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2016年12月23日

【メンタル】『悩み・不安・怒りを小さくするレッスン 「認知行動療法」入門』中島美鈴


悩み・不安・怒りを小さくするレッスン 「認知行動療法」入門 (光文社新書)
悩み・不安・怒りを小さくするレッスン 「認知行動療法」入門 (光文社新書)



【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨日の「未読本・気になる本」の記事にて注目されていた1冊。

著者の中島美鈴さんは、認知行動療法の専門家であり、本書では私たちが実践できるTIPSを数多く取り上げてらっしゃいます。

アマゾンの内容紹介から。
メールの返信がない、他人からミスを指摘される、といった些細なことを気にして、いつもクヨクヨ、ビクビク、イライラしている。あるいは、ストレスを感じたときに過食するなど、やめなければいけないと分かっていることがやめられない―。そうした自分を変えることはなぜ難しいのか?そこには「認知の歪み」と「無意識的な学習メカニズム」が関係している。デメリットの多い考え方のクセや悪習慣をどう変えていけば良いか、科学的な根拠に基づいて教えてくれるのが認知行動療法だ。本書では、その基礎から実践、さらには「アンガーマネジメント」や「マインドフルネス」といった応用的な技術まで、身近な例を用いて分かりやすく解説する。

なお、新書とほとんどお値段変わりませんが、現時点で中古にプレミアが付いている以上、Kindle版という選択肢もアリかと。





Cognitive Therapy | Fox Valley Institute, Naperville IL (630) 718-0717 / Fox valley Institute


【ポイント】

■1.「認知の歪み」とは?
 知人にメールを送ったのに、返信がない、という場面を思い浮かべてみてください。客観的な事実としては「メールを送ったけれど、今のところ返信がない」というだけのことですよね。相手が忙しくて返信できないのかも知れないし、返信する必要がないと判断したのかも知れません。いずれにしても、それ以上は考えても仕方がないことです。
 ところが、この単純な事実が、本人の受け止め方によって、大きなストレスの原因になってしまうことがないでしょうか?
 たとえば、「私は嫌われているのかな」などと思いはじめたり、「私は返信する価値がない人間だと思われているのかな」とまで考えてしまったりする。
 こうした物事の受け止め方には、人それぞれのクセのようなものがあります。そのクセが肯定的、あるいは平均的なものである場合には問題ないのですが、なかには過剰にネガティブな受け止め方をしてしまう方もいらっしゃるかも知れません。
 それが「認知の歪み」です。


■2.「一般化のしすぎ」を修正する「一滴のインク技法」
 部分を全体に広げてしまう「一般化のしすぎ」という考え方のクセをお持ちの方は、その逆のことをしよう、と心がけていると上手くいきます。つまり、広げすぎた否定エリアを本来の「部分」にまで縮小させようとする習慣を持っていただきたいのです。
 たとえば、上司から1つのミスを指摘されただけなのに、仕事の能力や人格まで否定されたかのように考えている自分に気づいたら、まず、
「違う、違う。それは『一般化のしすぎ』だ。否定されたのは、書類の一部じゃないか」
 と自分に言い聞かせてください。今、問題を指摘されたのは、仕事の能力全体ではないし、ましてや自分という人間そのものでもありません。提出した書類全体についてでもなく、あくまでも、その中の1つのミスに過ぎないのです。
 そのことに気づいたら、指摘された部分については真摯に受け止め、それをどう改善すれば良いかを考えることに集中しましょう。


■3.先行刺激と報酬を結びつける別の道具を与える
 スーバーで駄々をこねる子どもの場合、ターゲットとなる行動の前にあるのは「欲しいお菓子があるのに買ってもらえない」という刺激ですよね。後にあるのは「お菓子を買ってもらえる」という報酬です。駄々をこねるという行動が、この2つを結びつける道具にならないことを経験によって学習させていく必要があります。(中略)
 そこで、私がおすすめしたいのは「お菓子を手に入れる別の仕組みを提示する」という方法です。たとえば、次のように伝えてみるのはどうでしょうか。
「今日はお菓子を買いに来たんじやないからね。でも、今『まあ、いいか』と我慢して、ママと一緒に野菜を買ってくれたら、明後日、お菓子を買ってあげるよ。どうする?」
 先行刺激と報酬を結びつける(母親にとっても、子どもにとっても望ましい)別の道具を与えるのです。


■4.認知行動療法をベースとするアンガーマネジメントの5つのステップ
(1)怒りが発生する前にあった「一次感情」に目を向ける。
(2)怒りを行動化することにより、どんなメリットを得ようとしていたのかを分析する。
(3)怒りを生じさせている「認知の歪み」を分析する。
(4)怒りのピークをやり過ごし、怒りに伴う身体の反応を緩和させる。
(5)一次感情を解消する方法を考え、実行する。

(詳細は本書を)


■5.思考や感情にラべリングする
 たとえば、自分の母親と妻との折り合いが悪く、双方から不満ばかり聞かされている。そのことを思い出すと、うんざりして、仕事が手に着かなくなる、というビジネスマンを想像してみてください。
 彼は漠然と「こんなに気がかりなことがあっては、仕事に集中できるはずがない」と思っているかも知れません。しかし、本当にそうでしょうか?
 今、自分がとらわれている思考と感情に「ヨメシュウトメ」と名前をつけて、過大評価も過小評価もせず、ありのままを観察しようとしてみると、どうでしょうか。
「確かに厄介な問題ではあるけれど、そのために仕事に集中できなくなるほどではない」
 ということに気づけるかも知れませんね。


【感想】

◆上記ポイントの2番目にある「一般化のしすぎ」とは、本書の第3章で解説されている「典型的な推論の誤り」の中の1つ。

実はこの誤りは全部で7つあり、列挙すると次のようになります。
・一般化のしすぎ
・自分への関連付け
・根拠がない推論
・感情による決めつけ
・全か無か思考
・すべき思考
・過大評価と過小評価
それぞれどういうものかについては、本書にてご確認いただくとして、確かにこの中のいくつかは、多少なりとも自分にもその傾向があります。

特に自分だけではなく、「すべき思考」(「〜すべきだ」「〜しなければならない」といった言葉で表現される考え方に固執する)は、仕事柄お役人さんを相手にしていると、感じることが多々w

こういう方は、きっと私生活でも、そういう風に考えがちなのかな、と思ってみたり(余計なお世話ですがw)。


◆本書では、この7つの誤りすべてに対して、上記ポイントの2番目のように「修正法」が提示されています。

たとえば、上記の「すべき思考」については「must→better技法」なるものを奨励。

これはその名のとおり、「〜すべきだ」「〜しなければならない」という部分(「must」)を、ようなゆるやかな表現(「better」)に変える、というものです。
「何事も完璧を目指すべきだ」
     ↓
「何事も完璧を目指す方が良い」
なお、「すべき思考」で考えている内容は、多くの場合正しいことなので、内容まで変える必要はなく、あくまでも表現をゆるやかにするだけ、とのこと。

実はこんな感じで、7つある「修正法」のうちから、5つ選んで記事にしようかと思ったくらい、この部分は付箋を貼りまくったのですが、とりあえず自重しましたw


◆というのも、それ以外の部分もかなり充実しているから。

上記ポイントの3番目も、具体例とその対処法だけ抜き出してしまいましたが、この「駄々をこねる子ども」というケースは「オペラント条件付け」と言われるものなのだそう。
欲しいお菓子があるのに買ってもらえないとき(先行条件)
駄々をこねたら(特定の行動)
買ってもらうことができた(報酬)
そこでまた、欲しいお菓子を買ってもらえないときには、駄々をこねてしまうワケです。

同じような「オペラント条件付け」のケースとしては、「赤ちゃんの夜泣き」があるのですが、こちらの条件解除については、本書にてご確認を。


◆また、上記ポイントの4番目にある「アンガーマネジメント」をテーマにした本は、過去何冊かご紹介してきましたが、「一次感情」という概念は出てこなかった気が(忘れていただけかもしれませんが)?

本書では具体例として、「異性のパートナーと部屋で過ごしているときに、彼(彼女)がスマホに夢中になっている」というケースが登場しています。

このとき「自分といるときにスマホばかり見るな!」というのが二次感情。

では一時感情は、というと、「本当はこっちを向いて欲しいのに」という寂しさや、「スマホで誰とやりとりしているんだろう?」という嫉妬等です。

さらにここに「認知の歪み」として、「もっとパートナーと過ごす時間を大切にするべきだ」という「すべき思考」が加わっていることを認識すべき。

上記で触れたように「must→better技法」を用いれば、怒りも和らぐのではないでしょうか。


◆ちなみに上記ポイントの5番目のラべリングは、実は「マインドフルネス」に関するもの。

本書の第12章では、このほかにもマインドフルネスの技法がいくつか紹介されていますので、ご参考まで……と、このように本書のテーマは多岐にわたっています。

正直、新書なのに詰め込み過ぎな気がしないでもないですが、その分中身は充実。

いつも言っていますように「使えるTIPSを選んで使う」やり方でいいと思います。


実生活に役立つ1冊!

悩み・不安・怒りを小さくするレッスン 「認知行動療法」入門 (光文社新書)
悩み・不安・怒りを小さくするレッスン 「認知行動療法」入門 (光文社新書)

序章 複雑に悩むよりシンプルに考えよう
第1章 認知が感情を生み出している ―― アーロン・ベックの「認知モデル」
第2章 信念に動かされないために ―― 「下向き矢印法」と「行動分析」
第3章 考え方のクセを修正する ―― 典型的な「推論の誤り」
第4章 行動を変えれば世界が変わる ―― 「行動実験」という方法
第5章 なぜ体が反応してしまうのか? ―― 「古典的条件付け」のメカニズム
第6章 分かっているのにやめられない ―― 「オペラント条件付け」のメカニズム
第7章 不安とどう向き合うか ―― 「逆制止の原理」と「エクスポージャー」
第8章 回避が不安を大きくする ―― 「パニック障害」へのアプローチ
第9章 人前で何かをするのが怖い ―― 「社交不安障害」へのアプローチ
第10章 怒りとどう向き合うか(分析編)―― 「アンガーマネジメント」の考え方
第11章 怒りとどう向き合うか(解決編)―― 「アサーティブ・コミュニケーション」の効果
第12章 グーグル社も採用した集中力の高め方 ―― 「マインドフルネス」の実践
あとがき
巻末付録 信念の分類とチェックリスト


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【コミュニケーション】『アドラー流 たった1分で伝わる言い方』戸田久実(著),岩井俊憲(監修)(2015年03月06日)

【編集後記】

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