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2016年08月23日

【交渉術】『実践・交渉のセオリー ビジネスパーソン必修の13のコミュニケーションテクニック』高杉尚孝


実践・交渉のセオリー ビジネスパーソン必修の13のコミュニケーションテクニック
実践・交渉のセオリー ビジネスパーソン必修の13のコミュニケーションテクニック


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、春先に買って「電子積読」状態だったKindle本。

台風の関係で書店に買い出しにいけなかったので、思わず棚卸した次第です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
自分と相手の満足度を最大にする交渉術、「交渉のテクニック」に関する本は、今までさまざまなものが出版されてきています。それらのハウツー本がピンとこなかった方、内容を忘れてしまった方、これから交渉のノウハウを基礎から勉強してみたいと思っている方にオススメの1冊です。

特にセールではないものの、版元がNHK出版さんであり、今後いつセールになるのか目途が立たないので、「33%OFF」&「20%ポイント還元」というのは、結構買い時なのかもしれません……。





Negotiations / michaelstyne


【ポイント】

■1.利害の優先順位を考える
 例えば、商談において、商品、価格、数量など表面的にはっきり見える項目においても、その背後には隠された優先順位があるはずです。売り手である相手の社内での評価が、どれだけの数量を売ったかによって決まるとすれば、大量購入による値引きを引き出せるかもしれません。もし、相手が早く契約を結びたがっているようならば、即断することによって譲歩を引き出せるかもしれません。つまり、相手の目的・関心事の優先順位を知ることによって、お互いにハッピーになれるような利害の組み合わせを考えることが可能となるわけです。このプロセスが生産的な交渉なのです。


■2.「いいやつ/悪いやつ」戦術に気を付ける
「役割演技によるかく乱戦術」は、相手のチームメンバーが、悪玉と善玉に分かれて役割ごとに演技をすることによって、こちらの妥協を引き出す「心理的かく乱戦術」です。一般的には、相手の悪玉がとてもタフな要求をつきつけ、その後に善玉が登場して、悪玉をなだめると同時に、妥協案を相手に提示するという基本パターンを取ります。
 なお、悪玉は相手チームの一人であることが多いのですが、必ずしも人間とは限りません。社の規定であるとか、法律であるとか、監督官庁なども悪玉の役割を担う可能性は十分にあります。ちなみに、この戦術は、"Good Cop, Bad Cop"とも呼ばれています。copは警察官の愛称です。実はこの戦術、映画などでよく見られるように、逮捕された容疑者にドロをはかせるための警察の典型的な演技から来ているのです。


■3.答えられない質問には尺度を変えて対応する
"マイナスの質問"には、なかなか直接的には答えにくいものです。例えば「なぜあなたの会社の製品は他社に比べて数段高いのか?」という質問に対し、機械的に「当社では上質の素材を使用している」などと高価格の理由を説明してみても、質問者は納得しないでしょう。質問者を満足させるには、高価格の機械的な理由よりも"質問者にとっての高価格が持つポジティブな意味合い"を説明するほうが、より説得力を持ちます。この例であれば「当社製品価格は、製品の高い品質と信頼性を反映しております。ご提供できるトータルのバリューにおいて、当社製品は大変お買い得であると考えます」と答えることができます。
 この例には「答えにくい質問」への対応のエッセンスが隠されています。すなわち、答えの焦点を質問者の「価格」から、顧客がプレミアム(割増金)を払ってもよいと考える「利便性」(=「バリュー」)へ、尺度を置き換えることにより、間接的に質問に答えたわけです。批判的な質問のポジティブな側面を強調して答えることがポイントです。


■4.相手の感情や評価を尊重する
 交渉にあたっては、相手の個人的感情と評価を必ず尊重しなければなりません。
「相手に個人的な譲れない点があることはわかる。でも相手の感情なんか無視してもいいじゃないか。議論にさえ勝てばよいのではないのか」との意見もあります。状況によってはこの考え方は正しいと言えます。例えば、法廷やディベートの試合では、第三者的な立場から裁判官や審判が最終的な判断を下してくれます。ですから、相手の議論を論破すればよいわけで、相手の感情にまで特に気を配る必要はないと言えます。
 しかし、交渉は違います。交渉において絶対に忘れてはならないことは、相手も意思決定権を持っているということです。つまり、相手の合意がなければ、交渉は決裂してしまうという事実を認識している必要があるということです。ですから、相手という意思決定者の個人的感情を重んじることは不可欠なのです。もちろんこれは、議論を避けるということではありません。


■5.交渉でもサンクコストはきっぱり忘れる
仮に、ある交渉において、極めて長期間にわたる奮闘、努力の甲斐もなく、満足な合意案が得られないまま決裂の徴候が表れたとしましょう。人間のごく自然な感情として、「これまでの多大な労力をムダにしたくない、なんとしてでも合意に達したい」という心理が強く働くでしょう。その結果、合意すること自体が自己目的化してしまうため、まずは交渉を引き延ばすことになります。と同時に、本来すべきではない譲歩をしてしまう危険が多々あるのです。気がつくと、自分のBATNA以下の案に合意してしまっていた、ということもあり得ます。
 どんなに労力を費やしたとしても、BATNA以下の合意案しか期待できないのであれば、きっぱりと交渉をやめるべきです。交渉に投下される労力は、BATNA以上である合意案に到達するためのものです。何が何でも合意に達することが目的ではありません。交渉においても埋没費用はきっぱりと忘れるべきなのです。


【感想】

◆下記関連記事にもあるように、当ブログでは「交渉術本」をそれなりにご紹介しております。

ただ意外なことに、純粋な「交渉術本」は、どうも2年近く取り上げていなかったらしく、それもあって、本書のような「基礎から学ぶ本」を改めて熟読してみたところ、「なるほど」と思う点が多々あったという。

まず、本書の序章のタイトルにもあって、本書全体を通じて推奨されている「生産的交渉」。

これは、上記ポイントの1番目にもあるように「相手の目的・関心事の優先順位を知ることによって、お互いにハッピーになれるような利害の組み合わせを考える」のがキモなわけです。

「交渉」というと、どうしても「価格交渉」を思い浮かべてしまいますが、必ずしもそうではないのにはご留意を。


◆さて、本書の第1章では「生産的交渉の5つの基本」と題して、「お互いの満足度を最大のプロセス」にするために必要な基本項目を5つ解説しています(具体的な項目については、アマゾンのページにてご確認を)。

まずは、それぞれのテーマごとに、キーポイントを列挙。

そのポイントごとの解説に続いて、実際の会話形式での「悪い例」、さらには、反省点を踏まえた上での「良い例」が掲載されています。

個人的に、会話形式の多用はあまり好きではないのですが、本書のような「交渉術本」であれば、むしろ分かりやすさにつながっているかと。

そして締めとして、項目の最後の「コラム」で、さらに理解を深める仕様です。


◆一方第2章では、具体的に8つの交渉テクニックを指南(こちらもアマゾンのページに6つ掲載)。

たとえば、上記ポイントの2番目の「『いいやつ/悪いやつ』戦術」もここからになります。

ちなみに、自分たちでこの戦術を用いてもいいのですが、上記でも触れているように、むしろ相手側で使われた場合に注意すべき。

初っ端に「ガツン」とかまされてしまうと、そのままペースを握られてしまいます。

実際、本書収録のケースでは「こんなゴミのようなものをよく提出できたもんだ!」と第一声で罵倒されてあたふたし、交渉も相手主導になってしまいました。

その対応策なのですが、相手側が複数人で、かつ、片方が強硬な態度な場合は、まず、この「『いいやつ/悪いやつ』戦術」を疑え、とのこと。

そして、その切り返しのフレーズは……本書にてご確認を(ネタバレ自重)。


◆なお最後の第3章では、ここまでで触れられてこなかった、交渉の「心理的な面」にフォーカスしています。

たとえば、上記ポイントの4番目のような「相手の感情や評価」も、交渉に当たっては大切なものでしょう。

この辺はディベートとは違いますし、何か反論をする際にも、相手の面子を保ち、相手が立場を変えやすくするようこころがけよ、とのこと。

また、上記ポイントの5番目の「サンクコスト」は、交渉に限らず、なかなか無視しようとしてもできませんからねぇ……。

さらに割愛した中では、「相手のコミュニケーションタイプに合わせる」というTIPSもありました。

これはNLPで言うところの「視覚型」「聴覚型」「触運動型」ごとに、それぞれ訴え方、表現の仕方を変える、というもの。

ちょっと細かくなりますので、この辺も本書にてご確認ください。


◆というわけで、基本的なところから、そこそこ深いところまでカバーしている本書は、「交渉術本」としては、かなり真っ当な1冊と言えるかと。

もちろん、もっとえげつない交渉術まで踏み込んだ作品も他にはありますが、本書の主たるテーマは「生産的交渉」ですから、それにはそぐいませんし。

ただし、Kindleで読んだので私は気にならなかったものの、本書の単行本は171ページしかなく、実際に手に取ったら「結構薄い」と感じられるかもしれません。

もっとも、その分お値段も控えめですし、それに連動してKindleのお値段も控えめ。

ホントはセールでもあればよかったのですが、500円台で読めるなら、「アリ」だと思います。


次につながる交渉をするために!

実践・交渉のセオリー ビジネスパーソン必修の13のコミュニケーションテクニック
実践・交渉のセオリー ビジネスパーソン必修の13のコミュニケーションテクニック
はじめに 本書のねらいと構成
序章 生産的交渉とは何か?
第1章 生産的交渉の5つの基本
第2章 実践! 8つの交渉テクニック
第3章 さらに交渉を円滑に進めるために
付録 交渉のセオリーを実践する!


【関連記事】

【オススメ!】『交渉で負けない絶対セオリー&パワーフレーズ70』大橋弘昌(2014年07月07日)

【交渉術】『最強交渉人のNOをかならずYESに変える技術』島田久仁彦(2013年08月08日)

【交渉術】『プロ弁護士の「心理戦」で人を動かす35の方法』石井琢磨(2013年07月29日)

【裏ワザ?】『弁護士に学ぶ!交渉のゴールデンルール』奥山倫行(2013年01月13日)

【反論?】『弁護士が教える絶対負けない反論術』上野 勝(2012年12月26日)


【編集後記】

◆本書とは真逆に(?)、「えーー!?」というような交渉術が詰まっているのがこちら。

弁護士に学ぶ!交渉のゴールデンルール
弁護士に学ぶ!交渉のゴールデンルール

「反社会的勢力」等と交渉する際の、「警察はすぐ来てくれないから、隣の部屋で待機してもらう」なんてTIPSは、普通の人ならまず使わないかとw

レビューは上記関連記事にございますので、ぜひご一読を!


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