2016年10月07日
【科学的自己啓発】『スタンフォードの心理学講義 人生がうまくいくシンプルなルール』ケリー・マクゴニガル
スタンフォードの心理学講義 人生がうまくいくシンプルなルール
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった、「科学的自己啓発本」。当ブログでご紹介するケリー・マクゴニガル博士の作品は、本書が3冊目なのですが、今まででもっとも「日本人の読者」を意識して仕上げられています。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「時間管理術」「目標設定の立て方」といったビジネススキルから、「雑談の効用」「謝り方」といったコミュニケーション術、ストレス対策まで、日本のビジネスパーソンが抱く様々な課題や悩みを25のテーマに分け、精神論や根性論ではなく、スタンフォード大学やハーバード大学など、世界有数の研究機関の調査結果に基づく科学的見地から「解決の糸口」を示す本書。
シンプルで分かりやすい説明はもちろん、すぐに試せる具体的な思考法や行動を紹介する「実践的なレッスン」に仕上がっています。
なお、Kindle版は当初、単行本と同じお値段でしたが、若干値下がりしました!
Stanford University / Franco Folini
【ポイント】
■1.効果的な「謝り方」のポイント
- 「謝るべきことをしてしまった」と、認めましょう。婉曲的な表現を使ったり、遠回しな言い方をしたりしないで、ただ「やってしまったこと(あるいは、しなかったこと)を言ってください。
- あなたの行為によって起きた結果や、相手が受けた損害を知ってください。そのことで、相手にどんな影響を与えましたか? どのくらい損害を与えましたか?
- その行動や失敗が教えてくれることに、気づいてください。判断ミス、直そうとしている「良くない習慣」、謝るべき行動を引き起こしたことすべてに、気づくことです。
- 相手との関係にコミットすることを、言いましよう。償いを申し出て、相手があなたに何をしてほしいかを聞き、将来同じ失敗を繰り返さないためにどう努力するか、説明してください。
■2.自分の役割を見直す
「関係性」について、マインドセット(考え方)をリセットする私のお気に入りの方法は、監査人の仕事をしているある学生から教えてもらったものでした。彼女の仕事の大部分は、様々な職場へ出向き、規則や法令を順守しているか、確認することでした。行く先々でその職場の従業員が彼女を敵対視したので、彼女は仕事へのやる気をなくしていました。
そこで彼女は「それぞれの職場の従業員が各人の職務を全うできるよう、規則や法令を守る手助けをしよう」というふうに、自分の役割を見直すことにしました。すると驚いたことに、自分は敵対する存在ではなく、手助けする存在だと考えるようになったことで、他の人の「彼女への接し方」が変わったのです。さらに驚いたことには、彼らはこれまで以上に彼女を信用するようになり、修正されるべき違反事項についても、進んで開示するようになりました。
■3.「イライラ」を「ワクワク」と考える
例えばある研究では、講演を目前に控えた人数人に対して、「ワクワクする」と自分に言い聞かせるよう、研究者がアドバイスしました。同じように講演を目前に控えた別の人には、できるだけ落ち着くよう、アドバイスしました。――後者は、ほとんどの人がそのままやりそうなことです。どちらの方法も、講演者のイライラを取り除くことはありませんでした。2つのグループのどちらも、「スピーチする際に、変わらず不安を感じた」と報告されました。しかし、イライラを「ワクワクする」という"興奮"として解釈した参加者は、自信にあふれ、準備が整ったように感じたそうです。講演を聴いた人も、落ち着こうと努力した人と比べて、彼らの方が説得力があり、能力があるように見えたと評価しました。
■4.「書くこと」によって逆境を力に変える
挫折や逆境から力を得るために効く方法の1つが、自分の人生の物語を綴ることです。私は、「レジリエンスの物語」と呼んでいます。例えば、自分のキャリア、人間関係、社内のプロジェクトについてでも構いません。それを書いて、自分で読んでみるのです。
自分の人生に何が起きたのか、そこからどんな意味を見いだせるのか。自分の長所は何か。何を学んだのか。そのことを自分で書いて読むことによって、逆境を通して力を得ることができます。将来に対する楽観的な見方も、そこから生まれてきます。
逆境を経験したから強くなるわけではなく(そういう人もいますが)、一番大切なのは、逆境の物語を自分が「レジリエンス(回復)の物語」として読むことによって、マインドセットが変わるのです。そして、逆境が力になっていきます。
■5.会話を通したフィードバック(抜粋)
(1)まず、どんな分野であろうが、その人のゴール(目標)がどこにあるのか聞きます。単刀直入に言うと、手をかけないフィードバックは、確かに短期的に見れば、上司にとってラクです。しかし私の経験では、長い目で見て本当に誰かが変わり、成長するのを手助けしたいなら、振り返りながら評価する「会話を通したフィードバック」の方が効果的です。この方法を試すよう同僚を説得できた時、彼らは大抵喜び、驚きます。スタンフォード大学の教師仲間の1人が最近言いました。「もう昔のようなフィードバックのやり方には戻らない」と。
(2)次に、自身の経験――彼らのパフォーマンスとは別のこと――を、振り返るように言います。
(3)その次に、気分が良くなったことについて聞きます。
(4)ここで初めて、失望していることがないか、聞きます。
(5)結論を出さない会話で、この(フィードバックの)プロセスを締めくくります。
【感想】
◆冒頭で本書が「『日本人の読者』をもっとも意識している」と申し上げましたが、それもそのはず。巻末の「監訳者あとがき」によると、本書は「日経ビジネスアソシエ」誌面で2014年6月から2年間にわたり、「日本の読者に向けて」書き下ろされたものなのだそうです。
……冒頭の未読本記事で、版元が大和書房さんから日経BP社さんに変わったことに触れましたけど、こういう事情なら当然かと。
実際、本書を構成するテーマも「時間管理術」「目標設定の立て方」「雑談の効用」「謝り方」といった、「私たち日本人が抱える課題」を中心に選んでもらったのだとか。
もっとも、これらのテーマは「日本人読者」というより、もろに「アソシエ読者」といった方が近い気もしますがw
◆本書ではこれらのテーマが、それぞれ1つの「レッスン」として「節」を構成。
全部で25のレッスンによって、下記目次にある6つの章が成り立っています。
そして各レッスンの最後には2〜3ページを費やした「ポイント」も収録し、理解を深める仕様。
ちなみに、第1章の「成功を、どう引き寄せるか」には、当ブログでご紹介済みの「パワーポーズ」も登場しています。
〈パワーポーズ〉が最高の自分を創る (ハヤカワ・ノンフィクション)
参考記事:【成功法則】『〈パワーポーズ〉が最高の自分を創る』エイミー・カディ(2016年07月31日)
ただし、アソシエ誌面で紹介しただけあって、上記の本で「(日本人を含む)東アジア人」に効果のなかったパワーポーズである「机の上に両足をのせ、両手を頭の後ろで組んでひじを外側に突き出す」の代わりに、「背を伸ばして立つ」「腕をまっすぐにして座る」の方が、より効果的に見える、とわざわざ触れられていました。
◆また、第5章の「ストレスを、どう力に変えるか」は、必然的にマクゴニガル博士のこの本の内容がベースになっている模様。
スタンフォードのストレスを力に変える教科書
参考記事:【オススメ!】『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』ケリー・マクゴニガル(2015年10月26日)
お読みになっていない方は、よかったらこちらのTED動画をご覧ください。
これらはいずれもテーマとしては「自己啓発」なのですが、きちんとした実験や研究によって裏付けられており、私が「科学的自己啓発書」と呼んでいるもの。
同様に上記でテーマとしてあがっている「雑談」も、「生産性を高め、人間性を強める」という研究結果が出ているのだそう。
本書内で紹介されている研究だと、「職場の冷水機のあたりで同僚と交流するケース」なんですけど、それを考えると、やはり「会社の喫煙所」にも効果があったのだな、と(私は非喫煙者ですが)。
◆一方、割愛した中で興味深かったのが、「"あがり症"を克服する方法」なるレッスンです。
ここでは、上記のTED動画の会場で起きた出来事が、ケーススタディとして登場。
なんと、博士のすぐ前にスピーチをした女性が、講演の途中に檀上で、しばらくの間「固まって」しまったのだそうです。
ところが、今にも泣きだしそうな彼女に、観衆がスタンディングオベーションで拍手を送ると、彼女はスピーチを再開し、むしろそれまでよりも説得力があったのだとか。
こうしたアクシデントによって緊張するかと思われた博士ですが、なぜか今までしたどんなスピーチの時より冷静になれたので、その原因を考え続け、ある結論に達します。
要は、博士が冷静になれたのは「観客が私たちを応援してくれている」と「知った」から。
つまり、あがらないためには、「発表者自身」が「観衆をどう見ているか」が重要だというわけです(詳細は本書を)。
◆なお、このTEDでのケースは、博士の個人的な体験に基づくものなので、特に研究結果等はありません(紹介されていないだけかもしれませんが)。
ただ、それ以外の多くの研究結果についても、本文で軽く触れているだけで、巻末にエビデンスや参考文献等のまとめ等がないのは、いかがなものかと……。
博士の過去の著作2冊でも、私は同じことが気になっていたのですが、それは版元さんのスタンスだと思っていました。
しかし日経BP社さんになっても同じということは、原著からしてそういう可能性が高そうな。
もちろん、紹介されていようがいまいが、実践すれば効果が望めるTIPSばかりですから、当ブログの読者さんとの親和性は高いと思います。
基本的に各レッスンごとの関連性もないので、目次を見て、気になる部分だけパラパラ読むのもアリ。
アソシエ仕様の「科学的自己啓発書」をどうぞ!
スタンフォードの心理学講義 人生がうまくいくシンプルなルール
第1章 成功を、どう引き寄せるか
第2章 人間関係を、どう築くか
第3章 やる気(モチベーション)を、どう出すか
第4章 マイナス(負)の感情・状況に、どう対処するか
第5章 ストレスを、どう力に変えるか
第6章 リーダーシップを、どう育てるか
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【科学的自己啓発書?】『「幸せ」について知っておきたい5つのこと NHK「幸福学」白熱教室』エリザベス・ダン,ロバート・ビスワス=ディーナー(2015年01月12日)
【グリット?】『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』アンジェラ・ダックワース(2016年09月12日)
【編集後記】
◆昨日前日ランキングを発表した「ニコニコカドカワフェア2016」ですが、この2冊の人気が双璧でした。コミュ障は治らなくても大丈夫 コミックエッセイでわかるマイナスからの会話力<コミュ障は治らなくても大丈夫>
大人のための読書の全技術 (中経の文庫)
いよいよ本日限りですので、お忘れなく!
ご声援ありがとうございました!
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