2016年10月22日
【濃厚!】『読者ハ読ムナ(笑): いかにして藤田和日郎の新人アシスタントは漫画家になったか』藤田和日郎,飯田一史
読者ハ読ムナ(笑): いかにして藤田和日郎の新人アシスタントは漫画家になったか (少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の編集後記で「岡田斗司夫さんが激賞していた」として取り上げた1冊。あの岡田さんが「内容から考えると、めちゃくちゃ安い」というので、私もKindle版を買って読んでみたのですが、未だかつてないほどハイライトを引きまくりました。
アマゾンの内容紹介から。
「うしおととら」「からくりサーカス」「月光条例」そして「双亡亭壊すべし」で少年漫画界を熱く走り続ける藤田和日郎。
その仕事場からは数多くの漫画家が巣立った。
今回、藤田和日郎のアシスタントになった架空の新人漫画家が、連載を勝ち取るまでを描く体裁で、藤田氏が自身の漫画創作術、新人漫画家の心構えやコミュニケーション術を語り下ろしました。
藤田和日郎の初代担当者も新人漫画家の担当編集者として登場。
現在上記の単行本が在庫切れ、かつ入荷時期が未定である以上、Kindle版にてお楽しみください!
Otakuthon 2016 - Tora / pikawil100
【ポイント】
■1.評価の理由を言語化する映画にかぎらずなんだけど、作品を語るときには、その評価の「理由」を語ることが大事だ。たとえばおれが「ラブコメで主人公が女の子たちに好かれる理由もわかんねえのにモテまくるようなやつはだいっきらいだ!」と言ったときには、「こうこうこういう理由だから嫌いだ」というロジックを必ず伝えることにしている。(中略)
おれは「いいと思ってるものはこう。だけどあれは、こういうふうに外れているからダメ」と理屈を説明をするし、キミにもそれを求める。「ベストはこうなのに、ここをやってないからダメだと判断しました」と言語化できるようにならないと、作品を見る目が育っていかない。感覚でものをしゃべっても、おもしろさをつくることはできるようにならない。自分で腑に落ちるように、そして他人にも伝えられるように、論理的にしゃべれるように訓練してほしいんだ。
■2.新人の武器は「質問すること」
新人の唯一の武器は、質問することなんだよ。「キミのは全然ダメ」と言われたら「これをダメっていうあなたが思う最高の作品は、どういうものですか」ということを、あの手この手を使って探ってこなきゃいかんのよ。(中略)
編集者だってたいていは頭の中にきっちり明確なビジョンがあるわけじゃないから、質問してやりとりしていくなかで、お互いのイメージがすり合っていくカンジなのよ。 新人は、そうやって聞くことに必死になんなきゃいけない。だって、自分の人生がかかってんだよ?目の前の人間が、キミを漫画家にしてくれるかどうかを決めるひとなのに、「つまんない」って言われたからって何ふてくされてるのよ(笑)。
■3.「なんで?」と掘り下げるクセをつける
キミが考えたこのネームに出てくる主人公って「運動は得意だけど難しいことは考えられないやつ」みたいだけど、「それはなんで?」って考えなかったか? まあ、言われないと自分が作ったキャラクターに対して「なんで?」って聞くなんて、そんなことしないわな。普通だったらそんなこと誰も聞かないかもしれない。だけどとにかくつくったすべての設定に対して「なんで?」を考えていくんだ。(中略)
キミだけじゃなくてね、たいていの新人って「格闘漫画を描こう」って先に決めて、誰かと戦うことを目的にしてストーリーの枠組みをつくっていっちゃうから「こいつ、なんで格闘好きなの?」と聞いても「いや、そっちのほうが都合がいいから……ごにょごにょ」ってなっちゃうものなんだ。 でも、どんなことにも理由はあるわけさ。実は「なんで格闘技を選んだのか」を掘っていったら、おもしろくなる要素がいくらでもキミの中から出てくるんだよ。
■4.常識から入って、意外性を用意して、期待通りに終わる
意外性を高めていくことと、期待感を持たせていくことには、順番がある。常識から入って、次に意外性を用意して、期待感のとおり終わるのがベストなんだ。なのに新人は意外性で始めたがったり、意外性で終わっちゃう。それじゃあ読者は喜ばない。「はあ?」って言うだけだ。
なんで新人はそんなことをしちゃうのか。ふだん期待感のとおりに終わってくれるようなものばっかり見ているから「おれは違うものができるよ」とアピールしたくなっちゃうんだろうなァ。で、アンハッピーエンドで終わったりする。そうじゃないんだよ。主人公たちを思いっきりピンチに陥れておいて、それを覆すことに一生懸命にならなきゃいけない。
■5.外に答えを探さず、内を見つめる
漫画家のカラダの中には、川が流れている。たっぷり水がある。蛇口がついたホースでその川の水を自分の漫画に引っ張ってこなきゃいけない。だけど新人は、そのホースをどうやってつけたらいいのかわかんないから、外から持ってこようとする。そうじゃない。自分の川から自分の漫画に水を引っ張ってこなきゃいけないんだ。
外のものを勉強する、新しいものを見る、体験する、これは確かに大切なんだよ。何もないトコロからは何も生まれないの。でもね、見かたを変えるとそれは「簡単」でもあるよ。それに比べて自分を見つめて掘っていく作業は、こわいもんだ。自分に才能があるのか、いいものがあるのか、はたしておれは何者なのかといういちばん見たくないことに、向き合わないといけない。
でもその先に自分の「武器」がきっと見えるよ。
それを、やれよ。キミはもう、武器を持ってるよ。あとは、掘り返すだけなんだ。
【感想】
◆冒頭で触れたように、本書にはやたらとハイライトを引きまくったので、後からポイントとして抜き出すのが大変でしたw(自業自得)一応形式としては、漫画家である藤田和日郎センセイと、編集者である武者正昭氏が、連載を目指す新人漫画家に代わる代わるアドバイスする仕様。
今回、武者氏のパートでも付箋……じゃなかったハイライトは引いたのですが、両方のスタンスを載せると混乱しそうだったので、あえて藤田先生の発言だけ抜き出しております。
念のため、藤田先生がどういう漫画を描いてらっしゃるかご存知ない方のために、著者ページを。
Amazon.co.jp: 藤田 和日郎:作品一覧、著者略歴
ちなみに私も最近まで知らなかったのですが、藤田先生の絵の描き方は、かなり独特なようで……。
「アタリ即ペン!」「フリーハンドぇ…」『浦沢直樹の漫勉』藤田和日郎先生の回に対する漫画家先生たちの反応 - Togetterまとめ
迫力ある絵だとは思っていたものの、まさか「修正ペンを筆記具」にされていたとはw
◆こんな独特な描き方(?)の漫画家さんの言うことに、どんだけ信憑性があるのか、と思われた方、間違ってます!
なぜなら、藤田先生の仕事場から、その後漫画家としてデビューした方が非常に多いという事実があるわけで。
Amazon.co.jp: 安西信行: 本
Amazon.co.jp: 井上和郎: 本
Amazon.co.jp: 片山ユキヲ: 本
Amazon.co.jp: 金田達也: 本
Amazon.co.jp: 福田宏: 本
Amazon.co.jp: 雷句誠: 本
本書のまえがきに掲載されているのはこの方々だけですが、他にもいらっしゃるとのこと。
そして、藤田先生の初代担当編集者であった武者氏いわく「ここまで次々とアシスタントがプロ作家として育っている仕事場は、きわめてまれ」なのだとか。
つまり、この藤田先生のやり方こそが、プロ漫画家としての「成功メソッド」の1つである可能性が高いわけです。
◆ただし、本書の対象とする「漫画家志望者」の読者ハードルは、少々高め。
漠然と「漫画家になりたいな〜」という方ではなく、実際に漫画を描いたことのある方に向けており、登場する「新人漫画家君」も、設定としては新人賞を獲得しています。
ところが、そのレベルの人材であっても、連載を勝ち取るまでは、編集者からはダメ出しされまくるのが実際のところのよう。
しかも、その編集者からのアドバイスも、分かりにくい真意があったり、具体的にどうしたらいいか分からなかったり、といった具合(詳細は本書を)ですから、こうして分かりやすく解説してくれる藤田先生のような方がいなかったら、途中で挫折しても不思議ではありません。
逆に、一人で漫画を描いて、そのまま連載デビューできるような人がいることが、本書を読むと信じられないのですが……。
◆本書の帯には「全漫画家志望者必読!!」(Kindle版の書影で見られます))とあって、ハゲシク納得したワタクシ。
また、漫画家でなくとも、何らかのクリエーターを目指す方なら、「目からウロコ」のお話が本書にはザクザクあるでしょう。
特に上記ポイントの1番目の「言語化」は必須と思われ。
さらに、ご自身がまったく畑違いの分野の方であったとしても、本書を「他業界の『プロフェッショナル』を目指すお話」として読み解くことは可能です。
もちろん、漫画をただ読むだけの人にとっても、手に取った漫画が「どのように考えて作られているか」を意識するきっかけになるかと。
読む人が読めば、とんでもない価値を見出すであろう1冊!
読者ハ読ムナ(笑): いかにして藤田和日郎の新人アシスタントは漫画家になったか (少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)
1.漫画家になりたいんなら会話できんとさ!
2.ストーリーにキャラをあてはめたらダメ。ストーリーとキャラは往き来しながらつくってな!
3.「キャラクターを立てる」とはどういうことさ?
4.魅力的な絵を描くには、細かい技術論より「絵の目的」が最重要
5.「キミだけのオリジナリティーを」?
【関連記事】
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「プチクリ!」岡田斗司夫(著)(2006年07月10日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。K(ケイ) (アクションコミックス)
普段はコミックの「日替わりセール」はスルーしているのですが、せっかく漫画家さんの作品を紹介したのでw
それにしても、あまり値崩れしていないのに「81%OFF」というのはお買い得。
私はこの作品を知らなかったのですが、このレビューを読む限り、かなり面白そうですね。
ご声援ありがとうございました!
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