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2016年05月04日

【ものは言いよう】『ずるい日本語』内田伸哉


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ずるい日本語


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げたコミュニケーション本

著者の内田伸哉さんは、慶應義塾大学大学院理工学部卒業で、大学院では信号処理やプログラムを研究されていたのに、電通に文系就職してコピーライターになられたという変わり種(失礼)です。

ちょっと長くなりますが、アマゾンの内容紹介から。
「ものは言いよう」と昔からよく言ったもので、世の中は、言い方次第で価値観が180度反転したり、覚えづらいことを一瞬で記憶させたりすることができます。
「あの子可愛いな。でも、彼氏いるしデート誘えないよな」
ある飲み会で部下がそうつぶやきました。すると上司はこう言いました。
「じゃあお前は、キーパーがいたらシュートを打たないのか」
上司のその一言に部下は心打たれ、見事行動に移し、彼女をゲットしたのです。皆さんにお伝えしたいのは、「上司の言葉」が「部下の心」を動かした、という事実です。そして、心を動かすばかりか「行動する勇気」まで与えました。「言葉」が「行動」を生んだのです。
本書では、【IMPACT】【FUN】【SYMPATHY】【SPEED】【ACTION】という5つの切り口から、雑多な情報の中できらりと光る、おとなのコミュニケーション術を伝授します。

なお、Kindle版も既に配信されていますよ!





Communication / eda.c


【ポイント】

■1.「『何を』『どう』言うか」の考え方の手順
 考え方の手順は、
手順1. Beforeの気持ち 相手の今の気持ちを推測する
手順2. Afterの気持ち 相手をどんな気持ちにしたいかを決定する
手順3. What to say 「何を言うか」を決める
手順4. How to say 「どう言うか」を決める
 の順に考えます。手順1と2で前後の気持ちを整理し、手順3でそのためには何を言うべきかという「What to say」を考えるのです。
 そして最後にその言うべきことをどう言えば強く伝わるかという「How to say」を考えます。


■2.文頭を否定から入る
 通常、人はコミュニケーションや会話、行動をする上である程度「予測」をしながら生きています。その予測を裏切ることで「驚き」と「疑問・興味」が生まれるのです。
 たとえば株式の入門書を買った人であれば、どのような「予測」を持っているでしょうか。おそらく「株はすごいから一生懸命学びましょう」みたいなことが1ぺージ目に書かれているはず、という無意識の予測とともに本を読んでいます。
 しかし、そこで「株のことを考えるな」と言われるとは微塵も思っていないはずです。
 つまりは、人が「予測していない」文節や否定から入ると相手の気持ちを強く引くことができるのです。


■3.一番過激に言う
「本焼却パーティ開催」
今回の議論では通常「税金」か「憩いの場の確保」かが比較されています。これは常識的な比較です。
 しかし、ここで(図書館閉館)反対派が「本を燃やす」という過激な言葉を使用しました。常識的な土台から、考えもしない非常識的な域のテーマを呼び起こすことで「税金」か「憩いの場所の維持」か、という議論から、「本を燃やすことはいけないこと」だけに焦点を移してしまったのです。そしてこの過激な言葉によりみんながこの問題に振り向いたのです。(中略)
 相手の心を揺り動かし、振り向かせる文章や言葉を考える際は「一番過激に言うとどのようになるか」ということをまず考えましょう。
 可能な限り非常識に、これ以上がないほど極端に考えるのが大切です。


■4.「なぜ(WHY)」を言葉にして伝える
 どんなにディテールを説明しても、どんなに熱意を持っていても、その人がそのことを「なぜ」喋っているのかが伝わらないと、そもそも物事を聞く姿勢に相手がならないですし、たとえ聞いたとしてもモチべーションが保てません。
 極端でわかりやすい例を言うと、「母を若くしてガンで亡くしました。だから私は医者になりました」という言葉は、誰もが「なぜ」彼が医者になったかは理解ができるはずです。(中略)
 このように強い「なぜ」をつくること、もしくは探すことは非常に大切です。なぜなら、普段仕事をしていると忙しくて、「なぜ」自分がそれをやっているのか忘れがちになるからです。そして、忙しい時こそ、ノルマのため、というように視点が狭くなり、WHYよりWHATに思考が偏りがちです。
 たとえば広告の仕事で言えば「広告を売るため」に仕事をしている人が大半です。しかし、本来世の中から嫌われ者な広告は、そういう存在ではなく「世の中で良い話題をつくるため」のものでなくてはありません。


■5.他者から評価された言葉を使う
 かっこいいや最高などの言葉は自分で言うセリフではなく他人に言われるべき言葉であるということを忘れないでください。キムタクが決して自分で「俺かっこいいだろ」と言わないのと同じことです。自分で自分を評価する自己評価語は決して使ってはいけません。
 それに対して、先ほどの下の文章は他者から評価された目線で書かれています。
 噛み砕いて言うと「文化庁から認めてもらいました」「グッドデザイン賞というプライズに認めてもらいました」ということですが、これらの事実が二次的に「おそらくかっこいいデザインをつくってくれるのだろう」「良いできのデザインをつくってくれるのだろう」という所感を生んでいるのです。(中略)
 あなたが仕事で「できるな」とか「プロだな」とか思われたければ、そういった「客観的評価指標」をどう手に入れるかを考えましょう。これらの指標は、ある程度努力すれば取得できるものがたくさん存在します。


【感想】

◆本書のタイトルだけ見て、その内容まで正しく予測できる人は、あまりいらっしゃらないのではないでしょうか?

一応書影が、本の帯が装着されているバージョンであり、そこに
登山愛好者です。< 登山中毒です!
と記されているのとともに「ものは言いよう。」とあるので、「ああ、効果的な表現方法を指南する本なのだな」とは分かります。

ただ、帯を外すとタイトルと著者名だけになってしまうので、正直、これで書店に並んでいたら、ワケワカメ。

とはいえ「ずるい」という、ある種「劇薬的」な「裏ワザ」をイメージさせる(?)フレーズに、私もつい、釣られたのではありますがw


◆ただし、実際の内容は極めてロジカルです。

下記目次にもあるように「IMPACT」「FUN」「SYMPATHY」「SPEED」「ACTION」という第1章以降の5つの章に、それぞれ上記ポイントの1番目にある「Before ⇒ After」のキモチを設定。

たとえば、第1章の「IMPACT」であれば「聞きたくない ⇒ 聞いてみたい」といった具合です。

そして各章ごとに「How to say」である「言葉強化方法」を5つずつ列挙し、合計25個の「コミュニケーション術」が学べる仕様。

なお、その「言葉強化法」には、すべて4字熟語が付されており、たとえば上記ポイントの2番目であれば「逆説文頭」、3番目であれば「過激導入」となっています。

この辺の「理路整然とした」辺りは、さすが理系出身だな、とw


◆付箋を貼りつつも割愛したTIPSの1つに「並列処理」なるものがありました。

これは複数のテーマを伝える際に、「共通項」を探し、それを対句にする、というもの。

これについても、やみくもにアプローチするのではなく、キチンと手順が示されています。

まずは「近辺の単語・動詞」を、それぞれのテーマごとに大量に抽出。

次に、それらの「共通要素」を探し出し、最後にこれらを組み合わせる……と書くと簡単ですが、詳しくは本書にてご確認を。

実際、内田さんも、言いたいことが3つあったとしたら、その3つの述語の韻を踏むことに配慮しているのだそう。


◆ちなみに、広告代理店の方が書かれた、丁度似たようなテーマの作品としては、この本が思い出されるところです。

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伝え方が9割

参考記事:【こんな方法あったんだ】『伝え方が9割』佐々木圭一(2013年03月05日)

もう1冊、こんな本もありましたね。

4883353044
伝わっているか?

参考記事:【20のメソッド?】『伝わっているか?』小西利行(2014年06月12日)

おそらく、これらの本がツボだった方には、本書も刺さりそうな予感。

この2冊よりもコンテンツ自体に注力している分、ページ数は少なめなのですが、普通にビジネス書を読まれている方にとっては、むしろ本書の方が余計な「衣」がない分、馴染みそうな気がします。


◆なお、上記の通り本書には25のTIPSが収録されていますが、全部が全部オリジナル、と言うワケではなく、昔からある定番ネタ(「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」等)もいくつかありました。

といっても、構成上これらを外す方が不自然ですし、あってしかるべきかと。

むしろ細かいことを言うなら、本書は「横書き左開き」でして、この内容だったらなんで「縦書き右開き」にしてくれなかったのか、と小一時間……。

おそらく縦書きにすると、空白が増え、必然的にページ数も増えるとは思いますが、速読派としては、そこだけはちと残念だったと言わせて頂きたく。

……もちろん、内容的には文句ないんですけどねっ!


まさに「ものは言いよう」な1冊!

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ずるい日本語
0章 心を動かす言葉の、大黒柱を設計する。
1章 IMPACT 思わず振り向かせる。
2章 FUN 退屈させない、ワクワクさせる。
3章 SYMPATHY 同意は心に入り込む最大の武器。
4章 SPEED 相手の脳みそに秒速でリーチする。
5章 ACTION 相手の「心」と「行動」を変える。


【関連記事】

【20のメソッド?】『伝わっているか?』小西利行(2014年06月12日)

【こんな方法あったんだ】『伝え方が9割』佐々木圭一(2013年03月05日)

【77のテクニック】「キャッチコピー力の基本」川上徹也()

【説得術】『どんな人も思い通りに動かせる アリストテレス 無敵の「弁論術」』高橋健太郎(2015年07月12日)

お前らもっと『30秒で話を伝える技術』の凄さを知るべき(2013年10月06日)

【説得術】『嫌われずに人を説得する技術』伊東 明(2013年02月05日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B015ZNULDC
新しい道徳 「いいことをすると気持ちがいい」のはなぜか (幻冬舎単行本)

送料込みの中古より若干安いので、気になっていた方はご検討を。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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