2016年10月05日
【質問】『「良い質問」をする技術』粟津恭一郎
「良い質問」をする技術
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった1冊。著者の粟津恭一郎さんは、主に大企業経営者や次期経営者を対象とした「エグゼクティブコーチ」として活躍されてらっしゃる方で、エグゼクティブコーチとしての活動時間やクライアント数は、国内有数の実績を誇るのだそう。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
雑談・商談・会議・打合せ・取材で役立つ!
上司・部下・取引先・家族・友人が驚く&感謝される!
日本で最も多く質問をし、思考を重ねてきたプロが教える本質的なテクニック。
なお、すでにお得なKindle版も配信されております!
Question / krossbow
【ポイント】
■1.社長になる人は、社長になるための質問を自分にしてきた人極論すると、社長になる人は、「自分が社長だったらどうするか?」「自分が社長なら、この間題にどう対処するか?」といった質問を、他の人よりも多く自分自身に対して投げかけ続けてきたのです。
若いときから社長になりたくて、自らこういった質問を自分に投げ続けてきた人もいるでしょう。他にも、上司からこういった質問を繰り返しされ続けてきた人、あるいは、将来の経営者を育成するための社内の選抜研修プログラムでこういった質問に対する答えを求められてきた人、経営戦略などの仕事に就いたために業務上こういった質問を繰り返した人、さまざまなパターンが考えられます。しかし、いずれにしても、社長になるような人は、社長になるための質問を自分にしてきた人なのです。
■2.仕事の大義を聞く
「あなたの仕事は、社会にどんな価値を提供するのですか?」
こうした「大義を聞く質問」に自分の言葉でしっかりと答えられるようになった人は、周りの人にもその考え=ビジョンを広めることができます。これは、リーダーにとって、もっとも必要な能力の1つです。
だからこそ、私はクライアントに、「あなたの会社が存在する意義はなんですか?」という質問を、言葉を変えて何度も問いかけます。この質問を重ねるほど、クライアントである経営者の思考と言葉に厚みが増し、会社経営に良い影響を与えることがわかっているからです。
■3.立場を変えた質問をする
よく「相手の立場になって考えてみる」などと言いますが、「立場を変えてみる」ことを促す質問は、気づきにとって有効です。(中略)
「もし自分が、発注先の会社の担当者だったら、うちの仕事の進め方についてどう思うだろうか?」
「もし自分が、この会社の経営者だとしたら、どうやって会社を大きくしていくだろうか?」
そんなふうに立場を変えてみるだけで、それまでまったく想像もしなかった問いが次々に生まれてきます。これまで考えてもみなかったアイデアが生まれたり、見過ごしていた問題を発見できたりすることもよくあります。よくビジネスでは「顧客視点を持つことが大切」と言われますが、顧客だけでなく、自分をとりまくすべての人々の立場になってみることで、大きな気づきが得られることがあるのです。
■4.「私」を主語にしたフィードバックを返す
もう1つ伝えているのは、エグゼクティブコーチである自分から見た「主観的な事実」です。これは先ほどの客観的な事実とは違って、質問の回答を聞いて、私はこう感じました」という感情や印象を伝えます。
「いまの話しぶりに、私はちょっと投げやりな印象を受けました」とか、「私には、あなたが部下の○○さんのことを信頼していないような印象が伝わってきました」といつたように、「私はこんな印象を受けた」と、正直に話すのです。
このとき大切なのは、必ず「私」を主語にすることです。あくまで主語は「私」ですから、それは1人の個人的見解として、事実です。聞かされた相手も、不愉快に思う可能性はありますが、「そんなことはない」「その見方は間違っている」と全面的に否定することはできません。「この人はそう思ったんだな」という事実として、受け入れやすくなります。
■5.「良い質問」は「内在化した質問」の近くにある
気づきというのは、実は、本人が考えていることと「遠い」ところには存在しません。必ず、本人がふだんから自分に問いかけている領域の「近く」にあります。
そもそも人は、「自分がまったく知らないこと」「関心を持ったことがないこと」については、考えることができません。自分にとっての大きな気づきも、それまでに得た知識の蓄積や、考えたことの延長線上にあるのです。(中略)
コーチングを始めたばかりの人は、その人が考えたことがない質問をしなければと思うがために、「遠い質問」をしがちです。確かにそれは内在化されていない質問ではあるのですが、遠すぎると本人に届きません。
「良い質問」を作るための効果的な方法は、本人の中で内在化している質問に近いけれど、「盲点」のように見逃しているポイントを探すことなのです。
【感想】
◆本書のタイトルにある「良い質問」というフレーズ。この「良い」とは、もちろん「良い」「悪い」の「良い」ではあるのですが、こと本書における「良い質問」とは、質問を4つに分類した中の1つを意味します。
具体的に図解したものが、本書の第2章「質問は四つに分けられる」にありますので、それをエクセルで再現するとこのような感じに(実際には無彩色なのですが、勝手に色を付けました)。
縦軸の上下は「どれくらい答えたくなるか」を意味し、質問に答える人にとって、楽しかったり、良い気分になるか否かで上下の位置が決まります。
一方横軸は、質問によって得られる「気づき」の有無と大きさを表示。
この4分類に従って、本書のお話は展開しています。
◆それぞれについて簡単に触れておくと、まず「軽い質問」とは、簡単に言えば「相手との関係を良くする質問」のこと。
状況としては、ベテラン営業マンが、初対面のお客さんと会ったときにするような質問が考えられます。
ただし「軽いか否か」は、「相手がどう受け取るか」にかかっているので、要注意。
次に「悪い質問」とは、「相手との関係も良くせず、気づきにもつながらない質問」のことです。
当然避けるべき質問なのですが、質問者の価値観を押し付けたり、相手を追い詰める質問も、「悪い質問」になりがちとのこと。
……子どもに「なんでこんなこともできないの?」「なんでやってないの?」と、質問形式で叱ることのある私も注意しなくては。
◆また、「悪い質問」に似ているものの、大きく違うのが「重い質問」です。
これは、質問された人が「答えたくはない」けれど、「気づきや行動につながる」ものなので、場合によっては大きな効果をもたらすもの。
本書に挙げられていた具体例の1つが、「会社をグローバルな市場で戦えるようにしたい」と言われていた、とある大企業の社長さんのお話です。
この社長さんは、よく会議などで社員に対し「もっとグローバルな視点で考えろ」と言い、「社員の意識がまだまだ低くて困っている」と嘆いていたのですが、その社長さんに対して、著者の粟津さんが投げかけた質問がこれ。
「あなたの経営者としての力は、世界中の優れた経営者と比較して、どのくらいのレベルだと思いますか?」……これは確かに重い。
この社長さんは、自らが世界のグローバル起業の経営者のレベルには達していなかったと認め、まず自らが変わる必要がある、と気づいたのだそうです(詳細は本書を)。
◆そして肝心の「良い質問」とは、「進んで答えたくなり、気づきや行動のある質問」のこと。
これは「軽い質問」を、「気づきや行動をもたらしてくれるように変えたもの」であり、もしくは「重い質問」を、「答えたくなるように変えたもの」と考えると腑に落ちやすいかもしれません。
もちろん、ストレートに「良い質問」を目指しても良いのですが、自分の質問の傾向を考えて、このようにアレンジすると良いようです。
上記ポイントの2番目と3番目は、この「良い質問」の具体例からのもの。
本書では8パターンほど紹介されていますので、詳細は本書にてご確認ください。
◆……と、ここまででまだ第2章と言うか、ほとんど「質問の四分類」の話だけで終わってしまいましたが、ここが本書のキモなのでお許しを。
ただ、続く第3章が「『良い質問』をするコツ」、第4章が「『良い質問』の作り方」でして、正直、当ブログ的にはここからが「本番」のような気がしないでもなく。
ちなみに、付箋を貼りつつも割愛したTIPSである「相手の『3つのV』に注目する」なんてのも、かなり興味深かったのですけどね。
とはいえ、「質問の四分類」に納得していただいてからでないと、これらのパートはあまり意味をなさないと思うので、本書もこの第2章を中心に熟読していただきたいと思います。
本自体は厚くないものの、中身は濃い1冊!
「良い質問」をする技術
はじめに
第1章:質問はなぜ重要なのか?
第2章:質問は四つに分けられる
第3章:「良い質問」をするコツ
第4章:「良い質問」の作り方
おわりに
【関連記事】
『パワー・クエスチョン 空気を一変させ、相手を動かす質問の技術』アンドリュー・ソーベル,ジェロルド・パナス(2013年03月25日)【潜在意識?】『相手を変える習慣力』三浦 将(2016年05月05日)
【質問力?】『すごい説得力: 論理的に考え、わかりやすく伝える話し方』に学ぶ6つの質問テクニック(2012年07月26日)
【オーラル・ヒストリー】『「質問力」の教科書』御厨 貴(2011年03月31日)
【これは使える!】「キラークエスチョン」山田玲司(2009年08月19日)
【編集後記】
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500円だと、かならずしもお買い得とはならないとは思うのですが、この本などは、さっそくお得なようです。
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ご声援ありがとうございました!
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