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2016年05月15日

【マネジメント】『即効マネジメント: 部下をコントロールする黄金原則』海老原嗣生


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即効マネジメント: 部下をコントロールする黄金原則 (ちくま新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた「マネジメント本」

「雇用のカリスマ」海老原嗣生さんが、マネジメントについてロジカルに語って下さっています。

アマゾンの内容紹介から。
自分の直観と経験だけで人を動かすのには限界がある。マネジメントの基礎理論を学べば、誰でもいい上司になれる。人事のプロが教える、やる気を持続させるコツ。

なお本書は、当ブログでも人気だった『無理・無意味から職場を救うマネジメントの基礎理論』の姉妹編だそうなので、そちらをお読みの方ならぜひ!

161011追記:Kindle化されました!





Communications listening skills / angelineveeneman


【ポイント】

■1.部下にとっての2つの「やる気」
 内発的動機で働く人は、何がその見返りなのでしょうか。それはお金ではなく、達成感、自己効力感(人の役に立っている実感)、承認(人から認められる)、成長、などなのです。こういうものを目指して働くから、彼らは長時間労働を気にせず自ら工夫して効率化し、そのうえ無理難題に挑戦する、という特徴が行動に現れます。
 一方、外部誘因で働く人たちが求めるのは、給与、余暇、仕事の楽さ、職場環境の快適さ、などとなります。彼らの特徴は、働くことに対して見返りを求めることです。彼らの行動のキーファクターは、即物的欲求・一時欲求となります。


■2.「新たな課題」ではなく「やり方」を与える
 部下は「自分はやり方(Way)がわからないから、その上手なやり方を教えてほしい」と聞いているのです。ならば、上司は「そのやり方(Way)」を答えねばなりません。ところが、多くの上司はそれがうまく実現できるようなやり方を教えるのではなく、次の課題(What)を与えてしまうのですね。
 この誤解の構造を念頭に置き、「自分は今、彼の作業をうまく進めるためのやり方を話しているのか、それとも新たな課題を与えているのか」」と自問することが重要です。
 たとえば、「30件電話をかけて、2件アポを必ずとれ」というのなら、そのためのWayは「リストを50件作る」ではありません。


■3.成長させるために「逃げ場をつぶす」
 この「逃げ場をつぶす」という指導法は、実に広く応用が利きます。私がセミナーでこの話をすると、エンジニアの人たちなども深くうなずいてくれるものです。たとえば、IT系でプログラマーの人たちでも、1つの言語(やタグ、ルーティンなど)を覚えるとずっとそれだけを使い続ける人がいます。プログラム言語はそれが適する領域とそうでない領域に分かれるため、開発分野が広がれば、新たな言語を覚えざるを得なくなる。にもかかわらず、何とか無理を押して自分の得意な言語だけを押し通そうとするのです。こういうときにも、「その言語を使えない」ように逃げ場をなくす必要があるのです。
 同様な話は、多々伺いました。


■4.部下に「もう○年目なのに」「もう○歳なのに」と思った時は、上司が反省する
 上司が部下に対して、その言葉を使ってしまう理由は、3つあるでしょう。
 1つ目は、部下にとってはそれが初めてでギリギリの課題なのに、あなたは「WhatとWay」で、丁寧に右足を階段の上に引き上げることをしていないこと。
 2つ目は、過去に「Reason」を教えて自分で考えさせる癖をつけていないから、応用が利かないこと。
 3つ目は、あなたがギリギリの課題を与えず、過去と変わらないレべルのマンネリな目標を与え続けていたこと。
 いずれも、上司の側に責任の多くがあります。「物覚えが悪い」「融通が利かない」と部下にのみ、その責を負わせてはならないと気づいてください。


■5.丸投げにならない自由を与える
 自律性を喚起しながら、同時に指示も出す。この二律背反を可能にする指示の出し方。それこそがRange(範囲)です。この時の指示の出し方は、「この中でやれ」ではありません。「この中でなら自由に遊べるよ」なのです。自遊空間を与えてあげて、その中で遊べ、ということです。「リミットなく、自由に」と言われても、エドウィン・ロックの理論通りで、誰もうまく遊べません。仕切りができた中だからこそ、人は遊べるのです。それは、スポーツや格闘技に必ず「競技場」や「リング」があるのと同じです。(中略)
 部下は経営者ではないから、自律的に行動することに慣れていません。そこで、まず、ルールとフェアゾーンを決めてあげなければならないのです。


【感想】

◆冒頭で本書がこの作品の「姉妹編」であることをお話しました。

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無理・無意味から職場を救うマネジメントの基礎理論 18人の巨匠に学ぶ組織がイキイキする上下関係のつくり方

本書のあとがきによると、前著には以下の2つのテーマがあったのだとか。
・部下にやる気をどう出させるか(「個」のマネジメント)
・組織全体の活気をどう保つか(「組織」のマネジメント)
対して本書は、このうちの前者に的を絞り、より細かく解説を加えたもの、とのこと。

なるほど、そうであるなら「組織より個人をテーマにした作品が人気」の当ブログ向き、と言えそうですし、前著よりも具体事例を多く示し、平易に説明することを心がけてくださっているそうなので、マネジメント初心者にもとっつきやすそうです。


◆実際本書には、6つの「問い」が収録されており、これらを考えることによって、「マネジメントの基礎理論」が身に付く仕様。

ありがたいことに、この6つの問いは、第6章の「学んだことを人に教え、自分でも実践する」にまとめて抜粋されているので、そちらで一覧できます(気になる方は、リアル書店でここだけチェック!?)。

ちなみに、上記ポイントで言うと、1番目は問1、2番目は問2、3,4番目は問3、5番目は問6の回答部分から抜き出したもの。

やはり本当は、問いからの流れで読んで頂くと、上記ポイントのお話も、理解が深まるのですが。


◆なお、個人的に興味深かったのが、上記ポイントの5番目(というか「問6」)。

ここでは食品製造会社の社長が、優秀な部下に「頭打ちとなったミカンを元にした製品」の代わりを考えるよう指示しているのですが、社長の「みかんは豊作と凶作で値段が上下するからなあ。それで困っとるんだ」という一言から、次のような方向性を見出してしまいます。
(1)みかんの豊作と凶作でわが社の売り上げは、7000万円ほど増減する。その穴埋めを考えるなら、7000万円規模の事業になることが条件だ。
(2)みかんと豊作・凶作のサイクルが重なる作物では、共倒れになってしまう。ならば、豊作・凶作サイクルが逆になるものか、もしくは、生産量も値段もいつも安定的な作物を探そう。
(3)県の有力農水産物のリストを調べてみよう。
最後の「県の有力農水産物」というのは、この社長が「県の有力食材をもとに」と言ってるからなのですが、最初の2つは秀逸かと。

結果、県の有力特産物140作物のうち、条件に合うのは20作物であることがわかり、このどれかで「7000万円の事業」を目指すことを提案したワケです。

……自分がこういう指示出されても、ここまで考えられる自信はないのですが(大汗)。


◆もっとも、こういう「応用編」以前に、私の場合、上記ポイントの2番目の「新たな課題ではなくやり方」というところからして怪しいです。

「Way」を話しているツモリが、実は「What」を積み重ねていた可能性大。

本書でこんな「ダメな例」が挙げられていたのですが、部下に「1週間に50万円売れ」と言った上司が、部下から「どうしたらいいか」を問われ、「まずは、最低でも1日2件は顧客を訪問しろ」と返答。

さらにそのためにどうしたらいいかを問われると、「1日30件は電話をかけろ」と言い、「だから電話のリストを毎日50件は用意しておけ」と言う……。

内容は違いますが、「それ何て漏れ?」状態ですよ(ダメじゃん!)。


◆私の場合、既に独立してしまったので、部下を指導することは今後もないでしょう。

もっとも、子育てもある意味「マネジメント」のようなものですから、本書の教えも活用できる気がします。

……上記ポイントの2番目なんて、まさに勉強を教えるケースでありそうですしw

もちろん会社にお勤めで、1人でも部下をお持ちの方なら、本書は一読の価値アリ!

また、部下がいなくとも、上記ポイントの6番目のように、上司の意図を汲んで、適切な結論を導きだせるようになるためにも、本書は有用だと思います。


マネジメントが苦手な方こそ読むべし!

4480068929
即効マネジメント: 部下をコントロールする黄金原則 (ちくま新書)
はじめに 「あの人はすごい」―その理由は、マネジメント理論でけっこう説明できます。
第1章 なぜ、企業は社員のやる気を大切にするのか
第2章 やる気の源泉=「機会」と「支援」の鉄則
第3章 やる気を絶やさないための秘訣
第4章 もう1つのR(=Range)は、なぜ「スーパーな力」なのか
第5章 世界でも特殊な日本型のキャリア構造
第6章 学んだことを人に教え、自分でも実践する
あとがき リクルートの「元気とやる気」の秘密を、みなさんに


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【編集後記】

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