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2016年05月02日

【文系必読?】『理系に学ぶ。』川村元気


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理系に学ぶ。


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった1冊。

映画プロデューサーで「理系コンプレックスを抱える文系男」である川村元気さんと、「理系のトップランナー15人」との対談集です。

アマゾンの内容紹介から。
文系はこれから何をしたらいいのか?『世界から猫が消えたなら』『億男』『仕事。』の川村元気が言葉で読み解く理系脳。

既にKindle版も配信されていますので、こちらもご検討を!





Scientist / Richard Friedericks


【ポイント】

■1.不戦勝が最高の勝ち方?
川上 僕は競争に興味がないんですよ。世の中で勝とうと思ったら、不戦勝が一番いい。仮に競争相手がいたとしても、正々堂々と打ち合って判定勝ちとか、絶対にやりたくない。いかに競争せずに圧勝するか。ベストなのは奇襲ですよ。

川村 ただ、人間はやっぱり、競争が好きじゃないですか。

川上 権力を持っている人のほとんどが学生時代に受験戦争を勝ち抜いたエリートだからでしょう。学歴社会の弊害だと思うんですが、特にそういう人は競争すれば勝てると思っている。でも、大いなる錯覚ですよ。

カドカワ代表取締役社長/ドワンゴ代表取締役会長 川上量生


■2.広告の正常化を唱える
佐藤 電通に一般職で入社した直後にコピーライターブームが始まりました。1、2行のコピーが100万円とか通常では考えられない値付けをされ、それも当たりはずれが多かった。他にも人気タレントを海外に連れて行って現地の有名写真家に撮らせたけど認知率がいかない…といった浮ついた作り方をしていました。僕は見積もりやスケジュールをきちんと管理した上で、いつも高い認知率、配荷率、好感度を獲得する表現上の方法論が必要だと思いました。要するに、広告の正常化を唱えたんです。

川村 手法として再現可能なものということですね。

佐藤 はい。具体的にはイメージ広告をやめて、商品広告をやりました。「スコーン、スコーン、コイケヤスコーン」とか「モルツ、モルツ♪」とかはすべて商品名から入っているもので、「音から作る」という方法論の1つです。ただ、それまでの広告業界のやり方を壊しにいったので、多くの人を敵に回すことになりました。だから追い詰められて、1つでも失敗したら突き落とされるような退路を断った状態で、作っていましたね。

東京藝術大学大学院 映像研究科教授 佐藤雅彦


■3.ミドリムシの培養が日本人にしかできない理由
出雲 冗談に聞こえるかもしれないですけど、マイクロマニピュレーターという顕微鏡でミドリムシを操作する細かい作業は、世界中で日本人しかできないんですよ。

川村 手先が器用じゃないとできないんだ。

出雲 それともう1つは、「乳酸菌が腸の中で頑張っている」という英語は存在しないんですよ。欧米人にとって菌はばっちいもので、基本的に悪いものなんです。だから、欧米では菌をやっつける抗生物質の学問はすごく進んでいます。一方で、日本は菌を活かす文化があって、乳酸菌だけでなく納豆菌、日本酒や味噌など、発酵食品は身体にいいとされてきた。ミドリムシの培養は、そういう意味でも日本人にしかできないんです。

ユーグレナ 代表取締役社長 出雲 充


■4.泥臭いことを自分でやる
高橋 結局は個人の試行錯誤の中にしか進化はないと思っていて、失敗してはその都度、解決のための工夫を繰り返して自分の手を汚さないと、新しい発想は出てこない。外部や下請けに出してしまうと、そこにノウハウは溜まるけど、僕自身には何も残らないわけです。やっぱり過程が大事で、ホワイトカラーは手を汚さないでパソコンに向かっていて、トンカンやるのは中国に任せておけ…みたいなことやっていたら、中国の方がノウハウを蓄積してクリエイティブが逆転されてしまいます。

川村 作るって行為を外注しちゃだめなんですよね。

高橋 だめですね。泥臭いことを絶対的に自分でやらないと。そこはものづくりでは切り離せない部分だと思います。

ロボットクリエイター 高橋智隆


■5.これからのデザインはサイエンスが入らないとよくならない
伊藤 うちはずっとサイエンスやエンジニアリングをやってきたけど、そこにデザインやアートに融合させていくことが課題。これからのデザインはサイエンスが入らないとよくならない。言葉を換えると、もう世の中の役に立たないものは作りたくない。今までのものづくりは金儲けのためのデザインだったけど、これからはシステムのデザインになる。デザインが環境や教育や社会にどういう影響を与えるか。結果、世の中全体をどうしたいのかを考えられるのは、サイエンスのデザイナーなんだと思う。

川村 まさに理系と文系が融合した理想形ですね。

マサチューセッツ工科大学 メディアラボ所長 伊藤穣一


【感想】

◆「いかにも理系」な面子でなくてスイマセン。

付箋を貼った中から、面白そうなお話を選んだらこうなったのですけど、下記目次を見て頂いても、理系っぽくない(?)方がちらほらいらっしゃるのではないか、と。

そもそも本書は、雑誌『UOMO』で連載していた「理系の友達」という企画に、大幅に加筆・修正し書籍化したもの。

『UOMO』自体がファッション誌ですから、あまり小難しい話ではないワケで、どちらかというと、この本の「理系版」といった感じでしょうか。

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仕事。


◆個人的には、佐藤雅彦さんのパートが、非常に読み応えがありました。

ちょうど先日、こんな記事がはてブのホットエントリー(ブクマ940超!)になったばかりでしたし。

朝日広告賞を受賞していなかったら、ピタゴラスイッチもだんご3兄弟もポリンキーもI.Qも生まれていなかった。 東京藝術大学大学院 映像研究科教授 佐藤雅彦さん:スペシャルコンテンツ:朝日広告賞

上記ポイントの2番目で、当時の広告が「"浮ついた作り方"をされている」と指摘されれていますが、上記記事によると、ほとんど同じことを、この「朝日広告賞」を受賞した際の贈呈式のスピーチで、言われたようですね(大汗)。

記事では「贈呈式の後、電通の社長や役員に褒めていただき」とあったので、てっきり皆ポジティブに受け止めていたのか、と思ったのですが、ポイントの2番目によると「多くの人を敵に回す」ことになった模様。

そりゃあ居並ぶ重鎮や、実際にクリエイティブで活動されてきた方々の顔に泥を塗ったようなものですから、当然ですよね。

なお上記記事では、「スコーん」や「ポリンキー」を制作した後の活動に関して、「独特な世界感を醸し出すための『トーン』という方法論も構築」とサラっと書かれていますが、本書ではかなり突っ込んだ話まで触れられており、上記記事にブクマされた方なら、この部分は一読をオススメ!


◆また、割愛した方の中では、統計学の西内 啓さんのお話も面白かったです。

東大生の頃、バンドとしてレコード会社のオーディションを受けて、「偉い人がライブを見に来てくれる」ところまでは進んだそうですから、そこそこポテンシャルはあったようで。

そして「らしい」のが、そのオーディションを受ける前に、「今から売れる音楽のジャンルを徹底的に分析した」というところ。

オリコンで100位以内に入った曲を、過去20年分くらいさかのぼり分かったのが、「あるジャンルの曲がトップ100に入ってからまったく入らなくなるまで、だいたい12年くらい」なのだそうです。

ほかにも、アメリカで行われた「10代の喫煙防止キャンペーン」のお話も「目からウロコ」でした。

喫煙する若者は反抗心が強い、というデータがあったので、それを逆手にとって「あるシナリオ」をビジュアルや動画で展開したら、実際に喫煙率がさがったのだとか(ネタバレ自重)。


◆それにしても、私ももうちょっとコテコテの「理系バナシ」を選んでもよかったかな、と(今さらw)。

『宇宙は何でできているのか』の著者である村山 斉さんのお話とか、「暗黒物質」や「暗黒エネルギー」のお話が満載で、なかなかに興味深かったです。

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宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)

……り、理解できるとは言ってませんがw

ほかにも「宇宙には10次元まである」とか、いわゆる「理系バナシ」が満喫できることウケアイかと。

もちろん、その他のみなさんも、「その業界では知らぬ人はいない」レベルの方々ですから、まさに「理系に学ぶ」ことができると思います。


手軽に読めて、奥が深い1冊!

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理系に学ぶ。
・養老孟司……世の中の常識を疑いながら、人間の身体本来の力を信じる解剖学者
・川上量生……ITビジネスとコンテンツ業界を牽引する「ニコニコ動画」生みの親
・佐藤雅彦……独自のルールとトーンで数々のCMを生みだし「作り方を作る」ことを教える
・宮本 茂……マリオ、ゼルダ。天才的発想力で世界を熱狂させてきたゲームプロデューサー
・真鍋大度……驚愕の「精度」と「表現」映像で世界を驚かすメディアアーティスト
・松尾 豊……ディープラーニングを駆使し農業や建設業での活用を目指す人工知能の先駆者
・出雲 充……世界初の大量培養に成功したミドリムシでバイオ燃料の可能性にかける
・天野 篤……成功率98%、年間400例の執刀をこなす心臓外科のゴッドハンド
・高橋智隆……スマホに代わる小型ヒト型ロボット時代の到来を思い描くクリエイター
・西内 啓……「不確実時代の最適選択のために統計学は最強の学問」と唱える統計家
・舛田 淳……世界で月間利用者2億人を誇るLINEでテクノロジーとアートを束ねる
・中村勇吾……“ずっと見ていられるものづくり"でメディア表現の可能性を切り開くインターフェースデザイナー
・若田光一……宇宙滞在期間347日。日本人初のISSコマンダーを務めた宇宙飛行士
・村山 斉……1兆年先の宇宙に思いを馳せつつ研究機構を率いる理論物理学者
・伊藤穰一……サイエンスのデザインを追求する日本人初のMITメディアラボ所長


【関連記事】

【理系の子?】『人気講師が教える理系脳のつくり方』村上綾一(2012年11月18日)

【スゴ本】『理系の子―高校生科学オリンピックの青春』ジュディ・ダットン(2012年06月07日)

【文系でもおk】『理系男子のための恋愛の科学』西内 啓(2011年07月03日)

【スゴ本!】「理系のための口頭発表術」はかなりキテます!(2008年02月22日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B015QZE284
企業不祥事の研究 経営者の視点から不祥事を見る

装丁からして「ガチ」っぽいですが、掲載事例も「大和銀行、NOVA、東京ドームシティ、安愚楽牧場、大王製紙、オリンパス、カネボウ、JR北海道、みずほ銀行、阪急阪神ホテルズ等」とかなりガチ。

「75%OFF」で、中古の1/3ほどのお値段ですから、お買い得ではあるんですが、読む人は選びそうな感じですね。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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Posted by smoothfoxxx at 09:00
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