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2016年06月25日

【プレゼン】『口下手な人は知らない話し方の極意 認知科学で「話術」を磨く』野村亮太


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口下手な人は知らない話し方の極意 認知科学で「話術」を磨く (集英社新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて大人気だったプレゼン本

著者の野村亮太さんは認知科学者であり、ご専門が「落語の間、噺家の熟達化」ということで、類書とは違ったアプローチがなされています。

アマゾンの内容紹介から。
認知科学の最新知見が明らかにするコミュニケーションの本質は、驚きの連続だ。落語の科学的な分析で話し方のメカニズムを解き明かす研究者が、認知科学の基礎的な概念を分かりやすく解説するとともに、性格やハートの強さに影響されず誰もが実践できる話術の極意を伝える。話が下手な人は、何が間違っているのか?様々なシチュエーションを科学的に分析することで、現場に活きる合理的な話術を伝授する!

結構プレゼン本は読んだつもりでいましたが、「目からウロコ」のお話もありましたよ!





audience / miss_rogue


【ポイント】

■1.ラフ・スピークと半疑問形を避ける
 当然ながら、笑い声は通常聞き手が上げるものだ。なにかおもしろいと思うことがあって、それに反応して起こる。ところが、話し手が笑い声に似た発声をしながら話すことがある。
 それがラフ・スピークだ。自身の発言に対して自分で笑っているような印象を与える。言葉では説明しにくいが、ラフ・スピークを伴う話し方では、笑い声の拍(「ハッハッハ」という短い発声)が入るたびにそこだけ声が高くなり、大変聞き取りづらくなる。(中略)
 半疑問形の話し方では、文節の後半を上げた疑問形のような抑揚が発話に伴う。程度がひどくなると、単語ごとに疑問形のような抑揚がつけられる。
 ところが、話している内容自体には疑問が含まれていない。
 音韻的な情報と意味的な情報とが整合しないので、聞き手の側で情報処理がしにくくなる。心理学の用語で言えば、認知的不協和が起こる。結果的に聞き手は理解することを諦めてしまう場合が多い。


■2.理論的な話は順序が決まっている
 理論的な話の場合、話すべき順序は決まっている。
 それは、結論→理由→データ→詳細という順である。(中略)
 理由を説明する時、主観的な感覚は説得力が弱いことが多い。なんとなく思ったから、というのでは通じない。
 客観性を高めるため、具体的なデータを図や表で示そう。図や表で示せないとしたら、まだあなたが理由づけのところをきちんと理解していないからだ。その時には一度聞き手の理解を確かめて、データに進む。
 最後に詳細を述べていく。ここまでくれば、問題意識やそれをサポートするデータも理解されているので、話の内容の細かなところに説明を加えていくだけでいい。


■3.スライドのつなぎに接続詞を使う
 聞き手の予期を操る実用的で汎用的な方法が、接続詞を使うことである。
 聞き手は、接続詞があることによって、前後のつながり方をあらかじめ予期して聞くことができる。
 たとえば、前のスライドから後のスライドへ移る時に「さらに」と言えば、聞き手は情報が追加されることがわかる。
 聞き手の予期を誘導するためにほかにもよく使う接続詞としては、「たとえば」や「ところが」といったものがある。
 接続詞があるのとないのとでは、同じスライドを用いたとしても理解の程度は大きく異なる。もちろん、適切に接続詞を使うことができれば、聞き手の理解度は増す。


■4.笑いは感動のための下準備になる
 ほろっと泣ける映画をなにか1つ思い出してほしい。あなたが思い出したその映画には、前半に笑える場面はなかったか。きっとあるはずだ。
 実は、この笑うことが感動の前提条件になる。
 というのも、人は常に感情を安定状態にしておきたいと動機づけられている。このため、多くの人は急に感動したりはできない。ところが、少し笑っておくと、心がほぐれ、大きく動く準備ができる。そこへ感動的なエピソードを持ってくるのだ。


■5.観客を参加者にさせる
 観客に参加を促すことは、簡単で有効な方法だ。講演会などでよくやるのは、講演のテーマについての予備知識を尋ねるというものだ。(中略)
 このほかにも、聞き手に質問をして手を挙げさせる方法もある。だが、手を挙げさせる方法は、観客にとってみれば、いきなり個人を特定されるという不安を伴う。
 それよりは拍手の方がよい。話し手の心持ちとしては、拍手にした方が場をにぎやかにできるし、観客にとっても後ろを振り返らなくても、どの程度の人が反応を示したのかが共有できて便利だ。
 拍手をしてもらったり、手を挙げてもらうのは、腕組みを解いてもらうための方法でもある。先述の通り、腕組みは身を守る姿勢で、相手がその姿勢を取っていたら、その懐へ入っていくことは非常に難しい。
 いったん手を使ってもらうことによって、懐に隙を作ろう。そこに、話が入っていく余地が生まれる。


【感想】

◆ボリュームの関係でごっそり割愛してしまいましたが、本書には野村さんのご専門である「落語ネタ」もふんだんに登場します。

たとえば落語家(本書では「噺家」と呼ばれることが多いです)は、「話すことのプロフェッショナル」として、場を自由にコントロールする存在である、と。

実際、落語において、客は毎回異なりますし、舞台の大きさや環境もさまざまです。

そこで噺家は、同じ噺を披露したとしても、毎回同じようになるわけではなく、セリフも違えば、ある場面事態をまるっきり飛ばしてしまうこともあるのだとか。

本来、私たちが行う講演やセミナーでも、そのくらいのカスタマイズはするべきなんでしょうけど、それを普通にやってしまう噺家のすごいこと!?

他にも各章において、ちょこちょこと噺家の話は出てきますし、特に第7章は「間と場の定義と実証的研究」と題して、かなり踏み込んだ内容になっているのですが、あくまで「私たちが実践すべき内容」を優先した結果、上記ポイントのようになった次第です。


◆とはいえ、極力類書とは違った内容をご紹介したつもりでして、たとえば上記ポイントの1番目の「ラフ・スピーク」と「半疑問形」は、この手の本では珍しいかと。

前者のラフ・スピークは、言葉自体、初耳でしたが、なんでも話の内容の主観的な評価と関連していて、話し手自身が主張や根拠として弱いと思っている場合に出やすいのだそう。

野村さんいわく、反論が予想される場面で、聞き手から切り込まれるのを回避しようとしているのでは、とのこと

確かに言われてみたら、そういう話し方をしているときは、自信なさげというか、自己ツッコミしている人(含む自分?)が多いような気がします。

後者の半疑問形は、講演やプレゼン関係なく、私にとっても「止めてほしい」しゃべり方の1つ。

うちのムスメが、何かを報告する際にいちいち半疑問形で、聞いていてイライラしたのは、認知的不協和が起きていたからだったとは!

これらはいずれも、「話し手本人がほとんど気づいていない」という問題点があり、かつ、「矯正するのに練習がかなり必要になる」のだそうです。


◆一方、上記ポイントの3番目は、つい先日この本で池上彰さんにディスられた(?)「接続詞」について。

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情報を活かす力 (PHPビジネス新書)

参考記事:お前らもっと『情報を活かす力』の凄さを知るべき

上記では結論部分だけ触れましたが、まず「聞き手の『メンタルモデル』を適切に誘導すべき」という前提があります。

ここでいう「メンタルモデル」とは、「聞き手が話を聞いた際に心に抱く、話に登場する対象や出来事についての表象」であり、「現在の状況を理解するのを助け、次の展開を予期するために使われる」もの。

つまり、聞き手を勘違いさせたり、置いていったりしてはいけないわけで、そのためにも「接続詞を用いるのが有益だ」という次第です。

この辺は、何かあったら前に戻って確認できる「文章」と、前には戻れない「話」との違いだと思われ。


◆また上記ポイントの4番目の「笑い」の効果も、指摘されてみれば、なるほど、と思うことも多々。

最初から重々しく話が展開して感動することも(特に「悲しい系」)ないことはないですが、特に米国のプレゼンや講演だと、ちょこっと笑わせるケースが散見されます。

この故ランディ・パウシュ教授のヤツとかは、最初から笑い全開ですし。



本書では、野村さんがご自身の体験に基づいて、「笑い→感動」の話を披露されていますので、お読みいただければ、と(ネタバレ自重)。

もっとも、その「笑い」ポイントでスベると、後半の「感動」にも影響が出てしまうそうなんですが。


◆最後の「観客を参加させる」というお話も、「腕組みを解いてもらうため」という視点は類書ではあまり見なかった気が。

「場を和ませる」「観客の関心を集める」だけでなく、そういう効果も考える、というのは「目からウロコ」でした。

少なくとも「笑わせる」よりはハードルが低いですから、今まで試したことがなかった方は、ぜひトライしていただければ、と。

なお本書では、野村さんが実際に講演会で使っている「定番テクニック」も披露されていますので、私も機会があればパクって参考にしてみるつもりですw


ワンランク上のプレゼンターになるために!

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口下手な人は知らない話し方の極意 認知科学で「話術」を磨く (集英社新書)
第1章 話術と認知科学
第2章 観客(聞き手)の反応を感じ取る
第3章 見えをコントロールする
第4章 効果的に話す
第5章 舞台に立つ前に作る話の構造
第6章 準備した話の内容から話術の世界へ
第7章 間と場の定義と実証的研究
第8章 話し方実践講座


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【秀逸!】『思いが伝わる、心が動く スピーチの教科書』佐々木繁範(2012年02月18日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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「やめる」習慣

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