2016年06月04日
【異色対談?】『悩みどころと逃げどころ』ちきりん,梅原大吾
悩みどころと逃げどころ (小学館新書 ち 3-1)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、リアル書店でたまたま見かけた、ちきりんさんとプロゲーマーの梅原大吾さんの対談本。すでにfujiponさんがレビューされているので、ご存知の方も多いと思います。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
小さい頃からゲームという“人生で唯一無二のもの”に出あいながらも、「自分の進む道はこれでいいのか?」と悩み続けた梅原氏。一方、いわゆる“エリートコース”を自分から降りたちきりん氏は「頑張って、頑張って、それでもダメだったら、自分の居場所を探すために“逃げる”のも幸せをつかむ方法」と言う。立ち位置も考え方もまったく違う二人が、足かけ4年、100時間にもわたって語り合い、考え抜いた人生談義。学校で真面目に勉強してきたのに競争社会で行き詰まっている人、やりたいことが見つからなくて悩んでいる人必読! 今日から人生が変わります!
なお、ちょっと強気(?)な価格設定ですが、Kindle版のご用意もあります!
IMG_3164 / andy liang
【ポイント】
■1.自分で考える訓練をするウメハラ 僕自身、おもしろい疑問が頭に浮かんだ時は、「俺ってなかなかナイスじゃん」って思うんです。なぜかと言えば、おもしろい疑問って、それを感じた時点で答えが見つかったのと同じような感覚が得られるから。結局のところ疑問さえきちんと持てれば、たとえ時間がかかっても、自分なりの結論に必ず到達できる。
ちきりん 一方、「どうすれば勝てますか?」みたいな質問をしてる人は……、
ウメハラ 100年たってもそこから先に行けないでしょうね。そしてなんでそんな何も考えてない質問しか出てこないのかと言うと、「誰かに答えを与えてもらおうとする前に、自分で考える訓練」をしてないからだと思うんです。
■2.結果なのかプロセスなのか
ちきりん ウメハラさんみたいな勝負の世界にいる人とは違って、世の中の大半の人は、「結果じゃないよ、プロセスだよ」って言われると、みんなで集まったまま、ちょっとずつ沈んでいくんです。勝負だとどんなに頑張っても勝てないことがあるけど、プロセスはやれば形が作れるからラクなんですよ。だからそっちに逃げる。
私が働き始めた頃の話なんですけど、ある朝いかにも「私は徹夜しました」みたいな状態で上司に資料を持っていったことがあるんです。化粧もせず髪の毛もぼさぼさで。そしたら、「その顔なに? もしかして徹夜して頑張ったことをアピールしたいの? 悪いけどここは学校じゃないから、そんなことには何の意味もないよ。資料の出来だけが問題なんだから、おまえが徹夜したかどうかなんて何の関係もないよ」って言われたんです。
■3.さっさと勝ちたい学校エリート
ちきりん とはいえ目の前に勝ちやすいキャラと難しいキャラがあったら、私はやっぱり前者を選ぶだろうな。私みたいな学校エリートって、結局そういうことが得意なんですよ。要領よくテストの点を取ると評価されるわけだから、どうすれば勝ちやすいのか、それを見つけるのがすごくうまい。
大学入試の科目選択だって、「ホントは日本史のほうが好きだけど、点が取りやすい世界史を選ぼう」とか「生き物に興味があるけど、物理のほうが得意だから生物は選ばない」みたいなことをする。ほんとに馬鹿げてます。
ウメハラ ゲームだってそういうプレーヤーのほうが圧倒的に多いです。強い武器に頼って決まった型で戦えば、短時間で80点が取れるから。
■4.マーケットはプロセスを評価する
ウメハラ 市場の評価とか人気の問題と、前に話した「結果かプロセスか」という話はつながってる気がしますね。
たとえば僕にとっての大切なプロセスって、安直な勝ち方を選んでいないか、常に考え、試行錯誤して新たな技を試し続けているか、その技を体得するために誰よりも努力してきたか――言い換えれば、ズルをしない、楽をしない、リスクを取ってチャレンジを続け、誠実に戦ってきたか、みたいなことなんだけど、市場ってちゃんとそういうプロセスを評価するんですよね。
ちきりん そうなんです。市場って「何が評価すべき価値なのか」を即座に理解するから。でも勝負の場合、やっぱり結果が出なければ意味がない気もするけど。
■5.成長を実感するのが大事
ウメハラ でも僕、そういう人の豪邸に行っても、まったく羨ましいと思わないんです。楽しそうだとも幸せそうだとも思わない。だって彼らは一生、なんの努力をする必要もないんですよ。
僕が生きる喜びを感じられるのは、考えたり努力したり、なにより成長する機会が得られてるからです。なんとか一歩でも前に進まないといけない。そういう状況が楽しさの源だから、大成功してすべてが手に入って「毎日遊んで暮らしてください」って言われたら、まったくいい人生じゃない。
ちきりん ウメハラさんってほんとーに、成長オタクですよね。
ウメハラ 成長を実感できないと生きてる気がしません。今はちょっとでも立ち止まったらすぐにヤバくなっちゃうっていう緊張感がある。だからいい人生だと思えるんです。
【感想】
◆そもそもこのタッグ自体、妙な組み合わせだと当初思ったのですが、そういえば以前ちきりんさんは、梅原さんの『勝ち続ける意志力』をブログで紹介したことがありました。「勝つこと」と「勝ち続けること」 - Chikirinの日記
この記事、ブクマは180ほどと、ちきりんさんとしてはまぁ普通のレベルです。
本自体も発売から8ヵ月ほど経っており、何度かの増刷を経て売上も落ち着いていたのだとか。
ところが、この記事によって再度売上が急上昇し、紙の本の増刷が間に合わず、Kindle版がバカ売れ。
その結果、2013年のKindle年間ランキングで、池上彰さんの本を抑えて、見事トップ(多分カテゴリーでのトップ)になったのだそうです。
◆その後2人は、下北沢のB&Bにて対談。
プロゲーマー梅原大吾さんと対談しました - Chikirinの日記
さらに上記記事にも書かれているように、それから1ヵ月に渡り、ブログで梅原さんのことだけを書かれたという……。
「ちきりん」ブログがいつの間にかウメハラ日記になってる - NAVER まとめ
この対談の数ヵ月後、今度はふたりの「対談本」を出さないか、という提案があり、ちきりんさんから「学校教育についての対談なら」ということで出されたのが本書なワケです。
そういえば、こちらのイベントレポートでは、ちきりんさんが学校教育についても言及していますね。
4Gamer.net ― ウメハラの“俺様キャラ”に社会派ブロガーが悶絶。下北沢で開催された対談イベント「梅原大吾×ちきりん『ウメハラ流・仕事術とは』」に行ってきた
とはいえ、「対談」形式をとった風の「エセ対談本」ではなく、「本当の対談」を収録した本である本書は、冒頭の内容紹介にもあるように「足かけ4年、100時間」もの時間を要したとのこと。
2人の時給を考えたら、ペイするんか、という……w
◆上記ポイントは、いつもとおり「これは!」と思ったところを抜き出しているので、必ずしも本書らしさを出していませんが、お2人はやたらと「対立」しまくり。
下記目次でもお分かりのように、ことごとく意見が分かれています。
別に喧嘩とかは違うんですけど、そもそも本書のテーマである「学校教育」で言うなら、「学歴」からして違いすぎるワケで……。
たとえば、ちきりんさんが、ある意味学歴を「否定」しているのは、たとえば「大学さえ出ておけば何となかる」という考え方は、今や「有害」だ、というスタンス。
一方、ウメハラさんは「レジからお金がなくなった時、学歴がない奴が真っ先に疑われる」という世界で生きてこられた方ですから、それは意見も分かれます罠。
そこからどう話をまとめていったか(?)は、本書にてご確認を……。
◆個人的に興味深かったのが、ウメハラさんは「半径2メートル以内にしか興味がない」ことに対して、ちきりんさんは「半径2キロより外でないと興味が持てない」というお話。
それゆえウメハラさんは、上記ポイントの5番目にあるように、「自分の成長」にひたすらフォーカスしています。
それはもう本書で一貫して述べられてますし、過去の著作や言動からも窺えること。
ただ、本書で驚いたのは、アメリカの大会で準優勝して獲得した賞金(6万ドル!)を、ウメハラさんが全額ニューヨーク大学に寄付した際の裏話でした。
梅原大吾氏がカプコンカップでの獲得賞金6万ドルをニューヨーク大学に全額寄付 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト
上記記事でも「賞金を寄付すると決めていたそうです」とありますが、ウメハラさんは、なぜ事前に寄付のことを言わなかったのか?
一瞬「お金もらったら、『やっぱやーめた』って言えないから」かと思ったんですが、そういうセコい話じゃなくて、ウメハラさんはご自身について「あること」を確認したくてそうしたのだそう(詳細は本書を)。
……うーん、やっぱこの方、普通と違いますわw
自分の人生について、改めて考えたくなる1冊!
悩みどころと逃げどころ (小学館新書 ち 3-1)
ご挨拶〜まえがきに代えて〜
第1章 学歴 「学校って行く意味ある?」ちきりん「大アリですよ!」ウメハラ
第2章 競争 「寝てた僕が悪いんです」ウメハラ「いえいえ、悪いのは先生です」ちきりん
第3章 目的 「なにより結果が大事!」ちきりん「ん? 結果よりプロセスですよ」ウメハラ
第4章 評価 「どうやったら人気が出るの?」ちきりん「自分のアタマで考えてください」ウメハラ
第5章 人生 「興味を持つ範囲が広いですね」ウメハラ「ウメハラさんが狭すぎるんです」ちきりん
第6章 職業 「やりたいことがあるのは幸せ」ちきりん「いや、それが結構つらいんです」ウメハラ
第7章 挫折 「つらい時は逃げたらいいんです」ちきりん「えっ、逃げたらダメでしょ!?」ウメハラ
第8章 収入 「お金じゃないのよ」ちきりん「それ、クチで言うのは簡単です」ウメハラ
最終章 未来 「目指せ、社会派ゲーマー!」ちきりん「長生きして待っててください」ウメハラ
この本ができるまで〜あとがきに代えて〜
【関連記事】
【成長法則】『勝負論 ウメハラの流儀』梅原大吾(2013年10月04日)【超マーケティング?】『マーケット感覚を身につけよう---「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法』ちきりん(2015年02月23日)
【人気ブロガーがデビュー】『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』ちきりん(2011年01月20日)
【オススメ】『自分のアタマで考えよう』ちきりん(2011年10月29日)
【編集後記】
◆今日の本は違うのですが、ウメハラさんが過去に小学館で出された新書のKindle版が激安価格で提供されています(下の本は上記関連記事にレビュー有り)。勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」 (小学館101新書)
勝負論 ウメハラの流儀(小学館新書)
どちらも378円で、今なら「20%ポイント還元」も加味すれば、実質300円ちょっとですから、この機会にぜひ。
私も未読だった『勝ち続ける意志力』を、今さらですが買いました!
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「自己啓発・気づき」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
この記事へのトラックバックURL
●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。
当ブログの一番人気!
12月16日まで
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです