2016年05月18日
【モデルベース思考?】『スーパープログラマーに学ぶ 最強シンプル思考術』吉田 塁
スーパープログラマーに学ぶ 最強シンプル思考術
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気を集めていた思考術本。著者の吉田 塁さんは東大工学部卒で、現在は「東京大学教養学部特任助教として学内外における教育改善を促進する活動・研究に携わる」方でいらっしゃいます。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
プログラマーが使うモデルは複雑で、多くの人にとって扱うのが難しいものとなっています。
しかし、プログラマーの考え方を知ることができれば、それだけでも多くのメリットを得ることができます。
そこで、プログラマーが使うモデルのエッセンスを抽出して、一般的に使えるようにした最強のシンプルな思考術がモデルベース思考です。
本書では、そのモデルベース思考の基本となるモデルに関する基礎知識、モデルの作り方、モデルの活用方法をご紹介していきます。
そして、最終的にはみなさんの仕事や生活に応用してもらうことを目指します。
なお、上記未読本記事の時にはまだなかったKindle版も、配信が開始されました!
HP and IBM Business Model / Alex Osterwalder
【ポイント】
■1.モデルを使って発想するたとえば、あなたがあるWEBシステムを開発する会社の社員だとしましょう。そして、プリンターのビジネスモデル、つまり初期費用で儲けるのではなく維持費で儲けるという知恵を持っていた場合、自分の会社のビジネスに応用できるかもしれません。たとえば、初期費用としてシステム購入を考えれば、維持費はメンテナンスで得られるといった具合です。
このように、プリンターのビジネスモデルといった事例をモデル化して、それを抽象化し、自分の文脈で具体化すると、新たな発想が得られるということです。つまり、モデルを使うと発想を(ひらめくのではなく)考えつけるのです。
■2.同じグループの要素は揃えて配置する
多くの場合、書き出した要素はいくつかのグループに分けることができます。たとえば今回の例の場合「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」は利益という点で同じグループです。
それらの利益を説明するために用いられている「事業規模」「大雑把な利益」「本業の利益」なども同じグループと言えるでしょう。
また「売上原価」「販管費」「営業外収益」や「営業外費用」なども利益を計算するときに足し引きされるという点で同じグループです。
これらは揃えて配置する、つまり、縦でも横でも揃えて並べることで見た目が整ってきます。こうすることで、モデルの理解しやすさが向上します。
■3.自分の立場を確認する
ものごとをモデル化するとき、自分はどのような立場からそのものごとに関わっているのかを考えてみましょう。
たとえば本をモデル化するとき、あなたがデザイナーという立場だとします。その立場からは、本の詳細な内容よりも、本がどのようなヴィジュアルを持つかといった見た目を気にするはずです。
一方編集者の場合、ヴィジュアルも大事ですが、どうすれば読者により伝わりやすくなるかといった構成や文章表現に着目するはずです。
このように、モデル化する対象に対して、自分はどういう立場にあるのかを意識することによって、自然と自分がその対象のどこに着目しているのか、着目すべきなのか、着目したいのかが明確になってきます。
■4.抽象的・具体的になりすぎないようにする
よいモデルは、抽象的すぎず具体的すぎない、ほどよい抽象度で作られています。抽象的すぎると当たり前のことしか言えず、伝えたいことが消えてしまいます。また、具体的すぎると情報が多すぎて、伝えたいことが伝わりません。
つまり、どの程度の抽象度が目的に合致するかを意識する必要があるということです。そのためには、目的に沿った抽象度に調整することが重要になってきます。
たとえば、映画の内容を伝えるときに、ストーリーを一から説明するには具体的すぎます。一方、あの映画は起承転結だったと説明するのは、抽象的すぎて映画のおもしろみがまったく伝わりません。
極端な具体と極端な抽象の間に存在するちょうどよい抽象度が、最も伝えたい内容を表現してくれるのです。
■5.他業界のモデルを具体化する
野菜や果物を並べるという文脈で作成者別を具体化すると何になるでしょうか? 野菜や果物の作成者なので、農家別になりますね。つまり、農家別に野菜や果物を並べるという発想を考えつけます。
その発想をもとに想像すると、こだわりのある農家が作った野菜をまとめておくと、その農家のトマトが好きな人が、その農家のキュウリはどんな味だろうなど考えるかもしれませんね。(中略)
トータルコーディネートはどうなるでしょうか? これは、あるシーンに合わせてそれに必要なものをまとめて並べるということです。この方法を八百屋の文脈で具体化すると、ある料理に必要な食材をまとめて並べることに対応しそうです。たとえば、これでミネストローネが作れますというように必要な野菜をセットにして売ることなどが考えられます。
【感想】
◆上記ポイントの初っ端でビジネスモデルが登場してきたので、「はいはい、ビジネスモデル本なのね」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、それは半分合っていて、半分違うな、と。そもそもビジネスモデルも、本書における「モデル」の1つに過ぎません。
「ではモデルとはなんぞや?」ということで、それを明らかにしているのが、本書の第1章、「モデルって何だろう?」(そのまんまw)。
具体例として、レポートにおける「序論・本論・結論」や、物語の「起承転結」が「モデル」だというのは理解できます。
ただ、「人体模型」や「路線図」なんてものもモデルだというのは、ちょっと意外でした。
◆続く第2章では「じゃあ、モデルを作ってみよう」、と作り方を指南。
ちなみに本書においては、モデルの「要素」を四角で、「要素」同士の「関係」を線で表わしていきます。
そういう意味では、上記のFlickrの画像も、まさに「モデル」。
具体例として本書では、上記ポイントの2番目にあるとおり、「売上高と5つの利益モデル」と題して、損益計算書の利益項目と、その関係項目をモデル化しています。
具体的には本書を見て頂いた方が、図化されていて分かりやすいんですけどねぇ……。
◆第3章の「メリット」も大事ですが、実際にモデル化する際に役立つのが、第4章の「よりよいモデルを作るには?」。
ここでは留意事項として、上記ポイントの3番目と4番目を抜き出しました。
特にポイントの4番目で言及されている抽象度のお話は、モデル化のキモともいえるモノ。
本書では「具体化と抽象化のトレーニング」と題して、5段階中の3段階目に「コップ」を定め、残りの1,2,4,5段階に該当するものを考えさせています。
ここで紹介されているのが、「is a」というフレーズ。
これはたとえば、Xを抽象化するとYになる場合、「X is a Y」という文章を作ることができますし、逆にYを具体化してXになる場合も「X is a Y」という関係が成立しますから、それに当てはめることで、正しく抽象化もしくは具体化されているかが分かるワケです。
◆ただ、分かりやすさから言ったら、第5章の「身近なもののモデルを作る」が一番かと。
この章では、3つの具体例を用いて、モデルの作り方から、その応用の仕方まで詳しく解説されています。
ここまで来ると、「このモデル、何かに似てない?」とひらめいたり、「このモデルを応用してみよう!」と実務ベースでの活用まで、きっと見えてくるハズ。
そしてそれを実際のビジネスモデルでやっているのが、第7章の「モデルをビジネスに活かす」。
上記ポイントの5番目は、「本屋では、本を作家別に並べている」というモデルと、「アパレルショップでは、マネキンに着せて並べている」というモデルを抽象化し、逆に具体化して八百屋に当てはめているものです。
なるほど、このように「抽象化⇔具体化」すればいいのか、と納得していると、最後の事例が、あの「合席居酒屋」だったというww
◆実は本書は、物理レベルで言うと「薄い」です(ページ数的に)。
ただし、コンテンツレベルで言うとかなり「分厚い」と思われ。
図も無意味なポンチ図はなく、皆、必要性があって収録されているものばかりなのも、ポイント高いです。
……と言いつつ、HONZさんとかと違って版元許可もないので、残念ながらすべて割愛しておりますが(ショボーン)。
巷でよく「新しいビジネスモデルを考える」などと耳にしますが、まず本書を読んで、簡単なモデルから始めることをお薦めしたいワタクシ。
見た目に反して(?)キラリと光る1冊!
スーパープログラマーに学ぶ 最強シンプル思考術
第1章 モデルって何だろう?
第2章 モデルの作り方
第3章 モデルを使うメリット
第4章 よりよいモデルを作るには?
第5章 身近なもののモデルを作る
第6章 モデルを使い倒す方法
第7章 モデルをビジネスに活かす
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【編集後記】
◆今日の本に関連して、「図解×ビジネスモデル」に特化した作品をご紹介。図解でひらめく! ビジネスのヒント55 (リクルートスペシャルエディション)
こちらもページ数は少なめですが、読む人が読んだらピンと来ると思います。
なお、レビューは上記関連記事にて。
ご声援ありがとうございました!
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