2016年10月16日
【起業】『我慢をやめてみる 人生を取り戻す「起業」のすすめ』森川 亮
我慢をやめてみる 人生を取り戻す「起業」のすすめ (朝日新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて人気だった起業本。著者の森川 亮さんが、前作とは打って変わって、ガチな起業ネタについて語られています。
アマゾンの内容紹介から。
会社のなかにいても、「起業家」にはなれる!いま求められているのは、いわゆるベンチャー企業による起業だけではありません。既存の企業のなかで新たな価値を生み出そうとするのもまた、ひとつの「起業」の形です。いくつになっても、起業はできます。自ら行動した人だけが、後悔のない人生を手にできるのです。
なお、新刊の新書ですが、お買い得なKindle版も用意されております!
How to run an effective meeting / Nguyen Vu Hung (vuhung)
【ポイント】
■1.ベンチャー企業で働くという選択肢ぬるま湯の環境から抜け出したいが、いきなり起業するのは不安だという人もいるでしょう。起業は、誰も守ってくれる人がいない大自然の中に放り出されるようなものです。餌の取り方を忘れた人が突然挑むのはハードルが高い面があります。
そこで、ワンクッションとしてベンチャー企業で働いてみるのもいいと思います。
ベンチャー企業は、大企業のように若い人をじっくり育てる余裕がありません。入社一年目でも、それなりの裁量を持たされて結果を出すことが求められます。
また、大企業は高度に組織化されていて仕事を分業で行いますが、ベンチャー企業は組織が未整備で、一人一人の役割分担が不明確です。そのため一人の守備範囲が広く、大企業では他の部署の人がやってくれるような仕事も自分でこなす必要があります。
■2.起業で問われるのは「目的」と「覚悟」
起業してイバラの道を歩んでいると、「あれ? 自分は何のために起業したんだっけ?」という疑問が必ずわいてきます。このとき、楽しいことをしたい、お金持ちになりたい、有名になりたいといった目的で起業をしていると、心が揺れます。楽しみたいと思っていたけど、現実は正反対じゃないか。楽しむだけなら、起業より他の手段のほうがいいのではないか、と。
実際、その通りなのです。起業は日々大変なことが待ち受けています。それに耐えたとしても成功するとは限りません。むしろ失敗のほうが多い世界です。自分だけのことを考えるなら、起業以外の方法で欲を満たしたほうがずっと賢いです。
自分本位で起業した人は、途中でその事実に気づいて退場していきます。そういう人を数多く見てきたので、自分の楽しみのために起業することをおすすめしないのです。
■3.投資を受けたお金を好き勝手に使わない
ちなみにお金を好き勝手に使うというのは、公私混同して贅沢に使うという意味ではありません。そういう人は起業に向かないからやめたほうがいいし、VCもいい加減な人を見抜く目を持っているので、そもそも最初から投資してもらえないでしょう。
厄介なのは、事業上でやりたいことをすべてやってしまう人です。たとえばメインの事業が軌道に乗らないうちに思いつきで他の事業を始めてしまったり、メインの事業に絞るとしても、効果を考えずに手当たり次第にマーケティングをやってしまったり……。
本人に悪気はなく、むしろ事業を成功させたい気持ちが強くてやってしまうわけですが、このような調子でお金を使っていたら、潤沢であるはずの資金もあっという間に底を尽きます。
■4.分野の見極めとプロダクトに全力を注ぐ
ただ、起業家のキャラクターや資質は、どちらかというと副次的な要素です。ベンチャーキャピタルが投資をするのは、人ではなく事業です。人も見ますが、それ以上にチェックが厳しいのは事業の中身です。
まず重要なのはジャンルです。将来に向けて市場が広がっていく分野なら投資を受けやすいですが、そうでなければ投資を受けにくい。これが基本です。あたりまえのようですが、斜陽化して市場の縮小が進んでいる分野にITを導入して効率化を図るベンチャーというのも存在します。それはそれで社会的に意義のあることですが、投資を受けづらいのは事実です。
将来性の高い分野であるという第一関門を突破したら、次はプロダクトがあるかどうかというところがチェックポイントになります。
案外多いのが、事業のコンセプトは優れているが、具体的なプロダクトがまだないというケースです。これは投資家のウケが悪い。完璧なプロダクトでなくても、何かしらリアリティーのあるものを提示しないと投資は受けにくいでしょう。
■5.MBA過信は禁物
座学に限界があるという意味では、MBA(経営学修士)教育も過信は禁物です。
ある程度大きな組織を動かすときには、MBAで教えてくれるマネジメント手法が役に立ちます。また、大組織にはリソースがたくさんあるので、それを俯瞰して整理する戦略系コンサルタントが活躍する余地があることもよくわかります。
しかし、スタートアップ段階のベンチャーに必要なのは、組織論や戦略論、マネジメント手法ではなく、「行動」です。ベンチャーは小さなチームで動くので、口ばかりで動かない人は嫌われます。また、ベンチャーは戦略的にもスピード重視で、「立ち止まってあれこれ考えている暇があるなら、とにかく動け」の世界。MBAで学んだことを使う場面はほとんどありません。
【感想】
◆何となく抽象的な(?)本書のタイトルから、ここまで「ガチ」系な起業本だと、誰が思うでしょうか?というか、ぶっちゃけ「メインタイトル付けた人、出てきなさい!」レベルのアンマッチw
私も最後まで読み終えてから、思わず、冒頭の「はじめに」まで戻って読み返してしまいましたよ(実話)。
そもそも一般的に考えて、会社員勤めの状態から、独立・起業を考える場合、まずは「何らかのビジネス」を「(副業レベルでも)お金がもらえるレベル」にし、やがては「それだけで飯が食えるレベル」まで育て上げる必要があります。
従来の多くの起業本が、そのレベルまでに言及しているのに対し、本書の場合それを飛び越えて「投資を受けるためには?」のレベルになっているという。
◆ただ、確かに提供するサービスやプロダクトによっては、立ち上げの時点から、多額のお金が必要になるケースが多いのも事実です。
たとえばYouTubeは、しばらくマネタイズする手段もなかったわけですし、それを言ったらあのGoogleだってそうでした。
未来を見据えたビジョンがあって、それに多くの人が賛同し、ベンチャーキャピタルもお金を出資するほどのビジネスを考えること。
そういった形での「起業」を目指す方なら、本書は非常に有意義だと思います。
……海外では、こんな詐欺まがいの話もありますが。
Theranosのその後 | On Off and Beyond
さすがアメリカは集まるお金も半端ないですねw
◆一方、著者の森川さんご自身は、元LINEのCEOとして有名ですが、最近は、こんなビジネスを立ち上げていらっしゃいます。
C CHANNEL is online video fashion magazine for women
女性向けの動画サイトということで、海外にも展開中とのこと(米国からは一時撤退中だそう)。
元々森川さんは新卒時には日テレに勤められていますし、動画をなさるのは、「流行りだから」とかではなく、ごく自然だと思います。
さらには、ご自身も若い起業家たちのメンターをなさったり、ベンチャー企業の社外取締役や顧問の職に就かれているとのこと。
本書は、そうした現状や過去の経験に基づいて書かれていますから、非常に説得力がありました。
例の起業家志望の人も、まず本書を読んでからけんすうさんに会いに行けばよかったのに、と時系列を無視して言ってみるテストw
起業家志望の石田さんと話してみた時のメモ|けんすう|note
◆なお上記ポイントは、ボリュームの関係で、結構省略しておりますので、詳細についてはできれば本書を読んでいただきたく。
たとえば、ポイントの2番目に関連して、森川さんは「貧乏だったから」とか「いじめられたから」といった「コンプレックス」から起業するのはよくない、と言われています。
これらは、確かに強い「覚悟」はあるものの、周りからの共感を得られず、事業が続かなくなるのだそう。
また、上記ポイントの4番目で「プロダクト」を重視しているのは、結局投資家が注目しているのが、コンセプトをプロダクトにする実行力と技術だから。
自分でプロダクトが作れなくても、作れる人を仲間にすればいいのであって、それができなければ、コンセプトに魅力がないか、起業家として備えるべき「人を動かす力」が決定的に欠けているかのどちらか、とのことです。
……私はてっきり「モックがあるとイメージしやすいから」かと思ったのですが、全然違いましたw
◆ちなみに第4章の「起業はいつからでもできる」では、森川さんが懇意にしている起業家それぞれとの対談を収録。
個別の話がメインなので、今回上記ポイントでは挙げませんでしたが、ここも非常に興味深かったです。
なんたって、初っ端の仲山仁之助さん(19歳!?)なんて、「『1京円』企業を目指す」ですからねー(白目)。
2番目に登場するベンチャーキャピタリストである木下慶彦さんは、「月に500人イベントでリーチし、50人個別に面談する」アクティブさ。
そして最後の三枝さんは、森川さんの日テレの同期ということで、「熟年起業」(いったん会社から独立を止められたのだそう)の参考になるかと。
起業を意識している方なら、一読の価値あり!
我慢をやめてみる 人生を取り戻す「起業」のすすめ (朝日新書)
第1章 人生を取り戻す「起業」のすすめ
第2章 世界と勝負をしよう
第3章 日本を元気な国にしよう
第4章 起業はいつからでもできる
【関連記事】
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【編集後記】
◆岡田斗司夫さんが、今朝のメルマガで絶賛して、現在在庫切れの作品がこちら。読者ハ読ムナ(笑): いかにして藤田和日郎の新人アシスタントは漫画家になったか (少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)
アマゾンレビューを読むと、マンガ家関係なく、ビジネス書として秀逸な感じです。
現在、Kindle版で買って読もうか考え中……。
ご声援ありがとうございました!
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