験、ネズミを使ってますから、プラセボ効果のような予備知識は関係ありませぬ。
私は完全に「紅茶派」なんですが、やたらコーヒーの香りのするスタバの店内にいるのは、それだけでもメリットがあるんですね。
◆こんな感じで、ことごとくエビデンス付きで、TIPSをオススメしてくれる本書。
「根拠がないと信じられない」というタイプの方でも、受け入れやすいこと必至です。
唯一少々残念だったのが、「パワーポーズ」が紹介されていることで、確かにエイミー・カディ教授が実験をしたり本を出した時点では効果があると思われていたのですが、どうも共同研究者によって否定されたらしく。
……そ、そこだけスルーしてもらえたら大丈夫だから(震え声)。
読むだけで元気になれそうな1冊!
科学的に元気になる方法集めました
1 まず習慣にしてみてほしい元気のスイッチ5つ
2 パフォーマンスとテンションを高める習慣
3 元気を出すために「やってはいけない!」習慣
4 心を平静に整えてくれる習慣
5 最高のスタートを切るために朝一番に試したい習慣
6 幸福感を高めてくれる習慣
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。小学校社会科の教科書で、政治の基礎知識をいっきに身につける―これだけは知っておきたい70のポイント
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政治本なこともあってか、レビューが賛否両論なものの、版元が東洋経済さんなので、大丈夫だとは思うのですが……。
ご声援ありがとうございました!
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