2016年09月12日
【グリット?】『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』アンジェラ・ダックワース
やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事で一番人気だった自己啓発本。当ブログでは、数多くの「科学的自己啓発書」とも呼ぶべき作品をレビューしてきましたが、その「真打」ともいえる1冊です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
ハーバード×オックスフォード×マッキンゼーの心理学者が「人生のあらゆる分野での成功に必要な最重要ファクター」をついに解明!
世界の「能力観」「教育観」を根底から変えた話題の世界的ベストセラー!
ビジネスリーダー、エリート学者、オリンピック選手…成功者の共通点は「才能」でも「IQ」でもなく「グリット」(やり抜く力)だった!
バラク・オバマ、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグ…錚々たる権威がその重要性を語り、米教育省が「最重要課題」として提唱する「グリット」の秘密を初めて解き明かした一冊!
なお、未読本記事の時点ではなかった、お買い得なKindle版も、今ならお求めいただけます!
Glad that next month's issue of @theatlantic includes coverage of Angela Duckworth forthcoming book "Grit". Educators in my field place a lot of emphasis on developing this #charactertrait. Unfortunately, and the article points this out as well, social me / bloomsberries
【ポイント】
■1.「達成」を得るには「努力」が2回影響する才能×努力=スキル「才能」とは、努力によってスキルが上達する速さのこと。いっぽう「達成」は、習得したスキルを活用することによって表れる成果のことだ。(中略)
スキル×努力=達成
この理論が示しているのは、複数の人びとが同じ状況に置かれた場合、各人がどれだけのことを達成できるかは、「才能」と「努力」のふたつにかかっているということだ。
「才能」すなわち「スキルが上達する速さ」は、まちがいなく重要だ。しかし両方の式を見ればわかるとおり、「努力」はひとつではなくふたつ入っている。
「スキル」は「努力」によって培われる。それと同時に、「スキル」は「努力」によって生産的になるのだ。
■2.「2倍の才能」があっても「1/2の努力」では負ける
私の計算がほぼ正しければ、才能が人の2倍あっても人の半分しか努力しない人は、たとえスキルの面では互角であろうと、長期間の成果を比較した場合には、努力家タイプの人に圧倒的な差をつけられてしまうだろう。
なぜなら努力家は、スキルをどんどん磨くだけでなく、そのスキルを生かして精力的に壺をつくったり、本を書いたり、映画を監督したり、コンサートを開いたりするからだ。重要なのはスキルそのものではなく、壺や本や映画やコンサートの「質」や「量」だとすれば、努力家のほうが、努力しない天才よりも大きな成果を上げることになる。
■3.偉大な人とふつうの人の違いは「動機の持続性」
偉人たちと一般の人びとの決定的な相違点は、つぎの4つにまとめられる。(中略)
コックスは4つの指標を「動機の持続性」と名付けた。そのうちの2つは、グリット・スケールの「情熱」の項目にほぼ当てはまる。
<遠くの目標を視野に入れて努力している(その日暮らしとは正反対の態度)。晩年への備えを怠らない。明確な目標に向かって努力している>
<いったん取り組んだことは気まぐれにやめない。気分転換に目新しさを求めて新しいものに飛びつかない>
残りの2つは、グリット・スケールの「粘り強さ」の項目にほぼ当てはまる。
<意志力の強さ、粘り強さ。いったん目標を決めたら守り抜こうと心に誓っている>
<障害にぶつかっても、あきらめずに取り組む。粘り強さ、根気強き、辛抱強さ>
■4.「成長思考」と「やり抜く力」は比例する
私は「成長思考」について、つぎのように考えている。
人間は変われる、成長できる、と信じている人たちは、チャンスと周囲のサポートに恵まれ、「やればできる」と信じて一生懸命努力すれば、自分の能力をもっと伸ばすことば可能だと考える。(中略)
数年前、ドウェックと私は2000名以上の高校3年生を対象に、「成長思考」についてのアンケート調査を実施した。その結果、「成長思考」の生徒たちは「固定思考」の生徒たちにくらべて、はるかに「やり抜く力」が強いことがわかった。さらに、「やり抜く力」の強い生徒たちは成績がよく、大学への進学率や卒業率が高いことがわかった。私はその後、もっと低学年の子どもたちや、もっと年上の成人たちを対象に、「成長思考」と「やり抜く力」を測定したが、どの調査においても「成長思考」と「やり抜く力」は比例することが明らかになった。
■5.「2年以上」「頻繁な活動」をした子は将来の収入が高い
長期間の課外活動の効果を示す、さらに有力な証拠として、コロンビア大学の心理学者、マーゴ・ガードナーと共同研究者らによる研究がある。ガードナーらは1万1000名のアメリカの10代の若者たちを対象に、26歳になるまで追跡調査を行った。高校で課外活動に2年間参加したケースと1年間参加したケースを比較し、おとなになった時点で、その効果にどのようなちがいが見られるかを検証したのだ。
結果はつぎのとおりだった。高校で課外活動を1年以上続けた生徒たちは、大学の卒業率が著しく高く、コミュニティのボランティア活動への参加率も高いことがわかった。
さらに、課外活動を2年以上続けた生徒に限って、1週間あたりの課外活動時間数が多かった生徒ほど、就業率も高く、収入も高いことがわかった。
【感想】
◆冒頭で触れた「科学的自己啓発書」を読み漁ってきた自分には、さまざまな本や人とつながる1冊でした。まず、そもそも本書の著者であるアンジェラ・ダックワース女史を知ったのは、お馴染み、ティナ・シーリグ女史のこの本で。
スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義
参考記事:【起業?】『スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義』ティナ・シーリグ(2016年02月08日)
加えて、上記ポイントの4番目に出てくる「ドウェック」とは、この本の著者であるキャロル・ドゥエック女史のこと。
マインドセット「やればできる! 」の研究
参考記事:【オススメ!】『マインドセット: 「やればできる!」の研究』キャロル・S. ドゥエック(2016年01月18日)
さらにはポイントでは割愛していますが、「『やり抜く力』の欠如」の一例として、「夢を実現するための中位や下位の目標を具体的に設定できない」というものがあり、その問題点を指摘したガブリエル・エッティンゲン女史(って女性ばかりですねw)は、この本を書かれています。
成功するには ポジティブ思考を捨てなさい 願望を実行計画に変えるWOOPの法則
参考記事:『成功するには ポジティブ思考を捨てなさい』のあまりの凄さに戸惑いを隠せない(2015年06月10日)
ついでに言うなら、上記ポイントの1番目の2つの式は、大学院時代に、指導教員だったセリグマン教授(あの「ポジティブ心理学」のマーティン・セリグマン教授です!)から、「君には理論がない」と指摘されて以来、研究を重ねて辿り着いたものだったという……。
◆また「才能より努力を重視する」点で、本書のテーマと非常に関係がある、といえるのが、先月ご紹介したばかりのこちらの本。
超一流になるのは才能か努力か?
参考記事:【「1万時間の法則」の真実】『超一流になるのは才能か努力か?』アンダース・エリクソン,ロバート・プール(2016年08月05日)
本書では第7章の「成功する『練習』の法則」にて、エリクソン教授の「1万時間の法則」や「目的のある練習」(本書内では「意図的な練習」と訳されています)について掘り下げており、これらと「やり抜く力」の関係性についても明らかにされています。
ここで思い出していただきたいのが、「意図的な練習」とは、決して楽しいものではない、ということ。
一方で、エキスパートのみが体験すると言われる「フロー」状態とは、必ずしもツライわけではありません。
この「フロー」概念の提案者であるミハイ・チクセントミハイ教授が、ダックワース女史のいるハーバードに常勤研究員としてやってきたものですから、かねてからエリクソン教授と面識のあった(共同研究を行ったとのこと)ダックワース女史は、公開討論会を実施!?
ガチで「エリクソン VS チクセントミハイ」ですよ!
この討論会の顛末については、本書でご確認いただくとして、納得いかなかった(?)ダックワース女史がアンケート調査を行ったところ、実は「やり抜く力」の強い人びとは、フロー体験も多かったのだそう。
今後この三者で、さらなる研究が行われるのかもしれません。
◆ところで、上記ポイントの3番目に登場する「グリット・スケール」とは、「やり抜く力」を測定するテストのこと。
元々は、ダックワース女史が、米国陸軍士官学校での研究用に開発したもので、10個の質問に対して、「まったく当てはまらない」から「非常に当てはまる」までの5つの答えにチェックをして、その点数を合計して判定します。
ちなみに、奇数問題の点数を合計すると「情熱」のスコアが、偶数問題の点数を合計すると「粘り強さ」のスコアが出る仕様。
試しにいくつかご紹介しておくと、こんな感じです。
・いちど始めたことは、必ずやりとげる興味のある方は、ぜひ本書にて実際にお試しアレ。
・興味の対象が毎年のように変わる
・私は努力家だ
◆もう1つ触れておきたいのが、第10章に登場する「子育ての『4つのパターン』」。
これは、「支援を惜しまない⇔支援しない」を縦軸に、「あまり要求しない⇔要求が厳しい」を横軸に、2軸4象限で整理したものです。
このうち理想とするのは「支援を惜しまない×要求が厳しい」というパターンで、本書ではこれを「賢明な育て方」と命名。
さらに、私たちがこの「賢明な育て方」をしているか否かについて判断する「診断テスト」が、本書には収録されています。
ただし、これは「親側」が判断するのではなく、「子ども」がどう思うか、という話なので、うちのムスコにはまだ早いかも。
とはいえ、今般この部分を読んで、「こう思われるようにしなくては……」と反省する部分がいくつもありました。
◆なお、本書の「はじめに」によると、ダックワース女史はいわゆる「天才」はでなかったため、父親に幼い頃から失望されていたのだそうです。
実際彼女は、小学校3年生のときには、優等生のための「特別進学クラス」の選抜試験に合格できませんでした。
そんな彼女が、別名「天才賞」と呼ばれる「マッカーサー賞」を受賞し、しかもその授賞理由が「人生で何かを成し遂げられるかは、『生まれ持った才能』よりも、『情熱』と『粘り強さ』によって決まる可能性が高い」と突きとめたこと、というのも、ある意味皮肉なものです。
さらに本書では、ダックワース女史以上に「失敗者の烙印」を押されたところから、のし上がった人のエピソードも収録されており、励まされました。
私自身、途中で投げ出さなかったから税理士の資格が取れたわけですし、納得できた点も多々。
これはやはりオススメせざるを得ません!
やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける
[PART1]「やり抜く力(グリット)」とは何か? なぜそれが重要なのか?
第1章:「やり抜く力」の秘密
第2章:「才能」では成功できない
第3章:努力と才能の「達成の方程式」
第4章:あなたには「やり抜く力」がどれだけあるか?
第5章:「やり抜く力」は伸ばせる
[PART2]「やり抜く力」を内側から伸ばす
第6章:「興味」を結びつける
第7章:成功する「練習」の法則
第8章:「目的」を見出す
第9章:この「希望」が背中を押す
[PART3]「やり抜く力」を外側から伸ばす
第10章:「やり抜く力」を伸ばす効果的な方法
第11章:「課外活動」を絶対にすべし
第12章:まわりに「やり抜く力」を伸ばしてもらう
第13章:最後に
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生
以前のセールでも大人気で、それを受けて下記レビューを書いた11月のランキングでは1位となった作品。
相変わらず送料込みの中古のお値段が、新品とほとんど変わらないのに、「63%OFF」&「20%ポイント還元」で、実質500円しないという……!?
参考記事:【お金】『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』大江英樹(2015年11月08日)
ご声援ありがとうございました!
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