2016年07月17日
『「時間の使い方」を科学する』が想像以上に凄い件について
「時間の使い方」を科学する (PHP新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、リアル書店で捕獲した、広い意味での「タイムマネジメント本」。ただしそのベースとなるのが、生理学や心理学のような、類書とは違ったものである分、「目からウロコ」の連続でした。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
短期記憶や計算能力、注意を必要とするような課題は、体温が高い時間帯、16時から20時がもっとも効率がいい。一方、論理的な判断は10時から14時の時間帯が適している。これは「身体時計」が生み出す24時間周期のリズムの影響によるものである。
このような身体時計のはたらきや、基礎心理学が明らかにする「感じられる時間」の特性を生かして、自らの能力を引き出し、日々の生活の満足度を高める方法を語る。
さらに、映画や音楽の最終的な印象を決定づける「ピーク・エンドの法則」など、時間に関する興味深い心理現象も紹介する。
新書ですが、すでにお買い得なKindle版も出ております!
なお、タイトルは「ホッテントリメーカー」のお世話になりましたw
Time / Jeppi 94
【ポイント】
■1.「感じられる時間」に影響を及ぼす要因(抜粋)●体験された出来事の数経過した時間の長さが物理的には同じであったとしても、その間に体験された出来事の数が多いほど、長く感じられます。たとえば、同じ映画を早回しで1分間見た場合とスローモーションで1分間見た場合、前者のほうがさまざまな画像が提示されるため、後者よりも長く感じられます。●時間経過に向けられる注意経過した時間の長さが物理的には同じであったとしても、時間経過に注意を向ける回数が多い期間ほどその時間を長く感じます。逆に、時間経過に注意を向ける回数が少ないと、その期間を短く感じることになります。●他の感覚からの影響時間感覚も感覚の1つなので、視覚や聴覚といった他の感覚の影響を受けます。大きな画像を見ながら過ごす時間や大きな音を聞きながら過ごす時間は、小さな画像を見ながら過ごす時間や静かな空間で過ごす時間より長く感じられます。また、広い空間や明るい空間で過ごす時間も、狭い空間や暗い空間で過ごす時間より長く感じられる傾向があります。
■2.さまざまな課題と時間帯との関係
たとえば、課題の内容によって、成績のよくなる時間帯と悪くなる時間帯が変動します。短期記憶や計算能力、注意を必要とするような課題の成績は、体温が高い時間帯、つまりは午後4時頃から8時頃に最もよくなります。論理的な判断を必要とするような課題の成績は午前中のうちに比較的よい状態に至り、午前10時頃から午後2時頃にかけて良好な状態が続きます。
ただし、朝の早い時間帯は、あまり集中力が高いわけではありません。また、深夜を過ぎると、集中力を要するような作業においては成績が大きく低下します。
■3.なぜ人は大事な作業の前に掃除をするのか
大事な作業をしないで、他の作業に没頭してしまう行動のことを「逃避行動」と呼びます。たいていの場合、そういう作業は、瑣末で、いつでもできることで、普段ならやれと言われてもしないようなことがらです。たとえば、部屋の掃除や模様替え、壁紙の張り替え、住所録の整理のようなことがらです。
普段は取り組まないことなのに、あえて大事な作業の前に、そうした作業に取りかかってしまいがちなのです。困ったことに、そういう瑣末なことがらであるはずなのに、取り組んでいる間は、楽しく感じてしまって、その作業に没入してしまうことさえあります。
このような逃避行動は、自我防衛機制と関連して、大事な作業で失敗しても、自分にはその作業のために十分な時間が残されていなかったからと、自分自身に対する言い訳を作り出してくれるわけです。
■4.過去の失敗は物理的に残す
失敗に関して正しい記憶は残りにくいので、過去の失敗に学ぶためには工夫が必要です。たとえば、過去の作業に要した時間や、どの程度、予定と実際とが違ったかを、メモやコンピュータに物理的に記録として残しておくことは有効です。主観的記憶は、自分に都合のよいように消されたり、書き換えられたりしますが、メモなどの物理的な記録は能動的に操作しない限りは消去されたり書き換えられたりしません。そのため、物理的な形で残した記録から、過去の作業に実際に要した時間に関する情報を得ることができます。
毎日や毎週の、行動スケジュール(to doリスト)に、実際にできたこと、かかった時間、予定通りに進まなかった理由などを記録しておくと、その後、同じような作業をする際に、その情報を使えます。同じような失敗を繰り返している場合、自分がどの程度、甘い時間の見積もりをし、どの程度、時間が足りなくなる傾向があるのかを知ることができます。
■「時間どろぼう」になる作業の傾向
「時間どろぼう」となり得る作業課題には、いくつかの特徴があります。その課題に取り組んでいる間に、認識される出来事の数が少ない、次の展開を気にしながら何かが起こるのを待つような状況が続く、あまり集中力を必要としない、身体を動かすことが少ない、などなどです。
捜し物をする作業はこうした作業課題の典型の1つです。捜し物をしている時間は、実際にかかった時間よりも短く評価されがちです。実際にはその間、いろんな出来事があるのだろうけれども、捜し物をしている人は、捜すという行為に集中しているので、目の前で起こった出来事であっても、1つひとつのことがらとしては体験されにくいのです。(中略)
このことによく似た事例に、ネットサーフィンなどのWebを使った作業があります。ネットを使った調べ物では、あることがらを調べるためにネットを使い始めたはずなのに、関連していることがらを次々と検索することで、捜し物の対象が次々新しく更新されがちです。このような場合、自分で感じている時間よりも長い時間がその検索にかけられていることが多くなる傾向にあります。
【感想】
◆上記ポイントの1番目の「感じられる時間」のお話は、実は本書の第1章の初っ端に書かれている内容です。書店でチラ見した私は、もうこの時点で購入決定w
最初の「出来事の数」というのは理屈としてはわかりますけど、「早回しとスローモーション」については、むしろ逆だと思っていました。
また、画像の大小や、空間が広いかとか明るいかが、感じる時間に影響を及ぼしていたなんて!?
ちなみに上記で「抜粋」とあるように、他にもいくつか要因があるのですが、個人的に意外だったのが「身体の代謝」。
なんでも代謝が激しい方が時間を長く感じるそうで、その結果、年を取って代謝が低下すると、それにつれて時間が経つのが早く感じるようになるのだとか。
よく「今まで生きてきた時間と比較」するから、「年を取ると時間が経つのが早く感じる」とか言われていますが、どうも違っていた模様。
◆一方、上記ポイントの2番目の「時間帯」との関係も、仕事や勉強をする上では大事なことです。
ただ「午後4時頃から8時頃」って、仕事で言ったら、「残業前提」じゃないですかww
逆に「論理的な判断を要する課題」の「午前10時頃から午後2時頃」というのは、「大事な仕事を午前中に」なさる方には朗報かと。
とはいえ、その後に記されているように「朝の早い時間帯」については「あまり集中力が高いわけではない」のですから、朝活や早朝から作業をされる方はご留意を。
もちろん、「深夜を過ぎると、集中力を要するような作業においては成績が大きく低下」するのは、当たり前ですけどね。
なお、このパートの出典は、この本とのこと。
生物時計はなぜリズムを刻むのか
◆そして、皆さんもお馴染みの(?)「なぜ人は大事な作業の前に掃除をするのか」についても、上記ポイントの3番目のとおりです。
私自身は、いわゆる「セルフ・ハンディキャッピング」の事例だと理解していましたが、やはりそういうことのよう。
セルフ・ハンディキャッピングとは (セルフハンディキャッピングとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
ちなみにこれは、まさにウチのムスメの話そのものです。
日頃は机の上(どころか部屋中)がグチャグチャなくせに、試験勉強前になると、急に延々と片付けだす始末。
確かに「机の上がちらかっていると勉強ができない」のも事実なので、止めることもできずにやらせていると、いつまで経っても勉強が始まらないという……。
◆ムスメといえば、上記ポイントの5番目の「捜し物」も得意技の1つです。
部屋がちらかっていることもあって、しょっちゅう捜し物をしているのですが、なるほど本人的には、「それほど時間をかけていない」と本人は感じていたとは!?
……って、ネットでついつい余計なことまで検索かけている私が非難できることでもないのですけどねw
本書ではこうした「時間どろぼう」を防ぐ方策として、アラームを設定することを推奨しています。
なるほどムスメの捜し物も、せっかく私がこのタイマーを買い与えていることですし、スタートの時点であらかじめ時間を決めるようにしてみようかと(私のネットサーフィンもw)。
レアックジャパン バイブレーションタイマー ブルー RJ068TM04-BL
参考記事:【動画アリ】「バイブレーションタイマーRJ068TM04」を買いました(2012年03月26日)
◆本書で展開されるこうしたお話は、ビジネスに活かすことも可能です。
たとえば、エレベーターの前に鏡が置いてあるのは、セキュリティ上の目的もさることながら、待ち時間を短く感じさせるための工夫であることは、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。
NAKAHARA-LAB.NET 東京大学 中原淳研究室 - 大人の学びを科学する: 問題解決にとって重要なこと
同じように、多くの病院や銀行の待合室に、新聞や雑誌、テレビ等が置かれているのも、実際の待ち時間を変えずに、「感じる時間」を操作しているワケです。
そう考えていくと、本書に書かれている内容は、かなり応用が効きそうなヨカン!?
個人的にオススメせざるを得ません!
「時間の使い方」を科学する (PHP新書)
第1章 「感じられる時間」の長さ
第2章 サーカディアンリズムと現代人
第3章 時計の時間、社会の時間
第4章 なぜ人は大事な作業の前に掃除をするのか
第5章 時間を作り出す技術
第6章 予定通り進まない場合の対処法
第7章 作業効率を高める時間管理術
第8章 「感じられる時間」を操作する
第9章 充実した時間の作り方
第10章 有限な時間と有限な人間
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【編集後記】
◆きんどうさんの記事で知ったのですが、私も単行本で持っているこの本が、セールになっていました。芸人生活
テレビでも紹介されたハリウッドザコシショウのお母さんのお話は、残念ながら次の巻に収録されると思うのですが、この巻も十二分に面白いです。
というか、「74%OFF」の217円なら「買い」でしょう。
私も出先で読みたいんで、思わずKindle版買っちゃいましたよ!
ご声援ありがとうございました!
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