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2016年07月30日

【ブロガー必読?】『はじめての批評 ──勇気を出して主張するための文章術』川崎昌平


はじめての批評  ──勇気を出して主張するための文章術
はじめての批評 ──勇気を出して主張するための文章術


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、リアル書店でたまたま見かけて捕獲した文章術本

ただしテーマが「批評」ということで、今まで当ブログで取り上げてきた作品とはひと味違った内容となっています。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
書籍や雑誌だけでなく、SNSを中心としたウェブ媒体が勢力を持つ現代ならではの、自分の主義・主張を誰でも簡単にアウトプットさせるための文章術を説きます。「批評」の重要性・面白さを知ることこそが、「意見」を言葉で伝えるための理想的な手段になるのだという提案が、本書を構成する主軸となります。
「つまらない」とつぶやくだけでは社会は変わりません。対象の価値を自分にとっても相手にとっても高めるために、まずは書いてみましょう。実社会はもとより、創作や教育の現場でも一定の強度と有用性を持った内容です。

なお、版元(フィルムアート社)名でKindleストアでググっても1つもヒットしないので、当分Kindle版は出ないかと……。





Critical reviews (365:009) / mind on fire


【ポイント】

■1.文章で読者を動かすことを意識する
優れた「価値を伝える文章」はそんな風に、読み手を動かすものなのであり、それはとりもなおさず本来の批評が持つ目的でもあります。逆に考えれば、読んでなお思考も行動も呼び覚まさない批評は、批評としての強度を欠く文章だと言えるでしょう。
 もし文章がうまくなりたいという動機で本書を読まれている方は、その目的意識のどこかに、「文章によって誰かを動かす」ような未来を思い描いてみてください。きっともっと、うまくなるはずです。どんなものにも価値はあり、その価値を伝える姿勢は、すべて批評に通じます。そしてそれを読んだ誰かがアクションを起こそうと決意してくれたら……それは批評としての成功を十全に保証する文章であると言えるでしょう。


■2.自分と「異なる感情」の存在を意識する
 重要なのは書き手当人のそれとは「異なる感情」の存在を、書き手自身が気づくことなのです。そうしないと視野が狭くなり、一方的な意見を紡いでしまったり、一側面だけを取り上げた主張になってしまったり、ひいては伝えるべき価値を伝えたい相手に伝えられないという事態に陥りかねません。「買って損した。超クソ! ☆ひとつ!」という作例が批評に値しないのは、「異なる感情」の存在が文章中に皆無……であるのみならず、「異なる感情」への思慮があったことを微塵も匂わせないからです。書き手当人は満足でも、根拠のある論として読めない以上、読み手は首肯しかね、得心できないものになります。


■3.「こと」を他の適切な名詞に置き換える
<例文>A 文章がうまくなることを望むのなら、「こと」を書かないことを意識することです。そしてより大切なことは書くべきことを後回しにしないこと。そうしたことを守れればよい文章を書くことはそれほど難しいことではありません。(中略)
 文章を一通り書いてみた後からでも「こと」は確認できます。とりあえずざっと書いてみて、それから読み返す中で「こと」を見つけ出し、適切な他の名詞が存在するかどうかを思案する作業は、文章のトレーニングとして非常にやりやすく、かつわかりやすい方法論です。本当に「こと」のままでよいのか、より適した言葉に代替できるのかを思考すると、すぐに文章は上達します。是非実践してみてください。


■4.「つまらない」と書かない
 よく観察し、よく分析し、よく思考すれば、どんな対象であれ「つまらない」の一言で片付けられるようなものではなくなるはずです。別に対象を弁護しようとしなくとも、つまらないならつまらないなりに特徴が何かしらはあるはずで、紋切り型の言葉で済ませてしまうのは、そうした特徴の発見に至らなかったからではないでしょうか。そうであるならば、それは書き手としての怠慢だと私は感じます。そして惰性の染み付いた文章は、読み手も対象そのものも、不幸にします。


■5.書き直すのは書き終わってから
 書いていると、今もそうですが、書き直したくなります。(中略)
 ですが、そこで不安を感じた心の赴くまま、すぐさま書き直してしまうのはよくありません。文章は、構造としては言葉の集合体ではありますが、単に言葉が寄せ集まったものというだけでもないのです。文章には文章としての総体があり、その輪郭や全体像は、文章そのものを見渡さないと、決して見えてきません。細かいディテールやちょっとした言葉の端々に違和感を抱いたり、反省を覚えたりしたとしても、心を強くして、先へ先へと書き進めましょう。その時点で逐一修正していては、なかなか文章の全景と出会うことができませんし、書き手から迷いが消えず、やっぱり筆が遅くなり、鈍りもします。


【感想】

◆当ブログ自体が、いわゆる「書評系」なだけに、本書は大変興味深く読めました。

そんな「批評本」をレビューするのは、結構緊張するのですが、それはさておきw

まず上記ポイントの1番目からして、私には結構意外でした。

というのも、自分の中では「批評」とは「対象物を評価」しただけで、その役割が完了していると思っていたから。

もちろん、結果的に「酷評」すれば、購入を断念したり、「激賞」すればすぐさま注文する、というのは理解できますが、それを意識して行うとしたら、利害関係者ではないか、と。

ただ、確かに私自身、良い本を当ブログでご紹介して、読んでもらおうとしており、それを意識した結果、多少なりとも文章はうまくなっているのかもしれませんが(アサマシ的な意味でも)。


◆また、上記ポイントの2番目に出てくる
「買って損した。超クソ! ☆ひとつ!」
という表現は、アマゾンレビューでありがちすぎて、吹きましたw

実はここは「沸き立つ感情を抑制する」というパートからなのですが、結局「批評とは、感情に任せて強い言葉を書き殴ることではない」ワケです。

逆に本書では、こうした「感情任せの文章」は、同じ感情を持つ人が「我が意を得たり」と喜ぶ、と指摘。

ネットメディアで炎上する図式も、これに近いのだと思います。

ゆえに、何かしらの「感情」を持ったとしても、イキオイで書くのではなく、自分と違った「感情」を意識せよ、と。

当ブログでも、8割9割ほめたとしても、多少なりとも懸念点を挙げるようにはしておりますが……。


◆そして言及したかったのが、上記ポイントの3番目です。

ここまで意識して「こと」を避けてきたのですが、いつもなら余裕で3,4個所は使っていたであろう自分w

著者の川崎さんも、意図してらっしゃるのか、本書ないでも「こと」という表現は少なめです。

ただ、たとえば上記ポイントの1番目に
「文章によって誰かを動かす」ような未来を思い描いてみてください。
とあるんですが、これ、私だったら「文章によって誰かを動かすこと〜」と書いていますね。

とはいえ川崎さんも、やみくもに「こと」を排除しているのではなく、「はっきりとは書かない」がゆえのメリットも指摘。

たとえば「私はあなたのことが好きだ」という文章の「こと」は、何に置き換えられるべきか、と考えた場合、この「こと」は「性格」や「肉体」(?)を含めた「多義性」を含ませているワケです。

いずれにせよ、「こと」と書きたくなったら、今後は「適切な他の名詞が存在するか」は意識してみたいな、と。


◆ちなみにこうした「トレーニング」は、本書では他にもいくつかありました。

たとえば上記ポイントの4番目の「つまらない」に関して、川崎さんは「つまらないと感じたモノを5つ集めて、それぞれのつまらなさを書く」のだそう。

これは比較してランク付けするのではなく、複数あることで個々の特徴が鮮明になり、別の言葉に置き換えやすくなるから、なのだとか。
。「この小説は『つまらない』というよりは『物足りない』だな」とか「Aのつまらなさはキャラクター描写のせいだが、Bのそれは舞台設定にあるのかもしれない」とか、そんな風に。
これは他の言葉(「面白い」「美味しい」等)でも使えそうですね。


◆本書のテーマは「批評」であるがゆえ、ビジネス文書とは、あまりなじまないかもしれません。

それでも、上記ポイントの3番目の「こと」や、割愛した「句読点の打ち方」のお話あたりは、「文章術」として役立ちそうな(詳細は本書を)。

本書にあるように、句読点を意識して太宰治の作品を読むのもいいんですが、この動画の書き起こしをすると、句読点の使い方がうまくなるらしく……!?




従前の文章術本を読み飽きた方に、オススメしたい1冊!

はじめての批評  ──勇気を出して主張するための文章術
はじめての批評 ──勇気を出して主張するための文章術
第1章 批評の意味
第2章 批評の準備
第3章 批評を書く
第4章 批評を練る
第5章 批評を貫く


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【実践的】『文章は「書く前」に8割決まる』上阪 徹(2011年09月26日)

【スゴ本】『いますぐ書け、の文章法』堀井憲一郎(2011年09月09日)


【編集後記】

◆本書で推薦されていた作品の中の1つがこちら。

高校生のための批評入門 (ちくま学芸文庫)
高校生のための批評入門 (ちくま学芸文庫)

川崎さんいわく「批評という言葉を考える上ではこれ以上ないほどの傑作中の傑作」とのことです。


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