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2016年12月01日

【音楽】『ヒットの崩壊』柴 那典


ヒットの崩壊 (講談社現代新書)
ヒットの崩壊 (講談社現代新書)


【本の概要】

◆今日お送りするのは、先日ではなくてその前の「未読本・気になる本」の記事にてセレクトしていた音楽本

まだ出たばかりなのに、今日まで開催している講談社のKindleセールの対象として、「40%ポイント還元」というお買い得状態になっていたので、私も思わず買ってしまいましたw

アマゾンの内容紹介から一部引用。
「ヒット」という得体の知れない現象から、エンタメとカルチャー「激動の時代」の一大潮流を解き明かす。
テレビが変わる、ライブが変わる、ビジネスが変わる。
業界を一変させた新しい「ヒットの方程式」とは…?

もちろん、新書でも読めますが、今日中にお求めになるのなら、お得なKindle版がオススメです!





J-POP! / mroach


【ポイント】

■1.J-POP普及の背景にあったカラオケボックス
 カラオケが果たした役割も大きかった。スナックや宴会場など酒席の娯楽だったそれまでのカラオケに代わって、個室型のカラオケボックスが郊外から都市に広まり、ブームを巻き起こした。さらに1992年には「通信カラオケ」が登場し、それまでの主役だったLD(レーザーディスク)式のカラオケを駆逐していった。  
 こうして、若者の間で「テレビで流れている新曲をカラオケで歌う」という流行消費の形が一般的になった。  
 ヒット曲は「聴かれる」ことではなく、10代や20代に「歌われる」ことによって生まれる。
「カラオケで歌われるのがヒット曲の条件」と言われるようになった。


■2.小室時代を終わらせた宇多田ヒカル
 こうして90年代に一時代を築き上げた小室哲哉。ただ、その栄華は長くは続かなかった。彼は「宇多田ヒカルの登場が僕を終わらせた」と振り返る。
「僕はヒカルちゃんが出てきた時に『時代が変わるんだろうな』って思いました。デビュー曲の『Automatic』の時点で『やばいな、これ。次の来たな』って感じて。アルバムも案の定ものすごい枚数が売れた。でも、それと同時に『これ以上はCDの枚数は稼げないだろうな』という直感もあった。限界値、一つのピークに行き着いた感じがあったんです」  
 宇多田ヒカルの登場は、単なる「ヒットチャートの主役交代」ではなかった。音楽ジャーナリスト・宇野維正は『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)の中で、デビュー時の彼女のプロモーション戦略が前述したような大型タイアップ主導のものではなかったことを解説している。彼女の登場は、様々な意味で「メガヒットの時代」だった90年代の終わりの象徴となった。


■3.オリコンをハッキングしたAKB
「AKB商法」がオリコンランキングをハッキングしたと捉える見方は多い。ただ、それを単に握手会などの特典を目当てにしたファンの複数枚購入を煽ること、それによってセールス枚数を稼ぎ宣伝効果にすることだけだと捉えると、実はその指摘は半分しか当たっていない。特典商法は他のアイドルやアーティストもやっていることだ。  
 むしろハッキングの本質は選抜総選挙にある。(中略)
 かつて小池聰行が絵ハガキを売りながら気付いた「人気を数値化する」システムは、少なくともAKB48においては年に一度のシングル選抜総選挙に代替されるようになっていた。人々の耳目を集めるランキング対決も、グループ内部で行われるようになっていた。しかも、その投票券を封入したシングルは毎年圧倒的な売り上げ枚数となり、2015年から2015年に至るまで6年連続でオリコン年間ランキングの1位を記録している。  
 オリコンランキングは二重の意味でハッキングされたのである。


■4.テレビと競合せず補完しあうスマホ
 これまで繰り返し書いてきたように、テレビとネットと音楽を巡る状況の中で、00年代と10年代の大きな違いはスマホが普及したことだ。  
 それ以前に一般的だったPCベースのインターネットは、いわばユーザーのテレビ離れを加速させるアーキテクチャだった。一方、スマホはテレビと併用することが可能だ。「スマホを片手にSNSをチェックしながらテレビを観る」という視聴スタイルが広まったことで、テレビとネットの関係は変わってきた。競合する敵同士ではなく、補完しあうものと捉えることができるようになってきた。番組の作り手もそれを意識するようになった。


■5.時間と空間を共有する
 音楽に「参加する」というのは、曲に合わせて一緒に歌ったり踊ったりするようなことだけを指すわけではない。
 ライブやコンサートの動員が拡大した背景にあるもう一つの重要なポイントは、それが「時間と空間を共有する」体験である、ということだ。  
 ミュージックビデオがYouTubeに公開されていれば、好きなときに好きな場所でそれを観ることができる。いつでも、どこでも、無料でそれを楽しむことができる。そういうタイプの「コンテンツ」の供給が爆発的に増えたことで、逆に、その時間、その場所でしか体験できない「コミュニケーション」の価値が上がった。それが10年代の趨勢だ。
 そして、音楽は本来「コンテンツ」ではなく「コミュニケーション」だ。ライブやコンサートの現場に訪れると、そのことを強く実感する。デジタルメディアを媒介して届けられる情報ではなく、目の前の空気を震わせて伝わる音に、その本質がある。


【感想】

◆私自身、今でこそ音楽は、単に携帯プレーヤーで聴いたり、YouTubeで流しっぱなしにしているだけになっていますが、かつては毎週のようにCDを買い漁り、ライブにもガンガン行っていただけに、色々と考えさせられた1冊でした。

もっとも私が聴いていたジャンルは、ほぼ9割以上が洋楽なため、本書に登場する音楽のほとんどについて、詳しいわけではありません。

野外フェスには行ったことがないですし、「歌ってみた」り「踊ってみた」ことも当然ナシ。

つまり、「CDバブル」と言われる90年代より後のジャンルについては、そもそも「みんなが知ってるメガヒット」自体が少ないだけに、本書で登場しているアーチストや曲も、知らないものが結構多かったです(恥)。

……いや、アニメやニコ動観ないオサーンなんて、こんなもんだと思いますが。←言い訳乙!


◆さて、本書でも指摘されているように、ここ数年のオリコンの年間ランキング上位が、AKBに独占されていることは、ご存知の方も多いことかと。

実際、ベスト5に限れば、2013年のEXILE、2015年のSKEを除き、すべてAKBの曲が占めています。

もちろんこれは、「AKB商法」と呼ばれる同じCDを何枚も買わせる手法に因るところが大きいのですが、忘れてはならないのが上記ポイントの3番目で触れている「選抜総選挙」。

これは注目を集めやすい「人間の対決」であり、様々なドラマを生み出しました。

結果、「同じCD」を買いながら、その目的はそれぞれ「対立」しているという構造であり、それは売れるよな、と。


◆また、上記ポイントの4番目にあるように、10年代以降はスマホの存在も大きい模様。

確かにPCがテレビ離れを加速させるのに対して、スマホはSNS(特にTwitter)で、お互いが感想を述べあったりして「時間」を共有しています。

それもあって、最近のテレビの歌番組は、長時間生放送の特番が乱立しているのだそう。

そしてこれは、野外フェスの潮流を取り入れたもの。

フェスはもちろんライブ自体が、上記ポイントの5番目にあるように「時間」だけでなく「空間」も共有しており、これが「10年代の趨勢」なワケです。


◆ただ、私自身が邦楽をほとんど聴かないため、各アーチストの売れた原因等については、鵜呑みにせざるを得ず。

特にBABYMETALやきゃりーぱみゅぱみゅの海外での成功に関しては、正直、よく分かりませんw(←無責任)。

また、一大勢力であるにもかかわらず、ジャニーズに関する言及が少ない……って私は全然いいんですがw

とはいえ、過去から現在の「ヒット」に関する分析や、未来への展望等、非常に勉強になりました。

クリエイティブなお仕事をされている方や、マーケティング好きの方なら、一読の価値はあると思われ。


ビッグヒットを生み出したい方に!

ヒットの崩壊 (講談社現代新書)
ヒットの崩壊 (講談社現代新書)
第1章 ヒットなき時代の音楽の行方
第2章 ヒットチャートに何が起こったか
第3章 変わるテレビと音楽の関係
第4章 ライブ市場は拡大を続ける
第5章 J-POPの可能性──輸入から輸出へ
第6章 音楽の未来、ヒットの未来


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【ティッピング・ポイント】「急に売れ始めるにはワケがある」マルコム・グラッドウェル(2007年07月18日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

ロジカル・プレゼンテーション ― 自分の考えを効果的に伝える戦略コンサルタントの「提案の技術」
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帯にあるように10年以上から売れ続けて、5万部突破しているという1冊。

送料加味した中古よりも600円弱お得となっています。


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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