2016年06月06日
【仕事術】『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である』中島 聡
なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である
*Kindle版アリ
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた仕事術本。つい先日までその売れっぷりに気が付かなかったのですが、あれよあれよとランキングを上昇し、現時点でもアマゾンの総合ランキング20位内に入っております。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
世界を変えたのは「締め切りを守る男」だった。
【世界を一変させたWindows95の設計思想を生み出した伝説の日本人が教える 人生を制するスピード仕事術】
中島さんが「一度も納期に遅れたことがない」秘訣は、その「ロケットスタート時間術」にありました!
Windows 95 launch memorabilia / Marcin Wichary
【ポイント】
■1.仕事が終わらない3つの理由(1)安請け合いしてしまう本当は、終わるかどうかちらっと見ただけでは簡単にはわかりません。実際に仕事に手を付けてみて、ある程度こなしてから、やっとできるかどうか判断できるのです。(2)ギリギリまでやらない締め切り直前の仕事は効率が大幅に低下します。なぜなら締め切りを破って上司に怒られるなどの嫌なイメージがノイズになって集中できないからです。トンネリングの典型例です。(3)計画の見積もりをしないターボエンジンを追加で搭載するかどうか決めるべき時期は、製品化に向けた開発の初期の段階です。そうすれば製品化までに必要な期間を見積もることができるはずです。
■2.自分の中で任務を再定義する
たとえばあるパーティーがあるときに、ビル・ゲイツがあなたに花を用意してほしいと頼んだとします。(中略)
あなたの任務は花を用意することです。花さえ用意できれば、パーティー会場の裏で昼寝をしていてもいいのです。だからこそ花は絶対に用意しなければならない。花屋に注文をすることは任務の一部でしかありません。言い訳をする人はそこを勘違いしています。
先ほどの待ち合わせの例でいえば、大抵の人は10時前に到着する電車に乗ることだと思っています。しかし本当の任務は、10時に待ち合わせ場所に着くことです。
このように自分の中で任務を再定義することが仕事においても重要です。
■3.「締め切りは絶対に守るもの」という前提でのぞむ
ではたとえば上司から「これ10日でやっといて」という仕事が降ってきたとき、どうすればいいでしょうか? 大切なことは、スケジューリングの段階から「締め切りは絶対に守るもの」という前提でのぞむことです。すると予定を立てる段階から、次のような真剣なやり方をとらざるを得なくなるはずです。(1)「まずはどのくらいかかるかやってみるので、スケジュールの割り出しのために2日ください」と答えて仕事に取り掛かる(見積もりをするための調査期間をもらう)
(2)その2日をロケットスター卜期間として使い、2日で「ほぼ完成」まで持っていく
(3)万が一、その2日で「ほほ完成」まで持っていけなかった場合、これを「危機的な状況」と認識してスケジュールの見直しを交渉する
■4.朝が最強である3つの理由
(1)外部要因の締め切りが設定できる(1)は疑似的な締め切りを意図的に作れるという理由です。朝6時に家族が起きてくるのが私にとっての朝の締め切りです。締め切りがあると、仕事をやらなければならないという気持ちになります。(中略)
(2)メールをチェックする必要がない
(3)話しかけてくる人がいない
(2)と(3)は、邪魔をするものが少ないということです。先ほどお話ししたように、朝メールを送ってくる人はいませんし、電話をかけてくる人もいません。また、集中しているところにほかの仕事を回してくる上司もいません。だから集中力を分断するものがないのです。
■5.仕事を縦と横に切り分ける
しかし多くの仕事は10日では完了しません。数か月から1年以上かかる仕事はたくさんあります。
そんなときは、仕事を10日〜14日程度で終わる小さな仕事に切り分けましょう。切り分けることで、4章で紹介した時間術を適用することができます。これが縦に切り分けるという作業です。
また、多くの仕事は1つひとつ順番にやってくるわけではありません。複数の仕事を同時並行的にやらなければならないことのほうが多いのではないでしょうか。
そんなときは、抱えている仕事の数ごとに1日を切り分けていきます。3つの仕事の締め切りが同じころに迫っているとしたら、1日を3つに切り分けます。3つに分かれた時間を、それぞれ通常の1日ととらえて仕事をします。これが横に切り分けるという作業です。
(詳細は本書を)
【感想】
◆一応本書のテーマは「時間」であり、下記目次でも「ロケットスタート時間術」と言っているものの、上記ポイントをご覧頂くとお分かりのように、実質的には「仕事術本」と言えるかと。一部、中島さんの子どもの頃のお話や、高校受験のお話が出てくるので、必ずしも「仕事術オンリー」と言うわけではないのですが、基本、どのように仕事をするか、というお話が中心です。
ただし、基本的にご自分の仕事が「ルーティンワーク」が中心の方だと、ピンとこないかもしれません。
というのも、通常その手の仕事は、前任者等によって見積もりは済んでいるでしょうから、スケジューリング等の「戦略面」より、いかにテキパキとこなすか、の「戦術面」が重要なハズ。
とはいえ、そういう方でも、イレギュラーな仕事が飛び込んでくる可能性もあるので、本書の考え方も身につけておいて損ではないでしょう。
また、上記ポイントの5番目にあるように、複数の案件が重なった場合には、この「ロケットスタート時間術」が十二分に活用できると思います。
◆ただ、「仕事術」という意味で言うなら、本書にいくつか登場する、ビル・ゲイツ直伝(?)の仕事のやり方は非常に興味深いものでした。
たとえば、上記ポイントの2番目の「パーティーに花を用意する」お話で、もし当日「雪のせいで配達が遅れる」ようなことがあった場合、ゲイツは「尋常じゃないほど怒る」のだとか。
つまりそれほど「締め切り」を重視しているワケで、もし自分が依頼されていたのなら、他の手段をただちに遂行して、花を用意する必要があります。
また、ゲイツは「複雑な問題を独立した問題に切り分ける」のが上手だそうで、あるときパソコンメーカーから来た苦情を、「技術的な問題」と「外務問題(担当者との性格の不一致)」とに切り分けて、無事解決したとのこと(詳細は本書を)。
よく「大きな問題は小分けにせよ」と言いますが、それは大抵ボリュームの話であって、そもそも「分けられるとは思えない」問題であっても、分割してしまうのが、ゲイツの真骨頂なのかもしれません。
◆ゲイツネタでもう1つ(すいません)。
これは仕事術とも違うのですが、ゲイツは社員から何らかの説明を聞くときに、直接その社員から聞くのではなく、「ゲイツに説明する」専門の社員から聞いたのだとか。
つまり中島さんほかの普通の社員は、何かゲイツに説明することがあったら、ゲイツではなく、その「説明専門の社員」に説明をします。
するとその社員が情報をかみくだき、ゲイツに分かりやすく説明するのだそうな。
これも結局ゲイツ流の「時間節約術」であり、いかに彼が時間効率を重視していたかを表わすエピソードなのではないか、と。
……実はゲイツの「時間」に対するこだわりは、「4年に渡って開発していた次世代OSを、中島さんのプレゼンを聞いて3分間でキャンセルした」エピソードにも表れているのですが(詳細は本書を)。
◆ところで本書の最終章では、今まで中島さんが説いてきたお話からフェーズを上げて、「そもそも、今やってる仕事自体が天職なのか否か」という点について検討をうながしています。
ここで言う「天職」とは、「傍から見ると苦しそうだが、本人にとってはそのこと自体が喜びであり、いつまでもやっていたい仕事」のこと。
中島さんいわく、「こういう仕事でないと、本質的な集中力を発揮するのは難しい」そうなんですけど、普通「時間術」「仕事術」の本というのは、「与えられた仕事をいかに効率的にこなすか」がテーマな気が……。
ただ、おっしゃることはもっともですし、ページを割いて「今の環境で夢に近づく方法」等も述べられているので、自分の仕事が「天職」だと思えない方は、この章を読んで、自分の進むべき方向について、今一度考えてみるべきだと思います。
「締め切り」を安易に考えている方は必読!
なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である
1 なぜ、あなたの仕事は終わらないのか
2 時間を制する者は、世界を制す
3 「ロケットスタート時間術」はこうして生み出された
4 今すぐ実践 ロケットスタート時間術
5 ロケットスタート時間術を自分のものにする
6 時間を制する者は、人生を制す
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【編集後記】
◆私がここでちまちま書いている以前に、実は中島さんのブログにて、本書の内容が部分的に公開されています。Life is beautiful
現時点で直近の6つの記事が、いずれも本書の内容紹介なのですが、その初っ端のこの記事がブクマ840超となったことで、アマゾンでも人気となった模様。
Life is beautiful: 「締め切りは絶対に守るもの」と考えると世界が変わる
ぜひご一読ください!
ご声援ありがとうございました!
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