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2016年05月13日

【行動経済学?】『アリエリー教授の人生相談室──行動経済学で解決する100の不合理』ダン・アリエリー


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アリエリー教授の人生相談室──行動経済学で解決する100の不合理


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨日ではなくその前の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた1冊。

お馴染みダン・アリエリー教授が、さまざまな悩みを行動経済学で解決してくれています。

アマゾンの内容紹介から。
行動経済学の第一人者が、読者から寄せられた意思決定や人間関係の疑問と悩みに全力で回答。行動経済学の基本が楽しく学べて、日々の選択にもう迷わなくなる!ウォールストリート・ジャーナル紙の超人気連載の書籍化。

しかも、日本語版の付録として、成毛 眞さんと三谷宏治さんからの質問も追加!?

上記記事の時点ではなかったKindle版も、今なら配信済みです!





Dan Ariely - PopTech 2010 - Camden, Maine / poptech


【ポイント】

■1.ビュッフェの投資収益率を最大化する方法は?
ビュッフェに行って短期のROIを最大化しようとすると、食べものをたらふく詰めこんだはいいものの、自分の行動が引き起こす長期的影響に苦しむことになる。たとえばジムで余分な労力を費やしたり、贅肉を増やすはめになるかもしれない。増やした摂取量にどんな方法で対処しようと、短期の最適化には何らかの代償が必ず伴うんだ。
 ビュッフェに行くときに(生活のほかの分野でも)よく見られるもう1つのまちがいは、ビュッフェの運営者にとってのコストを最大化しようとすることだ。一般に、私たちは高価な食べものを食べるとなぜか得をしたような気分になる。でもいうまでもないことだが、私たちが(ビュッフェと同様)人生でめざすのは、誰かにとってのコストを最大化することじゃなく、自分の楽しみを最大化することだ。キャビアよりパンとチーズが好きな人は、本当に嫌いかどうかをたしかめるために時々はキャビアを試すのもいいが、もっと大きな喜びを与えてくれる食べものに集中した方がいいね。


■2.レストランでワインを注文する際の注意事項
たとえばワインリストに(1本200ドル以上などの)ものすごく値の張るワインが含まれていると、それ自体が注文されることはあまりなくても、リストにそれが載っているだけで、70ドルのワインがずっとお得に思えるんだ。
 それに、安いものが好きなくせに安っぽく見られるのを好まない人が多いことも、レストランにはお見通しだ。つまり、メニューの一番安いワインを注文するお客はほとんどいないんだね。けちん坊たちが好むのは、リストの二番めに安いワインだ。レストランはこれを知っているから、ワインリストのこの絶好の位置に利ざやの大きいワインを載せている。
 最後に、レストランはもう1つ武器をもっている。私たちの自信をさらに失わせ、混乱させる、ウェイターとソムリエだ。意思決定のどさくさに紛れて高めのワインを選ばせるなんて、彼らにとっては朝飯前だ。


■3.夜更かしすると冷蔵庫を漁ってしまうワケは?
 それは、「消耗」と呼ばれるよく知られた現象だ。私たちは一日中小さな誘惑に向き合い続けるが、何とかがんばってはねのける。仕事のできるきちんとした人間でいるために、何かを買いたい、先延ばしをしたい、ユーチューブで最新のネコ動画を見たいといった衝動をこらえ、自分自身と周りの誘惑をコントロールする。
 でも衝動に抗う力は筋肉に似ていて、使えば使うほど疲れがたまり、あるとき――夜のことが多い――誘惑に抵抗できないほど意志力が弱くなる。バーやストリップクラプなどの「誘惑産業」が主に夜間に営業するのは、このためでもある。私たちは一日中誘惑に抵抗し続けているから、夜になると疲れ果て、陥落寸前になる。誘惑産業は私たちを失敗させて利益を得ようと、虎視眈耽と狙っているんだ。


■4.期待が高すぎると逆効果になる?
私が何かを勧めたり絶賛したりすると、友人たちはとても高い期待をもつようになる。その高い期待を基準にして実際の経験を評価するから、経験が期待に沿わないと、全体として経験をそれほど楽しめなくなるんだね。
 私はこんなふうに考えている。期待が高いとき、経験は2割ほどかさ上げされる。つまり、期待と経験のギャップがこのほどほどの範囲内にあれば、経験は期待の方に「引き寄せ」られ、実際よりもよく思える。でも期待があまりにも高すぎて(6割増しなど)、期待と現実のギャップが埋められないほど大きくなると、この対比のせいで経験が実際よりもひどいものに思え、喜びが薄れるんだろう。
 友人に実際以上にいい経験をさせたいなら、絶賛するのはいいが、やりすぎてはいけないってことだね。


■5.意思決定を少しでも合理的にする方法は?
 一番いい方法かどうかわからないが、私がときどきやる方法で、君に役立ちそうなものがある。私たちは何かを決定するとき、自分中心に世界を見ていることが多い。つまり自分の視点や特定の動機、その時々の感情にとらわれているんだね。
 この視点から抜け出して、もっと冷静で合理的、客観的に状況をとらえるには、発想を転換して、「親友が自分と同じ状況にいたら、どんなアドバイスをしてあげるだろう」と考えるんだ。
 たとえば私たちはある実験で、20年来の主治医に高額の治療法を勧められたら、ほかの医師にセカンドオピニオンを求めるか」、と被験者に聞いてみた。するとほぼ全員がノーと答えた。次に、「友人が同じ状況にいたら、セカンドオピニオンを求めるよう勧めるか」と聞くと、ほとんどの人がイエスと答えたんだ。
 これらの結果から、同じ医師に長い間かかっていると、医師との関係や義理を無視できなくなることがわかる。でも他人にアドバイスするときは、自分の感情をある程度切り離して大局的にものごとをとらえるから、セカンドオピニオンを得るという、よりよい行動を勧めることができるんだ。


【感想】

◆冒頭の内容紹介にもあるように、本書はウォールストリート・ジャーナルで2012年からスタートしたショートコラム「アスク・アリエリー(アリエリー先生に聞いてみよう)」における質問とその回答に加筆修正したもの。

今回の記事に先立って、HONZさんの方では、版元の早川書房さんの提供で「著者まえがき&内容の一部紹介」がリリースされています。

『アリエリー教授の人生相談室 行動経済学で解決する100の不合理』(1/6) - HONZ

何と6ページ(!?)もあるので、1ページ目のの「まえがき」だけでお腹一杯になりそうなw

この2ページ目以降を見て頂けると、やりとりの感じがつかめるかと。

基本的には、読者からのこういった質問(下記目次参照のこと)に対して、教授がユーモアたっぷりに(でも真面目に)答えてくれています。

中にはこの回答のように、短すぎて、一瞬意味がわからなかったものもありましたがw


◆その目次を見てもお分かりの通り、本書は章分けがされていません。

ただ、ある程度似たようなテーマが続いているところを見ると、何らかしらの意図があってこの順番に並んでいる模様。

たとえば、職場の話や投資の話が続いたり、途中からは延々と結婚関連の質問がありました。

とはいえ、恋愛やら結婚といったテーマは、コミュニケーションの問題も大きい気がするので、今回は割愛(アリエリー教授は行動経済学に向いているネタだと言われていますが)。

逆に、上記ポイントの1番目と2番目で挙げたレストランのお話や、3番目のダイエットネタは、行動経済学と親和性が高いと感じて、抜き出した次第です。

実際、今回カットしたお話で「なぜダイエットが続かないか」という質問があったのですが、「お腹が空いていない時に『来月何回デザートを食べる?』と聞かれたら、1,2回と答える人でも、いざレストランでデザートメニューを見たら、今デザートを食べることがとてつもなく重要なこととなる」と指摘。

これは行動経済学で「現在志向バイアス」と呼ばれるものなのだそう。


◆このように「アリエリー教授とやりとりする」というスタイルでは、以前こんな本がありました。

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お金と感情と意思決定の白熱教室: 楽しい行動経済学

参考記事:【痛快!?】『お金と感情と意思決定の白熱教室: 楽しい行動経済学』ダン・アリエリー

こちらは、初めから行動経済学がテーマであり、かつ、参加者も「シリコンバレーの起業家をはじめとするアメリカ西海岸の野心家たち」と、キレ者(?)がほとんど。

それに対して本書は、もっとざっくばらんな質問が多く、あまり行動経済学を意識していない(?)感じです。

「『いいカラダしてるね』のような口説き文句に効果はあるか?」みたいな質問を取り上げる編集部(教授自身?)もどうかと思いますが、「私はこの分野の専門家でも何でもないが……」と答え始める教授もどうなの、とw

でも中には、行動経済学を意識したものもあって、「損失回避の原則どおり、勝利の高揚感より敗北感の苦痛の方が強く感じられるなら、何のためにスポーツチームのファンになったりするんでしょうか?」というスルドイ質問には、私も思わず考え込んでしまいましたよ(回答は本書を)。


◆なお、これまた冒頭で触れたように、本書には「日本語版付録」として、成毛 眞さんと三谷宏治さんからの質問をそれぞれ収録。

これらはアマゾンの内容紹介にも掲載されているのでご紹介してしまうと、
成毛眞氏:「新型iPhoneが出るたび買ってしまうのはなぜ?」
三谷宏治氏:「行動経済学では説明つかないことって?」
というものです。

このうち成毛さんの質問の方は、いかにも行動経済学らしい回答がされていて思わず納得。

また、アップルの躍進の理由と同時に、アップルの限界(?)も示唆されているようにも感じました

……でも成毛さん、絶対新型iPhone買うのはやめられないだろうなぁw


◆本書は、私のようにアリエリー教授の著作を全部読んでいる人なら、「買い」でしょう。

ただ、そもそもアリエリー教授が他者と比べて突出している(と私が思っている)のは、テーマに対するユニークなアプローチであり、たとえば処女作では、「性的興奮状態における行動判断のアンケート」と題して、「オ●ニーしながらパソコン操作させる」なんてことを、被験者にさせているワケです。

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予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

参考記事:【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)

そういう良い意味で「クレイジー」な部分は、さすがに中和されており、しょうがないとはいえ、ちと寂しいな、と。

まぁ、ウォールストリート・ジャーナルに連載していた手前、無茶できないのは当たり前ですけどねw


行動経済学で私たちの生活をよりよくするために!

4152096144
アリエリー教授の人生相談室──行動経済学で解決する100の不合理
人に頼まれると断れない
就職する前に冒険してみたいけど
転職したら幸せになれる?
レベルの低い環境で一番を目指す?
なぜ外部の人材の方が評価される?
職場のホッチキスが消えない方法
会議中のマルチタスクはバレない?
作業時間が三倍増えたのに喜ばれた
これってコンサル流のトーク術?
告げ口したら嫌われた〔ほか〕


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【痛快!?】『お金と感情と意思決定の白熱教室: 楽しい行動経済学』ダン・アリエリー

【オススメ】『ずる―嘘とごまかしの行動経済学』ダン・アリエリー(2012年12月11日)

【オススメ】『不合理だからすべてがうまくいく』ダン・アリエリー(2010年11月26日)

【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)

【オススメ】『オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より』岡田斗司夫 FREEex(2012年10月01日)


【編集後記】

◆読者からの質問に対する回答といえば、岡田斗司夫さんのこの本もオススメです。

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オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)

レビューは上記関連記事にて。

なお、中古が底値なのでお得ではないのですが、Kindle版は「50%OFF」&今なら「20%ポイント還元」のようです。


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