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2016年05月20日

『メタ思考トレーニング』が想像以上に凄い件について


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メタ思考トレーニング (PHPビジネス新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げたアイデア本

著者の細谷 功さんの作品を当ブログで取り上げるのは、実は初めてなのですが、そのクオリティの高さに脱帽しました。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
メタ思考とは、「物事を一つ上の視点から考える」こと。その重要性はしばしば語られますが、実践するのは容易ではありません。例えば自分自身を「幽体離脱して上から見る」こと(=メタ認知)は、自己成長のためには必須の姿勢であるとよく言われますが、実際にそれができている人はそう多くはないでしょう。
そこで本書では、メタ思考を実践するための二つの具体的な思考法(「Why型思考」と「アナロジー思考」)を紹介するとともに、それをトレーニングするための演習問題を多数用意しました。

なお、まだ先になりますが、Kindle版の配信も予定されております。

なお、タイトルが短かかったので、久々に「ホッテントリメーカー」のお世話になっておりますが、結構本心だったりw





password hell / Ron Bennetts


【ポイント】

■1.自分を客観視する
年配者によく聞かれる「近頃の若いものは不甲斐ない」という類の言葉は、「非メタ思考の権化」とでも呼べる発言です。本書のテーマであるメタ思考ができている人のちょうど対極にあるのが、この言葉を連発する人と言えます。
 なぜこのような発言が「自分を客観視できていない」のか、それは以下のような観点からで、この発言はメタ思考できていない(思い込みが強く気づいていない)ことのオンパレードなのです。
・自分の若いときのことは棚にあげている
・その構図はいつの時代でも一緒なのに、「今の」と自分たちの時代だけ特殊視している
・そういう若い世代を作ったのは自分たちの世代だということに気づいていない
 これらの発言は根本的に何が問題かというと、このような現象が起こっていること自体に自分自身が気づいていないことなのです。


■2.Whyだけが「関係」を表わす
 前の節の要旨を言い換えると、いわゆる「5W1H」と表現される英語の疑問詞の中で、Whyだけが2つの間の事象の「関係性」を表す疑問詞で、他の疑問詞は属性をピンポイントに探るためのものであると言えます。
 さらに別の表現をすると、他の疑問詞、特に他の4W(What, When, Where, Who)というのはすべて名詞一語で回答できる疑問ですが、Whyに対する回答だけが一語で表現するのが難しいものです。(中略)
 これは、他の疑問詞が「点」であるとすれば、「Why」だけが「線」であることが原因です。点は0次元、線は1次元というのは学生時代に数学で習ったと思います。つまり、Whyだけが「次元が違う」のです。
 これがWhyの持つ疑問詞としての特殊性であり、「メタ=次元を上げること」とも言えるのです。


■3.「具体→抽象→具体」の往復を思い切って行う
 また、自転車における「下り坂→平らな道→上り坂」というのは英会話で言えばどういうことなのか、と考えてみれば、例えば「ヒアリングを0.5倍速→平常速→倍速で練習していく」といったアイデアにつなげることができます。
 ところが、これを単に「徐々に難易度を上げていく」といった「(自転車に限らず)何にでも当てはまる」ような抽象度の高いレべルでとらえてしまうと、英会話でも簿記でも何でもそのまま当てはまる反面、当たり前のアイデアにしかならないのです。(中略)
 このように、アナロジーで重要なのは、あたかも翻訳と同じように、「元の言葉の特徴」を一般化しすぎることなく具体的に抽出しながら、思い切って抽象化し、さらにそれを再度一般的な言葉ではなく、アイデアの利用先ならではの言葉にまで具体化する(「上り坂」が「倍速」に変わったように)という、具体→抽象→具体の往復を思い切って行うことで、これはまさに優秀な意訳に通ずるものがあるということです。


■4.「ポイントカード」と「パスワード」の共通点は?
 その特徴とは、「提供者側視点で、利用者の視点が無視されている」ことです。これらに共通するのは、増やそうとするのは提供者側で、それで徐々に迷惑を被っていくのは利用者側という構図です。(中略)
数が少ないうちは提供者の視点で考えてもなんとかなっているものが、数が増えてくるとユーザー視点がなければ単なる一方的な押し付けになってしまうものは他にも世の中にあふれています。(中略)
 自分たちが商品やサービスを開発し、ユーザーに接していく上でこの構図は忘れてはいけない学びのヒントとすることができるでしょう。


■5.「順番」や「流れ」を借りてくる
「他のミステリーが「犯人(とその動機)探し」であるのに対して、コロンボは「犯人との心理戦」であるという違いなのですが、これを「流れ」という観点でとらえると、まずは「殺人」のシーンから始まる(つまりはじめに犯人がわかる)という大きな特徴があります。
 これと同じ構成を取っているので有名なのが『古畑任三郎』です。犯人との心理戦という内容や主役のキャラといった内容面での類似もさることながら、「話の順番」を同様にしていることで、『古畑任三郎』はある点で他のミステリーと一線を画しています。「ある点」が何かわかるでしょうか?
 それは他のミステリーでは絶対にできない「超大物スター」を、毎回単独で配役することができるということです。『古畑任三郎』には毎回「超」のつく大物が犯人役で登場します。ところがこのような配役は他のミステリーでは絶対にできないのです。なぜかは明白でしょう。「犯人探し」が最大の興味であるはずのミステリーで見る前から犯人がわかってしまうからです。


【感想】

◆冒頭の未読本記事を書いた時点から、本書のことは気になっていました。

なぜなら、書影に掲載されているこの問題が解けなかったから。
「信号機」と「特急の停車駅」の共通点は?
目次を見ても、こうした問題が小見出しとしては載っていませんので、すぐにでも答えをお知りになりたい方に掲載されているページだけお教えしておくと、本書の134ページをご覧アレ。

ただ、この問題がピンとこない場合(含む私)、アマゾンの内容紹介にある、似たような他の問題も解けなかったのではないかと思います。

ポイントはまさに「メタ認知」なんですが。

メタ認知 - Wikipedia


◆その「メタ認知」がまったくできていない例が、上記ポイントの1番目の「近頃の若いものは〜」のお話。

これは「自己矛盾」の状態なのですが、年配に限らず、若者でもこういう発言をしたことのある方は要注意です。
・「批判する人って生産的じゃないよね」という批判
・「他人の悪口をネットで言ってるやつは許せない」というネットの悪口
・「人の言うことは鵜呑みにするな!」というアドバイス
要は「1つ上の視点から見ると矛盾が見えてくる」ということ。

このことを踏まえれば、アマゾンの内容紹介にあった「『顧客の気持ちに絶対になれない職業』とは?」も、答えが分かるかもしれません(ネタバレ自重)。


◆ところがここまででも、まだ「ウォーミングアップ」でして、本書のメインディッシュはここから。

まず、メタ思考のトレーニングの1つである「Why型思考」を第2章で学びます。

これはその名の通り「『Why』で上位の目的を考える」こと。

たとえば上司やお客様から「ドローンについて調べて報告して」と言われたら、どんなアクションをとるでしょうか?


    〜 thinking time 〜


……ここでいきなり「ネットで検索する」「詳しそうな人に聞く」と即答してしまう方は要注意。

こういう問いの場合、そもそも「なぜドローンについて調べる必要があるのか?(Why)」をまず考えなくてはなりません。

すると、「何をすべきか」がクリアになるという仕様(詳細は本書を)。


◆さて、もう1つの「メタ思考」の軸となるのが「アナロジー思考」で、これは本書では第3章にて詳しく解説されています。

類推 - Wikipedia

アナロジーとは、「類似のものから推論する」ことで、要は似ているものから「借りてくる」ということ。

ただし、単純にパクるのとは違って、上記ポイントの3番目にあるように、いったん「抽象化した共通点」を探して、それをテーマに対して「具体化」します。

ここでは、「子供の頃に自転車の乗り方を覚えたときの経験や教訓」を、「英会話」に応用。

また、上記ポイントの5番目の「順番」を借りてくるような「構造的類似性」も、アナロジー思考の最たるものです。

……なるほど、『古畑任三郎』に毎回大物ゲストが登場していたのは、こういう構造だからだったとは(今さらw)。


◆最後の第4章では、こうした「アナロジー思考」をビジネスに応用。

演習問題にも
「コピー機」と「エレベーター」の共通点は?
とかあって、モロに「ビジネスモデル」のお話です。

そのほかUberをはじめとする、世界中で起こっている「オンデマンドマッチングサービス」の応用例を考える等、この章は「起業」や「ビジネスモデル」がお好きな方なら見逃せないかと。

キモは「離れていながらも共通で、しかもあまり他のものには当てはまらない共通点を探すこと」。

何かヒットしたビジネスがあったら、そのままパクるのではなく、ぜひこのアナロジー思考を試してみてください。


新書ですけど、付箋貼りまくりました!

456982773X
メタ思考トレーニング (PHPビジネス新書)
第1章 ウォーミングアップ編
第2章 Why型思考のトレーニング
第3章 アナロジー思考のトレーニング
第4章 ビジネスアナロジーのトレーニング


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

実践! ふだん使いのマインドマップ
実践! ふだん使いのマインドマップ


ブログタイトルに「マインドマップ」と入っている割に、ご無沙汰している私には、ちと耳イタイのですがw


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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