2016年08月12日
【脳科学】『2時間の学習効果が消える! やってはいけない脳の習慣』横田晋務(著),川島隆太(監修)
2時間の学習効果が消える! やってはいけない脳の習慣 (青春新書インテリジェンス)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった「脳科学本」。最近私もスマホを持ち始めましたし、ムスメもLINEをやるためにスマホを欲しがっているところだったので、まさにタイムリーな「ネタ」でした。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
親のちょっとした働きかけが、子どもの脳の働きを左右する!親が思いもよらなかったスマホ、ゲームの脅威!
本書の帯にもあるのですが、監修の川島隆太先生いわく「脳の解析データを見て絶句し、自分の子どもにスマホを与えたことを大いに後悔しました」という1冊です!
なお、いったんこの記事を書きあげてから朝7時過ぎ(?)に中身が発表された、Kindleの「【最大50%ポイント還元】3日間限定全点フェア」についても、記事の最後で簡単に触れておりますので、どうかご確認を!
the little girl.. technology spoil girl / daveynin
【ポイント】
■1.スマホを使うと、勉強してもしていない人と同じに例えば算数・数学の勉強時間が「2時間以上」でスマートフォン使用が「4時間以上」の場合の正答率を見てください。55%です。一方、勉強時間が「30分未満」でスマートフォン使用を「まったくしない」場合の正答率は60%です。
家庭で平日に2時間以上も勉強している子が、ほとんど勉強していない子より成績が悪いという衝撃的な結果になっています。
たとえ2時間以上勉強しても、4時間以上スマートフォンを使っていると、勉強はほとんどしないがスマートフォンを使わない子どもの成績と同じか、それ以下の成績になってしまうのです。
正直なところ、私たちは、この分析結果に驚きました。
なぜなら当初、長時間勉強している子どもたちは、多少の差はあれ、成績上位層にいるものと予想していたからです。
■2.LINE等の通信アプリはやめても悪影響が残る
さらに、スマートフォンとは異なる点として、使うのをやめた群の成績変化が挙げられます。
スマートフォンの場合、短時間使っていて使うのをやめた群は、偏差値が上がっているにもかかわらず、LINE等の場合には、短時間でも使用してしまうと、たとえやめても偏差値は下がってしまうという驚くべき結果になったのです。
これらのことから、スマートフォン、LINE等の使用は経年的に考えても成績に影響を与えていることが明らかになりました。
特に、スマートフォンの場合には使用時間を1時間に抑えることで成績への悪影響をととめることができると考えられますが、LINE等の通信アプリの場合には、過去に使用したことがあるというだけで成績に悪影響が出てしまうことが分かったのです。
■3.ゲームも成績に悪影響がある
次に、平日に家で勉強する時間ごとにゲームプレイ時間と成績の関係を調べてみました。
図2-2のグラフは、第1章で見たスマートフォンやLINE等の使用時間と成績の関係のグラフと非常によく似た形を示しています。
したがって、勉強時間が同じでもゲームプレイ時間が長い子どもは短い子どもに比べて成績が低いと考えられ、どんなに長時間勉強してもゲームをしてしまうと、勉強した効果が打ち消されてしまうということがゲームに対してもいえることが明らかになりました。
■4.テレビを観る時間が長いと、言語脳力の発達が遅くなる
図2-5は、テレビ視聴時間と言語知能の関係を調べたグラフです。
ゲームの解析データと同様に、グラフ中の斜めの線は点(データ)の集まりの関係を示しており、横断解析、縦断解析の両方で、右肩下がりを示しています。つまり、テレビの視聴時間と言語性知能に負の相関関係があるといえます。
これらのことから、テレビを観る時間が長い子どもほど言語性知能が低く、3年後の変化量も小さいことから、その後の言語能力の発達が遅くなってしまうことを突き止めました。
■5.睡眠時間が長いほど「海馬」は育つ
これは前節の調査でも明らかなように、寝すぎが悪影響を与えることはなく、睡眠時間は長ければ長いほど「海馬」の灰白質量は多くなることを裏付けていると考えられます。
動物実験や、睡眠障害を対象とした研究では、
(1)睡眠時間の減少により、海馬の神経新生が減ってしまう
(2)睡眠障害者は睡眠障害のない人と比べて海馬の灰白質量が少ない
などが明らかにされているため、睡眠時間が脳の健全な発達に大きな影響を与えていることが分かります。
【感想】
◆上記では本書の結論部分のみ列挙しているので、最初に、その元となる調査について触れておきます。まず上記ポイントの1番目は、仙台市の公立小・中学校に通う全児童、生徒を対象に行い、約7万人に対して7年間実施したもの。
アンケート形式で、小学5年生から中学3年生までの児童、生徒を対象に「1日に何時間使っていますか」という質問に対して自分で答えるという形でデータを得ています。
本書ではもちろんグラフが掲載されているのですが、「数学・算数」と「国語」の両方で、見事に右肩下がり(スマホ等の使用時間が増えると成績が下がる)に。
「スマホを使用している分、勉強してないから当たり前」と普通考えますが、上記ポイントの1番目にあるように、長時間スマホをやっていたら、「せっかくやった学習内容が消えてなくなる」のだ、と横田先生は結論付けています。
◆その原因について横田先生いわく、脳科学の知見から考えられることは「前頭葉の活動低下」が引き起こされているのではないか、とのこと。
これはまだ、スマホを使っているときの脳の働きを調べたデータがないので、仮説の段階、という注釈付きですが、テレビやゲームをしているときは、脳の前頭前野という、物事を考えたりする非常に重要な部分の血流量が下がり、働きが低下してしまうのだそう。
そのため、テレビやゲームで遊んだ後の30分〜1時間ほどは、前頭前野が働かない状態になっています。
そして、この状態で本を読んでも、理解力が低下してしまうのだとか。
ゆえに、スマホを長時間使用すれば、これと同じことがおこり、学習の効果が失われてしまうのでは、と結論付けています。
◆ただそれよりも深刻なのが、上記ポイントの2番目の「LINE等はやめても悪影響が残る」というお話。
こちらは上記データをもっと細かく分類し、スマホやLINE等の使用時間や使用遍歴ごとに9つの層に分けて分析した結果に基づくものです。
本書に収録されたグラフを見ると分かりやすいのですが、スマホの場合は、「使っていない」「短時間使用」「今はやめたが短時間使っていた」「使っているが長時間から短時間に変えた」といった群の成績が上がっているのに対し、LINE等の通信アプリは「使っていない」以外の層(長時間使用等を含めて)は、すべて成績低下。
それも、低下幅がスマホに比べて大きく、かなりの悪影響であることが見て取れます。
そして肝心の「悪影響が残る」という点については、LINE等を使うことで脳の中の「前帯状回」という部分が小さくなってしまうのでは、と推理。
なんでも、この「前帯状回」という部分は、注意の集中や切り替えや、衝動的な行動を抑えるといった機能に関わる重要な領域の1つなのだそうですが、詳しくは本書にてご確認ください。
◆続く上記ポイントの3番目は、具体的な期間や人数については触れられていないものの、横田先生が仙台市教育委員会との共同プロジェクトによる「中学生のゲーム時間の割合」をまとめたもの。
本書によると、ゲームの長時間使用が脳によくないのは、ゲームをすることにより、ある種のドーパミンが放出され、それが過剰だと毒性を有するからではないか、と。
特に脳の大脳基底核という部分に、この過剰なドーパミンがダメージを与えるのだそうです。
一方、上記ポイントの4番目は、東北大学加齢医学研究所の研究データに基づくもの。
それによると、テレビの視聴時間が長い子どもは、前頭前野や前頭極、感覚運動領域、視床下部周辺領域における灰白質量が多いのだそうです。
そしてこの灰白質量が、児童期から思春期の子どもに多い場合、脳の発達が遅れているらしく。
……すいません、折角根拠を挙げてもらっても、私の知識では「そうなんですか」とか言いようがなくて。
◆なお、本書の第3章以降は、前半とは逆に「脳に良い習慣」が色々と紹介されています。
もっとも、「自己肯定感」ですとか「食事」や「睡眠」については、類書でも触れられていますので、今回は割愛。
本書の「キモ」は、やはり前半で言及されている、スマホや特にLINE等の通信アプリの悪影響のお話だと思います。
ただし、本書の「はじめに」によると、監修を担当された川島隆太先生は、
これまで何度か記者会見を開き、スマホ使用のリスクについて情報を広くお伝えしようと努力してきましたが、その都度、見事にメディアスクラムによって情報は封殺されてきました。なんて言われているという……。
本書の内容も、広告やCMのない書籍だからこそ言えるのかもしれませんね。
子どもにスマホを持たせる前に読むべし!
2時間の学習効果が消える! やってはいけない脳の習慣 (青春新書インテリジェンス)
第1章 学習効果を打ち消す「スマホ脳」の衝撃―「スマホ・LINEのしすぎで勉強しないから成績が下がる」のウソ
第2章 MRIで解明!脳が変形してしまう危険な習慣―ゲーム、テレビの時間と脳の成長の遅れは比例する!?
第3章 脳のやる気スイッチ「線条体」を活動させる方法―“やらされ感”が学力にマイナス効果になる理由
第4章 自己肯定感の高い子ほど学力が高い、のはなぜ?―脳科学で証明!自己肯定感を高める親の習慣とは
第5章 朝食のおかずが増えるほど、脳はよく成長する!―食、睡眠、親子のコミュニケーションと脳の働きの相関関係
第6章 習慣は、生まれつきの脳力に勝る!?―脳科学研究最前線
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。仁義なきキリスト教史
ブクマ1100超の「ヒップホップで学ぶ日蓮」でお馴染み(?)の架神恭介さんが、「全編広島弁によるキリスト教史」を展開しているというw
「63%OFF」&「20%ポイント還元」によって、今日なら500円しないでお求めいただけます。
【編集後記2】
◆というわけで、冒頭で触れた、Kindleの「【最大50%ポイント還元】3日間限定全点フェア」についてですが。どうも版元を見る限り、「全部講談社さん」のようですw
それにしても、全10,124冊とはかなりのもの!
文芸を中心に写真集やコミックもあるものの、講談社現代新書ほか、当ブログ向きな作品も含まれています。
たとえば5月に出た、中古価格が新刊並みのこの本とか。
捨てられる銀行 (講談社現代新書)
もともとのKindle価格が「34%OFF」(別のセール?)なのに、そこからさらに「40%ポイント還元」してますから、実質「60%OFF」なんですよね。
まさに「……そんなに安値放出していいんか?」というレベルです。
なお、セールは8月14日までの「3日間限定」とのことですから、お求めはお早めに!
ご声援ありがとうございました!
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