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2016年07月08日

【コミュニケーション】『人生を変える勇気 - 踏み出せない時のアドラー心理学』岸見一郎


人生を変える勇気 - 踏み出せない時のアドラー心理学 (中公新書ラクレ)
人生を変える勇気 - 踏み出せない時のアドラー心理学 (中公新書ラクレ)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、『嫌われる勇気』でおなじみの岸見一郎先生の最新刊。

すでに土井英司さんがメルマガで取り上げてらっしゃってますから、ご存知の方も多いと思います。

アマゾンの内容紹介から。
ベストセラー『嫌われる勇気』でブームをつくったアドラー心理学の第一人者が、あなたの悩みに応える!「陰口をいう友人」「理不尽な上司」等、アドラーの教えの実践的な使い方を伝授。一歩を踏み出すための“劇薬”がここに、さてあなたは、これからの人生をどのように選択しますか?

「悩み相談」の形式を取っているのですが、質問以上に、お答えがヘヴィーでちょっと想定外でした。

思わず付箋も貼りまくり。







Relationship and customer retention / YDubel


【ポイント】

■1.悪口を気にするのは、人との関係を避けるための口実
 あなたは「悪口をいわれたことがショックで、人付き合いが怖くなってしまった」といわれますが、実際はそうではありません。また同じような目に遭いたくないので、人との関係を避ければそんな目に遭わないと考えたのです。そこで、人に会わないために悪口をいわれたことにいつまでもこだわり、それを人と親しくしないことの理由にしているわけです。
 陰で悪口をいう人はいないわけではありませんが、皆がそうであるわけではありません。それどころか陰で悪口をいう人は少数派です。自分が経験したことを一般化しないことが大切です。
 人と親しくなりたいのであれぱ、たとえ多少なりとも嫌な目に遭うことがあっても、対人関係の中に飛び込んでいくしかないのです。


■2.可能性の中に生きることをやめる
 あなたがなぜ悩んでいるかといえば、決断しないためです。悩むのをやめたら、今の職場にとどまるか、あるいは、転職するかを決めなければなりません。中国語の知識を活かせない職場に留まることで、可能性の中に生きたいのです。
 今の職場での仕事はうまくいっていない、でも、「転職をしたら」きっと何もかもうまくいくと思っているように見えます。しかし、うまくいくかいかないかは、実際に転職しなければわかりません。うまくいかないかもしれませんが、うまくいくかもしれません。後者の可能性も十分ありうるのに転職を思いとどまるのは、可能性の中に生きたいからです。
 どちらになるかはわかりませんが、もしも転職したらどうなるかということばかり考えて可能性の中に生きるのをやめて現実に飛び込めば、転職したことの結果が見えてきます。


■3.助けを求められない人は自分にしか関心がない
 道がわからないのに道行く人にたずねられない人がいます。勇気を振り絞って道をたずねたのに、目の前にある建物を指さされ、「あそこよ」というような答えが返ってきたら恥ずかしいと考えるからです。
 しかし、恥ずかしいからといって道をたずねなければ、いよいよ迷ってしまい約束の時間に遅れてしまうかもしれません。道をたずねた時にどう思われるかを気にする人は自分のことしか考えておらず、目的地に約束の時間に遅れずに到着するという、より重要なことよりも、自分がどう思われるかという体面を優先しているわけです。
 一般に、一人ではできないことがあれば、人に助けを求めるべきです。自力でできることまで人に助けを求めるのは甘えですが、できないことをできないといえなければ、結果的に他の人に迷惑を及ぼしてしまいます。


■4.対応法がわからなければ、どうすればいいかをたずねる
 過去のつらかったことを話す人に「つらかったね」とか「大変だったね」というと、あなたの夫のように「お前にはわからない」と返され、困惑することがあります。そんなことをいうくらいなら、そんな話をしなければいいのにと思ってしまいますが、夫が過去のつらかった話をすることにどう対応していいのかわからない時には、たずねてみるのが一番安全です。「あなたはどんなふうに答えてほしいの」というようにです。(中略)
 夫がつらい話をするのは、屈折した承認欲求です。そのような話ばかりするのは、今の仕事がうまくいっていないというようなことがあって、その原因が過去にあったとあなたに認めてほしいからです。だからこそ「つらかったね」といってはいけないのです。(中略)
 今、彼が直面する問題については、あなたにできることは残念ながらありませんが、「あなたはそのままでいい」と伝えることはできます。


■5.過去の親からの言葉がけを原因にしない
 親の言葉がけで自分を好きになれなくなったという人は、そう思いたいのであり、ある目的のために自分を好きにならないでおこうと決心したのです。その目的というのは、人と関わらないことです。人と関わったら、裏切られたり、嫌われたり、憎まれたりすることは避けられませんが、そんなことを経験するくらいならいっそ誰とも関わらないでおこうと考えたい人が、子どもの頃からの親の自分への評価、言葉がけを自分を好きになれなかったことの原因にしたいのです。
 自分に低い評価しかせず、自分を好きでなければ、少なくとも積極的に人と関わろうとはしません。そして、実際、人と関わらなければ、たしかに嫌な思いをしなくてすみます。しかし、何度も書いてきたように、生きる喜びや幸福は人との関係の中からしか得ることはできないのです。


【感想】

◆まず前提として、あらかじめお断りしておきたいのですが、私は岸見先生の大ヒット作である『嫌われる勇気』を読んでおりません(恥)。

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嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

書評系ブログをやっておきながら、それでいいんか?、とも思いますが、出た当時にリアル書店でチラ見して「対話形式」ゆえに断念したという……。

そしてもし、『嫌われる勇気』が今回の本のような切り口だったとしたら、このような「苦しんでいる人にとってハードな内容の本」がベストセラーになった、というのが、私自身はにわかに信じられません。

そこで、改めてアマゾンレビューをいくつか読んでみると、星平均が「4.3」と高評価なところ、こんな意見もありました。

本当に辛い人には本当の意味で劇薬

このレビュー、現時点で2209人中、1897人が「参考になった」と考えているようですから、同じように考えている人も多い模様。

というか、もしこれが「アドラー心理学」というものなら、悩んでいる人に対しては、かなりキツい対処法だと思います。


◆たとえば上記ポイントだけを見ても、ざっくりまとめてしまうと

・「昔、親友に影で悪口を言われた」⇒「自分が人と関わりたくない口実です」

・「転職しようか悩んでいます」⇒「決断を避けて可能性の中で生きたいだけ」

・「人に助けを求められません」⇒「自分にしか関心がないだけです」

・「夫が『昔つらかった』と愚痴る」⇒「『つらかったね』と言わない」

・「親がほめてくれなかったので、自分が好きになれなかった」⇒「人と関わりたくないことの原因にしたいだけ」

……と、身も蓋もないこと、この上ありません。

もし、こういう悩みを持った人に、私が同じことを言ったら、嫌われること間違いなし。

私自身としては、今までほとんど考えたことのない視点でしたから、「なるほど!」といちいち付箋を貼っていったところ、冒頭の画像のようになってしまったワケなのですが。


◆スペースの関係上、付箋を貼っても割愛した部分の方が多いゆえ、備忘録代わりにいくつかメモを。

・求められてもいないのに、自分の意見をいう人は、往々にして自分の考えが唯一絶対と思い込んでいる

・自分が優れている人を誇示する人は、「劣等感の裏返し」ゆえ

・「『つい』してしまう」というのは、やめられないことの理由にしているだけ

・部下を理不尽に叱りつける上司は、そうすることで自分の権威を守りたいから

・「評価してもらえない」と思うのは、承認する他者に依存している


他にも第6章では、恋愛絡みでいくつか「目からウロコ」のお話がありました。

ただ、「嫉妬」が起こるのは、相手を「モノ」と見なしているから、という指摘は、当事者にとってはなかなか納得しにくいのではないか、と。


◆とはいえ、職場や恋愛など、切ろうと思えば切れる関係と違い、家族関係はより複雑です。

本書の第III部の7〜10章は、こうした「ドロドロした」悩みが続出。

「言うことをきかない子ども」「こちらが大人になっても心配性のお母さん」「おせっかいな姑」「兄弟平等に愛してはくれない母」「妻と義姉が不仲」etc……。

こういった問題も、例のごとく「身も蓋もなく」斬り捨てて(?)いくものですから、読んでいるこちらまでハラハラしてしまいます。

実際、岸見先生の講演会で、わざわざ反論するためだけにやってきて、怒りを込めて話した人がいたそうなんですが、さもありなん。

その時先生ご自身は、正面切って反対意見を表明してくれたことに感謝したそうですが……。


◆一方、私としては、今の時点では「こういう考え方もあるんだな」と、理解したレベルです。

正直、「この考えが正しいか」と言われたら、諸手を挙げて賛成、という風には感情的になかなかなれません。

特に私自身が、こういった悩みを抱えていない(当事者でない)分、あくまで「部外者」としての感想に過ぎないですし。

ただし、上記ポイントは、質問に対する回答をすべて載せたわけではありませんので、全文を読んでいただけた方は、すっと腑に落ちる可能性はあります。

上記で「劇薬」という指摘がありますが、使用上の注意がある分、やはり直接本書をお読みいただくのがよろしいと思われ。


「良薬口に苦し」な1冊!

人生を変える勇気 - 踏み出せない時のアドラー心理学 (中公新書ラクレ)
人生を変える勇気 - 踏み出せない時のアドラー心理学 (中公新書ラクレ)
第I部 自分を好きになる勇気
 1章 自分へのクヨクヨ
 2章 友人とのモヤモヤ
 3章 人間関係のムカムカ

第II部 青年の悩み
 4章 勉強、就活のグズグズ
 5章 職場のイライラ
 6章 恋愛のウジウジ

第III部 壮年の悩み・老年の悩み
 7章 結婚のピリピリ
 8章 育児のドタバタ
 9章 家族のイザコザ
10章 老いのオロオロ


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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社長の入門書 サラリーマンを辞めて起業で成功するために!

起業は誰もが挑戦できることだとは思いませんが、一応ご参考まで……。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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