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2016年08月10日

【心理戦?】『元検事が明かす「口の割らせ方」』大澤孝征


元検事が明かす「口の割らせ方」(小学館新書)
元検事が明かす「口の割らせ方」(小学館新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた「コミュニケーション本」

著者の大澤先生は、現在弁護士としてテレビのワイドショーにコメンテーターとして多数出演されていますが、検事時代は数多くの取り調べを経験し「被疑者の口を割らせて」きた方です。

アマゾンの内容紹介から。
パートナーに浮気の疑惑、部下が心を病んでいそう、子どもの気持ちがわからない…。人の本音を聞き出したいとき、プロはどう聞いて、話すのか。元検事で弁護士経験の長い著者が徹底解説。「大声で問いつめる」なんて大間違い。あるときは被疑者に教えを乞い、あるときは正義感に訴え、あるときは相手の話したことを利用する。ヤクザ、詐欺師から政治家、警察官まで、あらゆる“強者”に「口を割らせた」方法をエピソードと共にはじめて公開する。

新書の新刊ではありますが、すでにKindle版も配信されております。





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【ポイント】

■1.相手に話をさせる
 これは一般の人相手でも言えることではないでしょうか。子どもが問題を起こしたとき、「周りの人の迷惑を考えなさい」とか「相手の気持ちも考えなさい」と叱れば、子どもは「ごめんなさい」と謝るでしょう。でもその子自身の感情は収まりません。その子が問題を起こす理由がどこかにあったはずなのです。それをしっかり聞いてやらないといけません。
 たくさんの犯罪者と話していてしみじみ感じるのは、「これまで誰一人、こいつの話をじっくり聞いてやることがなかったんだろうな」ということです。誰かが自分の話をしっかり聞いてくれる、それも自分に興味を持って聞いてくれるということは、人間性を保つうえで欠かせないことではないでしょうか。


■2.他愛もない雑談から話す
 自分の罪を隠そうとする被疑者に語らせるために効果的な方法は、いきなり本筋のことに踏み込まないということです。まず、他愛もない話、雑談から始めるのです。
 ニュースでもよく出てきますね。「容疑者は捜査官との雑談には応じていますが、犯行については口を閉ざしたままです」など。たいていの被疑者は事件に関係のない一見どうでもいい話には応じますが、事件のこととなるとかたく口を閉ざしてしまうのです。
 しかし、雑談に応じている人間は遠からず話す。それが私の実感です。すぐに話す者も、なかなか話さない者もいますが、いつかは話す。向かい合って話をしている相手に、何かを隠し通すというのはかなり難しいことなのです。


■3.先に内面をさらけ出す
 人間というのは、相手に先に内面をさらけ出されると、自分もつられてさらけ出してしまうものです。ですから、もしも部下が内心を明かしてくれずに困っているようなときは、上司のあなたが先に自分自身をさらけ出してみることをお勧めします。
 特に自分の過去の失敗談や弱み、意外に思えるような黒い部分など、自分の弱い部分、愚かな部分を出す。上司としてのプライドがあるかもしれませんが、上司の人間らしさが見えてくれば、部下も自分の内面をさらけ出しやすくなるものです。そして、内面を見せお互いの関係はいっそう深いものになります。
 検事もいつも立派な態度でいたら被疑者には救いがありません。「ああ、この人も同じ人間だ。わかろうとしてくれているんだ」と安心させることが必要なのです。


■4.ただ話を聞くだけで解決することもある
 それにしても、いろいろな方の相談を聞いていると、世の中には実にさまざまな問題があるものだと感じます。それらは必ずしも解決に至らないこともありますが、たとえそうだとしても本人の気が済むことがあるとしたら、それはきっと誰かに自分の苦しみをわかってもらえたと実感したときだと思うのです。そして、苦しいとしか感じられなかった自分の人生に、何らかの価値を認められたときだと思います。
 法律相談で受けるさまざまな相談事の中には、法律の力では解決することが難しいものも少なくありません。しかし中には、こちらが話を聞くだけで、あるいは、相手の立場で考えてみるだけで相手の気が済むということも、しばしばあるのです。


■5.正論だけを振りかざさない
 人と話をするときも、そうかもしれません。こちらが相手の話を聞かず、表面的な正義や正論を振りかざせば、相手は心を閉ざしてしまいます。例えば、子どもが思いきって大人に本音を話したとき、大人がそれに正論で説教するだけなら、子どもはもう何も言えなくなってしまいます。もちろん、悪いことには悪いと言わなければいけませんし、厳しさは必要です。しかし、正しいことばかりを言っていれば、相手はその正しさの前に口をつぐむしかありません。正義や正論は確かに正しい。しかし正しいがゆえに、相手は何も言えなくなるのです。
 それは、上司と部下でも、夫婦同士でも、仲間同士でもそうでしょう。そして本音を話したほうは、本音など言わなければよかったと思い、二度と本心を明かさなくなります。
 正論だけを振りかざす人は、自分ではよほどいいことをしているつもりで、結局、相手の話をきちんと聞いていないのです。誰だって、自分の話をまったく聞いてもらえずに説教されるだけなら、「この人には何を話しても無駄だ」と思うだけです。


【感想】

◆直接的なTIPSにはならないので割愛したのですが、本書の序章には「人が本音を隠す理由」として4点挙げられています。
1.自分自身を守るため
2.虚栄心やプライドなどの感情的な理由から
3.他人をかばうため
4.相手が信用できないため
1番目の「自分自身を守るため」の例として、最近、清原元選手が、覚せい剤の入手ルートや売人の名前を黙秘していることが思い浮かべられますが、大澤先生は違う見解をお持ちでした。

大澤先生いわく、清原はむしろ2番目の理由、特に「プライド」ではないか、と。

つまり自分が簡単に口を割ったと見られたくない、男がすたる、と思っているからこそ黙っているのでは、と推測してらっしゃいます。

こういうケースは任侠者や男気を大事にするタイプに多いそうで、その場合辛抱強く待ってから「●日間、よくがんばったな。もう十分男は立ったんじゃないか」のように声をかけると、あっさり自供することも少なくなかったのだそう。


◆ちなみに3番目の「他人をかばうため」というのは、かつては「上をかばう」ケースが数多くありました。

その場合、取り調べを受ける前に自ら死を選ぶケースも。

たとえばリクルート事件の際には、竹下登元総理の秘書である青木伊平氏が自殺しています。

青木伊平 - Wikipedia

もっとも最近では、下の者が自らの保身のために、進んで上の者の悪事を供述するそうで、場合によっては上に罪をなすりつけている、と考えられることもあるのだとか。

そういえば以前堀江貴文氏が逮捕された件に関しては、堀江氏自ら、このようにツイートしてますし。
本書では「部下を締め上げればすぐ吐く」なんてTIPSは挙げられてませんが、そういうご時世なんでしょうね。


◆さて上記ポイントは、できるだけ一般的に使えるものを選んだつもりです。

とはいえ「嘘を見破る」とか「真実を告白させる」なんてことは、普通のビジネスシーンでは起こりえないもの。

そういう意味ではむしろ、恋愛とか子育てといった、非ビジネスシーンで使える可能性が高いと思います。

実際、上記ポイントの1番目では、モロに子育てについて触れられていますし、私も頭ごなしにムスメを叱ることがあるので、反省しきり。

同じように上記ポイントの5番目にある「正論を振りかざす」というのも、ムスメに対してよくしていることなので、気を付けたいと思います。


◆ところで、こうしてまとめておいてナンですが、実は本書の大きな魅力というのは、こうしたTIPSよりもそれを引き出す元となった豊富な事例ではないか、と。

・「さえない外見の結婚詐欺師」は、どのように「目も覚めるような外見の美人」を10人以上騙して、カラダもお金も奪ったのか?

・覚醒剤を使用して逮捕されたソープランドの女性店長が、頑として吐かなかったのを、どのように自白させたのか?

・集団強姦事件の容疑者たちが起訴も逮捕もされずに帰宅していた事件で、現職刑事を身柄拘束して取り調べた結果明らかになった「真実」とは?

・脳性麻痺の子どもを連れた夫婦が、「病院の医療事故」を主張して市役所で何度も大騒動を起こしているのを、大澤先生はいかに収めたのか?

・4歳の子の行方不明事件で、当時はタブーだった「母親の取り調べ」を、なぜ大澤先生は決断できたのか?


……うん、自分で列挙してみても、上記ポイントより、話として面白そうですねw


「使える」上に「面白い」1冊!

元検事が明かす「口の割らせ方」(小学館新書)
元検事が明かす「口の割らせ方」(小学館新書)
序章 人はなぜ本音を明かさないのか
第1章 本音をしゃべらせる
第2章 何を話すべきか
第3章 どう話を聞くべきか
第4章 人を見抜く
第5章 相手を追いつめる
第6章 心を動かす
第7章 実践編 相手の本心を知るためのQ&A


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

モノが少ないと快適に働ける―書類の山から解放されるミニマリズム的整理術
モノが少ないと快適に働ける―書類の山から解放されるミニマリズム的整理術

この本、今まで何度かセール対象になったことはありましたが、版元が東洋経済さんだけに、今回の「64%OFF」&「20%ポイント還元」というのは最安値だと思います。

参考記事:【文房具10選】『モノが少ないと快適に働ける: 書類の山から解放されるミニマリズム的整理術』土橋 正(2014年02月23日)


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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