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2017年02月07日

【現場主義】『やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力』迫 俊亮


やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力
やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力



【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも意外と人気だった1冊。

それに加えて、ライフネットの岩瀬大輔さんが推薦されているということで、私も読んでみた次第です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
過去10年間に渡って業績は右肩下がり。
本社からの無茶な指示に現場は疲弊し、管理職は続々と鬱で休職、あるいは退職。
そんな典型的な「ダメ企業」だったミスターミニットを、若干29歳の社長・迫俊亮は見事V字回復に導いた。
いったい、彼は何をしたのか? カリスマ的なリーダーシップで会社を引っ張った? 外資系からエリートを大量採用した?
違う。彼がしたことはただひとつ、ただひたすらに、会社のすべてを「現場中心」につくりなおしたのだ。
部下との関係に悩むすべての営業リーダー・管理職たちへ贈る、現場に寄り添い、現場を動かす「リーダーシップ」と「仕組み」論。

なお、本書は新刊ですが、中古にプレミアが付いているため、Kindle版の方が300円以上お買い得です!





SHOE REPAIR / anokarina


【ポイント】

■1.「立派な経営者」を目指す前に「信頼されるリーダー」になる
 しかし澤田さんの口からは、思ってもいない言葉が出た。それが冒頭の、「うーん、ウザい」だ。
「靴修理屋の社長じゃなくてさ、マッキンゼーのコンサルタントみたいなんだよね。きみの言っていることは、多分正しい。でもいくら正しくても、29歳の社長がいきなり頭の良さそうな正論を話してきたら、社員にとってはウザいだけだよね? 誰もついてこない。むしろ敵だよ」
 はっとした。
 僕は、経営者の仕事は組織の課題を見つけ、戦略を練り、確実に実行することだと思っていた。正しいことをやれば必ずうまくいく、と。
 けれど、「論」の正しさをいくら振りかざしても人はついてきてはくれない、と澤田さんは言う。新米リーダーである僕が最初にしなければならないことは、正論を振りかざすことではなく、みんなの信頼を得ることだ。「立派な経営者」を目指す前に、「信頼されるリーダー」にならなければならなかったのだ。


■2.問題を「人」ではなく「組織」に求める
 この「社会学的想像力」を組織に当てはめると、どうなるか?
 Aさんという社員が仕事でミスしても、やる気がなくても、Aさんに原因を求めない。組織に原因を求め、「個人を責めても仕方がない。組織として改善できるような仕組みをつくろう」と取るべきアプローチを考えていく。もしかしたらインセンティブ設計が甘いのかもしれないし、あるいはAさんの意見が吸い上げられないような会議が行われているかもしれない。仮にAさん個人の能力が足りなかったとしても、その原因を「能力を身につけさせる仕組み」が整っていなかったことに求める。一方で、社会学的想像力を持たないリーダーは、「お前が怠惰だからこんなミスをするんだ!」「やる気を出せ!」とAさん個人を叱責するだろう。
 原因は、「人」でなく「社会」にある。その社会の「仕組み」にある。
 だから、社会学的なマネジメントは「個人を怒らない」のだ。


■3.社員の失敗に目くじらを立てない
 そこで僕は、KPIからクレーム項目を排除したうえで、「失敗しても減給も降格もしない」ことを評価制度として約束した。また、後述するように「失敗してもあなた個人の責任ではありませんよ」というメッセージであるフォロー体制を整えた。
 さらに、エリアマネジャーにはクレームに伴う決裁権限を渡した。「5万円までならあなたの責任でクレーム処理していいですよ」、運営部長には「20万円までは決裁していいですよ」と任せたのだ。それまで、たとえば複製したカギが抜けなくなった場合も(錠前が老朽化している場合などにどうしても起こってしまう事故だ)エリアマネジャーはその場で弁償することができず、ただ子どもの使いのように本部とお客様の間を行ったり来たりするしかなかった。それを自己判断で決裁できるように変えた結果、99%のクレーム対応は現場で決裁できるようになった。


■4.抜擢後の活躍を支える「CARE」とは?
C=Capability (ケイパビリティ、能力)
A=Authority (オーソリティ、権限)
R=Responsibility (レスポンシビリティ、責任)
E=Evaluation(エバリュエーション、評価)
「当人の能力に合わせてフォローアップし(Capability)、適切かつ思い切った権限委譲を行い(Authority) 、その責任を明確にしたうえで(Responsibility)、納得のいく評価とフィードバックが高頻度でなされる(Evaluation)こと」
 この4つが揃ったときに初めて「ケアができている」、すなわち抜擢人事が適切に機能する状態となる。この教えは、僕にとって大きな学びだった。ゴロも良くわかりやすいので、社内でもよく使わせていただいている。


■5.他社事例は「本質」だけ借りる
 エクセレントカンパニーの本を読むときや他社の先行事例を参考にするときに必要なのは、「なぜこんな仕組みをつくったのだろう?」「この仕組みの本質はどこにあるんだろう?」と考える姿勢だ。どんな文化を持っていて、何を目指しているのか。この制度で社員にどう影響を及ぼしたいのか。うちだったら、この仕組みに類するのはどんな仕組みか。
 上澄みではなく本質を見極め、その本質だけお借りする。これが、「正しい他社事例の使い方」ではないだろうか。
 繰り返しになるが、そのために必要な自社理解を進めるためのヒントは、「現場」にあるのだ。


【感想】

◆冒頭並びにアマゾンの内容紹介や上記ポイントでは、本書の著者である迫さんの「ミスターミニット」入社の経緯が触れられていないので、ここで簡単に。

迫さんは、UCLAを卒業後、三菱商事に入社するものの、在学中にインターンを行っていた「マザーハウス」に半年で転職。

ところがそこで働くうちに、自分自身の経営能力の不足を感じ、プライベート・エクティ・ファンドユニゾン・キャピタルへと採用試験を経て移ります。

ただし、その最終面接で投資に興味がないことを見抜かれ、「海外事業の立て直しができる人材」ということで送り込まれたのが、ユニゾン・キャピタルが買収していたミスターミニットでした。

つまり、ある程度経営サイドとつながっていたからこその「29歳社長」なので、一応その辺はご留意いただきたく。


◆とはいえ、迫さんが入社した当時のミスターミニットの社内はかなりひどかったようで、それこそ冒頭にあるように
過去10年間に渡って業績は右肩下がり。
本社からの無茶な指示に現場は疲弊し、管理職は続々と鬱で休職、あるいは退職。
だったのだそう。

しかも「新サービスは40年間成功ゼロ」で、まさに「靴の修理と合鍵作り」を細々とやっていたわけです。

もちろん、それまでもファンドから送り込まれてきた優秀な人材は多々いました。

ところが彼らが立て直しができなかったのは、ひとえに「エリート」すぎたから。

外資系企業やコンサルティングファーム、外資系金融機関等々の経歴を持つ彼らには、「現場に学ぶ」姿勢が欠けていたのだそう。

それに対して迫さんは、徹底的に現場に足を運び、上記ポイントの3番目にあるような「改革」を行っていきます。

とにかく、「端から見ると御用聞きのごとく」ひたすら現場社員の要望に応えることで、現場の信頼を獲得。

その結果、業績も「V字回復」を果たします。


◆一方、かつては「40年間成功ゼロ」だった新サービスにも着手。

実は私も本書とはまったく関係なく、10年以上ミスターミニットで靴のかかとの修理を行ってきたのですが、昨年新たに試してみたのが、靴磨きのサービスでした。

クイック靴みがき | MISTER MINIT

なお、もうちょっとお高いサービスの方だと、靴磨きに高級クリームである「サフィール」なるものを使っているそうです。

プレミアム靴みがき | MISTER MINIT

実はこのサービスも、修理した靴を自前の道具で磨いてから渡していた社員を見かけた迫さんが、新たにサービスとして取り入れたもの。

さらに最近ではiPhoneの修理まで手掛けているとのこと。

スマートフォン修理(iPhone修理) | MISTER MINIT

一見、靴の修理とは関係なさそうですが、「世界ナンバーワンの『サービスのコンビニ』」というビジョンを掲げるミスターミニットにとっては、こうしたサービスも当然のものであり、今後は「印鑑サービス」等の新たなサービスにも着手するのだとか。


◆……と、私が興味のあった部分ばかり書き連ねてしまいましたが、本書では迫さんが入社されてから、いかにミスターミニットが変わっていったかが、人事面やリーダーシップ、会議のやり方等々も含めて、詳細に明かされています。

特に「上に立つ者が、いかに下の意見を汲み上げるか」については、学ぶところが多かったのですが、それを実際に反映させられるかというと、少々難しいのかも。

迫さんも、当初「経営企画部長」としてスタートしたものの、現場を管轄する役職でないと、何も変えられないと悟り、ファンドに交渉して営業本部長になります。

それでも所詮「一部長」では現場の意見を完全には反映させられないと、その1ヶ月後には「本気でこの会社を変えたいなら、僕を社長にしてください」と再度ファンドにかけあって、社長に就任したという。

今まで色々な経営本を読んできましたが、かなり珍しいケースですし、真似しようにもかなり難しい気が……。

もっとも、「理想をとことん追求する」という点において、非常に素晴らしいですし、その結果まで見届けられるのが、本書のキモだと思います。


人の「やる気」はこうして出てくるんです!

やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力
やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力

第1章 10年連続右肩下がり」の会社では 何が起こっていたのか?
第2章 信頼度ゼロからでもリーダーシップを築く方法
第3章 やる気と向上心を引き出す「人事」をつくる
第4章 社員の能力を100%引き出す 「組織・インセンティブ・会議」をつくる
第5章 人を動かし、未来を紡ぐ「ビジョン」をつくる


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【編集後記】

◆ミスターミニットのポイントカードは、いつも埋まりきらないうちに失くしてしまうのですが、今回は無事クリア!



「オレ、このポイントで『プレミアム靴磨き』してもらうんだ……」←フラグw


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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