2017年01月27日
【投資】『せめて25歳で知りたかった投資の授業』三田紀房,ファイナンシャルアカデミー
せめて25歳で知りたかった投資の授業 (星海社新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日の「未読本・気になる本」の記事でも注目を集めていた1冊。そこでも書いたように、本書も属する星海社新書は、一切Kindle版を出していないため、リアル書店で平積みになっているところを捕獲して参りました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
賃金が大きく増える見込みもない現代の若者が、生涯を全うできる財産を築くためには、「投資」に向き合うことが必要です。本書は、20代、30代の方々に向けた、投資の入門書です。投資漫画『インベスターZ』のエピソードを多数引用し、「お金の学校」で教鞭をとる筆者が最新の事例を交えて親しみやすく解説します。投資をするなんて考えたこともない方にこそ、読んでいただきたい1冊です。
20代、30代のみならず、10代や40代以上でも「投資初心者」なら要チェックかと。
Grow rich quick / Alan Cleaver
【ポイント】
■1.応援したい企業の株を買う何を目安に企業を選べばいいのか。きっかけとしてわたしが提案したいのは「応援したいかどうか」という物差しです。人に勧められたからでも、儲かりそうだからでもなく、応援したい企業の株を買う。株式投資の最初の一歩を踏み出す際に、ぜひ取り入れて欲しい考え方です。
エンターテインメントやスポーツをイメージするとわかりやすいと思います。アイドルやJリーグ、あるいは夏の高校野球全国大会、オリンピック。なんでも同じですが、特定の人、チームを「応援」するからこそ、コンテンツに深く入っていける、仕組みや分野に詳しくなった――こんな体験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。
■2.感情のないロボットになる
感情を排して投資を行うことができれば、持っている株の値段が変化したとき、躊躇なく売ることができます。この「躊躇なく」がとても大切なのです。
値上がりを期待して1000円で買った株があるとします。ある日、予想に反して950円に値下がりをしました。5%の下落です。
最初は、誰しもがこう思います。
「えっ、たった5%下がっただけで売らなきゃいけないの? またすぐに元に戻るかもしれないのに、なんてもったいない」
もったいない――こんな言葉が頭をよぎったとしたら、これこそ「罠」です。『インべスターZ』でも、孝史が投資部主将の圭介からキツく言われたのは、「5%下がったら売れ。法則を自分の上位に置き、感情をなくせ」というルールでした。
■3.厳しい局面に陥ったら「休む」
誰にも文句を言われず「休む」ことができるのは、個人投資家だけの特権です。
たとえば、顧客から資産を預かっているプロの投資家が「調子が悪いので、しばらく投資をやめます」などと言えるでしょうか。証券会社の営業マンが「相場の流れがイマイチなんでお休みします」と言えるでしょうか?
そんなことできません。彼らは売買を行うことで生計を立てていますので、流れが悪いときでも悪いなりに売買をせざるを得ません。
しかし、個人投資家は違います。自分のお金だけを運用しているので、何年お休みしても誰にも迷惑をかけません。休んでいる間にいい流れがきたら、投資を再開すればいいのです。個人投資家は、プロが持っていない「中断機能」を使うことができます。
■4.「上がる商品」ではなく「みんなが上がると思う商品」を買う
マクロ経済学のケインズ学派を打ち立てた経済学者で、ジョン・メイナード・ケインズがいます。彼の有名な言葉で、
「投資は、美人投票のようなものだ」
というものがあります。
この美人投票とは、一般的なミスコンやオーディションとは違います。ケインズの言わんとしているのは「一番の美人」を当てることではありません。100人の女性がいて、そのなかから何人かを選び、その女性が全体でどの程度人気を集めたのか。その結果に伴って、リターンが分配されるゲームだといいます。つまり、自分が美人だと感じる女性を選ぶというより「みんなが美人だと感じるのは誰か」を当てるゲームだということです。
■5.愚か者でも経営できるビジネスに投資する
ウォーレン・バフェットの言葉に「愚か者でも経営できるビジネスに投資しなさい」というのがあります。企業は株主からお金を集めている以上、途中で「もうやーめた」なんて言うわけにはいきません。長く、それこそ永続的に自社の価値を高めていかなければなりません。とはいえ、企業も人間の集合体ですから、その間、愚かな経営者が出てくるかもしれない(むろん、いないに越したことはありませんが)。バフェットは、仮にそうなったとしても経営が回っていく会社に投資せよ――と言っています。経営者が誰であろうと儲けの出る、強力な商品・収益基盤を持っている企業がこれにあたります。
【感想】
◆まず最初に触れておかねばならないのが、本書の「著者」について。書影にも「三田紀房×ファイナンシャルアカデミー」とあるように、一見、三田先生が書かれているように見えなくもありません。
実際、冒頭の内容紹介にも
投資漫画『インベスターZ』のエピソードを多数引用し、「お金の学校」で教鞭をとる筆者が最新の事例を交えて親しみやすく解説します。とあったのを見て、てっきり三田先生が、泉正人さんのファイナンシャルアカデミーで、ゲスト講師でもなさっているのかと私は思っていました。
しかし、実際に書かれているのはファイナンシャルアカデミーの渋谷豊さん(FAG総研 代表)という方で、たとえば上記ポイントの1番目の「きっかけとしてわたしが提案したいのは」という部分の「わたし」とは、渋谷さんご自身のこと。
この辺、リアル書店でチェックする際、冒頭の「はじめに」を読まないで、パラパラ本をめくっただけだと、まず分からないと思います。
◆ただし、三田先生が関係ないか、というと、まったくそうではなく、それこそ本書は『インベスターZ』あってこそのもの。
本書の内容紹介に『インベスターZ』のエピソードを「多数引用」とありますが、まず本書内にある22項目(本書内では「●時間目」)の冒頭の見開き2ページには、すべて『インベスターZ』のエピソード並びに象徴的なコマが配されています。
続く本文内で、エピソードに触れていない項目もありますし、『インベスターZ』の解説本とは違うのですが、さすがにここまでどっぷり『インベスターZ』の内容を用いておいて、三田先生の名前を出さないわけにはいかないでしょう。
『インベスターZ』をお読みの方なら、「あー、そんな話あったな」と振り返ることもできますし、お読みでない方は、主人公の孝史が、まったくの素人から、投資の世界にのめり込んでいく過程を追体験できるのではないか、と。
◆さて、上記ポイントでは株式投資のお話がメインになってしまいましたが、『インベスターZ』にFXや不動産投資のエピソードがあるように、本書の第4章では、これらのテーマにも言及しています。
たとえば、これからの人口減を考えたら、東京の地価は下がるか否か。
本書によると、千葉、埼玉、神奈川を含んだ「東京圏」の人口は3700万人にも及び、ニューヨークやメキシコシティの1900万人と比べても桁外れに多いのだそう。
そして人口の流入量もやはりダントツの1位。
「こういったデータから見ていくと、間もなく東京の人口が減少に転じ、不動産価格が下がる、という予測に疑問符がつく」と本書では述べています。
……ただそれにしても、エリアと物件次第ではないか、と。
◆ちなみに本書は、内容紹介で「20代、30代の方々に向けた、投資の入門書」というだけあって、既に投資をなさっている方にとっては、既知の内容がほとんどだと思います。
とはいえ、初心者向けの割には、「投資信託」の話が一切出てこないのが謎(?)。
この辺は、基本的に「ほったらかし」の投資信託だと、投資の知識が増えないからなのか
ただし、漠然と「投資は怖い」と思っている方が、そのマインドセットを変える意味では読む価値は大。
投資をやるにせよやらないにせよ(本書には「リスクをとらないこともまた、リスクである」という項目があります)、知識を持っておくことは大事だと思います。
「投資の基礎」と「投資家の思考」を学べる1冊!
せめて25歳で知りたかった投資の授業 (星海社新書)
第1章 投資が「怖い」のはなぜ?
第2章 投資はこんなに「単純」だ
第3章 一般投資家が知るべき「プロ」の考え方
第4章 お金だけじゃない! 投資があなたにもたらすもの
第5章 投資で「自由」を勝ち取ろう!
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。はじめてのサイエンス (NHK出版新書)
新書の割には、中古が底値ではなく、Kindle版が300円以上お買い得!
というのも当然で、本書が出たのは昨年10月ですから、まだ新しい部類に入る作品です。
……私もムスコの理科の勉強に備えて、とりあえず買いましたw
ご声援ありがとうございました!
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